「私」の名前は豊崎恵。「私」は天使。「私」は人間。「私」は女性。
「私」の好きなものは、きれいな花、明るい太陽、静かな音楽。
「私」の好きな人は、アキラに、リアちゃん、お父さんとお母さん、店長や友達のみんな。
「私」はデスパイアと戦う。「私」は知らない誰かを助けるために戦う。それが天使。それが「私」。
私は「私」、「私」は私。
『私』の名前はトヨサキメグミ?『私』は、
『貫殺天使リア』
28幸.「私」はなに?
――秋田県、山中
町を出た、次の夜。
私はリアちゃんのいるであろう廃屋を発見した。
見た目はほとんど外国人、しかもたったひとりでガイドもつけず山へ登っていった少女。
そんな目立つ要素満載のリアちゃんが、どの山へ行ったのかなど容易に調べ上げることができた。
その上、ただの偶然だが、比較的新しいデスパイアの死体と大きな獣の足跡も発見することもできた。
足跡をたどり、着いたのがここ。潰れかかった廃屋。
どうやら大きな家だったらしい。周囲を囲う防風林が好き放題に伸びてその全容を隠している。
一応家の周りをぐるっと一周してみたところ、見張りの類はいないようだ。あるいは、今現在は狩りに出かけているのか。
チャンス、だ。
見張りがいないのだとしたら意表を突く作戦は有効、狩り中なら戦う必要さえないかもしれない。
しかし、しかし。
中にいるのはリアちゃん、ヒュプノスウルフ、そしてカレンちゃん。
あのムカデ型デスパイアを倒したのは、誰だ?
死体に残った残留魔力、そこには毒魔法の残り香があった。
毒魔法――高等魔法。雷や炎のような属性魔法、私のような固有魔法、その中のひとつ。
ふつうは、デスパイアしか使わない、使えないような魔法だ。人間が習得したという話は聞いたことがない。
なぜ人間、天使が習得できないか。それは、その気質と性質にある。
基本的に天使が習得できる高等魔法は、『プラスイメージ』なものに限られる。
炎は『明るい』し、水は『清廉』。私の多重障壁は『人を守る』。全てプラスイメージだ。
対してデスパイアの高等魔法は、『マイナスイメージ』。
催眠術、幻術は『惑わせる』、武器の具現化は『人を傷つける』。
これらは天使は希望と光を、デスパイアは絶望と闇を糧とするところから来ている。
そして毒も、『人を苦しめる』。マイナスイメージだ。
故に、人には使うことができないはず。
だが、現に毒魔法の痕跡がある。
しかし、ウルフは群れに不和をもたらす異種族のデスパイアはなるべく排除する傾向がある。
おそらく他のデスパイアはいないだろう。いないはずだ。
そうなると、帳尻が合わない。
誰だ? 誰が、毒を使った?
