彼女は強かった。  
どんな強敵にどんな攻撃をされようと、痛みをはね返すほどに強かった。  
けれど、彼女は知った。  
痛みは、快楽だと。  
彼女は強かった。  
どんな敵にも、くれてやるのは殺意のみであるほど、強かった。  
けれど、彼女は知った。  
奉仕の、悦びを。  
彼女は強かった。  
どんな悲しみも乗り越える決意を抱くほどに。  
けれど、彼女は知った。  
永遠の別れという、最上の悲劇を。  
悪夢の聖夜、それからのお話。  
天使たちの、後日談。  
 
 
『貫殺天使リア』  
21.傷跡  
 
 
――県の大型病院、メグミの部屋  
慌ただしくナースが廊下を歩いていく。発作を起こした患者が出たのだろうか。  
一昨日、SS級超大型デスパイアがあの町に現れた。被害は甚大、女性500人が犯され、男性300人が殺された。  
この辺のデスパイア被害の女性はここに送られるのが通例だが、あまりに数が多すぎて他所にたらい回しにされている患者もいるらしい。  
現れたデスパイアは、人間と受精できるタイプの精子を持っていたため、患者は全て妊娠していたようだ。  
「・・・・・・」  
やめろ。おもいだすな。  
敵は私たちの魔力を奪取した後、巨大化。推定30メートルの巨体となったとか。  
倒したのは、私たち天使ではない。  
黒いデスパイア。天使に恋した、人間の少年。  
正確に言えば、とどめを刺したのはリアちゃんだ。だが、その状況に持って行ったのは少年の力だった。  
黒いデスパイア――、そして、リアちゃんの産んだ、ブルーメの子株。  
彼らがいなければ、今、私たちはここにはいない。  
私たちは、なにもできなかった。敵であるはずのデスパイアに助けられたのだ。  
悔しい。  
「・・・・・・」  
あれから、白いデスパイアが死に、街に静寂が戻ってから、私たちは救助された。  
たぶん、アキラやリアちゃんもこの病院のはずだ。  
アキラは限界ギリギリまで魔力を吸い取られていた。それこそ、命に関わるくらいに。  
リアちゃんは、デスパイアの体内に取り込まれていた。その時間はおよそ1時間。常人なら廃人になっているだろう。  
あとで動けるようになったら、お見舞いに行かなければ。  
『あ、あぁぁっ! だめぇ! 耐えられないよぅ!』  
「!」  
隣室から少女の切ない叫びが聞こえる。また、廊下をばたばた走る音がした。  
『ああぁぁぁ! せーえき! ほしいのぉ! ぐちゅぐちゅつっこんでよぉ!』  
『安定剤! 体を押さえろ!』  
「・・・・・・」  
デスパイアに襲われた者が持つ後遺症、性的刺激の禁断症状。  
それは、人の尊厳を徹底的に、助かった後でさえ踏みにじる悪夢。  
デスパイアから与えられた快楽を、身体はそう簡単に忘れない。  
そう、あのとき、私がされたことも。  
 
「ぁ・・・・・・」  
気づけば、私の手は足のクレバスに向かって伸びていた。既に水気が患者服を湿らしている。  
汚らわしい。  
「う、うう・・・・・・」  
そう思いつつ、手は止まらない。直に触れ、その感覚を楽しむ。  
指を穴に這わすと、待っていたかのようにすんなりと差し込めた。  
ぴちゅ、ぴちゅ・・・・・・  
私のソコから、いやらしい水音がする。口に布団を噛んで、声を漏らさないようにしてみた。  
「ん・・・・・・、んん・・・・・・」  
2本の指をくわえさせて、快楽のツボを探し当てる。3センチほど入れた、上辺り。  
デスパイアにさんざん開発され、快感の出所を知り尽くした身体は否応なくたかぶる。  
ぐちゅぐちゅと愛液を鳴らし、頂を目指す。余った左手は胸を乱暴に揉みしだかせた。  
「ん、んんっ・・・・・・はぁ、はぁ・・・・・・。な、なんで・・・・・・」  
でも、イケない。  
どれほど情熱的に自慰を繰り返しても、昨日からまったく満足できない。  
あのデスパイアに刻まれたオンナの悦び。  
痛みが、足りない。  
「うぅ、うぅぅぅ・・・・・・」  
それでも自慰をやめることができない。あの快感が忘れられない。  
涙を布団に滲ませながら、私は指を動かし続けた。  
 
