『私』の名前はトヨサキメグミ。『私』は牝。『私』は人間。『私』はけもの。
『私』の好きなものは、きもちいいこと、きもちいいこと、きもちいいこと。
『私』の好きな人は、アキラ。佐藤輝。大好き。
『私』はアキラを愛してる。『私』はアキラに愛されている。けもののように。それは『私』。
私は『私』。『私』は私。
だいすき、あいしてる、ずっといっしょだよ。
ね、アキラ。
『貫殺天使リア』
30/幸.I love you
――・・・・・・
眼を覚ますと、はじめに白い天井が見えた。
病院の天井のように、タイルをいくつも貼り合わせた天井。ちょうど頭の上に小さな黒い染みがある。
明るい――光だ。太陽の光ではなく、人工のあかり。埋め込み式のライトがふたつ、視界の端に映った。
そして、体温。
すうすうと寝息を立てて、隣にアキラがいた。
穏やかな寝顔。茶色がかった繊維の薄い髪が頬に垂れている。初めてあったときから、少しばかり伸びているみたいだ。
たしか、1月の終わり頃にカットしてもらったんだっけ? 普段の髪型からシャギーの入ったショートカットになっていた。
かわいいといったら、照れくさそうに笑っていた。その時の表情も、とっても可愛かったっけ。
・・・・・・ここは、どこだろう。今私のいる場所は、ベッド。白い布団に清潔なシーツ。病院だろうか?
あれから、私は救助されたのだろうか。たしかあのとき、魔力不足で意識を失って・・・・・・。
「ん・・・・・・」
アキラが少し身じろぎをする。肌がより密着して、アキラの体温を強く感じた。
「裸・・・・・・」
そう、今気づいたら裸だ。それもふたりとも。
柔らかな胸。ほどよくくびれた腰。すらりと伸びた足。熱い泉を湧きだたせる秘部。小さなお尻に開いた菊門。
布団をかぶっていて見ることができないが、今、彼女はそのありのままを私の前に晒している。
どくん。心臓が、高鳴る。
アキラの胸。アキラの腰。アキラの足。アキラの秘所。アキラのお尻。
触りたい。撫でたい。舐めたい。キスしたい。アソコに舌を突き入れたい。ぐちょぐちょになるまで辱めたい。
どくん。どくん。呼吸が荒くなる。自分の妄想に眼前のアキラを重ねて、イケナイ考えが頭を霞めていく。
さらさらな髪。長いまつげ。きめ細やかな肌。ぷるぷるとした唇。
どくん。どくん。どくん。吸い寄せられていく。アキラの唇に。あとちょっと。もう2センチ。
「ん・・・・・・」
びくり。アキラの吐息が私にかかる。起きた? ばれた?
「すう、すう・・・・・・」
「・・・・・・」
起きては、いなかったみたいだ。よかった。こんなのばれたら・・・・・・。
「・・・・・・」
寝ているところに無理矢理キスしようとしてるなんて、ばれたら。
そんなの、そんなの。レイプと同じじゃないか。デスパイアと、やってることは同じじゃないか。
熱い滾りが消えていき、底冷えのするうすら寒さが胸を襲う。
私は、アキラをレイプしようとしたのだ。私は、デスパイアと同じことをしようとしたのだ。
頬に涙が伝う。悲しい、辛い。私は、なんなのだ。2、3度身体を交わしただけで、恋人面か?
