三月、卒業式の朝。  
 この日中等部を卒業するその少年は、元気よくお隣の家を訪れていた。  
「おはようございます」  
 ダイニングで出迎えたのは、お隣のおしどり夫婦だ。  
「雪彦ちゃん、おっはよう〜」  
「おう、おはよう! 雪彦くん! 今日もいい天気だな」  
「みたいですね。アイは起きてますか?」  
「今日で卒業って言うのに、いっつもどうりよ〜。雪彦ちゃん、今日もよろしくね〜」  
「うむ。だが雪彦くん、寝てるからといって不埒なことはしてはいかんからな」  
 だったらおれに起こしに行かせないでください、という感想は口に出さず、五十嵐雪彦は、苦笑気味に返事をして、幼馴染の少女の部屋へと向かった。  
 ドアをノックして、返事がないことを確認してから中に入ると、少女趣味に溢れた部屋のベッドでは、一人の少女が気持ちよさそうに眠っている。  
 もうそろそろ起きなければ朝食の時間もなくなるというのに、上向きにすやすやと、心地よさそうな少女の寝顔。名前は夏木藍子。雪彦と同い年で、生まれた時からのお隣さんだ。  
「アイ、迎えにきたぞ。起きろ」  
 
 一声かけて、まず真っ先にカーテンをあけると、春の朝の光が室内を照らす。  
 藍子は年齢の割に子供っぽい顔立ちだか、体の成長は年相当だ。この日はピンク色のパジャマのようだったが、やたらと寝相はいいため、肩が少し覗いているだけだ。  
 見慣れていなければ、雪彦もちょっとドキドキしたかもしれないが、毎日毎日起しにきていれば、このくらいでは動じなくなる。  
 毎朝お隣の男の子が起しに来るとわかっていながらこの無防備さなのだから、藍子パパが警告したくなる気持ちもわからなくもない。  
「アイ、朝だぞ」  
「ん……、後十分……」  
「十分も待てるか。置いてくぞ?」  
「それは、だめ……」  
「だったら早く起きろ」  
「やだ……まだ眠い〜……」  
「ほら、起きろって。今日は卒業式だろ。最後まで世話を焼かせるな」  
 ぷにぷにした柔らかいほっぺたに指先を当てて、つんつんと、つつく。  
「や……。ユキ、やめて……」  
 藍子は体を動かし、雪彦に背を向ける。  
 一生に一度の中等部の卒業式だというのに、またいつものように、大騒ぎの朝を迎えなくてはいけないらしい。  
 雪彦は、さて今日はどうやって起してやろうかと、軽く腕組みをした。  
 
 五十嵐雪彦と夏木藍子は、生まれた時からのお隣さんだった。  
 ちょっと真面目な男の子とちょっとおてんばの女の子で、同い年の二人、しょっちゅうケンカもしたが、普通の兄妹や姉弟以上に仲がよく、小学校時代はよくクラスメートにからかわれたりもした。  
 それが原因で二人の関係が壊れかけたこともあるが、二人、自分の気持ちには正直で、素直に明るく成長し、中等部の三年のその時まで、友達以上恋人未満という関係をずっと続けてきた。  
 その事件がなければ、二人の関係が進展するのは、もう少し時間がかかったかもしれない。  
 中等部の卒業式の夕刻、雪彦の家の階段で、藍子が足を滑らせ、雪彦がとっさに支えようとして、二人一緒に階段を転がり落ちる。  
 そんなバカげたことで人の精神が入れ替わったりするなんて、当事者でなければ雪彦たちも鼻で笑っただろう。  
 春休みはすったもんだで流れ去った。  
 元に戻れないかと色々な手段を試したが、再び入れ替わりが発生することもなく、二人はそれぞれお互いとしての生活を送ることになった。  
 雪彦と藍子、お互いのことは誰よりも詳しい二人だったから、入れ替わっての生活は誰にも気付かせなかったし、気付かれなかった。  
 二人はそのまま高等部に進学し、これまで通り、明るい男子生徒と明るい女子生徒として、新しい生活をスタートさせたが、それまでとは二つのことが大きくかわっていた。  
 一つは、男である雪彦の体に藍子の心が宿り、女である藍子の体に雪彦の心が宿っていたこと。  
 もう一つは、春休みのうちに、二人の関係が恋人と呼べるものに進展していたことだった。  
 
 
 七月、梅雨が終盤に差し掛かり、一学期の期末試験が近づいた頃。  
「藍子、ちょっといいか?」  
「うん?」  
 昼食後、同級生の女子と無駄話に興じていた小柄な夏木藍子――心は雪彦――は、隣のクラスの五十嵐雪彦――心は藍子――に声をかけられた。  
 クラスメートは好意的にからかってくるが、四月から散々仲がいいところを見せ付けているから、今更照れることはない。藍子は笑って立ち上がり、友達に断ってから、雪彦に並ぶ。  
「今日は友達と一緒だと思ってたけど」  
「うん、さっきまで一緒だったよ。藍子に会いたくなったんだ。いつもの場所に行こう」  
「…………」  
 いつもの場所と、いつもの行為。  
 二人、昼休みは滅多に使われることがない部活棟そばの男子トイレに向かい、中に誰もいないことを確認してから、個室に入る。  
「ユキ……、好き」  
 鍵をかけるなり、雪彦は藍子は強く抱きすくめて、唇を重ねる。  
 唇を唇で甘噛みし、ぬめったような柔らかな舌が、藍子の唇をこじ開けて口内へと潜り込み……ねっとりと藍子の舌に絡む。  
 甘く感じる唾液が藍子の中に流れ込んできて、雪彦の手が、藍子の胸のふくらみに伸びる。  
 年相当に成長している少女の乳房を、男の手が夏の白いブラウス越しに弄び、赤いリボンが揺れた。  
 それを嫌うように、藍子は身をよじった。  
 
「いきなりそれか。ムードもへったくれもないな」  
「だって時間ないし」  
「わかってるけどさぁ。んっ」  
 少し強く乳房をもまれて、藍子は今度は本気で体を逃がした。  
「アイ、おれはいいよ」  
 少女の可愛い声には不釣合いな口調で、藍子は言う。  
 それに応じる雪彦の口調も、少年の低い声には不釣合いだ。  
「どうして? わたし、ユキといっしょに気持ちよくなりたい」  
「時間ないっていったのはアイだろ。暑いし、どうせおれはイケない」  
「……もっと早く呼べばよかったね」  
「いいよ。アイが我慢弱いのはもう散々思い知らされてるし」  
「……ばか。帰ったら、ユキにもたっぷりしてあげるね」  
 雪彦は羞恥をにじませつつも、甘く囁いて、藍子の耳たぶを噛む。  
 藍子は少し体を振るわせたが、雪彦の胸をそっと押して、体を離した。  
「今日はいいよ。時間ないから、やるんなら座って」  
 雪彦は促されるままに、洋式トイレのふたの上に座り、両足を広めに開いた。  
 股間は制服越しですらわかるほどに、しっかりと隆起していた。  
「口で、してくれる?」  
「……手だけじゃダメか?」  
 ハンカチを取り出した藍子は身をかがめて、一度長い髪を背に払うと、少し上目遣いに雪彦を見上げる。  
 最初は学校での行為には抵抗していた藍子だが、セックスでのエクスタシーを覚えてから、無理に逆らわなくなった。  
 やらされた分はお返しをもらうし、やった分はお返しをする。  
 それまでセックス以外の部分であたりまえだったこと。  
 そして二人のセックスでも、あたりまえになったこと。  
 
「口がいい。飲んでくれるともっと嬉しい」  
「……いまはそんな気分じゃない」  
「元は自分のだからいいじゃない」  
「自分のだから嫌なんだ」  
「なによ、他の男のならいいの?」  
「もっと嫌だ」  
 藍子は言いながら手を伸ばし、雪彦のズボンのチャックを下げる。  
 雪彦は顔を赤らめながらも、お返しとばかり、藍子の艶やかな髪をそっとなでた。  
「ね? 口で、して」  
「アイは最後はいっつも無理矢理になるから。今日は手で我慢しろ」  
「わたしも、後で口でして上げるからぁ。ね?」  
「今日はいいって」  
 藍子のきっぱりとした言葉に、雪彦は不満げな顔をする。だが、藍子が渋いブリーフも下げて、直接手で触れると、すぐに切なげに瞳を震わせた。  
 藍子は体を震わせる男の反応に少しだけ笑みを浮かべると、両手を竿の部分に這わせて、そっと握り締めた。  
 雪彦の若い茎は急角度で反り返り、赤黒い血管を浮かび上がらせている。  
 皮がむけて亀頭を剥き出しにしたそこは、興奮に赤くふくらみ、微かに鼓動にあわせて揺れていた。  
「もうこんなに大きくして。昼間っから学校で、アイはなにを考えてるんだ?」  
 意地の悪い言葉を投げかけながら、藍子は小さな白い手を、ゆっくりと動かし始める。  
 雪彦は羞恥と興奮に目の縁を微かに赤くしながら、甘く深く吐息を吐き出した。  
「ユキが、してくれるのを、考えてたの……。ご飯食べたら、我慢できなくて、ずっと、考えてた……。ユキがわたしのここを撫でて、両手でシコシコして、それから、頭の部分にキスして、唇で、口で、べろで、可愛がってくれるの……」  
 
