――市街地  
白いデスパイアが、人々を蹂躙していた。  
対象は、ちょうど下校の時間を迎えた女子生徒たち。  
小学生から高校生まで、少女たちが幾人も幾十人も捕らえられている。  
デスパイアから伸びる触手は、12本に増えている。その全てにひとりずつ少女がいた。  
囚人のひとり、矛盾天使たるメグミは絶望の眼をしていた。  
12本の触腕。それ以上の囚人たち。  
つい30分ほど前、市街地についたデスパイアは驚くべき行動をとった。  
その腹が割け、中から青い半透明のスライムを生みだしたのだ。  
その光景に硬直している住民たちを、次々とあふれ出てくるスライムが襲った。  
そして、30分後。  
白いデスパイアはメグミの能力をつかい、町の一区画を障壁で覆っていた。  
半球状に、黒い壁が外と中を遮断している。  
その障壁の中は、女たちの嬌声に充ち満ちている。  
「ぅぁ・・・・・・あぁっ・・・・・・」  
メグミはもう何度目かもわからない絶頂を経て、枯れつきそうな魔力を奪われる。  
「ふむ・・・・・・、ここにいるメスはこれで終わりのようだね」  
一通り道を回り、人の気配がすればスライムを遣わして見つけ出し、女であれば犯し、男であれば食べる。  
その作業も終わり、デスパイアは次の場所への移動を考えている。  
霞がかった思考で、メグミはアキラを探す。  
いつかの日のようにスライムに包まれ快楽を貪るアキラが、そこにはいた。  
「あ、あぁ・・・・・・」  
「なんだい? まだ希望なんて持っていたのか」  
勢いよく精液を注ぎ込まれ、メグミはまた絶頂を迎える。  
それでもメグミは希望を捨てない。  
金色の少女を、信じているから。  
 
 
19.白い部屋  
 
 
――市街地  
「っ!?」  
町のより騒がしい方へ移動して、ここについた。  
普通の人には真っ黒の壁にしか見えないであろう、魔力の障壁。  
暗幕障壁。大規模な戦闘を起こすときにメグミさんが使う技で、主に夜使用される。  
そして天使には、その壁が透けて見える仕組みだ。  
立ち往生しクラクションが鳴り響くこちら側と、まったく違う様子のあちら側。  
壁の向こうで、何人もの少女がスライム状のデスパイアに犯されていた。  
「なんでメグミさんの障壁が・・・・・・? この中で戦っているの?」  
それにしては様子がおかしすぎる。  
“不可思議な状況に出会ったら、まずは引く”  
これは、天使の鉄則。  
「・・・・・・」  
けど、この中にはメグミさんもアキラさんもいるはずだ。  
それど、ここでこのまま放っておくのは、何よりまずい気がする。  
「天使なら、素通りできたはず・・・・・・」  
人に見られぬ位置から、障壁に触れる。成功だ、指があちらに通った。  
「いく、ぞ」  
決意を胸に、わたしは飛び込んだ――。  
 
 
――障壁内  
中に入ったことで、遮断されていた聴覚と嗅覚が存分に襲いかかってきた。  
甘ったるいオンナの声と、イカ臭い精臭。  
目の前に、ふたりの少女がスライムの中に捕らえられている。  
「<サーディン>!」  
ぱらららららら!と威力を落とし中の少女たちを傷つけないようスライムを打ち抜く。青い水しぶきが辺りに散らばった。  
『ぁ・・・・・・、あ・・・・・・』  
「ごめんなさい、後で必ず来るから」  
少女たちを置いて、目標へ走り出す。  
離れていてもわかるくらいの魔力の大きさ。忌竜の比ではない。  
ぱらららららら! 道の人々を解放しながら、車の走らない道路を駆ける。  
たぶん、この角を曲がれば――!  
 
「やあ、待っていたよ」  
 
「――――!」   
幽霊のような、真っ白な人間がそこにはいた。ただし、雰囲気はまったくヒトじゃない。  
「!? めぐみさん!」  
「? ああ、この人?」  
背中から伸びた触腕でメグミさんを縛り上げ、わたしの前に掲げるデスパイア。  
「メグミさん! 返事をしてください、メグミさん!」  
「むりだよ。さっきヤリ過ぎちゃってね、気絶しちゃったんだ。天使だからってベースはヒトなのを忘れてたよ」  
メグミさんの肌に至るところ赤いミミズ腫れが出来ている。こんな、こんなひどいこと・・・・・・!  
「天使なんだから、戦うんだろう? いいよ、人質なんて無粋なことは言わない。   
 全力でかかって来なよ」  
余裕の表情で笑い、触手に捕らえていた人たちを放り投げる。  
 
