雪の道を歩き、凧揚げをする親子の傍を通り抜け。  
慣れ親しんだ歩道に足跡をつけていく。あ、ここで誰か転んだな。そんなたわいない言葉を交わしつつ。  
1月5日。  
グローデン家、お雑煮会。  
 
 
『貫殺天使リア』  
23.おもちもちもち☆巫女さんフィーバー!  
 
 
――グローデン家、和室  
「鍋よし。餅よし。野菜・・・・・・、よし」  
必要な物のセッティングは完了した。あとは、お客さんを待つだけだ。  
グローデン家、お雑煮会。  
毎年この日になると開かれる、ただの鍋パーティだ。  
いつもはカレンの家を呼んで催していたが、今年はメグミさんたちを呼ぶことにした。  
メグミさんとアキラさん。日本の東西でお餅の形がちがうという。  
クラスで聞いた男子たちの会話。そこに衝撃の秘密があったのだ。  
――『知ってたかケンジー。関東人と関西人って、出される餅の形が自分とこのじゃないとマジ切れすんだとよー』  
  『お前こそ知ってたか? どんなかわいい娘にも股間に割れ目があるんだぜ?』――  
変な記憶まで出てきた。   
まぁ、そんなわけで。  
ふたりがマジ切れするのは怖いので、わざわざネット通販まで使って角餅丸餅を揃えたのだ。  
ちなみにわたしは、丸餅派。  
別に、そんなことでマジ切れはしないけど・・・・・・。  
あのふたりもマジ切れなんてしないとは思う。思うけど・・・・・・。  
――『メグミー、アタシも車ほしーよー』  
  『トヨタの新車がでてるわね。やっぱり日本車ならトヨタでしょう』  
  『えー、ホンダのがかっけーじゃんー』  
  『・・・・・・は?』――  
あのときのメグミさんの眼はデスパイアに向ける眼だった。県民として当たり前、とかいってたけど・・・・・・。  
やっぱり、地方の差はあるのかもしれない。  
あそこでアキラさんがホンダを推していたら、それこそマジ切れじゃすまなかった気がする。  
 
ぴんぽーん  
 
「あ、来た。どうかマジ切れしませんように・・・・・・」  
マジ切れってここまで何回使ったのかな・・・・・・。  
 
 
――町の神社、境内  
今年で中学生になった明日香は、境内を竹箒で掃除していた。  
巫女服、赤袴。この神社の娘であった。  
神主のおじいちゃんに頼まれての、巫女のバイト。一日500円。  
お参り期間も過ぎて、今は人の気配はない。  
それ以前に、隣町の大きな神社に客はとられているのだが。  
「ふふんふんふふん♪ ふふんふんふふん♪」  
けれど、明日香はこのうら寂れた風景がことに好きであった。  
未来から送られてきたロボットの映画のBGMを口ずさみながら、掃除を続ける。  
「ちゃらりー♪ ふふんふんふふん♪」  
雪をあらかた片づけ、本殿の階段に腰掛ける。戯れに鈴を鳴らし、ひとりクスリと笑ってみる。  
「今日のお昼はなににしよっかなー・・・・・・。そうだ、お餅がまだあるから、片づけないと」  
両親は音楽ライブ(デスメタル)に出かけていない。祖父母は町内会のゲートボール大会だ。  
今日の明日香はひとりだった。  
ぱたぱたと社務所に駆けていく明日香。昼食は雑煮にする気のようだ。  
その雑煮が、なにを巻き起こすかも知らずに。  
 
