『貫殺天使リア』
26.焦がれた姿
――翌日、秋田の渓谷
「ほあー、すげー」
「水がきれいだよぉ〜」
「のんじゃだめよー」
班別自主行動。東北の耶馬渓と称される大自然、らしい。
耶麻渓ってどこ。
で、その渓谷にかかる吊り橋にわたしたちは立っている。絶景かな絶景かな。
「んー、空気が澄んでるねー」
「マイナスイオン漂ってるよ〜」
「ほら、写真とったら行かないと。後ろ詰まっちゃうわよ」
後ろと言っても全然いないわけだけど。あ、魚発見!
「カナエ、るーあ! 見て、キツネ!」
「ホントだ、かわい〜」
「か、かわいい・・・・・・」
ビバ大自然。ビバ秋田!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――夜6時、キャンプ場
帰ってから、ご飯の用意。
飯ごう炊爨だ。
昨日はカレーだった(みんながわたしたちの分まで作ってくれていた)けど、今日はなにを作るんだろう?
『今日のごはんはきりたんぽ鍋だぞー。みんな材料とったら作り始めろー』
まじか。
「じゃあわたし、お米研いでるねー」
「じゃあ私水沸かす〜」
「え、私が鍋担当?」
許せるーあ、わからんものには手を出したくない。
・・・・・・カナエ、仕事しろ。
「先生必要かー?」
「必要です、手伝ってください安藤先生」
なんと。先生を味方につけるとは。
先生の分も逢わせて、4人分のお米を研ぐ。手はクマさんのかたち。
しゃかしゃか。
NHK見て覚えたんだよなー・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
完成。
「「「いただきます」」」
先生あわせ。4人で手を合わせる。湯気がもくもく上がっている。
我ながら、おいしそう。
「おぉ! きりたんぽもちもち!」
「カナエー、いっこくらいちょーだいよー」
「あげないよ〜! あっうそ! いっこあげる!」
ほんとだ、もちもち。うまー。
「ああそうだ、グローデン。お前の制服、乾いたってさ。後で本館に取りに行ってこいな」
「あ、はい」
昨日のおもらし事件(違うのに・・・・・・)で、わたしのスカートとショーツは濡れてしまっていたのだ。
それを、旅館の人のご厚意で洗ってもらっていた。
クマさんバックプリント。なぜか女将さんに暖かい目で見られた。
・・・・・・あれ、お気に入りなんだけど。
「そうだ、先生がとっておきの怖い話をしてやろう」
「え〜、いいよぉ。ね、るーあちゃん!」
「私は聞きたいかな・・・・・・」
「あれ!? リ、リアちゃんは!?」
「ごめんカナエ、わたしも聞きたい」
というか、なにもしなかった罰だ。へへん。
「よぉーし、先生張り切っちゃうぞー。じつはな、この旅館での話なんだが・・・・・・」
なんでいきいきしてんだ。だからまだお嫁にいけないんじゃ・・・・・・。
「なんと、この旅館のトイレには、お化けがいるって話なんだ!」
「ひぇ〜っ」
・・・・・・まさか。
「その幽霊は、江戸時代から住み着いていてなー。青白い顔をした女なんだとか」
倒した! 昨日倒したよ!
「そのむかし、ここで殺された女の怨霊なんだとか・・・・・・」
そんな高尚なものじゃなかった気が・・・・・・。
――潰れかけた民家
「服は・・・・・・、これでいいですよね」
「ああ。かわいいぞ。さすが俺のペットだな」
「へへ、そんな・・・・・・」
主の言葉に照れた笑みを返す少女。天使、カレン。
彼女は今、普通の服装をして立っていた。
この土地で襲った同年代の少女のものを借りたかたちだ。
「じゃあ、20人分ですね。適当なところからもらってきます」
「おう、みつかんないようにな。適当に場所をバラして盗ってこいよ」
「はいっ、ご主人様!」
行ってきます、と声をかけて民家を出て行く。何頭かのウルフを連れ、山を下る。
「あのじょーちゃん、もうホントにボスのペットですねえ」
「だな。メシ盗ってこいって言ったら、喜んで行きやがった」
少女は町へ繰り出す。
赤い首輪をつけたまま。
――旅館の本館、露天風呂
「びばのんの!」
露天風呂! はじめて!
昨日は慌てて入れなかったけど、今日はゆっくりつかろうと思う。
露天風呂かあ。やっぱりお猿さんが入ってたりするのかなあ。
がららー、とドアを開け、いざ外へ。
「・・・・・・寒!」
「さむいよぉ!」
「あたりまえでしょ・・・・・・」
風もないのに肌が痛い! やばいってやばいって!
「は、はやく湯船に・・・・・・あいたっ」
すてーん! こんなとこで走ったからか、転んでしまった・・・・・・。TOラブる?