アキラの顔。幸せそうに眠っている顔。
胸が痛い。胸が苦しい。自分への失望、たまらなく起きる情動。アキラといたい。ここでいっしょに、ずっと。
あの猿のデスパイアから私を助けてくれたのはアキラだった。辛いとき苦しいときいっしょにいてくれたのはアキラだった。
アキラの声。アキラの指。初恋は担任の先生だと言っていた。口調に合わない乙女さで笑ってしまった。
アキラ、アキラ。アキラの笑顔。アキラの言葉。アキラが朝ご飯を作ってくれたときもあったっけ。
アキラ、アキラ、アキラ。初めて自分で焼いたケーキだって持って返って来てくれたね。アキラは否定するけど、おいしかったよ。
アキラ。アキラ。頭の中がアキラのことでいっぱい。涙が止まらない。
この感情は知っている。ああ、私、私――
「ごめんね、アキラ・・・・・・」
布団から抜け出す。冷たいリノリウムの床。服と水晶はどこだろう。
私はここにはいられない。ここにいたら、アキラを襲ってしまう。そんなのいやだ。
アキラ、アキラ。この感情は知っている。胸を締め付けられるような、切なくて、苦しくて、どこか温かい。
私は、私はアキラが。
好きなんだ。
私は、輝が好きなんだ。
だから、私はアキラを傷つけたくない。怖いのだ。アキラが笑ってくれないことが。アキラが私に笑ってくれないことが。
私は勝手だ。怖がっているのはアキラが私のことを嫌ってしまうことで、
もしかしたらアキラのことなんてこれっぽっちも考えていないのかもしれない。
私は、自分勝手だ。アキラをいっしょに連れて行かなかったのは、町から天使がいなくなるなんて理由じゃない。
ただ、目の前でアキラが傷つくのを見たくなかっただけなんだ。
私は、ずるい。アキラが大切だから、アキラのことを思ってるからなんて理由をつけて、アキラの自由を奪っていたんだ。
最低だ。私は、私は。
「ごめんね、ごめんねアキラ・・・・・・」
最後にもう一度だけアキラの寝顔をみよう。それで最後にしよう。
こんな気持ちじゃアキラといっしょにいられない。こんな私じゃ、アキラをいつか傷つけてしまう。
振り返る。これで終わり。アキラの顔を見るのも、これで最後。アキラの笑った顔、もう一回見たかったな。
「・・・・・・なんであやまってんの?」
ベッドの上で、アキラが眼をぱちくりとさせてこちらを見ていた。きょとんと小首を傾げている。
「アキラ・・・・・・?」
「なんだよ。なにに謝ってるかしらねーけど、アタシは許しちゃうぜー」
がば、と私にしなだれかかってくる。肌と肌が触れあって、アキラの細腕が首に回された。
「泣いてんのか? だれだ泣かした奴! アタシが成敗しちゃる!」
「・・・・・・ぷっ。なによそれ・・・・・・」
けらけらと笑うアキラに、つい笑みがこぼれる。と、アキラは急にマジメな顔つきになって、
「なぁ、そいつって・・・・・・、もしかしてアタシか? アタシが泣かしてるのか・・・・・・?」
と聞いてきた。ぐらり、心が揺れる。ああ、これだ。いつもは戯けてるくせに、本当はとっても優しくて。
だから、私みたいのが勘違いしちゃうんだ。
でも、だから。
「・・・・・・ちがうわ。違う。違うの・・・・・・」
「・・・・・・」
私は、だめなんだ。こんな素敵な人を束縛しちゃ、こんな優しい人の傍にいちゃ、いけないんだ。
「なんだかわかんねーけど、さ」
「・・・・・・」
ああ、嫌われてしまうだろうか。アキラに、嫌われてしまうだろうか。いやだな、いやだよ。
「ほいっと」
「きゃっ!?」
アキラが私を引き寄せる。羽毛から空気の抜ける音がして、私がアキラを押し倒すような格好になった。
「アタシはさ」
アキラの顔が目の前にある。
「メグミがなにに謝ってるのかわからない。けどさ」
アキラが私に微笑みかけてくれる。
「アタシは、許すよ。世界中がメグミの敵になっても、アタシだけはメグミの傍にいるよ」
アキラが、私を抱きしめてくれる。
「大好きだぜ、メグミ」
「・・・・・・うぅ、ひっく、ひっく」
思わず嗚咽を上げてしまう。嬉しい。嬉しい。ただ、それだけ。
アキラが傍にいてくれるって言ってくれた。アキラが、私を好きって言ってくれた・・・・・・。
・・・・・・あれ、今・・・・・・。
「アっ、アキラ・・・・・・。いま、いま好きって・・・・・・」
「んー? 言ったぞ? なになに、メグミおねーさんは告白されたことないのかな?」
どうしよう、どうしよう! アキラが好きって、私のこと、好きって!
「答え、聞かせて欲しいな」
「あ、あぁ、えと、あの・・・・・・!」
どうしようどうしようどうしよう! なんて言えば、なにを言えば・・・・・・!?
「わっ、私もっ、そのっ、す、すき!」
「ははっ、これでカップル成立だなー。おーよしよし、顔真っ赤にしちゃってかわいーなー」
ぐしぐしと髪を撫でられる。ああ、嬉しい、うれしい!