「……アイは元は女のくせに、いやらしいな。人の体をこんなにして」  
「ユキの体が、悪いんだもん……。ユキがいやらしいことするから、悪いんだもん……」  
 藍子が親指で雪彦のペニスの先端を撫でまわすと、藍子の指先はうっすらと濡れて輝く。  
「ユキの手、いやらしい……」  
「うん……、藍子の手は、いやらしいよな」  
 藍子は雪彦の反応を楽しむように、視線を交互に顔とそことに向けて、男のモノを弄ぶ。  
「違うもん……。ユキが、いやらしいんだもん……」  
 微かに濡れた親指と人差し指でわっかを作り、藍子はペニスの括れをなぞって、カリ首を刺激する。  
 雪彦の体が、びくっと震えた。  
「手だけで、イッちゃいそうだな」  
「やだ……。口も、して……」  
「時間もないし、五分でも終わらないなら、してやるよ」  
 藍子は楽しげに嫣然と微笑むと、手に力をこめて、ペースをいきなりアップした。  
 両手で男のそこを包む込むようにして、手を上下させて、男のペニスをこすり上げる。  
 時に強く握り締め、時にタッチを柔らかく。  
 小さな手を一杯に使って根元からカリ首、裏筋や亀頭の部分までを満遍なく刺激し、もむとしごくとを巧みに使い分けて、男を追い込んでいく。  
 雪彦のペニスからは先走りの液が溢れ、少しずつ藍子の手が濡れる。  
 
 時間がゆっくりと、だが熱い空気の中で、流れる。  
 五分が近づく頃には、ぬちゃ、にちゃ、といやらしい音が、狭いトイレの個室内に響いていた。  
 暑いこの季節、藍子の体からも汗がしたり、少女の甘い香りと男の淫臭が、室内に漂う。  
「今日はなかなかしぶといね……。我慢汁が一杯だ……」  
 可愛い少女の声で、愛らしい笑顔で、藍子は囁くように、いやらしい言葉を呟く。  
 そうしながらも、藍子の頬も興奮に桃色に染まっている。  
 藍子は、ふぅっと、男のペニスに息を吐きかけた。  
「うっ」  
 雪彦が声を漏らし、その体が大きく揺れた。  
 藍子はここぞとばかりに手の動きを激しくしたが、雪彦は寸前のところで堪えきった。  
「ユキ……、もう、五分!」  
 男の手が、藍子の手を押さえて、動きを静止させる。  
 いつのまにか時間を忘れるほど自分も昂ぶっていた藍子は、えっと思って、男の腕時計を見て、少しだけ唇を尖らせた。  
「……こういう時だけ、我慢強いんだからな、まったく」  
「約束、だよ。飲んで、ね」  
「飲むとは言ってない」  
「いいから、早く!」  
 乱暴な、余裕のない、雪彦の言葉。  
 藍子は不満げな顔をしたが、時間が厳しいこともあって、それ以上この場では逆らわなかった。  
 雪彦の手をそっと払うと、ゆっくりと、顔をそこに近づける。  
 指先で鈴口を軽く弾くように、先端から溢れる滑液をすくい取り、そっと引き伸ばす。  
 雪彦が腰を振るわせた。  
 
 銀色の雫が藍子の指先に絡まり、糸を引いた。  
 それには匂いは感じられないが、顔を近づけたペニスからは、男特有のむせたような匂いが感じられる。  
 藍子は、いつになっても慣れそうもないと思いながら、だがその匂いに興奮を誘われながら、そこに唇を近づけた。  
 少女の淡い桃色の唇が、男の赤黒い性器に、そっと触れる。  
 鈴口へのキスで、少女の唇が濡れて、艶めく。  
 藍子は一度唇を離し、ほんの少しだけ舌を出して唇を湿らせると、今度は少し唇を開き気味に、ペニスに口付けをした。  
 片手は男の袋の方に回し、もう一方の手で竿を握り締める。  
「はぁ……」  
 亀頭部を唇で撫でまわすと、男の体が震えて、微かに快感をこらえる声がふってくる。  
「…………」  
 藍子は、上目遣いに、雪彦を見る。  
「気持ちいいか?」  
 雪彦は眉を寄せて、目を細めて、微かに口を開き、あまりカッコいいとは言い難い顔を晒していた。だが快感に浸った甘い表情で、藍子の視線に気付くと、恥ずかしそうに目を伏せる。  
「うん……。気持ちいいよ……。もっと……」  
 雪彦の言葉に、藍子はにっこりと、純真そのものといった笑顔を浮かべたが、その行為は幼さとは無縁だった。  
 口を広げて、ゆっくりと、男に覆い被さっていく。  
 亀頭が藍子の小さな口の中に納まり、唇がカリ首を包み込むようにして、甘くうごめく。  
 口内では柔らかな舌が、男の濡れたペニスをねっとりと包み込むように撫でる。  
 唾液をまぶし、味わうように深く唇をうごめかし、舌で男をいたぶる。  
 もっと時間がある時は、藍子も求めたくなるし、焦らして楽しむこともするし、後ろの穴に指を伸ばして前立腺を刺激したり、裏筋をたっぷりと舐め上げたりするのだが、やはり学校の昼休みでは藍子は浸ることができない。  
 男をイカせるためだけに、好きな相手のためだけに、藍子はペースを再び速めた。  
 
 顔をゆっくりと上下させ始め、唇を使ってペニスをしごく。  
 舌を絡めて舐めしゃぶり、両手を使って、竿の根元部分と睾丸とを弄ぶ。  
 ヌチャヌチャと音がするほど、藍子はいやらしく口を上下に動かした。  
「ああ、ユキ……! いいよ、いい、気持ちいい……!」  
 雪彦がうわごとのように声を出す。  
 先ほどの手での愛撫の分もたまっていたのだろう、雪彦は今度は五分も持たなかった。  
 いきなり雪彦は、藍子の頭を両手で掴んだ。  
「んっ!」  
 これがあるからアイにフェラはしたくないんだ、と思いつつも、藍子は逃げない。逃げられない。  
 喉まで届けとばかり、雪彦は突然乱暴に腰をつき動かす。  
 藍子はなすがまま、雪彦に蹂躙された。  
「ユキ! イクよ、だす、だすよ!」  
「〜〜〜〜!」  
 早くイッてくれ、と、涙目で、声を出せずに心の中で叫ぶ藍子。  
 藍子はぎゅっと目を閉じて、口を犯されながら、片手の親指と人差し指の付け根で、ペニスの根元をきつくしめつける。  
 瞬間、藍子の口の中で、男のモノが弾けた。  
「あぁ! ユキ! ユキ!」  
 濃い精液を吐き出しながら、雪彦が二度、三度と、強く腰を突き出す。  
 どびゅっどびゅっ、と、藍子の小さな口の中に精液が溢れ、藍子の喉にまでからむ。  
 雪彦は藍子の頭を持ったまま、腰を震わせて、最後の最後まで元は自分の口内での快美感を味わった。  
 藍子は咳き込みそうになるのを我慢しながら、目を閉じたまま、雪彦が離れるまで元は自分の精液を味合わされた……。  
 
 
 雪彦も藍子も運動部に所属しているが、期末試験前で部活はない。  
 二人いつも通り一緒に帰宅し、夕食までどちらかの家でしっかりと試験勉強をして過ごす。  
 基本的に藍子――心は雪彦――は根が真面目だから、途中で悶々とすることがあっても、雪彦――心は藍子――を制して勉強に集中する。  
 たまにお互い暴走するが、それはお愛嬌だった。  
 学校から帰ると藍子は一度家でシンプルな薄いTシャツとデニムパンツに着替えて、勉強道具を持って雪彦の家を訪れる。合鍵で中に入り、雪彦の部屋に行くと、雪彦も着替えてベッドに座って待っていた。  
「ユキ、おそーい」  
「うん、お待たせ。暑いな。クーラーはつけないのか?」  
 扇風機だけで、なぜか窓も閉じたままだ。レースのカーテンが、扇風機の風でゆらりと揺れている。  
「あんまりつけるとおじさんたちがうるさいから。今日は、お父さんたち、遅いの?」  
 雪彦の両親も藍子の両親も、共働きで日中はいない。パートで働いている藍子の母親は六時前には帰ってくるが、父親は毎日何時に帰ってくるか非常に不規則だ。  
 雪彦の両親は二人同じ職場で、忙しくなければ七時には帰ってくるが、こちらは遅い時と早い時の落差が激しく、忙しい時は午前様もしょっちゅうだ。  
おかげで藍子にお隣にお呼ばれしたり、逆にお隣の一家をお呼びしたりと、家族ぐるみの交際が続いている。  
「おじさんは夕飯より遅くなるって言ってたけど、おばさんは普通に帰ってくると思うよ。うちはどう?」  
「ユキんとこも、今日は何も聞いてない。じゃあ、今日はどうしよっか?」  
「別にどうも? 大人しく勉強しよう」  
 藍子は無造作に言って座り込み、テーブルに教科書とノートを広げる。  
 雪彦は、藍子の言葉と態度に少し唇を尖らせた。  
 
