雪が風に乗って吹きすさぶ。
視界を白で埋めるように。
町は白で覆われていく。
ひとりの少女とひとりの天使を抱えた白が、町に近づく。
雪が、降っている。
『貫殺天使リア』
18.桜の散るとき
――町の入り口近く
前が見えぬほどの吹雪の中、1体のデスパイアが歩いていた。
白い肌に青い瞳、痩躯の人間型デスパイア。
背中から生えだした触手に、ふたりの人間を捕らえている。
「この町には、まだ天使がいるみたいだね・・・・・・」
そう呟いた先には、ひとりの剣士。
断楼天使、アキラがいた。
――ケーキ屋『Fragola e Crema』
からんからん
「「おじゃましまーす」」
「いらっしゃい。お友達も来てくれたのね」
にこやかに対応してくれる店長さん。文化祭が終わった後も何回かここに足を運んでいるから、もう顔見知りだ。
「あれ? アキラさんはいないんですか?」
「アキラちゃんは早退しちゃったの。さ、今日はどれにする?」
アキラさんが早退かぁ。珍しいこともあるもんだ。
「んーと、モンブランとフルーツタルトで・・・・・・」
「私はショートとレアチーズ!」
来るたびに頼んでいる紅茶は、言わなくても出してくれるようになった。常連さん。
ケーキをテーブルに運んで、一服。
「あ、そうだ。アキラさんが風邪引いてるんだったらお見舞い行かないと・・・・・・」
学校から切りっぱなしにしていたケータイの電源を入れる。あ、いくつかメール入ってる。
「・・・・・・」
そのメールの内容を見て、がたんと椅子から立ち上がる。
「ど、どうしたの?」
「ごめん、わたし・・・・・・、行かなきゃ」
荷物から何から置いて、店から駆け出す。後ろでカナエがなにか言っているが、聞こえないふりをした。
ごめんね。その内また来ようね。
「変身!」
早く行かないと。早く行かないと!
雪が降っていた。行く手を遮るように。
――海付近の住宅街
天使アキラと白いデスパイア。両者は既に戦いの構えを取っていた。
刀の刃先を向け、アキラが問う。
「そのふたり・・・・・・、放す気はねぇよな?」
デスパイアが答える。
「もちろん。それに、これから君もここに加わるんだよ」
それを言い切った瞬間、アキラが飛びかかる。
「んなこた、ねぇよ! メグミを返せ!」
横から薙ぐように斬り掛かる。それを触手の鏃で受け止め、デスパイアはなおも語る。
「ボクを待ち伏せていたってことは、ボクに犯される気だったんだろう?
君たちじゃあ勝てるわけがないってわからないかい?」
「はっ、そんなこと・・・・・・、やってみなきゃわかんねーよ!」
ギィン! 鏃と刃先が交錯する音が響く。轟々とうなる吹雪の中、足を止めることなくアキラは斬り掛かる。
「わかるさ。君は彼女より弱い。そんな君がどうやってボクに勝つんだい?」
触手に捕らえたメグミをこれ見よがしに掲げるデスパイア。多数の剣撃にも足を動かすことなく触手のみで対抗する。
「っメグミ! この野郎、メグミを放せ!」
上から下から攻撃を加えるも、それらは全て鏃に防がれる。実際、アキラは一撃たりとも入れられていない。
「ああもう! くそ!」
後ろに跳んで距離を取るアキラ。そこに触手の追撃が放たれる。
「っ『朽ち桜』!」
魔力を込めた一撃も鏃をはね飛ばす程度にしかならない。アキラの顔に汗が伝った。
「ほら、やっぱり。どんなにあがいても君には無理だ」
「・・・・・・」
押し黙り睨み透けるしかない。デスパイアの鏃にはひとつの傷も付いていなかった。
「たしかにな。一太刀程度じゃそのかってぇ武器は壊せそうにないさ」
ぽつりと言って、アキラは構えをかえる。
刀身を左脇に隠し、右足を出した半身の体勢。
居合。
「だったら、これでどーだ?」
アキラの眼が一瞬細くなり、
「はっ!」
一気に間合いまで踏み込む!
