「……ねえ、これ何の冗談?」  
 
サティの小さく震える声は、誰の耳にも届かない、届くはずがない  
なんたって今は夜の2時だ。 外出禁止令が出ているし、一般人はこの時間には必ず寝るように習慣づけられている。  
起きているのは一部の貴族と、たぶん軍事関係者だ。たぶん、と言うのは起きていると軍人さんがやってきて厳重注意を受けるから。  
 
もちろん、一部の不良たちは寝たふりをしながらこっそりと集まってひっそりと遊んだりしている。 サティもその一人だった。  
ばれないようにヒソヒソと話しあいながら皆とボードゲームをすると言うのも、中々乙なものだな。そう考えながら家に帰る途中だったのだ。  
あちらこちらを巡回している軍人にバレない様に、サティは毎回裏山を通って家に帰る。もちろんここにも軍隊はいるし、たまに静音ヘリが通ったりもする。  
今日はそんな巡回がひときわ多くて、いつもは通らない山の西側を通ろうとしたら、「これ」に出会ってしまった。  
 
キキキキキ…  
 
小さく金属同士が擦れる音をあげて、「それ」は私を見下ろしてくる。  
 
「ロボットなんて…SFでしょ?あはは…」  
 
「それ」は、まるで目のように両側に並んだLEDランプ群を小さく明滅させて、私を凝視している。  
そして、ひときわ大きく、と言っても月明かりにも及ばないほど小さくだが、その目に光を灯すと、その巨大な足で一歩退がる。  
 
ズシン…という響き 軍隊にも聞こえたかもしれない  
 
「あ…ま、まさか 軍隊の新兵器だったりしないよね…?」  
 
静音ヘリと言い、それに搭載されているショックビームといい、軍隊の技術力は現代のそれを明らかに上回っているとしか思えない、ならばこんなロボット兵器を作るのはたやすい事ではなかろうか  
 
「ちょ…私万事休す?また停学喰らうの?」  
 
意外と冷静で危機感を感じないのは、サティの学校ではそれが日常茶飯事だからだろう  
サティはちょっとばかり身構えるが、しかし軍がこちらに向かってくる気配はない  
仮にこれが軍隊の持ちものじゃ無かったとしても、あの地響きに反応しない人が一人もいないなんておかしい  
 
「…?」  
 
一歩退がった体勢で微動だにしない「それ」まるで時間が停まったかのようだが、周囲から聞こえる虫の声がそれを何とか留めていた。  
 
「あの…帰っていいですか?」  
 
サティが小さく呟いた瞬間  
 
ピピピッ キキィ…キキキキ  
 
「うおわっ!?」  
 
またも目のLEDが明滅したかと思えば、まるでお辞儀をするかのように、頭を下げてきた。  
 
「え?え?」  
 
どういう事か分からず、つられてお辞儀をするサティ  
が、その行為が、「それ」の背中につけられたあからさまな「ミサイルポッド」がせり上がるのを見落としてしまった。  
「それ」は頭を下げたのではない、背中についたものを持ちあげたのだ。  
 
シュポポポポポッ  
 
「それ」から発射される無数のミサイル、その音にサティは慌てて顔をあげるが、時すでに遅し  
 
「きゃあぁぁ!」  
 
空から降って来る無数の存在に、サティは慌てて伏せる。  
だが爆発音はおろか、自分に当たる気配さえ無い ただ自分の周囲にどかどかと何かが降り注ぐのは聞こえた。  
 
「…え?」  
 
何かと周囲を見渡せば、自分をぐるりと取り囲むように設置された金属でできた卵のような何か  
 
「え?」  
 
さっきからそれしか言ってない、というかそれしか言えないだろう これは何なのか、新しい軍の拘束兵器なのだろうか  
しかし、だったら軍人が来てもおかしくないはずだ。 それにこの卵のようなもの、何かもぞもぞ動いているような…  
 
ブチャッ!  
 
「ひっ!」  
 
と、思った矢先、急に卵が4つに割れた。かと思えば、まるでコブラ踊りのようにするすると細長いものが伸びてくる。  
デコボコとした表面は粘液のようなものでぬらりと輝いており、その先端は少しばかりぷっくりと膨れていた。  
まるでそこを頭にするかのように、きょろきょろと周りを見回す触手のようなもの、目も無いのに見回すという表現はおかしいかも知れないが、そうとしか見えなかった。  
そして、しばらく辺りを見回していた触手達は、まるで「こっちみんな」のAAのごとく一斉にこちらを向く  
 
「ひいっ!?」  
 
その瞬間、まるで機械のように精密に、触手の一本一本がサティの四肢を絡めとった。逃げる余地など全く無い、5mほどの距離が予備動作も無しにコンマ秒で詰められたのだから  
まるで磔になったのかのように、四肢を四方に引っ張られ、空中に寝る形になったサティ、そこに他の触手達がするすると絡みついてくる。  
 