「・・・・・・」
いい。突入しよう。
ここで考えていても埒があかないし、この好条件が変わってしまうのは惜しい。
少々拙速かもしれないが、今もリアちゃんは魔力を奪われているだろう。時間をかければ敵も強くなってしまう。
「障壁展開、4。大障壁、範囲20メートル」
いつものように自分のまわりに障壁を張る。今回はそれに加えて半径20メートルを囲う壁も配置した。
これで、逃げられない。
「リアちゃん、今行くわ」
突入――!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――潰れかかった民家、居間
突入、ウルフの下っ端を倒してすぐ。
目的の内のひとりと会うことができた。
漆の髪、二刀小太刀。白を基調としたセーラーのコスチューム。
カレンちゃん、西園可憐。
デスパイアに囚われた少女。
その娘が今、ウルフたちといっしょに私に刃を向けている。
「――『君の影草』!」
「っ!」
交差された剣戟は全て障壁に阻まれる。同じ刀でも、攻撃力はアキラに及ばないみたいだ。
だが、そんなことは問題にならない。問題は――、
「もういっかい、『君の影草』!」
「なぜ――、なんであなたが!?」
カレンちゃんが、毒魔法を使っていること。その小太刀から漂う魔力は明らかに闇よりの魔法だ。
そして彼女の顔、表情。あれは、あの白いデスパイアと同じ笑み。
きもち、わるい。
「っと! ああもう、うざったいなぁ!」
カレンちゃんが距離をとる。同時に私を囲っていたウルフたちも飛び退いたところを見ると、カレンちゃんの方が序列は上らしい。
「・・・・・・カレンちゃん、よね? リアちゃんはどこ?」
「んー? なんでリアちゃんのこと知ってるの? リアちゃんは今、ご主人様といっしょだよ」
あっけらかんと答える彼女。ご主人様とは、群れのボスのことか。
「私は、あなた達を助けに来たの。・・・・・・といっても、今のあなたじゃわからないわよね」
「・・・・・・なにいってるか、本当にわかんないんだけど。もしかしてバカにしてる?」
憮然とした面持ちで、また両刀を構える彼女。狼とともに、斬り掛かってくる。
が、私の障壁は全ての攻撃をはね返す。
「無駄よ。見たところその魔法は攻撃後の追加効果を与えるだけみたいだし・・・・・・。あなたじゃ私には勝てないわ」
「・・・・・・っ」
どんなに毒が強力でも、あたらなければどうということはない。アキラのような武器の強化でないことは私に対しては大きな欠点だ。
もう少し戦って、リアちゃんの居場所を詳しく知っておきたい。妙に余裕ぶっているから、煽れば答えるかもしれない。
と、思っていた矢先。カレンちゃんの動きが突然止まる。
「・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・魔力を、集中」
ふっと、悪寒。
クロスされた剣が障壁を揺らす。傷はない。
ない、と思ったが。
「・・・・・・!?」
じゅるり、と剣の軌跡から障壁が溶けていく。腐食していく。毒々しい血色に。
「――『手折りの赤花』!」
破けた障壁をくぐり、カレンちゃんが第3層を斬りつける。先ほどと同じく壁は腐り始める。
はじめに斬られた障壁が形を維持できなくなり自壊した。ウルフたちがより私に近づいてくる。
「――――っ! 障壁射出、2!」
残った障壁の外側を射出する。平面が近寄る敵たちをはじき飛ばした。
しまった、ミスだ。大障壁の維持に魔力がかかりすぎて、新たな障壁が作れない!
来た道を戻ろうと走り出す。しかし、カレンちゃんが起きあがって追撃をしてきた。
「『手折りの赤花』!」
「っ!」
残った最後の障壁まで腐っていく。まずい、残る障壁は身体を包む脆弱なものだけだ。
「障壁反転、1!」
「きゃあ!?」
形状が安定している間に攻撃をする。ガラスのように砕けた障壁がカレンちゃんを襲う。
彼女がひるんだ間に外へ飛び出す。大障壁を解除して、森の中へ逃げ出す。
「『あふよう』!」
「ぁく!?」
背後から投擲された刀が肩をかすめた。ぴりぴりとした痛みが走る。
「大障壁、範囲10メートル!」
もう一度民家を隔離した。これでカレンちゃんとデスパイアたちは出てくることができない。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
息を切らし、走る。
逃げる。
無様に、背を向けて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――山のどこか
大障壁を維持できないほど遠くに逃げて、私はやっと腰を下ろした。
身体が重い。疲れと、魔力不足。大障壁を張り直したのがまずかった。
ここで少し休んで、麓へ降りよう。今のまま突っ込むのは分が悪すぎる。
やはり、一筋縄ではいかなかった。毒魔法、ではない。ウルフの催眠魔法だ。
一枚目の障壁を破られたあのとき。普段の私ならすぐに射出でも反転でもして反撃を加えていただろう。
それをできなくさせた、判断をにぶらせた催眠魔法。戦いの勘を鈍らせる、厄介な魔法。
対策を練らずに突入した私の判断ミスだ。
「はぁ、はぁ・・・・・・」
息を整えようとする。うまく呼吸が安定しない。心臓の鼓動がいやにうるさい。
カレンちゃんの毒魔法。なぜ、彼女はそれを使える?
