元々、この魔術師である男に、軽度のサディズム趣味があった。  
可愛い妻を悦ばせたいという気持ちもあったし、魔術にも自信があったのも原因の一つだろう。  
まぁ、一番の問題点は何か、と言われたら……  
 
妻を愛しすぎた、ということだ。  
 
「ーーーーー!」  
猿轡をされた少女は声にならない悲鳴を上げた。  
「あまり暴れるな」  
そう言って、少女の首元にくちづけを落とすのは、彼女の夫である魔術師だ。  
暗い部屋の中、ぎしぎしと軋む寝台の音と男の荒い息、そして少女のくぐもったうめき声が響く。  
少女は裸で仰向けにされ、足は男に掴まれ、大きく開かれていた。  
ここまでなら、いつもの交わりと特に変わらないのだが……  
「んっ!!!んんんっ!!!!」  
涙眼でいやいやと首を振る少女だが、男にはそれが肯定の仕草に見えるらしい。  
「似合っているぞ」  
そんな事を言って、彼女の肢体をうっとりと眺める。  
 
少女の身体には、蛇のように蠢く縄が這いずりまわっていた。  
 
乳房をより強調するかのように上下に縄が巻かれ、腕はがっちりと後ろで拘束されている。  
そのように、少女を拘束する縄とは別に、まるで愛撫するかのように  
乳首や秘所にその身をこすりつけるようにして、身体を這いずりまわる縄もあった。  
「ーーー!!」  
猿轡をされた少女は叫ぶ。嗜虐心をそそる彼女のその姿に、男はさらに興奮していた。  
戯れに作ってみた短時間しか使えない魔法の縄だが、これはなかなかいいかもしれない。  
 
一方の少女はそれどころではなかった。  
この男に抱かれるのは構わない、腕や体を縛られるのもまだいい、猿轡も許容範囲だ。  
一番、彼女の精神を苛んでいるのは  
『気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!』  
蛇のごとく縄が蠢き、体にまとわりつくことであった。生理的に耐えられないこの仕打ちに気が遠くなる。  
 
本気で嫌がってこの縄をほどくように、男に眼で訴えるがわかってもらえない。それどころか  
「もう欲しいのか?」  
などとニヤニヤ顔で言われ、秘所に指を入れられた。  
そこは男の人差し指と中指をあっさりと受け入れて、きゅうきゅうと締め付ける。  
 
中を擦られて、甘い声が出そうになるが、また体をうぞうぞと縄に這われ悲鳴に変わる。  
「こういうのも、どうだ?」  
男の言葉に、一番細い紐が彼女の乳房へと這っていく。  
そしてその丘のぷっくりと膨らんだ先にくるりとその身を巻いて、強く引っ張り上げた。  
「!!!!」  
乳房から痛みにも近い刺激が走り、少女は仰け反ってその身を震わせる。  
その間にも、男はくちゅくちゅと彼女の秘所を弄んでぬめりを増やしていた。  
ふぅふぅと、彼女は必死に呼吸をして、どうにかこの縄をほどいてもらうために上体を起こそうとする。  
男が指を抜いたので、どうにかこの気持ちを伝えようとした時だ。  
くいっと、秘所を上に引っ張られ、充血したクリトリスがより露わになる。  
「ここのは、絹のを用意してやったからな」  
「!!!」  
男の手にあるのは柔らかな絹の細いリボン。もちろん、勢い良くまるで獲れたての魚のようにびちびちと動いている。  
ミミズを連想させるおぞましい道具に、少女の顔は一気に青ざめた。  
『やっ!いやっ!あああああっ!!!』  
少女の嫌な予感はすぐに現実となる。  
動く絹のリボンはうねうねと動いて、彼女の一番敏感な芽にまとわりつくと、上下に擦り上げ始めた。  
『ひゃああああっ!!だめっ!いやあああああああ!!!!』  
滑らかな肌触りが気持ちいいが、気持ち悪い。  
いい加減、本気で拒否しなければと男を睨みつけようとしたが……  
「くうっ!」  
とうとう見ているだけでは我慢できなくなった男が、自らのモノを押し入れた。  
これが欲しかったと、少女の代弁をするように、肉壁が男のモノを締め付ける。  
「っはぁ……そうか、そんなにいいか」  
少女は全力で首を横に振るが、男は腰を振り始める。  
「んっふ!ふぅー!ふぅーーー!!」  
猿轡越しに、彼女は必死に声を出そうとするが、それはただの喘ぎ声に変わってしまう。  
きゅっと乳首を引っ張られ、クリトリスを擦りあげられ、中を擦られ、肌を縄が這いずりまわる。  
快楽と生理的嫌悪で、頭がおかしくなりそうだった。  
 