「でも、昼休み、約束したのに」  
 夜こっそりと抜け出して夜這いを掛け合ったりすることもあるが、両親がいる時は、堂々と最後までやることは難しい。  
 特に藍子の父親は婚前交渉に対して厳しい。お隣の少年が将来義理の息子になることをすっかり既定の事実扱いしているが、一人娘の男親だけあって、複雑な思いもあるのだろう。  
 逆に母親の方はすっかりと娘とお隣の男の子との関係を把握していて、「避妊だけはしっかりしてもらうのよ」と、いつもむしろけしかけている。中身が雪彦である藍子としては、なんだかなぁ、と思いたくなる今の両親だった。  
「おれは今日はいいって言っただろ」  
「せっかく部活もないのに」  
「昼もしたのに、もう我慢できないのか?」  
「ユキはイッてないのに、どうして我慢できるの?」  
「アイは間隔が短すぎ」  
 時には藍子も強い衝動に駆られることもあるし、三日も待たされれば藍子も自分からしたくなるかもしれないが、ほぼ毎日求められる上に学校でもなのだから、休みどころがない。  
 セックスを覚えたばかりの男女、と言われればそのとおりだし、気持ちいいことは大好きだから強く抵抗はしないが、はっきりいってやりすぎだと思う藍子である。  
「男の体って、すぐしたくなるんだもん」  
「我慢も覚えろ」  
 雪彦は床に座る藍子の後ろから、そっと藍子を抱きしめた。  
「……ユキがいるから、我慢する必要なんてないでしょ?」  
 耳元での囁きに、藍子はわずかに身をよじった。  
 
「……それはかなり男に都合のいい女だな。普通の男が女に言えば、下手すると別れ話になりそうだ」  
「でも、ユキは普通じゃないもん。ユキだって、したいくせ」  
「……まあ、するのは好きだけどさ……」  
「ほら、やっぱり。ね? ね? いいでしょ?」  
「せっかく試験休みで部活ないのに、イチャイチャしてる場合じゃないだろ?」  
「せっかく部活ないんだから、イチャイチャしようよ。だれもいないし、今なら声も出し放題だよ」  
「アイはいやらしいな」  
「ユキだって」  
 雪彦は小柄な藍子の体を半ば強引に反転させて、抱きしめたまま、そっと唇を重ねる。  
「……汗臭い」  
「なによ、ユキだって。女の匂い、出してる」  
 言いながら雪彦は、薄いシャツと下着ごしに、藍子の乳房に手を這わせる。  
「んっ」  
 藍子は雪彦と向き合うように体勢を動かしながら、微かに体を震わせた。  
「シャワー、あびてこようか?」  
「うんん、いい。なんだか、ユキの匂い、興奮するし」  
「……変態? 元の自分の匂いなのに」  
「違うもん、たぶん、ふぇろもん? とかだよ、きっと。女の匂いは、男にはいい匂い。わたしの匂いも、今のユキにはいい匂いでしょ?」  
「むせそうだ」  
「興奮する?」  
「ちょっと、してきた、かな」  
 藍子は正直に答えて、自分から雪彦にキスをする。  
 雪彦は嬉しそうな表情でそれを受けたが、自分から言い出したにも関わらず、少し頬が赤くなっていた。  
 
「ユキってば、素直だね?」  
「まあな」  
 一度唇を離してそう言いあうと、藍子は小さく笑い、自分からもう一度唇を重ねた。  
 相手の首に腕を回し、体を押し付けるようにしながら、ねっとりと舌を絡める。  
 雪彦も積極的に藍子の舌に舌を絡めながら、もう一方の手で強く弱く、柔らかい乳房をもみしだいた。  
 お互いただ舌を動かすのではなく、時に相手の唾液を吸い込み、時には流し込む。  
 二人、鼻の奥で興奮した甘えた声を漏らしながら、唇で唇を甘噛みしたかと思うと、強く吸い、舌で相手の口内を犯す。  
 雪彦の片手は藍子の背にまわり、ぎゅっと力が入る。  
 藍子は雪彦の髪を撫でるように頭を巻き込むように、恋人の首に腕を回す。  
 いざ行為を始めると積極的になる藍子を感じながら、雪彦は藍子の張りのある乳房をまさぐり、刺激を送り込む。  
 乳房全体を押さえて上下に揺らすと、シャツ全体が揺れて、乳房のたわわな動きが卑猥に映った。  
 雪彦はそのまま右手は上に揺らし、左手は下に押し付けると、藍子の乳房を上下に弄ぶ。  
 ゆっくりともむたびに、薄い夏のTシャツの下で柔らかい乳房がふにゅふにゅと形を変え、雪彦の手の中で弾力的に弾む。  
「はふ……」  
 先に唇を外したのは藍子だった。  
 濡れた吐息を漏らしながら、雪彦の耳まで唇を滑らせる。  
「アイが、口でしてくれる、約束だったよな……」  
「うん……」  
 雪彦も、藍子の耳たぶを軽くかんだ。  
 
「口で、してあげる」  
「じゃあ、脱ぐよ」  
「いい。わたし脱がせる」  
「……おれもやるよ」  
 雪彦は興奮した顔で、藍子は頬を上気させつつ笑顔で、お互いの服に手をかける。  
 だが雪彦の方は、藍子のシャツを半ばまで持ち上げた時点で、そのまま下着越しに藍子の乳房を再び撫でまわしにかかった。  
 藍子は小さくうめいたが、笑って、相手を嗜める。  
「ちょっと手を離して。後でいくらでもしていいから」  
「おっぱい、気持ちいいよ。ずっとさわってたい」  
 雪彦の唇は藍子の頬にキスを繰り返し、ゆっくりと下がっていく。  
「元はアイのだろ?」  
「でも、前はもっとちっちゃかった。ブラ、きつくなってない?」  
「かも。アイが散々さわるから」  
「もっとおっきくしたい」  
 両手を使って、雪彦は藍子のふくらみをもみしだく。  
 藍子はくすぐったさの奥に見える刺激に心を震わせながら、少し甘く笑って、しかたないなと言いたげに、自分で自分のシャツを引っ張り上げた。  
 雪彦は藍子の手による邪魔がなくなると、すかさず藍子の胸元にまで唇を這わせる。  
「んっ」  
 微かにあえいで、藍子は体をのけぞらせた。  
 両手を上にあげるようにしてシャツを脱ごうとすると、雪彦が迫ってくる。  
 藍子はシャツを脱ぎながら、自分から床に体を倒す。  
 長い髪が、床に広がった。  
 
 傍目には、男が女を押し倒したかのように見えたかもしれない。  
 実際、雪彦は藍子が自分から倒れたことに気付かず、押し倒したつもりだった。  
 片腕にシャツをまとわりつかせたまま床に倒れた藍子の、その胸のふくらみに、雪彦は顔をうずめる。  
 白い清楚なブラジャー越しに、片方の胸に強く唇を押し付けながら、もう一方の胸を強くもみしだく。  
 藍子は微かな痛みを感じたが、それはすぐに痺れるような感覚になって、甘く心に響いてくる。  
 気付くと乳房の先端の突起は硬くなって、ブラジャーの裏布に柔らかくこすれていた。  
 男に女のふくらみを弄ばれながら、藍子はそっと片手を背に回し、自分からブラジャーのホックを外す。  
 きつめだった下着が、ふっと緩んで、乳房が量を増したかのように、一瞬震えた。  
「この格好、なんだかすごくいやらしいね……」  
 下半身はデニムパンツをきちんとはいたままなのに、上半身はシャツを脱ぎ、ブラジャーも緩んで乳房が隠れているだけという姿。  
「ユキってばわたしの体をこんなにして……恥ずかしくないの?」  
 雪彦は、むしろ自分が興奮と羞恥を覚えながら、藍子のブラジャーを押し上げた。  
 形のいいふくらみと、つんと上を向いたピンク色の蕾が姿をあらわす。  
 藍子は快感に頬を上気させて、少し意地悪く、だがにっこりと可愛らしく、笑った。  
「おれをこんなにしたのは、アイだろ? あっ!」  
 いきなり左の乳首に吸い付かれ、歯を立てられて、藍子はぴくんと甘い声を漏らす。  
 藍子は体をよじるが、雪彦は逃がさない。  
 片手で直接藍子のもう一方の白い乳房を包み込み、乳首ごと、少し乱暴にもむ。  
 
 汗に濡れたふくらみは、しっとりとした感触を雪彦の手に伝えてくる。  
 そうしながら雪彦は自らの腰を女の太ももにこすりつけ、乳房を舐めて、キスをし、唇で乳首を引っ張る。  
 時折脇の下からウエストにかけて手を滑らせて、いやらしく撫でさすり、極上の肌触りを楽しむ。  
 藍子は快感に震え、瞳を淫蕩に潤ませつつも、少し子供っぽく微笑んでいた。  
 そっと自分で両手を上げるようにして、ブラジャーを腕から抜く。  
 まるで自分から、二つの乳房を男に突き出すような仕草。  
 半ば無意識の、だが残りの半分は意識しての、動作。  
 藍子の体は上気して、うっすらと桃色に染まっていた。  
「アイ……、右も……」  
 雪彦は一瞬、ユキってばやっぱりいやらしい! と言いたげな目をしたが、彼の方も夢中だった。  
 もう何度も経験していることなのに熱中して、男にはない女の二つのふくらみを攻める。  
 藍子の要求にしたがって、右の乳首に吸い付く。  
 左の乳房をこねまわし、乳首をつまみ、指ではさみこみ、ぐりぐりと突起をなぶる。  
「ユキ、乳首いじりだけで、イッちゃう……?」  
「さすがに、んっ、だけでイクのは……」  
「こんなに気持ちよさそうなのに……?」  
「うん……気持ちいいよ……」  
「下、どうなってる? もう濡れてるでしょ?」  
 雪彦の手が、白くなめらかな藍子の肌を滑って、ゆっくりと下におりる。  
 藍子は甘い吐息を漏らしながら、にっこりと微笑んだ。  
「うん、濡れてる感じがする……。そろそろ、下も脱がせてくれるか?」  
 