・・・・・・そうか、聞いたことがあった。
堕天使。闇に心を奪われた天使。
過去、何人かいたらしい。私もよく知らない。デスパイアの研究書に載っていたのを少し覗いただけだ。
たしか、デスパイアに天使化を施された少女、S級デスパイアに陵辱され心が壊れた天使のふたつの例を見たんだ。
彼女たちは人でありながら闇の魔法を使える。その理由は、デスパイアと融合した人間と同じ。
デスパイアと融合できるような人間、あの少年のような人間には、心に大きな闇がある。
闇。憎しみ、怒り、恐怖、害意、寂寥感。
はたまた食欲、性欲、金欲などの欲求欲望。
人のいやがるもの。『マイナスイメージ』なもの。
その『マイナスイメージ』なものが闇魔法となる。
カレンちゃんは、デスパイアに激しい憎悪を抱いていた。そしてウルフによる洗脳で強い性欲も手にしていたであろう。
また、本来が天使の身。魔法の才能は十分ある。
完璧だ。
闇魔法の発現する条件が、揃っている。
つまり、そういうことか。
カレンちゃんの心は、既に堕ちている。
「っく・・・・・・」
頭がふらつく。まだ動悸は収まっていない。それどころか、身体がいやに熱くなってきた。
動こうとする意志がでない。それほどまでに疲れているのか。あのときつけられた肩の傷がじんじんと熱を持ってきている。
・・・・・・傷。カレンちゃんにつけられた、傷。
「しまっ・・・・・・っ」
コスチュームであるライダージャケットの上をはだける。ブラのみをつけた姿。
そのブラのワイヤーを裂いて、うっすらと切り傷があった。
赤い筋の傷口に、ともすれば気づかないほどの魔力。
闇の、魔力。毒。
だいたいは障壁で防ぐことができたみたいだ。たいして身体に変化は起こっていない。
けど、この毒はなんだ? どんな効果を持っている?
魔法によって作られた毒だ、科学では治すことができない。治すことができるのは、同じく魔法の力だけ。
この量の毒だ、私の魔力が回復すれば自然に駆逐できるかもしれない。だが、回復する前に死ぬ可能性もある。
状況はよくない。私は動けず、魔法は使えず、毒が身体を巡っている。
・・・・・・落ち着け。動悸が激しくなる程度だ。死ぬほどじゃない。
ただ、ウルフたちに見つかるのだけは避けたい。奴らは私を捜しているだろうか。獣の嗅覚だ、すぐにここはばれてしまうだろう。
「・・・・・・っ」
よろよろと立ち上がる。もっと逃げやすい所に移動した方がいい。
落ち葉を踏みしめて一歩を踏み出す。隠れるところは――?