「ふーっ!ふぅぅぅーーーーっ!!」  
「あぁ……!い、一緒にイこうな?たっぷり、中に、出してやるから。」  
「ーーーー!んんっーーーーっ!!」  
 
少女の泣き叫ぶ声は男には聞こえず、  
ぎしぎしぎしっと、べッドの軋む音はより大きくなるばかりであった。  
 
 
……―――  
「っく……ひっ、ふぇっ……」  
「すまなかった。本当にすまなかった」  
泣きべそをかく妻を、慌てて男は抱きしめて謝る。  
行為が終わり、大人しくなった彼女の戒めを全て取ったら、彼女はぽろぽろと涙をこぼして泣き始めてしまったのだ。  
どうした痛かったか?と、男が慌てて問いかけて、ようやく出た言葉は。  
 
「蛇、は、き、嫌い、なんですぅ」  
 
これにはさすがの男も、全身から血の気が引いた。ようやく色々と理解できたのだ。  
少し考えれば、年ごろの娘が全身を得体の知れないモノに這われて、悦ぶわけがないと気付く。  
未だべそべそと泣きじゃくる娘を抱きしめ、よしよしと頭をなでてやる。  
白い肌には縄跡がついて、若干赤くなっていた。嗜虐心をそそる扇情的な姿だ。  
「すまなかった、もうあんな道具は使わないから、な?」  
こくん、と少女が頷いてくれた。どうやら許してくれるらしい。  
「……縛られるのも、痛かったか?」  
今度はふるふると、頭が横に振られる。痛くはなかったらしいが……  
「だが、跡がついてしまったな」  
男はそっと少女の肌を桃色に彩っている背中の縄跡をなぞった。  
ビクンッ!と大きく少女の身体が揺れた。  
「すぐに元に戻るだろうが……」  
彼女の手を取って、縛っていた手首の方も見てみれば、そこにも跡がついていた。  
ふと、今まで男の胸で泣いていた少女と眼が合う。かぁっ、と、少女の顔が赤くなって眼をそらされた。  
むずむずと、抑えていた嗜虐心が顔を出してくる。  
「そうか、縛られるのは、嫌いじゃないのか」  
 
それは、実に、余計なひと言であった。  
 
 
……――――  
はしゃぎすぎた……  
男は魔術部屋の机で頭を抱え、昨夜の事を後悔していた。  
昨日の少女への嫌がる行為はもちろん、その後の反省していない態度にさすがの少女も怒った。  
キッ!と睨まれてしまい、そのまま不貞寝されてしまったのだ。しまったと思った時にはもう遅く、少女は現在も不機嫌だ。  
「あああああ……」  
男は、昨夜の自分を殴りに行こうかと、ちょっと時間移動の悪魔とか探してしまいそうになる。  
 
一方、ようやく気も晴れて落ち着いた少女は、部屋から出てこない男を心配し始めていた。  
なお、魔術部屋に少女が勝手に一人で入ることは禁止されている。魔術道具や魔術書は大変貴重というのもあるが  
そういう道具や本を通して、人間を誘惑する悪魔や妖精もいるため、知識もない少女が一人で入ると危険だからだ。  
少女は、しばらく扉の前でうろうろすると、諦めて寝室へと向かう。  
昨夜の悪夢を思い出しつつも、少女が掃除をしようとしたときだった。  
「―――ひっ!!!」  
少女が叫ぶ間もなく、「それ」は襲いかかった。  
 