「……ユキ、えっちっぽい」  
「ぽいは、余計かも……」  
「わたし、そんな女じゃないのに」  
「自分から、口でしてとか言い出すくせに……?」  
 からかうような言葉だが、藍子の声は甘い。  
「それは男だからだもん!」  
 また、乳房の先端の突起が強めにかまれる。  
 藍子はあえいで、思わず雪彦の頭を強く抱きしめた。  
「もう、胸はいいっ」  
「だめ。やめたげない。アソコも一緒にしてあげる」  
 雪彦は攻めるような声を出すが、彼の息も興奮と羞恥とに荒くなっていた。  
 素早く手を藍子の下半身に伸ばすと、手馴れた動きで、テニムパンツのボタンを外す。  
 もちろん口は藍子の乳房を攻めたままだ。  
 顔で乳房を押しつぶすようにしながら、乳首を舌でからめとり、時折唇で噛む。  
 藍子は嫌がったわりに、手は雪彦の頭を抱いたままで、たまにもっとと言いたげに、男の顔に自分の胸を押し付けている。  
 甘い吐息と、微かな声。  
 ジッパーがさがり、藍子の白いショーツが姿を見せる。  
 雪彦の手の平が、上から隠すかのように、そこをおおう。  
 雪彦の行動の一つ一つに、藍子は女の反応を見せて、身を震わせた。  
 ふっくらとした恥丘と、うっすらと感じられる薄い恥毛。さらにその奥にある、女の証。  
 じゅくっと、音こそ聞こえなかったが、藍子のそこが、甘く疼いてより強い刺激を求める。  
 雪彦はそこを包み込むように、少しずつ圧力を加えていく。  
 
「あ……」  
 雪彦が中指を微かにうごめかすと、藍子はぎゅっと彼の頭を抱く腕に力をこめた。  
 藍子の呼吸が荒くなっていくのを、雪彦は興奮とともに感じながら、徐々に動かす範囲を広げていく。  
 手の平を使ってもむように白い丘を撫でて、指先で中心をなぞる。  
 薄い下着一枚に隔てられたそこは、熱く震えて雪彦の手を迎え入れる。  
 雪彦は唇で乳首を甘噛みしながら、ショーツ越しに、クリトリスに指先を押し付けた。  
「いっ!」  
「あ、ごめん、きつかった?」  
「うん……。もうちょっとそっと頼む」  
「ユキってば、相変わらずココ、敏感だね……。このくらい?」  
 タッチを優しくして、雪彦は藍子の表情をうかがいながら、そっと再び下着越しに藍子の膨らんだクリトリスを撫でる。  
 興奮した面持ちの雪彦に、藍子は目のふちを赤くしてうっすらと微笑み返し、目を閉じた。  
 雪彦はその笑みにまた興奮を強くすると、そのままクリトリスを撫でまわしながら、別の指をその下に押し込んだ。  
 ショーツが、食い込むというよりも吸い込まれるように、割れ目の中に潜り込み、くちゅっと音を立てる。  
 
「ユキのここ、いやらしい音……」  
「うん……」  
 藍子の声は快感に少し高くなっていた。  
 雪彦は片手でショーツ越しに藍子の女を可愛がり、同時に唇で藍子の乳房をいたぶる。  
「このまま、一度クリちゃんでイッちゃいたい?」  
「それもいいけど、んっ、その前に、脱ぎたい……」  
「一回、イッちゃってもいいよ?」  
「脱がないと、今日はそれでやめるけど、それでいいか……?」  
「それは絶対ダメ!」  
 雪彦は強く藍子の乳首をかみ、クリトリスをつねった。  
「はぅん!」  
 藍子の体が、一瞬大きく跳ねた。その反応の大きさに、雪彦は慌てて手を放す。  
「あ、ご、ごめん! 痛かった? 大丈夫?」  
 うっすらと目を開いて、藍子は潤んだ瞳で、雪彦を見つめる。  
「……だからもっとそっとしてくれってば……」  
 藍子の白く整った形の乳房は、藍子の呼吸に合わせて震えるように上下していた。  
 中心の小さな突起は、唾液に濡れて艶やかに輝き、少女の性を主張する。  
「……ユキ、もしかして、いま、イッちゃった?」  
「イクっていうか、きつかった……」  
「……それ、軽くイッたんじゃない?」  
「そんな感じじゃなかったよ……」  
 藍子は甘い息を吐きながら雪彦の体を押し、自分も上体を起した。  
 
「アイもさっさと脱いで……」  
「そんなにしたいの?」  
「うん、したい。ここでやめられたら生殺しだ」  
「……ユキって、やっぱりいやらしい」  
「アイだって、今更やめられないだろ? こんなにしてるくせに……」  
 藍子の手が、素早く、雪彦の下半身に伸びる。  
「うっ」  
 ズボン越しの男の股間は、大きく隆起して、硬くなっていた。  
「昼もしたのに、やらしいのはどっちかな」  
「ユキだって! いっぱい濡らしてるくせに!」  
 雪彦が顔を真っ赤に染めて睨んでくるが、藍子は素直な笑みのままだ。  
「うん、アイと一つになりたい。早くしよう」  
 藍子は背伸びをして、雪彦と唇を合わせる。  
 強く吸って、相手が反応する前に、素早く離れる。  
 明るく立ち上がった。  
「ほら、アイも早く脱ぎなよ!」  
「押し倒したい」  
 雪彦は真顔で言って、もどかしげにシャツを脱ぎ捨てながら立ち上がる。  
 藍子は上気した頬のまま、可愛らしく笑って、デニムパンツを脱ぎ捨てた。  
 
「なんか、ムードないな」  
「ユキが恥ずかしがったりとかしないからよっ」  
「相手がアイだから」  
「わたしは恥ずかしいもん!」  
「全然、そうは見えないな」  
 二人、軽口を叩きあって服を脱ぎ捨てていくが、これからやる行為に対する興奮は隠し切れていない。  
 藍子の乳首はその存在を主張するようにピンととがっていたし、ショーツを脱ぐ時、そこは銀色の糸を引いた。  
 ブリーフまで脱ぎ捨てた雪彦のそこも、赤黒く勃起し、先走りの液体をにじませている。  
 先に脱ぎ終えた藍子は、長い髪を揺らし、ベッドに膝をつくようにして登る。  
 四つんばいに近い姿勢だが、若く張りのある乳房は下向きになっても形が崩れず、魅力的に蕾を震わせる。丸く弾力のあるヒップが揺れ、女の部分も丸見えだった。しっとりと濡れたそこはピンク色に艶めいて、男を誘う。  
「ユキ、わたしの体で、そんないやらしい格好して、挑発してるの?」  
「うん、してる。んっ!」  
 笑う藍子だったが、いきなり後ろから濡れた花弁に触れられて、ぴくんと体を揺らした。  
「こんな格好して、こんなに濡らして!」  
 後ろの穴まで丸見えのせいか、ベッドに片膝をついた雪彦の鼻息も少し荒い。  
 藍子はすぐに体をねじって雪彦の手を避け、両手を後ろに回してベッドにつき、胸をそらし気味に体を雪彦に晒した。片膝を立てて、もう一方の足は伸ばすような姿勢だが、濡れた女の部分は足の陰になって雪彦からは見えない。  
 今にも襲い掛かってきそうな男に、藍子はにっこりと、だが瞳を潤ませて、笑顔を見せた。  
 
「アイが、口でしてくれ約束だろ?」  
「言われなくったって!」  
 雪彦は彼もベッドにのると、藍子の片膝に手をついで、強引に大きく開かせた。  
 藍子が逆らわずに足の力を抜くと、今度は真正面から、藍子の女の部分が丸見えになる。  
 雪彦はいきなりそこにむしゃぶりついた。  
 藍子はぴくんと、声を押さえてのけぞる。  
 いきなり乱暴だな、という言葉は、出せば喘ぎ声になりそうで、口に出せなかった。  
 雪彦は藍子の膝から太ももの裏に手を回し、片足を持ち上げるようにさらに開かせる。もう一方の手で太ももの付け根を押さえ込んで、藍子が足を閉じるのを阻止しながら、わざと音を立てて藍子の花弁を吸った。  
 雪彦はがちがちに硬くなっている自分のペニスの代わりとばかり、愛撫というよりは女のすべてを味わうかのように、艶やかに濡れたそこに熱い口付けを繰り返す。  
 まだ経験の浅いそこは、充血し微かに広がりを見せているが、慎ましさをなくしてはいない。それでいながら、男の唇に吸われるたびに、まるで別の生き物のようにぬめぬめと蠢き、潤いを増していく。  
 藍子は両手で体を支えたまま、呼吸を乱して、その甘美な感覚を素直に味わう。  
 女が男の感覚を知りえないのと同じように、男では絶対に味わえない女の感覚。  
 雪彦は藍子の反応に気をよくしたのか、勢いを少し緩めて、顔を上げる。  
 目は少し血走り、彼の呼吸は荒い。  
 藍子はその視線に気付いて、熱っぽい笑みを見せる。  
「気持ちいい、よ……」  
 