 
――グローデン家、和室  
目の前の光景に言葉を失う。  
隣にいるメグミも、唖然とした顔でそれを見ていた。  
リアちゃん。の、用意していた餅。  
の、数。丸角あわせて100個ほど。  
食えるか。ひとり頭30個って、そりゃねーよ。  
「ど、どうしたんですか? なんでぽかんてしてるんですか?」  
「い、いやさ・・・・・・、この量は、ちーっとおかしいんじゃないかなー、と・・・・・・」  
なんでいそいそと皿を分けてんのこの娘。かいがいしいなあ。  
「え、だって・・・・・・20個は食べますよね? それを見越してたくさん買ったんですが・・・・・・」  
「普通はそんなに食べないわよ・・・・・・」  
メグミさんも呆れてらっしゃる。てかリアちゃん。なぜそんなに驚く。  
「食べないんですか? おかしいな、ウチじゃそれくらい普通なのに・・・・・・」  
「「どんだけー」」  
ハモってみた。懐かし芸人ショー、正月番組のくせに役立つじゃねぇか。  
「お父さんは30個食べますよ? カレンだって、26個はいきましたし・・・・・・」  
「いやそんなバカな。つか、リアちゃんの体にそんなたくさんはいるわけねーだろ」  
これまたきょとん顔。いちいち可愛いなあ。カレンちゃんがエッチなことから遠ざけてたのもうなずける純真さ。  
・・・・・・あれって、情報操作だよな。吹き込まれた嘘を直してったら、1時間かかったぞ。  
しかもまぁ、すごい信頼度だった。この年頃だと、自分で調べたくなるもんじゃねーか?  
ブラもショーツも、カレンちゃんが選んでたみたいだし・・・・・・。イチゴ柄とかクマさんのバックプリントとか。  
どんだけー。  
「さ、さ。はやく煮ましょう。お腹空いちゃいましたよ」  
「え、ええ・・・・・・。入れすぎじゃない!? なんでいきなりたくさん入れるの!?」  
6皿に分けられた餅の山からそれぞれ3個ずつ投入されていく。おい、水かさ一気に増えたぞ。  
「焼いたのとか生のとか、それぞれ美味しくなる煮込み時間が違うんですよ。  
 全部美味しくしますよ? わたしに任せてください!」  
ない胸を張るリアちゃん。なんでそんなに餅に誇りを懸けてるのか。  
・・・・・・最低でもここに入った餅は食べなきゃだめだよなぁ。6個・・・・・・。  
ちら、と餅皿を見る。  
悠然とそびえ立つ、餅の山が鎮座しておられた。  
 
 
――社務所  
「ふー、おなかいっぱい」  
雑煮をふたつ食べ終え、腹をさすりながら明日香は転がる。  
社務所の和室。ほどよい満腹感で幸福の時間だ。  
巫女服が折れるのにもかまわず、明日香はごろごろと怠惰を楽しむ。  
「あ、そうだ・・・・・・。餅神様にお供えしなくちゃ・・・・・・」  
餅神様。この神社に伝わる土着信仰。  
簡単にいえば、毎年の米の豊作の祈願先として生まれた土地神だ。  
主に、米の豊作と安産子宝を司る。  
この神社が寂れるわけだ。  
「お餅は・・・・・・、ひとつでいいよね」  
丸餅をひとつ焼き、お供え用のお盆にのせて外へ出る。拝殿を通り、本殿へ参る。  
「小さいとこなのに、なんでこんなしっかりした作りなんだろ・・・・・・」  
それは、この町が江戸以前の時代、深刻な凶作に見舞われたときの話。  
この餅神様に餅と生娘を捧げたところ、餅米がよく獲れたため感謝の心から改築がなされたのである。  
「説明ごくろー様・・・・・・」  
どうも。  
埃ひとつない板の間を歩み、神体にたどり着く。扉を開け、中の古い餅を取り出す。  
「ええと、新しいお餅はこうやって・・・・・・」  
いつも見ている祖父や父の行動をまね、作法を完了していく。  
盆を三度回し、本来鏡のある位置へ差し入れる。一歩分離れ、三つ指をつき、  
「どうぞ、お召し上がりになって下さい」  
とお頼みする。  
にゅ、と神体から白いとりもちが出て、お供えの餅を食べ始めた。  
むしゃむしゃと。  
「・・・・・・へ?」  
口を開けてその珍妙な光景を見つめる。餅が餅を食べる姿はシュールさにあふれていた。  
「え? 餅?なんで? ・・・・・・餅神様?」  
理解の追いつかない様子の明日香。それでもこの神社の娘、最後には正解にたどり着く。  
「いかにも・・・・・・。ワシが餅神じゃ」  
くちゃくちゃと下品な咀嚼音をたてながら、餅が答える。餅なのに咀嚼するものなのか。  
「も、餅神様・・・・・・。ホントにいたんだ・・・・・・」  
当惑しながらも、その現状を受け止める明日香。柔らかい頭の持ち主であった。  
「餅だけに?」  
「・・・・・・?」  
「あ、何でもありません」  
慌てて体裁を取り繕う。さっきのアレは特別なのです。  
「さて娘・・・・・・。生娘がひとりで詣でに来たということは、その身体を捧げに来たのじゃな?  
 まだ収穫の時期ではないように思えるが・・・・・・。それとも、お役目の引き継ぎか?」  
「お役目って・・・・・・なんですか?」  
不思議そうに首を傾げる。下でくくった長いポニーがつられて揺れる。  
「聞いておらんのか? この神社の伝説に残っておるはずじゃが・・・・・・」  
唇に指を当て、餅神様の伝説を思い出そうとする明日香。ポンと手を叩く。思い当たったようだ。  
「もしかして、生娘を捧げるってやつですか? 捧げるって、そのぉ・・・・・・」  
「処女をワシに捧げるということじゃ」  
 