がさがさと頭上から音がする。上を見上げると、月明かりの下大きな人型のモノが木々を伝って私の方に近づいてきていた。
「キキッ」
すとん、と目の前に降り立つそれ。猿、大きな猿。2体。
最悪だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大きな猿、原人を思い起こさせるそれに、私は組み伏せられていた。
「くそ、はなしなさいっ」
「キキッ、おんな、おんな!」
「おんな、おかす! こどもつくる!」
片方に両腕を頭の上に押さえつけられ、もう片方は私のお腹の上にのしかかる。
「キキッ、ふく、じゃま!」
器用にチャックを下ろしてライダージャケットの前を開く。ブラはその大きな手でむしり取られた。
「キッ、むね、でかい!」
「っ!」
乱暴に両胸を揉みし抱かれる。人の頭ほどあるその手のひらは、私の胸をちょうど包み隠していた。
「このっ!」
両足でお腹の上の猿を蹴る。しかし、あまりにもデスパイアは逞しく、あまりにも私は貧弱だった。
「キキキッ、よわいよわい、よわい!」
デスパイアは胸を揉む手を引き、そのまま後ろを向く。なにをしようとしているのかなど、考える意味もない。
ジジッとライダーパンツのチャックも開けられる。足からぴったりとした感触が消えていき、張りつめるような寒さが素肌に染み入る。
「キキッ、これ、つかう」
「おう、つかう、おんなしばる」
パンツを股から引き裂き、一本となった生地で私の腕を固定する。
悲しいかな、デスパイアの腕力に屈した私のコスチュームは、私自身の力ではびくともしなかった。
「これ、じゃま」
「やめ・・・・・・っ」
デスパイアがショーツのクロッチを引っ張り上げる。伸ばされた生地がクレバスを割り、敏感なそこへ刺激を送る。
「・・・・・・ぁっ」
もっとも敏感な突起を擦られて、出したくもないオンナの声が出てしまった。カアッと顔が熱くなる。
「こい、こいつ、かんじてる。いんらん、いんらん」
「ちがっ・・・・・・んむぅ!?」
腕を押さえつけていた猿が唇を合わせてきた。とっさに唇を閉じて侵入を拒む。
べろべろと唇を舐められ、悪寒が走る。きもちわるい。
「キキッ、べちょ、べちょ」
「〜〜〜〜〜っ」
私の陰部で遊んでいた猿も、ソコを舐め始めた。ぞくりとした不快感につい足を絡めてしまう。その足も太い腕に鷲づかみにされた。
腕を封じられ、唇は閉じられ、足は掴まれ、秘部は弄ばれる。
女の恥辱をこれでもかというほど味あわされる。息をするたびに獣毛のにおいを嗅ぐ羽目になり、不快な感情が増していく。
猿たちは無言でそれぞれの場所を舐め続ける。細く長い舌が、私の膣へと侵入してきた。
「・・・・・・っ」
ぶるりと身体が震える。不快、不快だ。
じゅるりじゅるりと汚らしい音が虚空に響く。私の中の異物感がうねり曲がる。
唇を舐め回す猿が私の鼻を摘む。息が、できない。
「・・・・・・っ、ぷはっ、んむぅ!?」
一瞬の呼吸を突いて舌が口腔にねじりこんできた。猿の粘膜が私の粘膜に汚らしいモノをなすりつけてくる。
「んん、ん〜〜〜っ! んん!?」
噛んでやろうとしたが、猿の舌はあまりに太くあまりに硬く、逆に歯茎をなぞられて力が抜けるだけだった。
「んんっ」
下に張り付いていた猿が、私の中から舌を抜いた。夜風が涎に濡れたソコを撫でて、ひんやりとした切なさが身体を襲う。
中途半端に慣らされた私の膣が、オスを迎える準備を整えていくのがわかる。下半身がむず痒い。
べろり、とクリトリスがひと舐めされる。ぴくんと背筋が揺れる。神経が集中するソコは、私の隠れた弱点。