「・・・・・・リアちゃん、まだ生えてなかったんだね・・・・・・」
「う、うるへー!」
なんでまじまじと見てるんだこの娘は。そうですよ、生える予感すらありませんよ。
「まったく、お風呂は静かに入りなさいよ・・・・・・」
「めんぼくねー・・・・・・」
「ごめんね〜」
ちゃぷ、とお湯にはいる。タオルは入れてはいけません。
「あったか・・・・・・」
「あったかあったか♪」
おお、外と中でこうも違うとは・・・・・・。
「へへ、るーあちゃん、髪の毛凍ってる〜」
「なによ、あんた達も凍ってるわよ」
あ、ホントだ。すげー。
『千崎さんたちー、いっしょにはいろー』
『うわさむぅ!』
『ちょべりばっ!』
『古ー』
C組の人たちも外にやってきた。温泉班女子、全員集合。
「リ、リアちゃん。渡辺さんって・・・・・・」
「うお、すげー・・・・・・」
「んー? どーかしたー?」
渡辺さん。のんびりした話し方の女の子。
の、胸がでかい。メグミさん越え。
とりあえず、頭を下げてみた。
「ど、どーしたのー?」
「おっぱいください」
「えー? むりだよー」
きゃっきゃと笑う渡辺さん。けっこう本気なんだけど。
「なになに、フィリアちゃんって胸ちっちゃいのコンプレックスぅ?」
「うっ。そ、そんなこたねーですよ」
ギャル風味の遠藤さん。あくまでギャルファッションらしい。この人もむねでっけー。
「胸をでっかくするには、他人に揉んでもらうのがいちばんらしいよ? 試してみる?」
「へ、へ?」
むんず、と後ろから遠藤さんの手のひらがわたしの胸に添えられる。添えられるってか、鷲づかみ。
「鷲づかむほどないってー」
なんだと。
「どーれどーれ、おねーさんがおっぱいおっきくしてやろー」
「ちょ、ちょっとやめ、んひゃ!?」
外側から波打つように揉み込まれてく。え、なんかきもちいい。
「ふふーん、かーわいっ。あてちゃうぞー」
むぎゅ、と背中に柔らかい感触。これがDカップおっぱい・・・・・・!
「ちょ、ちょっと遠藤さん・・・・・・、んっ」
「おとなしくしててって。今いーとこなんだから」
密着して揉み続ける遠藤さん。鼻息荒いよ!
「み、みんなも見てないで助けてよ!」
「あ、ハルカってそっちのケがあるから気をつけてねー」
「今言うこっちゃねー!」
るーあとカナエはそれぞれC組のひとと歓談してるし、救いになるのは目の前の滝さんだけなのに・・・・・・!
「んひゃっ!?」
「んー♪」
ぎゅっと密着度合があがって、左手がわたしの両手を絡め取る。乳房だけを触っていた右手が、乳首をなでてきた。
「たってんじゃん。期待しちゃってる?」
「にゃ、にゃにを!」
どう考えても生理反応! ああ待って、るーあカナエ! なんで大浴場にもどってっちゃうの!?
『リア、のぼせないうちに帰ってきなさいよー』
「ちょ、ちょっとー!?」
がらがらぴしゃん。なんて薄情な友人達・・・・・・!
「滝ー、邪魔者もいなくなったし、そろそろ本番いこーぜー」
「まったく、気が早いんだから。フィリアちゃん、失礼するね」
なんで滝さんも寄ってくるの!? その猛禽類みたいな目をやめて!
「お腹すべすべー」
「足もきれいねー」
「んひゃっ、ちょっと、くすぐったいよふたりとも・・・・・・!」
両手を押さえられたままあちこちまさぐられる。胸から離れてくれたのはありがたいけど、状況が悪化しとる!
「じゃー私はおっぱいもみもみにもどるわー」
「それじゃ太もも触ってるねー」
ふたりの手がそれぞれひとつの場所を触り始めた。滝さんは足、遠藤さんは胸。
「ん、ん・・・・・・っ」
遠藤さんの手のひらによっておっぱいが外から真ん中へと向かって揉み込まれていく。
時折乳首にソフトタッチをして、わたしの期待感をあおる。
「んひゃっ、あぅ・・・・・・」
いつの間にか太ももからお尻に移動していた滝さんの手が、ゆっくりと肌を撫でる。
ぴちょ、と首筋を舐められて、身体に電流が走った。
「んー、感じてるねえ。こーゆーの、意外と好き?」
「ち、ちがっ」
「違うとは言わせないぞー」
「ひゃう!」
滝さんの指がわたしのソコに這ってきた。スジをそろりそろりとなぞってくる。
「んん? なんか変な感触するよー? ぬるぬるしてるねー?」
「そ、それは・・・・・・、あぅっ」
「言い訳しなーい」
ぴんっとわたしの隠されたクリトリスを弾く。嫌が応にも身体は反応して、快楽を受ける。
「もう手ぇ放していいかな? おっぱい両方育ててあげるよ、おもらしちゃん♪」
「んひゃっ、あぅぅ・・・・・・」
両胸をこねくり回され、身体から抵抗する力が奪われる。割れ目をなぞっていた指が、ソコを割り広げた。
「一本はいりまーす」
「あっ・・・・・・」
指が入ってきた。くにくにと中で蠢いて、わたしを翻弄する。