「おー、なんとゆーか。これがあのメグミさんとは思えませんな。こーゆーのがツンデレってのか?」
「う、うるさいわね・・・・・・んちゅ!?」
突然のキス。深くて、幸せで。あたまがとろんとしてくる。
いつの間にかアキラに押し倒されている。私の唇から離れたアキラの唇が、首筋、鎖骨を通って透明なてかりを伸ばしていった。
「んー、やっぱでかいなぁ。どうしたらこんなにでっかくなるんだ?」
「い、言わないでよ・・・・・・」
まじまじと胸を見られる。恥ずかしい。アキラに見られるのが、恥ずかしい。
「エッチな身体、してる。こっちもエッチな気分になるよ。大好きだ」
「ひゃうっ」
既に張りを見せてきた頂きに吸い付かれる。歯で甘噛みされたり、舌で掬われたり。
もう片方の胸にもアキラの左手が伸びてきた。ゆっくり、優しく揉まれてく。幸せ。
今までデスパイアにのみ乱暴に扱われていた私の胸。大きいだけで男共の好奇の的となっていた胸。
それが、アキラに好きだといわれた。好きな人に、好きだといわれた。
アキラの指先から送られる優しい刺激に、うっとりと思いをはせる。初めてだった。想い人に抱かれるのも、優しく抱かれるのも。
過去に受けた陵辱を押し流すような喜びが満ちていく。デスパイアの破壊的な快楽とはほど遠い、真に愛情のある愛撫。
アキラの思うままに形を変える両胸。アキラの好きにされる。それだけにも恍惚感を覚えた。
ぎゅっとシーツを握りしめ、快感を味わう。じっとりとした汗をかいている。
アキラもそうだ。ふたりいっしょということに、幸福感を得た。
「ん・・・・・・」
つう、と蛞蝓の這ったような跡を残してアキラの唇が移動していく。下に、したに。
胸のアンダーを越えて、お腹に。おへそに唾液の湖を形作って、その下へ。
「あ・・・・・・」
濡れてる、な。そう言って私の恥ずかしいソコに口づける。確かに、アキラが口づけるより先に私の茂みは濡れそぼっていた。
「メグミのって、薄くて好きなんだよなー・・・・・・」
「んっ・・・・・・、アキラのも、好き・・・・・・」
アキラの茂みは、あまり量がない。一見すると産毛しかないようにも見える。とてもきれいだ。
ずぷりとアキラの舌が私に入ってくる。熱い。アキラが、熱い。
なんどか私の中を掻き回したあと、ずるりと舌が抜かれる。しとどに濡れた私の蜜壺はアキラを欲しやまない。
「指、入れるぞ」
アキラの指が2本、どろどろにとけた私のソコへ押しつけられた。白魚のようなたおやかな指が私に入ってくる。
「ん、んん・・・・・・」
「大丈夫か?」
「ん。平気・・・・・・」
心配してくれる。嬉しい。愛されてるんだ。それだけで、私の中が充たされていく。
繰り返し繰り返し、撫でるようにあやすように指が滑る。じわじわとした快感と安心感。異形の化け物とは味わえない、愛ある営み。
中で指が折れ曲がり、ふとして深く突き入れられて。私の弱いところを探し回り、時折思い出したかのように淫核を弾く。
その度、私は背筋を震わせる。悲しみと辛さで流していた涙は、今は違うものになっていた。
卑猥で淫靡な音がカーテンの中に反響する。2本の指が奏でる音楽を頭の中で反芻する。
ああ、愛する人に抱かれるって。
こんなにも、素敵なことだったんだ。
「そろそろ、イキそうか?」
「んっ、もう、だめかも・・・・・・っ」
答えを聞いたアキラが動きを早める。激しくて、狂おしい。それでいて幸福な。
絶頂が近づく。アキラの指は的確に私の弱点を教えていく。痺れる。頭が。身体が。全てが。
アキラの指が上辺を押し上げて、同時に淫核が甘噛みされる。近くの2点を刺激されて、
「んっ・・・・・・あぁっ・・・・・・」
あっけなく、私はイッた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
指を引き抜いて、アキラが私に顔を寄せる。その額にはてらてらと愛液が滴っていた。
「ぁ・・・・・・それ・・・・・・」
「んー? ああこれ? メグミちゃん、潮噴いちゃったんだぜー」
ぞんな。気づかなかった。そんな、そんな。
「ご、ごめんなさいっ! 私、わたし・・・・・・」