「ひ、いや、何す…あはは!くすぐったい!服の中入らないでってば!」  
 
まるで品定めするかのように、触手は全身に満遍なく絡みついてくる。ぬるぬるとした粘液がねっとりと染みついて、何とも言えない感覚を生み出していた。  
 
「ひゃん!やめ、ふぁ…!」  
 
それま徐々に快感へと移り変わっていくが、サティはそれに気付かない 全身に塗りたくられた粘液が気化し、鼻腔をくすぐり脳を麻痺させていたからだ。  
 
「あん!あ、は…んはぁ…」  
 
顔が火照り、体中が熱くなる。 もし"経験者"ならば、その熱さが人間のそれとは明らかに異なると感じ取れたはずだろう、まるで骨の髄から熱が吐き出されるような、そんな感覚  
 
「はぁ…はぁ…」  
 
触手がするりと解け、サティは地面にどさりと落とされる。  
 
「暑い…」  
 
もう秋も深まっていると言うのに、まるで真夏のような暑さを感じる。粘液と汗で気持ち悪くなったトレーナーを脱ぎ捨て、ズボンも放り投げる。  
 
「暑いよお…」  
 
うだる様に呟くサティの目の前に、一本の触手が近寄る、その表面には、秋の風に当たってひやりと冷たくなった粘液がしとどに滴っている。  
 
「あは…つめたぁい…」  
 
サティはそれをぺろぺろと舌で舐めとり始める。冷たいゼリーが咽喉を通り、胃に落ちるのがはっきりと分かる。  
そしてそれを飲めば飲むほど、骨の心から噴き出す熱さは増していく  
 
「暑いよお…もっと、もっと冷たいの頂戴…」  
 
腰をふるふると振りそう呟くさまは、もはや別のものを欲しがっているようにしか見えない、触手達がそれをどう捉えたのかは知らないが、おおよそ彼女が欲しがっていた通りの事をした。  
 
「ひゃん!つめたい!つめたいよお!もっと奥まで欲しいの!」  
 
膣奥まで感じるひやりとした感覚に、サティは悦び、喘ぐ  
もちろんその冷たさを感じれば感じるだけ、身体の芯は熱さを増していく、まるで火傷しそうなほどに  
 
「もっと、もっとぉ!冷たいの!」  
 
熱くなればなるほど、彼女は冷たいものを欲し、触手を欲した。彼女の膣中で暴れ回っていた触手がその熱で暖かくなってしまうと、次の触手が彼女を満たす。  
 
「もっと欲しいの!出して!中にいっぱい出してぇぇ!」  
 
サティがそう叫んだ瞬間  
 
どぼっ、どぼどぼっ!  
 
「ひゃあああああんっ!」  
 
少しばかり膨らんでいた触手の先端から、大量の粘液が放出される。  
 
「あ、は…冷たぁい…」  
 
と、思った瞬間、まるで焼けた鉄のようにまで熱を持っていた彼女の体が、ふっと熱を無くす。  
それと同時に、周囲に絡まっていた触手も、襲って来た時以上の速さで卵のようなものに戻り、ぱたりとその殻を閉じる。  
 
また、静寂が訪れた。サティも、卵のようなものも、少し離れた所でしゃがんだようにしている「それ」も全く動かない  
 
ピピッ キキキキ……ィ!  
 
と、目のようなLEDが力を灯すと、ズシン、ズシン…と、「それ」はサティに歩み寄る。  
その身体の下部に付いたマニピュレーターで、彼女の体を掴むと、口と思しき場所に放り込む  
 
また、静寂  
 
そして、LEDの目が明滅し、ふっ、と消えた。  
 
「おい見ろ…あいつ"認可"されたぞ」  
 
遠くでその様子を伺っていた二人の軍人が、驚いたようにぽつりと呟く  
 
「不良少女がお気に入りなのかね…"カミサマ"は」  
 
隣で煙草を吸っていた男も、煙草の灰を落とすのを忘れ、片手に双眼鏡を持ってその様子を眺める。  
 
「でも、本番はこっからだ カミサマ本人の二次試験が始まるぞ…」  
 
「こっちから見えないのが残念だな…あの子が本格的に"合格"になれば、俺たちも安泰だぞ」  
 
「ああ、だがとりあえず今日は寝よう 明日の朝には"二次試験"も終わってるだろうさ」  
 
「うむ、果報は寝て待てと言うしな」  
 
そう言うと、二人の軍人は寝袋に入って、寝息を立て始めた。  
 
 
…つづくかもよ?  
 
 

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