また、べろり。今度は舌先で。次は全体で。そのたびに見せたくもない反応をしてしまう。
触れば跳ねる私の小豆を面白く思ったのか、猿は指でソレを弾いて遊び始める。嫌悪感と屈辱感と、痛烈な快感。
「ん、んん!?」
口腔を蹂躙していた舌から、どろりとした唾液が流れ込んできた。たちまち大量の唾液が口の中にあふれかえる。
「〜〜〜〜〜〜っ」
こくり、と飲み下す。喉が灼けるように熱い。精臭に近いそのにおいに、頭がくらくらする。
ぴりぴりとしておかしくなった私の舌に、猿の舌が覆い被さる。巻き付かれ、引き寄せられ、いつの間にか猿の口腔へと誘われていた。
あつい。それが感想。デスパイアとの、ディープキス。
猿に誘われるまま、猿の口の中を舐めとっていく。ヒトよりも熱く、ヒトよりも甘い。
熱に浮かされての唾液の交換。淡い恋愛の記憶。初めて自分から舌を交わした。
どろりとした微熱が思考をぼやけさせる。唇を深く合わせる。貪り、貪られる。
また、膣に舌が挿入される。充実感と寂寥感。身体が求めている。
流される――もっと激しく――だめだ――足りない――
思考がまとまらない。ひどく不確かなモノが「私」を隠していく。
胎内に埋没した舌が縦横無尽に動き回る。期待を膨らませる『私』が、愛液を滲ませる。
「んちゅ、ぁ・・・・・・」
深く合わされていた唇から、舌が抜けていった。とてつもない不安感が胸に押し寄せる。
同時に、『私』を慰めていた舌も抜けていく。足りない。自分の中に空洞があるようだ。
「ん、ぁ・・・・・・」
キスをしていた猿に後ろから抱えられ、私は立ち上がる。先ほどまで秘所をいじくり回していた猿が両足を持ち上げ、広げる。
子どもがおしっこをさせられるポーズ。じゅうぶん大人といえる私がそれをすることに、少しだけ背徳感を覚えた。
ようやくと猿の熱い肉塊が私の穴へあてがわれる。切なさを埋めるであろいうソレに、『私』は待望の声を上げた。
ヒトのよりも太いであろう肉棒が埋まっていく。ゆっくりと、けれど確実に、「私」は薄れていく。
「あ、あぁ・・・・・・」
私が下ろされるに連れて『私』を満たす熱が増していく。まるで恋人とのまぐわいのように、ある種の愛情さえ感じてしまう。
「んっ」
今、全て入りきった。充足感。みちたりている。
「キキッ」
持ち上げられ、落とされる。粘膜と粘膜が擦れあい、快楽に負けた身体からは愛液が吹き出ていく。
「んっ、んっ」
身体が上下させられるたびに閉じた唇から喘ぎ声が漏れる。くぐもった牝声は、「私」の抵抗だった。
ぐちょぐちょとはしたない音が心をかき乱す。逞しい腰使いに思考が奪われる。
突かれるたび突かれるたび「私」を包む靄は濃くなっていき、かわりに大きくなっていく『私』が猿の腰に足を絡ませた。
猿はしがみついた私の身体を軽々と持ち上げ、勢いよく下ろす。深々と穿たれた熱い杭に気をやりかけた。
「んんっ」
後ろに回った猿の両手が胸を触り始めた。指で乳首を挟み込まれて、くにくにと快楽を送られる。
目を閉じて快感に耐える。私が「私」でいられる、最後の防波堤。
「キキッ、そろそろ」
「んんっ!? 〜〜〜〜〜っ」
ラストスパートをかけようとしているのか、猿の腰使いが荒く、激しくなる。
子宮を叩かれているのがわかる。きもちいい。だめだ、耐えなきゃ。
後ろの猿が私のソコへ手を伸ばす。太い指が尖ったクリトリスを捉え、私の脳へ電流を送る。
「〜〜〜っ、あぁん!」
ついに牝の証が空気を震わせてしまった。喘ぎ声を耐えられなくなれば、後はなし崩し。
「あっ、あぁ、ひぅっ、あぁんっ!」
きもちいい。「私」が見えない。「私」は、なんだっけ?