「それがどうしたい?」
「アタシ流剣術、咲け!『八重桜』!」
襲いかかる触手を、ギュパン!と音を立てて打ち払う。
一瞬八斬。居合の速度で振り抜く連続技。
しかし、それでも鏃は壊せない。
「はは! 残念だったね! 君の技も破壊には到底至らない!」
「おめぇ、危機感足りねぇんじゃね?」
もう一度居合の構えをつくるアキラ。その位置は、
「っチィ!」
デスパイアの真正面!
「散れ!『乱れ桜』ァ!!」
「う、おぉぉぉ!?」
上から下から右から左から、千差万別総計100もの手数がデスパイアを襲う!
と、思われたが、
「なんて、驚くと思ってた?」
ガギィ・・・・・・ン! と金属音を響かせ、その太刀は寸前で止められる。
「な・・・・・・、バカな、これは・・・・・・!」
「23枚。これだけあれば止められるか」
とすん! 驚愕から背後への注意を怠っていたアキラに、デスパイアの毒針が突き刺さる。
「んな・・・・・・っ」
「毒蜂の針だよ。さっき手に入れたんだ」
毒蜂の針。つまりそれは、大火蜂の針。
「お前の能力・・・・・・? ・・・・・・っ、まさかっ」
この人型デスパイアの能力――最強たる能力。
多生物の固有能力の模写。魔力を奪った相手、その能力を完全に再現する。
「そう。ボクの能力は喰えば喰うほど強くなる、というモノ。その糧に、君も追加だ」
新たに背中から生えてきた触手が、動きを封じられたアキラの身体を絡め取る――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うぅ・・・・・・、クソッ・・・・・・」
膝から崩れ落ち、燃え上がる体温に耐えるアキラ。肌にまとわりつく雪がたまらなく心地よい。
「さて、どうしたものか・・・・・・。そうだ、こうしよう」
デスパイアが意識のないメグミの体を手繰りよせ、その細い首を鷲づかみにする。
「なっ、なにを!」
「これから君には口答えは許さない。なにを命じられてもボクに従うんだ。
そうしないと・・・・・・、わかるよね?」
「〜〜〜〜っっ」
もうひとりの少女の首にも同様に触手が絡まる。人質がふたり。アキラは従うほかなかった。
「まずは、名前を教えてくれよ。君の名前だ」
「誰がお前なんかに・・・・・・」
「口答えは、許さないって言ったよ?」
ぐぐ、とふたりの首を絞める力が強くなる。目を閉じたままでも苦しそうな表情がつくられた。
「わ、わかった・・・・・・。アキラだ。アタシの名前はアキラだ。だからその手を離してくれよ」
「ふぅん、アキラちゃんか」
アキラが従うと、デスパイアは首にかける力を緩める。一度の実践で、既にアキラの拒否権はなくなっていた。
「それじゃ、次。ボクのをくわえてよ」
「なっ!? う、くそっ」
にやにやと笑うデスパイアの正面に、震える身体を這いずらせ跪く。間近で初めて見た男根は、グロテスクに隆起していた。
「ぅ・・・・・・、ぺろ・・・・・・」
吐き気を催しながらもソレを舐め始める。ぬめる光沢を帯びたデスパイアのモノは、塩辛い味がした。
「ふぅ・・・・・・、ん、ぺろ・・・・・・」
「下手だなあ。そうだ、命令がうまく伝わっていないのかな?