 雪彦はその視線にますます感情を昂ぶらせて、再び藍子の秘部に顔を埋めた。  
 が、今度の動作は繊細だった。  
 藍子の余裕を叩き壊したいとばかり、もっと乱れた藍子を見たいとばかり、舌でふっくらと柔らかい花びらを丁寧になぞる。唇で陰唇を挟み、微かにいじめるように引っ張り、強くなぶる。  
 雪彦は片手で太ももを持ち上げ、藍子の体に押しつけた。柔軟性をもって藍子の片足は横に大きく倒れ、膝が胸の横の位置にくるまでに大きく開かされる。  
 雪彦は容赦なくその太ももをなでまわし、もう一方の手を藍子の花弁に動かす。藍子は自由になった足を、無意識に閉じようとするが、雪彦の頭を軽く押すだけだった。  
 雪彦は指先で秘唇を左右に押し広げ、そこに愛らしい突起を見つける。すぐにゆっくりと、つんととがった突起を舌でつつき、唇でやんわりとくわえこんだ。  
「そこは、そっと……」  
 藍子は声を堪えて、腰を震わせた。  
 雪彦はわかっているとばかり、優しく愛撫を繰り返す。指よりも柔らかい、熱く濡れた舌で、ねっとりとクリトリスをなぶり、時折濡れた花弁から愛液をすくって、塗りたくった。  
「ふぁ……、んっ……」  
 長くゆっくりとした繊細な愛撫に、藍子は声を押さえようとしているが、声にならない声を抑えきれない。鼻にかかった音を漏らし、無意識に体を震わせ、甘い喘ぎ声を漏らした。  
 藍子の片手はいつのまにか前に回り、自分のおなかから太ももにかけて、やんわりと繊細に撫でていた。その腰は震えて、もっと、と言いたげに、時折腰が浮き、雪彦の口に押し付けられる。  
 それを焦らすように、雪彦はまた口を離した。  
「あっ……」  
 
 どうしてやめる? と言いたげな目を、藍子は雪彦に向ける。そこには先ほどまでの素直な笑みはなく、切なく求める少女の顔があった。  
 雪彦はにやりと笑って見せようとしたが、彼の方でも余裕がなく、藍子のその表情にさらに感情を刺激されただけだった。  
 雪彦は顔を戻し、今度は膣口に舌を差し向けた。藍子は期待に大きく息を吐き出したが、尖らせた舌が自分の中に進入してくるなり、また腰を震わせた。  
 甘く痺れるような快感の中に、心を犯されるような、満たすような、切ない刺激。  
 舌だけでは足りない、だが、それはそれでとても気持ちがいい。  
 雪彦はそんな藍子の気持ちがわかっているのかいないのか、舌を藍子の中に差し込み、唇でも女の部分をなぶりながら、指先を愛液で濡らし、再びクリトリスも攻める。  
 先ほどはきつさと痛みを感じさせたその行為も、今では強い快感だけだった。  
 藍子の全身は桃色に染まり、愛液がそっとつたってシーツまで濡らす。  
 女の淫臭と、甘い香りと。男の汗と、熱い吐息と。  
 室内の温度が高まり、二人を熱の籠もった空気が包み込む。  
 藍子は手に力が入らなくなり、体を支えきれずに、ベッドに体を倒した。  
 一方の手でおなかを撫でながら、もう一方の腕で太ももと抱き込むようにし、自分のバストにまで手を伸ばす。  
 しっかりと汗ばみ、もちもちした肌は藍子の手の平に吸い付くように反応を返す。  
 男が花弁と突起を攻める動きに合わせるように、藍子はそっと自分の乳房を撫で、手の平で乳首ごともみ潰す。  
 押し潰すとかたく尖った乳首はふくらみの中にうずまり、手の平を戻すと、弾力を持って元に戻り、その存在を主張していた。  
「はぁ……、あふ……」  
 藍子は瞳を閉じて、甘く煩雑な呼吸を繰り返しながら、片手では足りないとばかり、もう一方の手も乳房に伸ばそうとする。  
 
 次の瞬間、藍子は女のような甲高い声をあげた。  
「ひゃうん!?」  
 いきなり、雪彦が藍子の膣に指を挿入したのだ。  
「ユキ、自分でおっぱいさわって、いやらしすぎ!」  
 藍子の手は一瞬雪彦の頭を押しやろうとするように動くが、雪彦は指で藍子の中をかき混ぜるように動かし、藍子に余裕を与えない。  
 花弁は潤い、難なく雪彦の指を迎え入れていた。中は熱くたぎって、秘肉は雪彦の指を喜ぶように、押し包むように、奥に誘い込むように、蠢いて震える。  
「このままイキたい!? それとももう欲しい!?」  
「このまま……!」  
 イキたいっ! とあえぐように言うと、藍子は顔を快感に染めて目を閉ざした。  
 雪彦は強く苛立たしげな顔をして、藍子の中に入れている指を二本に増やした。  
「ユキは男のくせに、女の体で歓ぶなんて! しかも一人だけで気持ちよくなって、恥ずかしいと思わないの!?」  
 アイだって女のくせにいっつもやらせて男の体で一人でイクだろ、と言いたげに藍子は目を開くが、言葉にはならない。  
 甘く強い快感に浸りながら、あえぎ声だけは抑えながら、藍子は呼吸を早めて、両手で自分の乳房をもみしだき、時折乳首を強くつまむ。  
「アイ……! 口で、クリも……!」  
「どこまでいやらしいの! やって欲しかったらお願いしなさいよ! 『わたしは元男なのにクリちゃん舐められたいえっちな女です』って!」  
 雪彦は激しく女の中をかき混ぜながら、顔を真っ赤にして叫ぶ。  
 
 藍子は刺激に体を震わせながら、瞳は熱く潤ませつつ、少しだけ、淫蕩というよりは子供っぼく、可愛らしく微笑んだ。  
「んっ……、わたし、はっ、元男なのにっ、はぅ、ん、クリちゃんを、舐められたい、えっちな女、ですっ……!」  
「ちょっとは恥ずかしがってよぉ!」  
「アイ、言った、ぞっ。ん、早く!」  
 藍子の言葉に雪彦はむしろ自分の方が恥ずかしそうに、藍子の女の部分にまた顔をうずめた。  
「んぅっ!」  
 一方の手は藍子の膣の中につっこんだまま、クリトリスをいきなり唇でつまみ、もう一方の手で藍子の太ももを撫でる。  
 種類の違う三つの刺激に藍子は体を震わせて、快感に微かに腰を上下させ、乱暴に自分の乳房をなぶる。  
 雪彦の動きも乱暴だった。雪彦のペニスは、触られてもいないのに、興奮に先ほどから先走りの液を漏らして、びくびくと脈打つ。今すぐにでも藍子の中につっこみたいのを我慢しながら、濡れた藍子の恥部を舐めしゃぶり、撫でまわし、唇でいたぶる。  
 藍子の愛液は後ろのすぼまりにまでこぼれ、雪彦の一方の手が、太ももからそこにそっと動いた。  
 そこは藍子が腰を揺らすたびに力が入るのか、きゅっきゅっと呼吸するかのように震えていた。雪彦の指先がそこに触れると、藍子は「ひあっ」とひときわ大きな声を漏らす。  
 藍子はぎゅっと自分の乳房を握り締めて、下半身からの感覚だけに耐える。  
 二人の呼吸はさらに荒く早くなり、雪彦の指先がアナルをなでさすると、藍子は何度も甘い喘ぎ声を漏らした。  
 
 雪彦の片手はアナルを攻めながらも、もう一方の手の二本の指先は藍子の膣の中を上下に蠢き、時折指先を曲げて、藍子の敏感な部分を何度も何度も刺激する。  
 雪彦の動きに従って、藍子な体が、ゆっくりと、だが熱くくねる。  
 長く執拗な攻めに、藍子が抑えきれず声を漏らす頻度が高くなっていき、やがて藍子は泣きそうな声で、雪彦の名前を呼んだ。  
「アイ、アイ……!」  
「イッちゃう? イッちゃうの?」  
「ぅん、もうっ、もうすぐ……!」  
 藍子の手の動きは次第に単純になり、乳房を乳首ごと軽く押さえるだけになる。  
 逆に雪彦の攻めはラストスパートとばかり激しさを増す。  
 藍子の秘肉は吸い付くように、ぬめりながら男の指に絡み、何度も何度もしめるけるように男の指をくわえ込んで離さない。  
 花弁は充血し、愛らしく開き、男の前にそのすべてを晒す。  
 男の指がその中心に突き立てられ、唇と舌とがはいまわり、ぐちゅぐちゅと音を漏らした。  
 雪彦は藍子の呼吸がせっぱ詰まり、体がぶるぶると震え始めたのを察して、ぎゅっと指を深く押し込んだ。  
「イッて! イッちゃえ!」  
 同時に、藍子のクリトリスをくわえ込み、ぎゅっと唇で挟み込み、軽く歯を立てる。  
「んっ、アイっ、いっ、アイ!」  
 その瞬間、藍子は強く自分の両方乳首を指先でつまみ、そして片方をビンと弾いた。  
 
