目覚まし時計が鳴るいつもの朝。学校に行く朝。
お母さんに起こされる前に、私は身体を起こす。
制服の上着に袖を通し、スカートを穿く。
そして……パンツを脱ぎ、ベッドの下に隠す。
もしお母さんにこの隠したパンツがバレたら、どれだけ怒られるだろう。
パンツは穿かないまま……玄関のドアを開けて学校に向かう……。
灰色の日常は、鮮やかな原色を取り戻す。
ヴィヴィッドな風景……これは、冒険――。
1学期のある日、前日の徹夜が祟って、遅刻寸前まで寝坊してしまった。
お母さんに叩き起こされて、慌てて着替えていた。
パジャマを脱ぐのもまだるっこしい……パジャマのボタンを外すのもじれったく、とにかく上着を脱いだ。
とにかく制服を着るために、脱ぐことだけを考えていた。パジャマの下穿きも脱ぎ捨てた。
脱げるものは脱いで裸になった上から、セーラー服に袖を通し、スカートを穿いた。
朝ご飯も食べていられない……もっと早く起こしてくれなかったお母さんに悪態をつきながら、外に出た。
駅に向かって全力で走っている間に、スカートの中に違和感があった。
そこで私は気付いた……
「やばっ!私、パンツまで脱いじゃってた!私ノーパンだ!!!」
駆け込んだ電車はいつも通り満員。
どうしよう、私こんな状態なのに、こんなに人と密着しないといけないなんて……
おじさんに胸を密着させちゃう……これはいつものことだからいいけど……
あっ!こっちの人の手が、私の腰に当たってる!
ねえ、私のスカートの中は、もう何もないんですよ!
ひゃあああ!!ちょっと、鞄がスカートの裾に引っ掛かってますって!!
ああ、捲れないよね……まさか、もっと上まで捲れるなんてないよね……
……バレないよね……ってか、お願い!私がノーパンだって、バレませんように……!!!
電車から降りて、徒歩数分の中学にやや駆け足で向かう。
他の生徒も少し駆け足。あ、クラスの遠野君だ……
「おーっす」
「お、おはよう……」
うわあ……パンツ穿いてないだけなのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう……
登校するだけのいつもの日常が、もう冒険だよぉ……。
きっかけは偶然だった。
でも、その偶然は、私に良からぬ愉しみを与えてくれた。
今日も私は、スカートの中身に何も着けないまま、学校に向かう。
歩いているときに少し強い風が吹いただけで……満員電車の中でスカート越しに何かが触れただけで……。
見つかってしまいそう……ほら、こんなヒラヒラした頼りない布の中に、私の一番恥ずかしいところがあるんだよ……
何気ない通学路が、ほら、冒険の舞台に変わっちゃった……ああ、こんなことしちゃダメなのに……!!