 
――町の公園  
一昨日のことがあってか、通りは閑散としたものだった。  
きっと、みんな外出を控えているのだろう。当然だ。  
「・・・・・・」  
ここは、あのときの公園。あの夏休みを過ごした場所。  
昨日、病院で処置を受けた後、わたしはこっそりとそこを抜け出していた。認識阻害魔法が役に立ってくれた。  
隠していたフリーダの遺体を見つけ、フリーダを連れていったん家にもどって。  
そして今、彼とともにここに。  
「フリーダ、あなたの産まれた場所だよ」  
メグミさんによってクレーターがつくられた場所も、今は修繕が終わっている。そこをスコップで掘り返す。  
乗り越えたと思っていた。幻想は振り払ったつもりだった。  
けど、いざ我が子を見た瞬間、そんな幻は消え去った。  
ざく、ざく、ざくと土を掘る。涙がひとしずく、土を濡らした。  
「フリーダ、おかあさん、嬉しかったよ。だから、お休み」  
彼の体が入るくらいの穴を掘り終え、フリーダを底に横たえる。  
わたしより大きな体。わたしをヨハンナがわたしを困らせたとき、いつでも助けてくれた。  
わたしの、自慢の子。  
「・・・・・・やだ、別れたくないよぉ・・・・・・」  
冷たく乾いた体にしがみつく。あんなに柔らかかった毛並みは、酷く硬くなっていた。  
元気よく振られていた尻尾も、もう動かない。  
「う、うぁ・・・・・・うあぁぁぁぁぁん、ひぐっ、フリーダ、フリーダぁっ」  
涙が次から次へと流れ落ちる。フリーダ、起きてよ。ねえ起きてよ。  
「うぁぁぁぁぁん、フリーダぁ!」  
涙が枯れて、日が落ちるまで、わたしはフリーダと離れることができなかった。  
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
 
いつの間にか夜になっていた。公園の時計を見ると、もう5時半。  
「病院、かえんなきゃ・・・・・・」  
フリーダに土をかけ、最後のお別れをする。隠れていく姿に、また視界が潤んだ。  
立ち上がって、服を直す。ずいぶんと土埃がついていた。  
「はぁ・・・・・・」  
公園を出ようと振り返る。  
 
デスパイアがいた。  
 
「な――!? あうっ!」  
どんっ、と体当たりをもろに食らう。天使のコスチュームも障壁もない体はいとも簡単に宙を舞った。  
相手は、大した魔力も感じない。男の人ほどのオウムガイ、せいぜいD級だろう。  
「へ、へんし・・・・・・あぁ!」  
取り出した水晶が貝から伸びた触手で打ち払われた。水晶は藪の中へ転がっていってしまう。  
触手。わたしを犯した、触手。  
「く、この・・・・・・むぐぅっ」  
幾本もの触手が伸び、わたしを押し倒す。口に触手が差し込められた。  
「む、むぐぅっ、んんっ・・・・・・」  
ぼっ、と身体が燃え上がる。触手は、あのときの快楽を思い出させた。  
「んん、ん・・・・・・ちゅる、ちゅぱ・・・・・・」  
口の中の触手を舐め始めると、デスパイアはわたしの服を脱がせてきた。  
あ、だめだ。抵抗できない。  
ショーツが破られ、ありのままのソコがデスパイアの眼前に晒される。  
ひんやりとした空気が、ぬめり気を帯びた秘裂を撫でた。  
「ちゅ、ちゅる・・・・・・。ん・・・・・・」  
なされるがまま足を開く。細い触手が扉を開き、恥ずかしい穴が丸見えになる。  
 
ぐちゅ、ずずず・・・・・・  
愛撫は必要なかった。デスパイアの突起がわたしを貫く。びくりと身体を震わせそれを迎え入れた。  
「んっ、んっ、んっ」  
抜き差しのたびに素直な反応を返すわたしに気をよくしたのか、ピストンの動きが速くなる。  
「じゅる、んっ、んんっ、ぷはぁっ、ひゃぁんっ!」  
触手が口から離れたとたん、くぐもっていた喘ぎ声が外へ漏れ出す。それは牝の声だった。  
「あんっ、ちゅっ、んちゅっ、んんっ」  
ぐぱ、と貝の口が開き、わたしの唇と重ねられた。舌と舌が絡まり合い、唾液と唾液が交換される。  
わたしのファーストキス。甘くて、苦くて、酸っぱい。ファーストキスの味。  
「んっ、ちゅ、んん、ああん! あ、あぁっ!」  
デスパイアがラストスパートをかける。わたしの身体は従順に絶頂を駆け上る。  
「んっ、あっ、あぁっ、あぁあ!」  
デスパイアのソレが深く突き入れられ、子宮をこづく。白い稲妻が脳を焼く。  
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」  
「ギ、ギィィィィ!」  
どぷんどぷん! ふたり同時に絶頂を迎え、その精液が子宮に満ちる。  
「ぁ、あぁ・・・・・・」  
余韻に浸る暇なく、行為が再開される。今度はアナルも攻められる。  
空が白み、わたしの魔力を吸い尽くすまで、わたしは触手と愛し合った。  
 
そして、朝日とともにデスパイアは去っていく。  
 
「・・・・・・」  
ぐったりと、白濁にまみれた身体を休ませる。  
快楽に負けた。あの程度のデスパイアに、負けた。  
「あは、あははは・・・・・・」  
涙を一筋頬に伝わせ、笑ってみる。  
ただただ、情けなかった。  
 
 
――1年B組クラス委員長、長谷川喜美の家  
「はい、はい――、津南くんと、柊くん、八乙女さんが、ですね。  
 わかりました。はい――」  
喜美は、衝撃の電話を受け取っていた。  
担任からの電話。一昨日の怪獣事件で、自分のクラスから被害者がでたらしい。  
戦いの場は、生徒のよくいる市街地。他のクラスにも多数被害者がでているとのこと。  
善美はため息をつきながらカレンダーを見上げる。2月のある日に赤丸がしてあった。  
クラス親睦の旅行。秋田の温泉地。  
行けるのかな、と愚痴をこぼしてみる。  
冬休みは、始まったばかり。  
 
 
 
 
傷跡.end  
 
 

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