口をつぐんだ私に、またアキラの唇が重ねられる。アキラの笑顔。
「謝らなくていいんだって。それにアタシきにしてねーぜ? むしろ可愛いもんだろ」
そう言ったアキラは、今だ荒い息をつく私に3度目のキスをする。今度は熱いディープキス。
舌が絡まる。熱い。もっと味わいたい。アキラで頭がいっぱいだ。
アキラの左手がお尻に伸びてきた。ゆったりと、確かめるようにお尻を揉む。
その感覚にまた頭がとろけていく。もっともっと。もっとアキラにシてもらいたい。アキラの好きなようにして欲しい。
「メグミ、もっかいできるか? アタシ、とまんねーわ」
「うん、して・・・・・・」
「・・・・・・たまんねーな、こりゃ」
そういうと、ベッド脇のサイドテーブルからなにかを取り出す。銀色をした、双頭バイブのようなもの。
「ええと、こっちをアタシ側にして・・・・・・」
その片側がアキラの膣に呑み込まれていく。アキラもまた、恍惚の表情をしていた。
「メグミ弄ってたら、アタシまで濡れてきちってたよ・・・・・・。っと、このボタンをおすんだよな」
かちんと無機質な音がすると、アキラが身を震わせた。そして私に覆い被さってくる。
こくりと頷く。それだけで伝わる。アキラの体温が移った鉄の塊が、私のソコに押し当てられる。
「いれ、るぞ・・・・・・っ」
「・・・・・・っ」
痛みや恐怖、それらは一切なく。
ゆるゆると緩慢な、それでいて確かな動きでアキラが私を犯していく。
目の前でアキラの双乳がふるりと揺れる。形よく育ったそのふたつのふくらみは、私のなんかよりもより美しく思えた。
アキラの瞳が潤んでいる。唇が弧を描いて、真っ赤に火照った肌から玉の汗がしたたり落ちる。
「ん・・・・・・ふっ・・・・・・ぁんっ」
アキラの両腕が私の腰を掴んで、深く、より深くアキラをうずめようとする。私も、アキラの腰に手を添えて挿入のアシストを試みた。
「・・・・・・っ、ぜんぶ、入ったぜ・・・・・・」
「んぁ・・・・・・」
アキラを感じる。私の中にアキラを感じる。アキラは感じてくれているだろうか。私を、私の中を。
ゆっくりと慣らすように腰が引かれていく。それに合わせてアキラの鉄棒も抜けていく。
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・んんっ」
喪失感を感じたところに、また深く突き刺さる。
円を描くような動き。私の身体が震える。アキラの身体も震える。
アキラが私の胸に吸い付く。ふたりの貝殻が合わさるたび、私とアキラの女穴から愛液が飛沫となってシーツを汚す。
熱い。熱い。アキラが熱い。私が熱い。身体が、脳が、心がアキラを欲している。
震えている。私もアキラも。胎内であの鉄棒が振動しているのだろう。耐えきれずアキラが抱きついてくる。
アキラ、アキラ。メグミ、メグミ。耳元で囁かれる官能の響き。ただ相手の名を呼ぶだけなのに、それは自分の全てを捧げるようで。
既にアキラは腰の動きを止めて、激しくけもののように胸を揉み続けるだけ。
私もアキラになにかしたくて、火照った肌の汗をかぎ分けお尻へ手を伸ばす。
アキラの不浄の穴はすんなりと私を受け入れて、熱く滾るうねりを指に伝える。アキラが感じてくれている。幸せ。
キス。キス。深く深く、確かめるように確かめるように。深く舌を突き入れ、アキラの舌を惑わして。
また深く舌を迎え入れて、アキラを歓迎するように。愛を確かめるように。熱く、あつく、深く。
振動が強くなる。潤んだ瞳が交差する。私の手がアキラの手に取られ、指と指を交互に絡ませる。
深く、深く。より深いところへ。より高いところへ。
振動が強くなる。手をぎゅっと握りしめて、アキラを感じる。アキラ、アキラ。頭の中はアキラでいっぱい。
重力に従い潰れた私の胸にアキラの胸が重なり合って、高く張りつめた乳首を擦りつけあって。
アキラを感じ、アキラに感じられ。
好き、好き、大好き。アキラ。ここにアキラがいる。アキラと繋がっている。
そろそろ限界だ。イクときはいっしょに。足がアキラに絡みついて離れない。
不意に、アキラの舌が止まり。
交わした指を強く握り。
膣が収縮して、頭が真っ白になり。