身も蓋もない答えに苦笑いする巫女。何となく予想していただけに、衝撃は重くなかった。  
「そういえば去年くらいに聞かされてました・・・・・・。大丈夫です、神社の巫女として覚悟はできています」  
「よくできた娘じゃ。ほれ、近う寄れ」  
もう一度三つ指をついて礼をし、餅に近づく。頬には赤みが差していた。  
「ふむ・・・・・・。抵抗はあまりないようじゃな?」  
「いやぁ、それほどでも・・・・・・」  
夢にまで見た光景が眼前に広がっている。このシチュエーションを嫌がるはずもなかった。  
明日香の夢。  
人外に、優しく犯されること。  
小学生の時河原で拾ったエッチな本、そこで繰り広げられていた行為。  
化け物に犯され、笑顔で腰を振る少女。それら特殊性癖の詰まった成人本であった。  
それを持ち帰り、家人に隠れて読みふける。性に不慣れな少女にとって、その本は特殊な性癖を植え付けるに充分だった。  
毎晩人外と交わる妄想にふけった。自慰行為のネタに人間を使ったことなど一度もない。  
そして今、人外が目の前にいる。  
「んっ・・・・・・、餅神様・・・・・・、優しくしてくださいね・・・・・・」  
「もちろんじゃ。ほれ、仰向けに寝てみなさい」  
赤袴を揺らし、床に寝そべる。足は自主的に開いた。  
「なんじゃ。もう濡らしているのか」  
「あ・・・・・・」  
袴の赤に、黒い染みがわずかにできている。袴の下にはなにも穿かないのが明日香のお気に入りだった。  
「こんな格好をして・・・・・・。寒いじゃろう、暖めてやろうかの」  
「んっ・・・・・・熱い・・・・・・」  
袴をくぐり足に絡みつくとりもち。人肌より熱いソレに、身を震わせた。  
もち肌の太股を撫で、無毛の秘裂にたどり着く。しっとりと潤んだソコはひくひくと侵入者を求めていた。  
「どれ・・・・・・」  
べとべととでんぷん質を残して少女の性器に張り付く。端から見れば、袴の股部分のみが盛り上がった不思議な状態だ。  
日々の行為で開けやすくなっていた女穴に、餅がねじりこむ。水気で表面が溶け、粘つきを増やす。  
「ん・・・・・・入ってる・・・・・・」  
ずぷずぷとゆっくりと挿入されていく餅。痛みがないように、優しく。  
じっくりと壁をほぐしながら、餅の先端が壁にあたる。純潔の証だった。  
「わかるかの? いま、君の処女膜にあたってるぞい?」  
「は、はい・・・・・・」  
明日香が頷くと、餅神は動きを再開する。少しの圧迫感を感じた後、明日香は鈍い痛みを知った。  
「――――っ」  
「おおすまん。痛かったかの? 馴染むまで待っててやろう」  
「すいません・・・・・・」  
ふぅふぅと息を整える。自分でソコを見ることはできないが、血が出ていることはわかった。  
「ふむ。やはり破瓜の味は格別なり。そろそろよいかの?」  
「はい・・・・・・。どうぞ、動いてください・・・・・・」  
ぐねぐねと中を進行する餅。朱の差した肌が汗を滲ませる。  
「ここが、子宮口じゃ。どれ、イカせてやるかの」  
「え・・・・・・。んんっ!? ひゃっ、はげしっ・・・・・・!」  
 