「〜〜〜〜!!」  
 唇をかみ締めて、藍子の声にならない絶叫。  
 それでも蠢かす雪彦の指を、藍子の秘肉が強く雪彦の指を締め上げて、奥へ奥へと引き込む。  
 雪彦は指を奥へと突き刺し、手の平全体で藍子の秘部を押して圧迫するように撫でて、強くクリトリスを吸い込み、アナルにまでも指先をつっこむ。  
「ん、〜〜〜〜! ぁっ、ぁ〜〜〜〜!!」  
 藍子は片方の乳首をつまんだまま、全身を硬直させて、腰を跳ねるように押し上げ、つま先までピンと体をそらし、喉の奥でさらに声を出した。  
 長く続く快感の絶頂。  
 愛液があふれ、がくがくと腰だけが震え、胸がつんと突き出され、膣は男の指を離さない。  
 雪彦も最後の最後まで、愛撫の手を休めない。  
 藍子は喉をのけぞらせるように、さらにぴくぴくと体を震わせて。  
「あぁ……!」  
 最後に細い悲鳴のような声をあげると、全身から力が抜けたかのように、ぐったりとなった。  
 が、雪彦がさらに愛撫の手を止めずにいると、藍子は苦しげになって、泣きそうな顔で手を自分の股間に動かした。か細い、泣き声のような声。  
「アイ、もう、いい……!」  
 その声で、ようやく雪彦は、鼻の頭まで愛液にぬれた顔を上げた。  
 藍子の中に入れた手をそのままに藍子を見上げると、藍子は上半身を横向きにし、どこかとろんとした艶っぽい表情で、雪彦を見つめていた。  
 白い胸は汗に濡れ、桃色に染まってまだ激しい鼓動とともに上下し、足も腕も、力が入らないかのようにベッドにうずもれている。  
 片手だけが恥丘の上にあって、そこも呼吸にあわせてゆっくりと震えていた。  
 
「ぁふ……」  
 雪彦が藍子の割れ目から指を抜くと、藍子は甘い呼吸を漏らした。  
 指先はすっかり濡れて、藍子のそことの間に、細い糸の橋を作る。  
 雪彦は興奮に染まった顔でそれを口に含み、ぬめりを取り除くと、体を起して藍子に覆い被さった。  
「ユキ……」  
 藍子の余韻はまだ続いていた。  
 唇が重なってきて、藍子は心を震わせるが、嫌がるでもなく、積極的になるでもなく、されるがままだ。  
 舌が差し込まれ、唾液が混じる。  
 ただその片手だけは、そっと恋人の腕にあてられていた。  
「ユキ……、そんなに、気持ちよかった?」  
「うん……」  
 まだ快感の中にいるかのように、藍子の声は甘い。その頬は上気して、少女の色っぽさをにじませていた。  
 雪彦はそんな声に耐えられないかのように、何度もキスを繰り返し、藍子の耳をかんだ。  
「じゃ、わたしも、するね?」  
「んっ……まだ、もうちょっと……」  
 雪彦がこのままおさまるはずがないことは、藍子にも言われずともわかっている。  
 藍子はイッたが、ひたすら奉仕していた形の雪彦は、高い興奮のまま取り残されている。  
 藍子も藍子で、このまま一つにならずに終わるのは、少し物足りない。  
 だが、再開すればまだ何度もイケるが、この女特有の甘い余韻を、藍子は充分気に入っていた。  
 なだらかに落ち着いていく体と心。  
 
「まだ、もうちょっと待て……。ゴムでも、つけてろ……」  
「え、ユキ、生理は今度の土曜くらいでしょ?」  
「うん……。でも、するならちゃんとつけろよ……」  
「今日は、大丈夫、だよ」  
「……その大丈夫は、どういう大丈夫だ……?」  
「今日は、中でしてもいい日!」  
「それ、全然大丈夫じゃない……」  
「いいの! 元々わたしの体だし、もしできちゃったら、責任とってあげる!」  
「全然、よくないって……」  
 藍子は体をよじって逃げようとするが、雪彦は強引に上から藍子の方を押さえつけて、逃がさない。  
 熱く隆起した雪彦の股間が、藍子の濡れた割れ目に触れる。  
 二人、一瞬体を震わせたが、次の瞬間、藍子の手は緩慢ながらも動いていた。  
 自分の女の部分を、手でしっかりと覆ったのだ。  
「んっ……」  
「はうっ……」  
 男のモノを指先で弾く形になり、二人にとって、その刺激すら今は甘い。  
「ユキ、手、どけて」  
 雪彦は熱く激しい瞳で、藍子を直視する。  
 
 藍子は頬をまだ赤くしたまま、瞳も潤ませたまま、微かに吐息を付いた。  
 諦めたかのように、にっこりと微笑む。  
「そんなに、したいのか……?」  
「焦らさないで! もういいでしょ!」  
 雪彦はペニスを藍子の手に押し付けて、二度三度と揺らす。  
「アイは昼にしたし、おれも今イッたし、もうおあいこだろ……?」  
「またイカせてあげるからぁ! ね、早く!」  
 言葉とともに強くぎゅっと抱きしめられて、敏感になっている全身が痺れ、乳房と乳首が雪彦の胸に押し潰された。藍子は微かに体を震わせたが、笑みを絶やさなかった。  
 雪彦の耳元で、甘く囁く。  
「いいけど、なにがしたいんだ?」  
「わかってるくせに!」  
「させてほしかったら、お願いしなよ。『ぼくは元女なのに、女におちんちんをつっこみたいスケベ男です』って」  
 女の可愛い声でそんなことを言う藍子に、雪彦の顔は真っ赤になった。  
「い、言えるわけないでしょ! そんな恥ずかしいこと!」  
 叫ぶなり、雪彦は強引に、藍子の細い腕をつかんで、ベッドに押し付けた。  
 藍子はとっさに足を閉じようとしたが、すでに雪彦の体がそこにあるから、あまり意味がない行動だった。  
 本気で嫌がればまだ抵抗のしようはあっただろうが、雪彦のペニスが割れ目に改めて触れた時点で、藍子は微かに体を震わせて、恋人に身をゆだねた。  
「おれには言わせたくせに……」  
 小さく笑って、自分から足を開き気味にし、微かに腰を浮かせて、男の挿入を助ける。 雪彦は藍子の話をすでに聞いていず、乱暴に強引に藍子の中にペニスを突き入れてきた。  
 
「あぁ……! ユキ……!」  
「ぁっ……!」  
 雪彦が震えた声を漏らし、藍子も微かにあえぐように吐息をつく。  
 体を串刺しにされるような強い圧迫感が藍子を襲い、侵入してきた雪彦のモノに向かって、藍子な体が、ゆっくりとくねる。  
 先ほどまで二本の指をくわえ込んでいたそこは、少し抵抗しつつ男のペニスを限界まで受け入れていた。  
「ユキの中に入った、よ!」  
「うん、入ってる、な……」  
 藍子はイッたばかりで少しきついとも感じたが、体が満たされるのは今となっては嫌な感覚ではなかった。濡れた膣の粘膜は、歓びうねりながら男のペニスに押し分けられ、からみつくように包み込む。  
「ユキ、好き……!」  
 雪彦は深く挿入したまま、藍子の腕を開放し頭を抱きこみながら、唇を奪う。  
 藍子は一瞬体を震わせたが、少し困ったように、だが一体感から来る充実感は隠し切れずに、そっと男の首に腕を回した。  
 雪彦の舌が藍子の唇を割り、唾液が流し込まれる。  
 藍子は喉をならして、それを飲み込み、お返しとばかり、雪彦の舌に舌を絡める。  
 雪彦が顔を上げると、藍子の顔が一瞬ついていくように動き、愛らしい舌が数瞬姿を見せ、糸を引いた。  
 雪彦はそのまま上半身を起して、藍子の腰を掴むと、いきなり激しく藍子の中に激しく出し入れし始めた。  
 
「動く、ね!」  
「はぅっ、ん、動いてから、言うな……!」  
「ユキ、気持ちいい……!」  
 透き通った白い肌、しっとりと張りがあるお椀型の乳房、その中心にあるピンク色の突起。  
 大きすぎず小さすぎないそこが、雪彦の動きに合わせて、上下に揺れる。  
 藍子もすぐに再び昂ぶり始めたが、雪彦の表情はすでに限界ぎりぎりといった感じだった。  
 余裕がある時は、体位を変えたり、奥に押し付けてぐりぐりとなぶったり、浅くいれて藍子をじらしたり、文字を書いてお互いにゆっくりと楽しんだり、キス以外にも全身を撫でまわしたりするのだが、雪彦は余裕がないのか、最初から荒々しくつきこむだけだ。  
 男のモノは藍子の中をえぐり、子宮の入り口まで何度も何度もノックする。気持ちいいが、挿入直後の今の藍子には、少しきつく、強すぎる刺激。  
 だが、藍子としてはこんな荒々しさも嫌いではない。  
 繋がったままゆっくりと愛を語り合ったり、お互いの体を愛撫しあったりするのが本当は一番好きだし、ねっとりとした動きの方が高まりやすいのだが、激情に任せた獣のような動きも、気分が一致すればお互いに興奮剤になる。  
 藍子の体にもすぐに火がつき、シーツをぎゅっと握り締めて、男に蹂躙される。肩がくねり、胸が震え、汗まみれの体が揺れた。  
 