そして――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぐったりとして身体が動かない。あの後、さらに2回アキラに抱かれた。
今、アキラは私の髪を撫でてくれている。汗でしめったシーツが心地よい。
「うぅ、身体が動かない・・・・・・」
「しっかりしろー。てかあれだな。メグミって甘えたいタイプだったんだな」
結局、あのあとも私は攻めに回ることなくアキラにイカされ続けたのだ。おかげで腰に力が入らない。
「仕方ないじゃない・・・・・・。今まで、まともな恋愛経験なんてなかったんだから・・・・・・」
そして、今回わかったこと。私はどうやら相手に甘えきるタイプらしい。ネコだな、と言われた。
私の髪を手櫛で梳きながら、アキラは笑う。可愛いと。その言葉に、また胸がときめく。
「ところで・・・・・・ここってどこなの? 病院に思えるけど・・・・・・」
それにしては窓が無く、先ほどあれほど乱れたのにだれの気配もしなかった。
「ここかー。いや正直、アタシもわかんねーわ。なんか、気づいたらこのベッドでねてたんだよなー」
あまりにも適当な答え。そんなバカな。
「ん、この施設ならなにかは漠然とわかるぞ。まあ、漠然とだけど」
「施設・・・・・・? ここは病院じゃないの?」
たぶんな、と頷かれる。焦る気持ちは、アキラの落ち着いた表情で癒された。
「んーと、説明が難しいんだが・・・・・・。研究所? そこら辺かな・・・・・・。
ああ、メグミ。お前、自分がここに来てどれくらい経ってるかわかるか?」
「えっと・・・・・・」
通常、魔力切れを起こして意識を失ったら、2日は眼を覚まさないから・・・・・・。
「3日、くらい?」
「せーかい。たぶんな。アタシの体内時計もそんな感じ」
なるほど。あの日から3日経っているのか。
「ん・・・・・・」
っと。さすがに疲れから眠気が来ている。意識が飛びそうだ。
「眠いか? まーあんだけ激しかったしな。いいぜ、俺の腕で眠れー」
「・・・・・・ばか」
ぎゅっとあたたかなぬくもり。アキラのにおい。アキラに包まれている。
幸せ。今はとても幸せ。多分、これからも。
大好きなアキラに抱かれて、至福の眠り・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――・・・・・・
かつーん・・・・・・かつーん・・・・・・
あれ、ここはどこだろう。ベッドでもない、外でもない。硬い床に足音が反響している。
大好きなにおい。アキラに抱きかかえられているのか、浮遊感と安心感。
そっと目を開く。アキラの顔。私に気づくと、にっこりと笑って言う。
「起きたか。寝覚め、悪くないか?」
「大丈夫だけど・・・・・・。どこに行くの? あっ、下りるわよ、重いでしょ?」
全然重くねーよ、と彼女は笑う。けらけらと、可笑しそうに。
「これから行くのは・・・・・・、ふたりの愛の巣・・・・・・ってところ? 悪いようにはせんよ」
硬質な音を立てて彼女は歩く。今更だが、服を着ているのに気づいた。とはいっても、ふたりとも患者衣だが。
それから少しの間、アキラとの睦みごと。
それらはたいがい、私の乱れる様をアキラがからかうだけだったが、より一層アキラを愛おしくさせるものだった。
にっこりと、花のように笑うアキラ。幸せ。幸福。
アキラが戯けて、私が窘める。いつものような掛け合いも、今は新鮮に思えた。
そして、アキラが立ち止まる。赤い両開きの扉。無機質な音を立ててそれが道を空ける。
そこは。
立ちのぼるようなメスのにおい。焼け付くような性の営み。
鎖に繋がれた少女が鉄の器具を秘所に突き入れて喘いでいる。
鉄の椅子に座った少女が唇から涎を垂らしている。
噎せ返るような牝のにおい。性を否定するかのような性の営み。
なんだ、これは。
これは、なんだ。
その部屋の壁を伝い、アキラは歩を進める。硬直した私を抱えたまま。
部屋の一角についてようやく、アキラは私を床に下ろした。
「ここは・・・・・・、これはどういうこと!?」
「みてのとおり、アタシたちの愛の巣だよ。まあ、ふたりって感じでもないけどさ」
この情景に不自然を感じていないのか、アキラは笑う。