膣壁を擦る。餅が捻れ伸び、少女の中を席巻する。  
「ひゃっ、はうっ、あぁんっ!」  
口元からははしたなく涎を垂らし、裾を掴んで快感にもだえる。明日香の視界にはなにも映っていない。  
「あぁんっ、あ、あぁっ!」  
腰を浮かせ、ふるふると震える。毎晩味わうそれより大きな波を予感した。  
「ほぅ、れ!」  
「きゃっ!? あ、あぁぁぁぁぁっっ」  
Gスポットとポルチオを攻められて、明日香は果てる。今までにないほどの絶頂だった。  
「あ、あぅ・・・・・・? なんかあったかい・・・・・・」  
ぼんやりとした熱が彼女の身体を包む。明日香は知らないこれは、魔力障壁。  
「ワシから君への“ぷれぜんと”じゃ。君を守ってくれるぞい」  
「はぁ、はぁ・・・・・・。へ・・・・・・? あ、ありがとうございます・・・・・・?」  
荒い息を整えつつ、なにがなんだかわからないままとりあえず礼を述べる明日香。  
「ふむ。なかなかよかったぞい。今年は豊作じゃ。風邪を引かんよう気をつけなさい」  
ずるずると袴から抜け出ていく餅神様。白い身体に、転々と明日香の処女血が滲んでいた。  
神殿に入り、ぱたんと扉を閉める。  
そして、静寂。  
「・・・・・・」  
ゆるゆると立ち上がり、礼をしてからまだ火照る身体を動かし出口を目指す。  
と、そこへ。  
『また、おいで』  
餅神様の優しい声が聞こえた。明日香は振り返り、笑顔で答える。  
「はい、喜んで!」  
 
 
――町の神社  
お雑煮会の後、さんにんでお参りに来た。  
なぜかメグミさんとアキラさんはぐったりしている。お餅も5つしか食べなかったし、具合が悪いのかな?  
鳥居をくぐって、参道に。シーサー・・・・・・じゃなくて狛犬さんにこんにちは。  
「ほぁー・・・・・・。きれいなとこだなー・・・・・・」  
「でしょう? この神社、雪が降るとすごいんですよ」  
整然とした空気の中、雪が光を反射して時を凍らせる。  
神様がいる場所、とはるーあちゃんの言葉。  
なにげに詩人。  
「んー、ご縁がありますよーに・・・・・・」  
ちゃりんと音を立て、5円玉が賽銭箱に吸い込まれていく。そういえばここの神様ってなにを叶えてくれるんだろう。  
二礼二拍手、一礼。じゃらんじゃらん、鈴を鳴らす。  
願い事は、カレンが見つかりますように。  
眼を閉じて祈っていると、瞼のうらに光るお餅のビジョンが浮かんで、すぐ消えた。なに今の。  
「ふぅ・・・・・・。さて、神社といったらおみくじだろ。大吉引くぜー」  
「風情を持ちなさい、風情を」  
白い息を吐いて、メグミさんが窘める。このふたりはなにを願ったんだろう。  
「・・・・・・あの、参拝の方ですよね?」  
後ろから声をかけられた。振り向くと、中学生くらいの巫女さんがいた。  
あどけない顔立ち、長い髪をお下げにしてる。  
ザ・巫女さん。  
「これ、食べませんか? 作り過ぎちゃって・・・・・・」  
すっと差し出された手には、タッパーに入ったきなこ餅。  
金色の粉にまみれ、白い肌が輝いていた。  
「いいんですか? もらいます!」  
「あ、アタシはパス・・・・・・」  
「私も・・・・・・。うぷっ」  
「め、メグミぃ! だいじょーぶかっ!?」  
お餅から目をそらすメグミさん。本格的に風邪だろうか。もったいないなぁ、こんなに美味しそうなのに。  
「ふふ〜ん♪」  
口に含むと、きなこ独特の甘みが口いっぱいに広がる。あぁ、幸せ・・・・・・。  
「リアちゃん、よく食えるな・・・・・・」  
「へ?」  
なんでそんなに呆れた顔してるんだろう。家では10個しか食べてないのに。  
「・・・・・・あの、なんていうか、その」  
巫女さんが、たどたどしく言葉を選ぶ。なんだろう。  
「がんばって、下さい。なにかはわからないけど、私はありがとうって思ってます」  
それは、わたしに向けた言葉ではなく。  
わたしたち、への言葉だった。  
にっこりとはにかんで、こちらを見つめる巫女さん。  
なぜかはわからないけど、さんにんの声が揃った。  
「「「まかせて!」」」  
なんだろう。なんだろう。  
なんだかとっても、うれしい気分。  
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
 
一日ぶりの参拝客を見送る明日香。少女は、あの3人になにかを感じて声をかけたのだった。  
それは、餅神様と似て、餅神様とは違う、  
優しくて強い、なにか。  
ほっこりと胸に暖かさをもって、明日香は掃除を始める。  
「晩ご飯はなににしようかな・・・・・・」  
そうだ。  
「うん、お雑煮にしよう」  
 
 
 
 
おもちもちもち☆巫女さんフィーバー!.end  
 
 
 

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