 それでも、この日の雪彦は先走りすぎだった。  
「ユキ、イキそう! イッちゃいそう!」  
「え、ぁんっ! 早い、な、んくっ!」  
 藍子にも快感はあるが、それよりも強く翻弄されることで思わず声が途切れ途切れになり、あえぎに近い声が漏れる。  
「ユキが、焦らすからぁ!」  
 そのあまりにもせっぱつまった声に、藍子は少しだけ微笑み、荒々しく体を突き入れられながら、快感に浸る。  
「だしても、ん、いい、よっ」  
「ユキは? ユキも一緒にイッて! 一緒にイキたい!」  
「おれは、まだっ、ぅっ」  
「早く、早くイッて!」  
「そんなこと、言われてもっ」  
「気持ちよくないの!?」  
「気持ち、いい、けど……!」  
 なめらかに高まり、さざなみのように続く快感と、時折甘く痺れるような強い刺激。  
 恋人と一つになって、お互いの性器を繋げて、体を合わせる。  
 気持ちはいいが、高い波は、まだもう少し見えない。  
「何でイカないのよぉ!」  
 泣きそうな顔で、雪彦は乱暴に恋人を犯す。  
 藍子は快感に痺れながら、そっと両腕を伸ばし、恋人の頭を抱きこんだ。  
 
「くっ」  
 雪彦は何かを堪えるかのように、突然動きを止める。  
 藍子のか弱い力に引き寄せられて、そのまま藍子の乳房に、顔が押し付けられる。  
 藍子は弄ばれて呼吸を荒くしながらも、優しく微笑んだ。  
「いい、よ、我慢しないで。もう、イキたいんだろ……?」  
「や、だ! 一緒にイキたい!」  
 歯を食いしばって、雪彦が叫ぶ。  
 その甘い言葉に、藍子の体と心が、びくんと震えた。ぎゅっと藍子の秘肉が雪彦を締め付け、潤いを増して、ぬめぬめとからむ。  
 少しでも動けば爆発してしまいそうなのか、雪彦は体を動かさない。  
 藍子の膣は熱く硬く大きく膨らんだペニスをしっかりと把握し、じっとしていても蠢いて雪彦を攻める。  
 その硬い圧迫感すら感じさせるペニスは、動きを止めていても脈動し、藍子をゆっくりと痺れさせる。  
 雪彦は辛そうな顔だったが、一つの波を堪えきった。  
 先走りの液が、藍子の中で、藍子と溶け合う。  
「ユキも、早くイッて……!」  
 雪彦の動きが変わった。  
 挿入したまま、腰に腰を押し付けるようにし、ゆるゆると狭い範囲で振動を繰り返す。  
 
 今の藍子にはちょうどいい、なだらかに襲ってくる甘い快感。  
 雪彦はそうしながら、藍子のウエストを撫でまわし、すぐ目の前にある藍子の乳房にまで手を伸ばして、やんわりともみ始める。  
 つんと尖った乳首を口に含み、甘噛みして、唾液で濡らす。  
 藍子は質を変えて増えた刺激に、甘く微笑んで、雪彦の髪に指を通す。滑るように指を滑らせ、髪を梳いてまた頂点へと。  
 雪彦は、彼も全身で恋人を感じながら、片方の手を藍子の恥部に動かす。  
「んっ!」  
 クリトリスへの直接の刺激に、藍子はびくっと腰を震わせた。  
「よく、なってきた?」  
 興奮に目を血走らせて、雪彦は藍子を上目に見つめる。藍子は雪彦に身をゆだねて震えながらも、素直な笑みのままだ。  
「うん、いいよ……」  
「強くしていい?」  
「ちょっとなら。ぁん!」  
 ちょっとと言ったのに、いきなり雪彦は強くクリトリスをなじ上げた。  
 刹那の痛みは、すぐに消えて、痺れたような感覚だけがそこに残る。  
 強くつままれたクリトリスの痺れは、少しずつ甘い刺激に変化して、藍子を襲う。  
 雪彦は藍子とつながっている周辺を撫でて、片手は乳房を重点的に攻めたてた。  
 
 雪彦がゆっくりとペニスを引くと、花びらがかすかに捲り上げられ、ねっとりと絡み付いていた藍子の秘肉は、離したくないとばかりペニスを締め付ける。  
 雪彦が引き抜きかけたペニスを、ゆっくりと押し戻すと、今度は花びらが引き込まれるようにねじ込まれる。  
 刹那、藍子の乳首にまで電流が走ったかのような快感が走り、藍子の腰が微かに浮いて、震えた。  
 「あぁ……」  
 藍子の中は喜びうねり、藍子は思わず長く深く、吐息を吐き出す。  
 それを何度も繰り返すうちに、藍子の秘部もさらに濡れそぼってくる。  
 二人の性器が繋がりあう音が、室内に静かに響く。  
 藍子の肉襞はまるでそこで呼吸をしているかのように、ゆっくりと蠢いたかと思うと、きゅっときつく締め付けて、男を求め誘い、昂ぶらせる。  
 気付かないうちに、藍子の片手は雪彦の髪を、なでるというよりは、頭にしがみつくような形になっていた。  
 時折肩を甘くくねらせ、男に乳房を押し付けるような仕草も見せる。  
 藍子の顔からは微笑みが薄くなり、瞳が潤みを増して、頬が熱く赤くなっていた。  
 
「ユキ……」  
 雪彦は両腕の位置を変えて、真正面から藍子の肩を羽交い絞めにするように抱き込むと、藍子の唇に唇を重ねた。  
 熱く深いキス。  
「んっ……!」  
 舌が踊りこんできて、唾液が混じる。  
 男の胸板が女の乳房を押し潰し、中心の蕾が、甘く痺れて藍子に快感をもたらす。  
 藍子の熱く柔らかい体は、雪彦にいっそうの快感を伝えてくる。  
 そうしながら、雪彦は再びだんだんと、腰の動きを早くする。  
 ただ単調に動かすのではなく、時には浅く、時には深く、時には押し付けるように、ねっとりと藍子の官能を高めていく。  
 雪彦が体を動かすたびに藍子の体は震えて、声にならない喘ぎ声が漏れる。  
 藍子の腰は、いつのまにか男の動きに合わせて揺れていた。  
 体は汗ばんで艶めき、甘い花のような芳香が薫りたって、男を包み込む。  
 そのすべてに、雪彦も強い興奮に震えた。  
「ユキ、いい? 気持ちいい?」  
「はぁ、……う、うん、いい、気持ちいいっ」  
 うっとりしたように震えて、快感に浸りかけている藍子の声。  
 二人、目と目が合う。  
 熱っぽく潤んだ、二人の眼差し。  
 雪彦は藍子の唇に再び吸い付いた。  
「ユキ、好きよ、大好き……!」  
「う、んっ! おれも……! あぁっ……!」  
 
「わたし、もう、もうイッちゃいそう! ユキはまだ? まだなの?」  
「ん、ぅん、もう、ちょっと……!」  
 藍子は強く雪彦を抱きしめて、腰を揺らし、乳房を男の胸に押し付けるように震わせた。  
 イクことを覚える前なら、これだけで満足できていた、充分な快感。  
 だが今は、その向こう側に見えるものを、藍子は貪欲にむさぼろうとする。  
 近づいては遠ざかり、少しずつ迫ってくる、高い波。  
「ユキ、よすぎる、すごすぎるよぉ……!」  
 男は女が乱れていくさまに興奮し、必死に快感を耐え、女は全身で男を感じながら、ひたすら快感を追い求める。  
 男の腰はリズミカルに藍子を突き、藍子の子宮の入り口まで、強くノックし、時に強引に押し付け、藍子の中を激しくえぐる。  
 荒い呼吸と、激しい動き。  
 最初は強すぎた刺激も、今では甘美な快感。  
「ぁっ、はぁっ、アイ、アイ……!」  
 熱く激しく時間が流れ、藍子の声が、抑えきれずに頻繁に零れた。  
 だんだんと何も考えられなくなって、体が心ごと宙に浮いてしまいそうになる。  
「アイ、くるかも、ぁっ、あぁっ! もうすぐ、くるかもっ!」  
 藍子の指が、雪彦の背を引っかく。  
 その声は陶酔しきったように濡れていた。  
 雪彦は藍子のその言葉に、再び冷静さをかなぐりすてて、獣の動きになった。  
 
「ユキ、おね、がい! くっ、イッて! 早くイッて!」  
 全身を揺らすように、雪彦は自分の気持ちいいように藍子の体を弄び、腰をいっそう激しく動かし、藍子を蹂躙する。  
「くっ、あっ、ぅんっ! ん! ぁっ!」  
 翻弄されながらも、藍子も快感を追い求めて、その動きに体を合わせる。  
 腰がうねり、藍子は自分から雪彦へと押し付ける。  
 女の熱っぽく柔らかい肢体が、男の下で艶かしく乱れた。  
 ペニスと肉襞が摩擦しあい、雪彦を、そして藍子をどんどん追い込む。  
「ユキ、わたし、もう、もうだめ! イッちゃう、イッちゃうよぉ!」  
「アイっ! ぅん、いい! おれ、も!」  
 藍子は強くあえぎ、快感を隠し切れない声で、急に声を鋭くした。  
 雪彦の肩に唇を触れさせ、藍子はそれ以上の声を押さえるように、彼にしがみつきながら短く叫んだ。  
「イ、クッ!」  
 情感のこもった、切羽詰った藍子の声。  
 その声とともに藍子は全身で雪彦にしがみつき、秘肉は蠢いて男をきつくしめつける。  
 その藍子の体の熱さと激しさに、雪彦のペニスがはじけた。  
 