「お前・・・・・・! <サーディン>!」  
バラララララララララ! 全力のマシンガンを放つ!  
「っと、痛いなぁ。そんな程度じゃ、ボクの体は傷ひとつ出来ないけどね?」  
その言葉通り、直撃したはずなのにダメージがあるようには見えない。  
なんて硬い障壁・・・・・・! サーディンがダメなら、もう通用しそうな技はひとつしかない。  
カノンモード、<グレート・ホワイトシャーク>。  
わたしの魔力をほとんど持っていくかわりに、ミサイル並の威力を打ち出すオーシャンオルカ最後の形態。  
外せば、魔力のない最悪の状況。けれど、それしか道はない。  
「っあぁ!」  
距離を詰める。わたしを舐めきっているのか、反撃すらしようとしない。  
ならば、今がチャンス! 出来るだけ接敵して、至近距離であてる!  
あと10メートル、あと9メートル!  
「どんな手を打つか知らないけど、君じゃあ無理だ」  
あと8メートル、あと7メートル!  
「ほら、反撃しないからおいでよ」  
あと6メートル、ここだ!  
「<グレート・ホワイトシャーク>!! Feuer!!」  
ドゴォ!!  
銀の奔流がデスパイアに向かう! いける、直撃だ――!  
「障壁展開、29枚」  
「な!?」  
デスパイアが呟くと、その周囲にメグミさんと同じ障壁がつくられる。  
バキンバキンバキン!音を立てて壁を破っていく弾丸。けど、一枚を破るごとに威力が弱まっていって・・・・・・。  
「残念でした」  
デスパイアのもとについた頃には、普通の弾と同じレベルにまで弱体化していた。  
当然、そんなものじゃデスパイアの障壁は破れず、  
「それじゃ、ちょっと寝てて」  
「あぅ!」  
わたしの体は触手の一打ちで吹き飛ばされてしまう。まずい、頭を打った。意識が・・・・・・っ。  
とすん、と針が刺され、体が動かなくなる・・・・・・。  
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
 
「面白いことを考えた。ちょっと君はそこで見ていなよ」  
建物に背を預け、見上げるリアにデスパイアは語りかける。  
「なにを・・・・・・っアキラさん!? メグミさん!」  
スライムに連れられ、ふたりが運ばれてきた。ふたりとも気絶しているようだ。  
「さぁて・・・・・・、起きる時間だよ、ふたりとも」  
「あぅ!?」  
「きゃんっ!」  
ばしん、と背中を触手で鞭打たれ、意識を取り戻すふたり。  
「なにするの!? やめて! ひどいことしないで!」  
「ん? 酷いことなんてしないさ。ただ、この娘たちが勝手にするだけだよ」  
そう言いながら、リアの首に触手を巻き付ける。そしてふたりに投げかける。  
「アキラちゃんと、メグミちゃん。ボクの言いたいことはわかるだろう?」  
「・・・・・・っ」  
「く・・・・・・」  
スライムから解放され、力の入らぬ肢体でデスパイアのもとに跪く。  
「・・・・・・、ぴちゃ、ちゅる・・・・・・」  
「ぺろ、んっ、じゅる・・・・・・」  
両脇からデスパイアの男根に舌を這わせる。メグミは根本を、アキラは亀頭を担当して。  
「や、やめてくださいふたり共! そんなことしないで下さい!」  
「なにを言っているんだい? これは、このふたりが自分の意志でやっていることだ。  
 それを止める権利は君にはないよ」  
にやついた笑みを浮かべるデスパイアがそれに答える。  
「ああ、ところで君って、魔力を零まで吸い取られた人間ってどうなるか知ってる?」  
「・・・・・・え? な、なに? それがどうしたの・・・・・・?」  
「知らないみたいだね。いいよ、教えようか。  
 魔力は魂に眠る力。それが、極限まで、極限を超えて食い尽くされるとどうなるか」  
たっぷりと時間をおき、デスパイアの口から答えが聞かされる。  
 
「死ぬんだ」  
 
「――――!?」  
 
「さて、ここに魔力のほとんど空の天使がいるね」  
デスパイアがアキラの身体を持ち上げる。  
「や、やめて・・・・・・、アキラさんを、はなして・・・・・・」  
「震えちゃって、かわいいなぁ。でもこの天使はもういらないんだ。大して魔力を持っていないからね」  
ずぷり、と触手がアキラの胎内に埋め込まれる。  
「や、やめ・・・・・・」  
アキラの軽い身体が空中で揺れる。  
「やめ・・・・・・」  
触手の根本が太くなり――  
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」  
「!?」  
リアの体が、金色の光を放出した。衝撃で首に巻き付いていた触手がはね飛ばされる。  
「な、ばかな!? これほどの――!?」  
「あぁぁぁあ!! <グレート・ホワイトシャーク>!!」  
立ち上がり、銃を構えるリア。銃口は、デスパイアの胸元。  
「ぐぅっ、障壁全力展開、78枚!」  
「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  
ゴォッ、と、リアの耳から聴覚が消えた。  
銀の大砲は壁を砕ききり、  
「う、お、がぁぁぁぁぁぁ!」  
デスパイアのもとに届いた。  
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
 