「キ、キキッ! だす、なかに、だす!」
「あっ、だめっ、あぁん、ひゃぅっ」
深く深く、より深く。「私」を『私』に変える劣情の杭が、最奥に穿たれる。
同時に、クリトリスに回された指が、ソレをきゅっと摘んだ。
そして、
「あ」
はじめに、熱い熱い衝撃があり、
「あ、あぁ」
だらしなく開けた口からは牝の本懐の声を上げ、
「あ、あぁぁ」
一度目の衝撃を塗りつぶすような、性の奔流が「私」に叩きつけられ、
「あ、あぁぁぁ」
白い靄、電流のような快楽、それらを受けながら、
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「私」は、イッた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「キキッ、イッた、イッた。まりょく、すごい」
デスパイアの象徴を突き入れられたまま、私は体勢を変えられる。
クレバスを貫いている猿が下に寝転がり、お尻をもう片方の猿に見せる格好。
「うあ、あうぅ・・・・・・」
猿のモノを引き抜こうと、もはや力の残っていない腕で身体を立てる。
しかし猿は未だ太いままの肉棒を揺さぶり、その小さな抵抗すら泡へと帰させた。
お尻の穴に舌が入ってくる。ぬめるソレを難なく受け入れ、私の尻穴は解れていった。
まるで、歓迎するように。デスパイアを受け入れることを望むかのように。
もう充分だと判断したのか、お尻から舌が勢いよく抜かれる。その一瞬に、また牝の声を上げてしまう。
「おれも、いれる。しり、おかす」
ずぷりと太く熱く硬いモノがお尻に入ってきた。本来の働きとは逆の動きに、背徳的な快感が脳を灼いていく。
そして、後ろの猿が動き始める。ぬちゃぬちゃと音を立て、腰とお尻がぶつかり合う。
「あっ、ひゃぅ、あぁ・・・・・・」
お尻がきもちいい。掻き出すような動きが、直腸を何度も何度も刺激する。
きもちいい、きもちいい。そう言えば、アキラもお尻が好きだった。
・・・・・・?
アキラ、アキラ。
「ア、キラっ。ひゃぁっ、んっ、あぁっ」
アキラ、アキラ。大事な人。大好きな人。
――『あぁ、そうだ』
アキラ、アキラ。
――『早めに返ってこいよ』
アキラ、アキラ!
――『まあ、なんだ。寂しいからな』
アキラ!
「う、あ、あ」
残り少ない魔力を練り上げる。快楽に溺れる「私」をそこから引きずり出して、魔法ともいえない魔法をつくり出す。
「あ、あああ」
天使の魔法は、希望の光。魔力の源は、信じる光、「誰か」への、愛!
突き上げる動きを始めた眼下の猿、その額に手のひらを添える。
「あぁぁぁ!!」
魔力を、解放!
「キ、ギキギュギョォ!?」
奇妙なうなり声をあげ、眼から鼻から血を吹き上げるデスパイア。これで、一体。
「あ? なに、してる、おまえ!?」
尻穴を犯す猿が肩を掴む。好都合、頭が傍に来る。
す、と側頭部に手を添えて、魔力を解放。
「ゴキュギキィ!?」
ぷしっ、と間の抜けた音。生暖かい血が、髪に降りかかった。
ビクンビクンと断末魔の精を放ち、デスパイアたちは果てる。
「くぅ、ふあっ」
気が抜けた直後の電流に軽くイッてしまう。
それでも、勝った。
「く、あぅっ」
重い体を必死に這いずらせ、毛むくじゃらのサンドイッチから抜け出す。ずるりと抜けた2穴から、白い種汁があふれ出た。
震える手でケータイを開く。かける番号は、知り合いの天使。
「私」は、天使だ。人間だ。使命を、全うする。
『もしもし? こんな時間にどうしたの? あっ、定住するって話の関係?』
「秋田県っ、××山! ヒュプノスウルフ! 天使2名が虜囚! 内一名は敵となった!」
『・・・・・・! 今すぐそこから離れて指示を待って! すぐ行くわ!』
電話が切れて静寂が戻る。これで使命は果たした。
ここを離れろとは言われたが、さっきなけなしの魔力を振り絞ったところだ、もう立つことすらできやしない。
ケータイを落とし、落ち葉に伏せる。魔力枯渇の反動、強烈な眠気が襲ってくる。
ああ、アキラ。
あいたい、よ。
トンボのような、機械の駆動するような音が、木陰から近づいてきた気がする。
「私」はなに?.end