アキラちゃん、口と手を使って、フェラチオをしてよ。恋人にくらいしたことあるでしょ?」
「ね、ねぇよそんなこと・・・・・・。どうやるってんだよ・・・・・・」
熱っぽさを秘めた眼でデスパイアを見上げる。媚薬は身体を巡っているのに、刺激を与えられず身体の奥深くが疼く。
「驚いたよ。うん、教えてあげよう。まずは口いっぱいに頬張るんだ」
「こ、これを・・・・・・。くそ、ん、ちゅぱ・・・・・・」
顔いっぱいに嫌悪の感情を見せながら口に含む。喉いっぱいに立ちのぼる精臭に頭が揺れる。
「そのまま、舌を絡めて。そう。それで出し入れしてご覧」
「ん、ちゅぱ、れろ・・・・・・。ちゅる、んん・・・・・・、ぴちゃ、・・・・・・こくん」
口腔にたまる恥滓の混じったよだれを、無意識に飲み下す。
甘い。
「んちゅ、じゅる・・・・・・、ぴちゃ、んん・・・・・・」
「そうそう。うまいじゃないか。才能あるんじゃない?」
霞のかかった頭でデスパイアの精臭を追い求める。いつの間にかアキラは自発的にフェラチオをしていた。
「ちゅぱ・・・・・・、ん、ひゃあ!?」
「かわいい声も上げられるじゃないか。それにここもこんなに濡れている。もう待ちきれないんじゃない?」
触手がアキラの尻を撫でる。スカートに染みが出来ていた。
「あ、アタシは・・・・・・」
「どうせすぐには素直になってくれないんだろう? いいさ、命令だ。ボクに乞え」
なにを乞えばいいのか、という問いはなかった。
アキラは自らスカートとショーツを下ろし、足をM字に開脚して求める。
「く、下さい・・・・・・。あなたのものを下さい・・・・・・」
真っ赤な顔で命令に従うアキラ。しかしデスパイアはそれに不満そうな顔をする。
「オリジナリティがないなぁ。今の自分の気持ちを行動で表してよ」
「う、うぅ・・・・・・」
その言葉に、アキラは自分の奥のどろどろとした感情のまま、自らの秘裂を割り広げ、
堕ちた。
「あ、あなたのおちんちんを・・・・・・、アタシに、アタシのここにブチこんで下さい!」
「よく言えました」
デスパイアの太いソレが突き入れられる。と、デスパイアはその蜜壺から自分自身を感じた。
「! まさか君は・・・・・・。そうか、そうだったか! くく、面白いこともあるもんだ!」
「あんっ、ひゃう! え、なに、あんっ、なにぃ・・・・・・?」
デスパイアのなすがまま快楽を与えられるアキラに、その言葉が告げられる。
「ふふっ、君は、あきらちゃんは・・・・・・ボクの母親そのもの!
君が襲われたスライム、それに君の卵子は奪われた! そして! それが成長した姿がこのボクだ!」
「う、うそっ、あぁっ! そんなの、うそぉ!」
「嘘じゃないさ! ボクは君の息子だ! そして君は自分の子供に喘がされている淫乱なんだよ!」
「ち、ちがう! アタシは、アタシはぁ! きゃう!? そ、そこは・・・・・・っ」
「違わない! それを今から証明しよう!」
細めの触腕が尻穴にあてられる。ぬめぬめとしたソレが、一気に直腸に押し込まれた。
「あっ、あぁぁーーーー!! や、やだぁ! なんで、なんで気持ちいいのぉ!?」
「言っただろう? 君は!! ただの淫乱なんだよ!」
いつもの粗雑な言葉遣いを忘れ、ただの少女のように喘ぐアキラにデスパイアはまた命令を下す。
「さあまた命令だ! いま! 君がして欲しいことを言え!」
「あっ、ああん! し、してほしいことぉっ、イかせて! もっと、イかせてぇ!」
「ははははは! そうだそれでいい! さぁくれてやろう!」
前後の穴から悦楽を受け取るアキラの身体が、一瞬止まる。
「――〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
どぷ!どぷんどぷん!
前の穴に、後ろの穴に。白濁が体中を満たしていく。
「ぁ・・・・・・、あぅ・・・・・・」
「おいしかったよ、お母さん」
虫を見るような眼でアキラを見下し、3人目の捕虜を背中へと回す。
ふたりの天使の魔力を奪ったデスパイアは、町へと入っていく・・・・・・。
桜の散るとき.end