ず、ずと出し入れをしたり、かと思えば入り口の上辺りにぐりぐりと押しつけたり。
乳首をつまんだり、首筋に舌を這わせたり。
「ふぁっ、だめ、あぁっ」
無言でわたしを攻めるふたり。わたしはそれに身を任せて。
「あっ、あぁっ・・・・・・」
「ふふ、つらそーだね。滝、そろそろイかせてあげよーぜ」
「へ? あっ、だめっ、んっ、んんっ」
ピストンが激しくなる。滝さんの唇がわたしの唇と合わさり、声を殺す。
クリを摘まれ、乳首を潰され、
「んっ、んん〜〜〜〜っ」
わたしの頭に、星が舞った。
「ぷはっ、はぁ、はぁ・・・・・・」
「ぐったりしちゃって、かーわいっ♪ ん? あれ、またお漏らししちゃった?」
「あぁ・・・・・・言わないでぇ・・・・・・」
わたしのソコから尿が出て行く。脱力した身体は、それを止められない。
「これで終わり、じゃあないよん♪ めちゃくちゃにしてあげる♪」
「のぼせるまでイカしてあげるよ」
わたしの中に入った指が、また動き始めて・・・・・・、
「いえ、もう終わりよ。あんたらの人生もね」
上からるーあの声がした。
「「へ?」」
頭上には、鬼のようなるーあの顔。わたしを見て、菩薩顔になって一言。
「ちょっと待っててね、リア。このバカふたりをとっちめるから」
「う、うん・・・・・・わ!?」
わたしを放してばしゃばしゃと逃げ始める滝さん遠藤さん。その背中にるーあは手を向け、
「破ぁ!」
と覇王色の覇気を放った。ばたりと倒れるふたり。
「まったく・・・・・・。じゃれついてるだけだと思ったのに。ごめんねリア。さ、上がりましょ」
「う、うん・・・・・・」
寺生まれってすごい。そう思った。
――湯気の立ちこめる、人通りのある道
天使カレンは、街道を散策していた。
既に食料は人数分確保して下級ウルフに運ばせている。
“浴衣を買ってきて、それを着たカレンを抱きたい”という主の願いを叶えるため、かわいい浴衣を探しているのだ。
行き交う人々の目がその首に巻かれた首輪に向かう。その奇異の目にむしろ誇らしげに見せつける。
雑踏の中、懐かしい香りとすれ違った。
振り返ると――
――温泉街
自由行動、つまりはおみやげタイム。
旅館近くのおみやげ店ストリートを自由に班行動なのだ。
足湯があったりよくわかんない怪しげな提灯が売ってたり、雰囲気だけでも楽しい。
「あー! カエルさん! あそこ入る!」
カナエのテンション上がりっぱなし。また変な店に入っていった。
「むは! #$%&’+@!」
るーあも聞き取れない単語を発して別の店に入っていく。何あのお店、みりたりぃしょっぷ?
「離れちゃだめなんじゃ・・・・・・」
とりあえず、カナエの方に行こう。なんかひとりにするのは危ない。
雑踏の中、懐かしい姿とすれ違った。
振り返ると――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――新幹線、車内
流れていく景色。たった2泊だったけれど、とても楽しかった。
目の前にはるーあとカナエが仲良く寝ている。やっぱり疲れたのかな。
出発の時はあんなにうるさかった車内も、今はとても静かだ。
あと1時間くらいで、新潟駅に着くはず。
田園風景を流して、あの場所から離れていく。
カレンのいる、あの場所から。
――あのとき
振り返ると、カレンがいた。気が、した。
「カレン! カレン!」
いや、ぜったいにいた。はっきりとこの目で見た。
「カレン! どこ!? カレン!」
人混みをかき分け、その姿を探す。夢にまで見た姿を。泣くほど欲した姿を。
「カレン! カレン!」
「リア!? どうしたの、ちょっと落ち着いて!」
声を聞きつけてきたるーあに腕を掴まれる。そんな、そんな場合じゃないのに。
「カレンが、カレンがいたの! ここに、今ここに!」
「カレンが・・・・・・? とりあえず落ち着いて。少し静かにしててね?」
そう言うと電話をかけ始めるるーあ。相手は、先生だった。
『もしもし、どうした?』
「千崎です。タヌキの看板のお店に、すぐ来て頂けませんか?」
そうして、先生を呼んで。
事情を話して、警察まで呼んで。
全部終わった後、
「グローデン、気持ちはわかるけど、明日はもう帰ろう。ここは警察に任せよう。
私たちみたいな土地勘がない人が探し回ったって、絶対見つからないぞ」
といわれた。
言いたいことは、たくさんあったけれど。
頷いて、返した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家について、荷物をほどく。
そしてまた、新しい荷物を詰め込む。
この時間なら、まだ銀行は開いてるよね。お金、下ろしてこないと。
新幹線のチケット、すぐにとれるかな? ネット使わないと・・・・・・。
まっててカレン。
すぐ、行くよ。
焦がれた姿.end