「なにを・・・・・・んむ!?」
問い詰めようとした矢先にアキラの口吻。驚いて、突き飛ばしてしまう。
「いったいなぁ。どした? なんか不満あるの?」
「なっ、なにを言ってるの、アキラ・・・・・・」
アキラは笑う。けらけらと、犯しそうに。
ゆらりと立ち上がるアキラ。そのアキラに釘付けになっていて、注意力がまわりに行き届いていなかった。
「おねーさんも、新しい人ですか?」
先ほどの少女たちと同じくらいの、まだあどけなさを残した少女が後ろから声をかけてきた。
とっさに振り向いたのがいけなかった。振り向けば、アキラに死角を晒すというのに。
「メーグミっ、いっしょに、きもちよくなろ?」
がばりと背中から抱きすくめられる。動けない。暴れても、力はアキラの方が上だった。
「大丈夫です・・・・・・。コレ、打てば、すぐにきもちよくなります」
そう言って少女が取り出したのは、長いチューブに繋がれたはんこ注射器。それを私の首筋に当てる。
「いやっ、やめて!」
「暴れたら危ないっての・・・・・・」
奮闘虚しく、いくつも連なる針の先が首に食い込む。ごうんごうんと部屋のどこかで機械が動き出した。
「ひっ、なに、これ・・・・・・!?」
入ってくる。点滴なんてやわなものじゃない、私を狂わすなにかが入ってくる。
「っと、これくらいですね」
注射器を外し、少女が去っていく。後に残された私は、膝から崩れ落ちるのをアキラに支えられていた。
熱い。熱い。熱い。身体が熱い。火照るなんてものじゃない。疼く。そこかしこが疼く。
「さてメグミ。これから、いいことしよっか。これからずっと、いいことをし続けてあげる」
力の抜けた私をアキラは軽々と持ち上げ、分娩台のような大きな台に寝かせる。
そうして当然のように服を脱がして、アキラもまた服を脱ぐ。
私を抱きしめて、熱いキス。逃れられない、情熱的で蠱惑的なふたりの契り。
アキラはじっとりとした汗を流す。私もじっとりとした汗を流す。
キスだけで想いが高鳴る。こんな状況でも容易にその気分になる私は、本当のところ淫乱なのかとも思う。
「メグミ・・・・・・、愛してる」
その言葉に負け、私もアキラを抱き返す。今度は私からキス。情欲、劣情。ふたりの間に唾液の糸が走る。
「ん、ぁ・・・・・・」
「あぅ・・・・・・ぁ・・・・・・」
アキラの唇から苦しそうな声がする。それは私も。灼けるように熱い塊が私の秘所と菊門に潜り込んできた。
ただ無感動にソレは進む。アキラと同じ快感を得ている。全部が入りきったとき、アキラが微笑みかけてくれた。
ぴくん。淫核と淫核が擦れる。胎内に埋もれたなにかが振動を始めた。昨日と同じものなら、やはり鉄の塊だろうか。
今度はアキラもなすがままにされている。そんなアキラが愛おしくて、その首筋を舐めとってみた。
「ひゃうんっ」
アキラの可愛らしい声。ああそう言えば、首筋も弱かったっけ。
アキラの求める瞳。きっと私も同じ顔。どちらともなく深くキス。
膣に入った鉄棒が強く震える。キスしたまま絶頂。アキラといっしょ。アキラが熱い。私も熱い。
お尻の穴に入ったバイブが回転を始める。愛してる、愛してる。何度もなんども誓いを交わす。
ぶるり、身体が震える。キス、キス、キス。アキラといっしょに何度もイク。
アキラといっしょ。アキラといっしょ。けもののようにお互いを貪りあう。人から牝へ。私がどろどろに溶けていく。
アキラ、アキラ。アキラがいれば、なんだっていい。アキラが大好き、輝を愛してる。
何度もなんども。疲れ果てるまで。私はアキラを愛してて、アキラは私を愛してる。
白んでいく意識。残るのはアキラへの獣欲。イカされ続けて、私がなにかが薄れてく。
「アキラ、愛してる」
「メグミ、愛してる」
その言葉があればいい。その想いがあればいい。それだけで私はここにいる。
これから先、なにがあるかはわからない。
わからないけど、ふたりでいれば乗り越えていける。
例え虫に孕まされても、例え虫の卵を産まされても。アキラといっしょなら、それでいい。
白い世界、ふたりしかいない。
快感と愛欲に満ちて、想う。
アキラ、愛してる。ずっといっしょだよ。
ね、アキラ。
I love you.end