「ユキ! すごい! ああ! でる、でちゃう!!」  
 これまで以上に強くペニスを突き入れられて、藍子の頭の中でも火花が散った。  
「〜〜〜〜っ! ぁっ、あぁ!」  
 子宮が持ち上がるような感覚すら覚えて、藍子の体がビンと張り詰める。藍子は無意識に腰を浮かし、深い悦楽の中で、雪彦の肩に歯を立てた。  
「っ、っ〜〜〜〜! っ、〜〜〜〜!!」  
「ッ! ユキ! ユキっ!」  
 雪彦も柔らかい藍子の体を強く抱きしめて、何度も藍子の名前を呼びながら、強く押し付けるようにペニスを突き刺し、腰を震わせた。  
 藍子の膣は何度も強い収縮を繰り返し、ぎゅっと絞りたてるかのようにペニスにまとわりつき、奥へ奥へとくわえ込んで離さない。  
 散々我慢した分だけ、より強い絶頂。  
 熱い精液が、藍子の胎内を犯す。  
 射精を続ける雪彦も、それを感じる藍子も、そのたびに強い快感に腰を揺らす。  
 お互いがお互いに与える強い快感。  
 強く抱きしめ、抱きしめられる、その感触すべてが快感。  
 藍子の頭も真っ白に痺れて、体だけが震え、恋人が与えてくれるすべての快感を甘くむさぼった。  
 
「はぁ……」  
 やがて雪彦は、ぐったりと力を抜いて、藍子の体にもたれかかった。  
「ぁ……」  
 雪彦の肩から唇を離した藍子は、まだ体を硬直させたまま、甘い吐息を漏らす。  
 雪彦のモノはまだ力を失わずに、藍子の中で存在を主張している。  
 藍子は離れたくないとばかり、ぎゅっと男の背に回した腕を離さない。  
 藍子の膣も、男を離さない。深部まで男のものを包み込み、舐め回しているかのように、蠢く。  
「ぁあ……、ユキ、すごい……」  
「ぅん……、アイも……」  
 雪彦が顔を上げると、藍子の頬は朱色に染まり、瞳は甘く潤んで、どこか放心したようにうっとりと恋人を見返していた。  
 雪彦はそっと、藍子の唇に唇を重ねた。  
「んっ……」  
 甘いキスを受けながら、藍子の体からゆっくりと力が抜けていくが、藍子はまだ深い悦楽の中を漂っていた。  
 雪彦もペニスが力を無くしかけるまで藍子を抱きしめて、恋人の熱く柔らかい体と痺れるような余韻に、甘く浸った。  
 
 
 
 それから一分もたっていないだろう。  
 雪彦のペニスが力を無くしかけると、藍子は嫌がるようにきゅっと膣に力をいれて、雪彦を強く抱きしめた。  
「うっ、ユキ?」  
 強い刺激に雪彦がうめくと、藍子は頬を赤くしたまま、にっこりと微笑む。  
 ほんのさっきまでセックスの絶頂にいたとは思えないような、いまだに男のペニスを受け入れたままとは思えないような、艶っぽくも愛らしい笑顔。  
「アイ、このまま、もう一回しよう……」  
「え、え? ユキ、イッてないの!?」  
「イッたよ。でも、もう一回、したい」  
「…………」  
「アイ、動いて……」  
 藍子は皮膚をかんでしまった男の肩にキスをし、そのまま首筋へと唇を這わせる。  
 雪彦はぶるっと体を震わせたが、藍子の秘肉がさらに絞り尽くすように蠢きつづけるのを感じて、強すぎる刺激に、腰を引いた。  
「あっ」  
 藍子は甘く鳴いて腰がペニスを追うが、雪彦は素早く抜き去っていた。  
 ぎゅっと藍子の膣口が呼吸をするかのように動き、とろりと、精液が零れる。  
 
「アイ、もう一回……!」  
「ちょ、ちょっと待ってよぉ! す、スルのは、いいけど……、少し休憩!」  
「抜かずの二発くらい、平気だろう?」  
「や、やだ! ユキいやらしすぎ! そんなえっちなこというユキはきらいよ!」  
「また学校でもしてあげるから。次はおれが上でやりたい」  
「え、え、え」  
 藍子はにっこり笑うと、雪彦を押し倒しにかかる。  
「今日はもう二回もしたんだから、今度はもっとゆっくり、しよう」  
 小さな舌で唇を軽く湿らせ、男の小さくなっているペニスに手を伸ばす。  
 ぶるっと体を震わせて文句を言う雪彦だが、逃げたりはしない。藍子はお構いなしに微笑んで、そこに唇を近づけた。  
 愛液と精液の混ざった、濡れたペニス。  
 上目遣いで雪彦を見て、早く元気になれとばかり、藍子は雪彦のそこを可愛がった。  
 
 
 
 翌日、朝。  
 一人の少女が、元気よくお隣の家を訪れていた。  
「おはようございま〜す」  
「藍子ちゃん、おはよう」  
「おはよう、藍子ちゃん。いつもすまないね、雪彦の奴、すっかり寝ぼすけになって」  
「いいえ、これまでわたしが起してもらってたから、おあいこです」  
 藍子は元の自分の両親とにこやかに挨拶を交わし、一言断ってから、二階へと雪彦を起しにいく。  
「ほんとは、おあいこどころか、今も昔も、起すのはおれなんだけどね……」  
 お互いの精神が入れ替わっていることを、だれにも気付かせなかったほどお互いになりきれる二人だが、一月もたつと雪彦はすぐさま朝寝坊を復活させた。  
 以前は低血圧を言い訳にしていたものだが、入れ替わってまでこれだというのは、どう考えても性格の問題である。藍子としてはやれやれという気分もないではない。  
 勝手知ったる元の自分の部屋へと入ると、ベッドでは雪彦が気持ちよさそう眠っている。  
 七月上旬、昨夜は暑かったからだろう、ブリーフにTシャツだけという格好で、だらしなさ全開だ。やたらと寝相はいいが、おなかにタオルケットだけかけている姿は、男というよりも、子供の姿を連想させる。  
 もっとも、しっかりとブリーフは隆起し、大人の朝を主張していたが。  
 
 藍子がカーテンを小気味のいい音をさせて開くと、さっと朝の光が室内に入る込む。  
 逆光が、藍子の体に微かなシルエットを作る。  
 白い半袖ブラウスに、紺色の腰スカート、赤いリボンという格好の少女。長い髪が、動きに合わせて優しく揺れる。  
 夏の朝の陽気を感じながら、藍子は改めてベッドに歩み寄る。  
 そこに眠るのは元は自分だが、慣れてしまったせいもあって、客観的に見るともう自分とは思いづらい。中身が「アイ」だと思うと、藍子としてはなおさらだった。  
「アイ、迎えにきたぞ。起きろ」  
「ん……、後十分……」  
「十分も待てるか。置いてくぞ?」  
「それは、だめ……」  
「だったら早く起きろ」  
「やだ……まだ眠い〜……。ユキが眠らせてくれなかったからぁ……」  
「……また人に聞かれたら誤解されそうなことを」  
 夕方には誤解が誤解でないことをやっているが、夜は夕方の分もみっちりと勉強をして過ごした。藍子は無条件に甘いだけの女の子ではないのである。  
「ほら、起きろって」  
 男っぽいラインを描いているほっぺたに指先を当てて、つつーっと、首筋の方に動かす。  
 
「や……。ユキ、やめて……」  
 藍子の手を振り払う雪彦に、藍子は「なんでおれは毎日こいつを起しに来てるのかなぁ」と、ちょっと苦笑いだ。  
 だが元々昔から、幼馴染の面倒を見るのが、藍子は嫌いではない。  
 去年までは、幼馴染の女の子を毎朝起す男の子だったのが、今では幼馴染の男の子を毎朝起す女の子。ベッドで寝ている雪彦も、幼馴染の男の子に毎朝起される女の子だったのが、今では幼馴染の女の子に毎朝起される男の子。  
 いや、今では藍子は恋人を起す女の子で、雪彦は恋人に起される男の子、というべきだろうか。  
「ほんと、贅沢な奴」  
 藍子は呟いて、片膝をベッドに乗せる。  
「今日は特別サービスをしてやるか……」  
 藍子が雪彦だった時、少し憧れていた事。  
 今ではしてもらうには立場が違うが、することはできる。  
 男の子が好きな女の子に起しに来てもらって、なかなか起きずにいると、普段は自分からはそんなことをしない女の子が、突然大胆な行動に出る。  
 そんな甘い、ベタベタなシチュエーション。  
 藍子は長い髪を片手で押さえて、雪彦の上に覆い被さるようにすると、そっと、その唇に自分の唇を近づけた。  
 
 
 おわり  
 

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