「ぜはっ、ぜはっ・・・・・・」  
肩で息をするリア。疲労に耐えかね、膝を落とす。  
デスパイアのいた場所からはもうもうと煙が立ちのぼっている。確実にあてた。  
「こ、これで・・・・・・」  
勝利を確信するリア。煙が晴れたとき、そこには・・・・・・、  
「ふ、ふふふ・・・・・・、ふははははははははははははははははははははは!」  
「う、嘘・・・・・・」  
腹に大穴を空け、それでも直立するデスパイアの姿があった。  
「ふ、ふふ・・・・・・、素晴らしい、素晴らしいよ君は! さぁ、宴の時間だ!」  
いつの間にか街道に広がっていたスライムたちが集まってきている。白い自分の本体を目指して。  
ずずず・・・・・・ずずずずず!  
傷口に飛び込み同化していくデスパイア。傷が埋まったあともなお融合を繰り返し、その白い体を膨張させていく。  
「なに・・・・・・、これ・・・・・・」  
「ふっ、ふははははははは! いいぞ! これでボクは! 最強の存在に昇り詰めた!」  
20メートルもある人の体。至る所から骨がつきだし、それが鎧となる。  
爪、手足、肩胛骨が鏃と同じ鉄色を帯びて、露出した肋骨が腹部を守る。  
テレビの中でしか見ることのできない、怪獣の姿がそこにはあった。  
「君のその魔力・・・・・・、素晴らしいの一言だよ。これからもボクのために使わせてもらおう」  
バクンッ、と肋骨に囲われた胸部が開く。白い肉壁の中に、どくんどくんと波打つ青い心臓が見えた。  
ぎゅるるるる、とその心臓から細い触手が伸び、へたり込んでいるリアを捕らえる。  
「あ、うあ! なにをっ!?」  
ぎゅるんとまるで逆再生したかのように触手が戻り、バクン、その胸部を閉じた。  
その体内に、リアを幽閉して。  
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
 
――デスパイアの体内  
わたしは、鼓動する心臓の中に磔になっていた。  
身体の痺れもぶり返してきて、抵抗も出来ない。  
デスパイアの心臓。スライムと、触手の海。  
粘度の薄いスライムと極細の触手がその部屋を埋め尽くしている。  
ばらばらとわたしの服が崩れ落ちていく。5秒とたたず生まれたままの姿を晒していた。  
足の裏を触手が撫でる。手足の指の間、腋、耳裏。全てに触手がまとわりついた。  
ぞわぞわと駆けめぐる快感。乳首が尖り、あの日々の感覚がよみがえる。  
口に太い触手が侵入してきた。口を閉じることもできずその淫行を許してしまう。  
乳首に吸盤のような触手が張り付き、吸引を始めた。もうでないのに。まだでないのに。  
「――――っ」  
乳首と同じくらいに勃起したクリトリスに、極細の触手が絡みつく。引っ張ったり押し込んだりして、わたしの思考を奪う。  
両乳首とクリトリス、3点を攻められ、快感にもだえてしまう。  
違うのに。あの夏休みは乗り越えたのに。  
「んんっ!?」  
お尻の穴に何本もの触手の存在を感じる。尻たぶを開いて、幾本か細い触手が分け入ってくる。  
「――――っ! んん!」  
入った触手に支えられてお尻の穴が広げられる。そこへ、外で見た触手と同じサイズのものがあてられる。  
ずぐ!  
初めてのアナルセックス。わたしの後ろの純潔は、今奪われた。  
そして、本命。身体の本能が待ちわびる秘裂に同じ触手が挿入される。  
「んんっ! んーーーーー!!」  
入れられた瞬間、絶頂を迎えてしまう。イったばかりのわたしの身体に容赦なく触手はピストンをくわえる。  
びくん、びくんと身体を震わせ、一突きごとに天国を味わう。  
今のわたしは、髪を撫でられただけで達してしまう牝犬だった。  
「んんーーーー!! んっ、――――っ!!」  
3点と3穴、身体中を襲われ、  
「――――――――っ!!!」  
途方もない悦楽に、脳がショートしたように真っ白になった。  
金色の魔力が流れ出ていく。触手が動きを止める。ああそうか、  
 
わたしは一生、ここで囚われるのか。  
 
白い壁と青い海。それがわたしの光景。  
わたしはただの餌。  
 
 
 
なんだか外が、騒がしい気がする。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
白い部屋.end  
 
 

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