 
 
「花か?いや服か?」  
機嫌を直すために、プレゼントをするという単純な解決案を男が考えていると  
突然、ドアが控えめに叩かれた。  
「どうした!?」  
男は本や道具が散らばるのも構わず部屋から慌てて出る。  
「……」  
「……」  
そこには、両手を縛られた少女が恥ずかしそうに、男を見上げていた。  
「その……昨日の勝手に縛ってくる紐が落ちていたみたいで……」  
 
「すまん、すぐに外す!」  
男は慌てて両手の紐を外そうとする、ふるふると少女は首を横にふる。  
「その……そこより……その……」  
少女は顔を真っ赤にして、もじもじと腰を動かした。  
「ス、スカートの中を……」  
「は?」  
それ以上は言えないらしく、少女が黙りこくったので、男は仕方なしにスカートをめくる。  
「これは……」  
どうやら昨夜拾い忘れた紐は一本ではなかったらしい。  
清楚な少女の白い下着の上から、きっちりと縄で縛られて、秘所に当たる部分にはコブが作られている。  
「は、はやく外してください」  
そう急かされて、男は股を縛る紐を引っ張った。コブがぐりっと性器を擦り少女の足が震える。  
「……気持ちよさそうだな」  
「ひっ!!やっ!駄目っ!」  
普段着のスカートの中だからだろうか、少女に食い込む紐が余計いやらしく見える。  
ごくりと、男が生唾を飲む音が聞こえた。  
「やっぱり自分で外します!」  
「こ、こら、待て!」  
少女が逃げようと動いただけでも、紐がごりごりと性器を擦って刺激した。  
そのため、男が少女を捕えて床に押し倒し、再びスカートをめくった時には、すでに下着が濡れ始めていた。  
「……」  
「ちょっと!なんで下着をずらすんですか!!」  
半泣きで少女はそう喚くが、男は聞いていないし、解く気もすでに失せていた。  
仰向けで押し倒された少女の足を開き、紐を緩め、下着をずらして濡れた秘所をあらわにしてやる。  
もうこうなれば、入れるものは一つだ。  
「や!駄目!まだ怒ってるんですからね!」  
「……すまん」  
色々な意味で男は謝ると、急いで自身の張り詰めたモノを取り出してそこに押し当て  
「ば、ばかぁぁぁ!!」  
少女の罵り声と同時に一気に貫いた。  
「ばかっ!ばかばかばかぁっ!!」  
そう泣き叫ぶ少女に遠慮なく男は腰を激しく動かし始める。  
 
少女は涙目で「もー!駄目ですってばぁぁぁ!もぉー!」と牛のように鳴いている。  
せっかく仲直りしようと思っていた矢先にこれである。  
少しは自重してほしいというか、せめて別の仲直りの方法というものを考えてほしい。  
「んっ…!あっ!ああっ!」  
コブのせいで濡れていたとはいえ、男のモノを受け入れるにはまだ足りなかったはずだった。  
それなのに、突かれているだけでどんどん愛液が溢れる自分の下半身に少女は泣きたくなる。  
「いいっ……!すごくいいっ!!」  
一方、男は嫌がる彼女を着衣のまま犯すという行為に、快感を覚えていた。  
乱れた衣服が、裸よりもより艶めかしく感じ、自然にピストンのスピードも上がっていく。  
「ッ……ぐぅっ!!」  
「あっ!ああああっ!!」  
中に出されたとほぼ同時に、少女も達し、ピンと両足を伸ばして仰け反った。  
あっという間に、頭の中が真っ白になって――――。  
 
……――――  
数日後……  
 
「この間の紐だがな、一本金貨3枚で売れた」  
その言葉に、少女はちょっと顔を赤くして視線をそらし、そうですかと返した。  
「お前好みだと思って作った道具だったんだがな……」  
「怒りますよ?」  
「すまん」  
少々開き直っているような男をみて、少女はため息をついた。  
別に縛られるのはいい、がっつくように抱かれるのもどちらかというと好きだ。  
ただ、変な魔術で作った道具を使うのだけは勘弁してほしかった。  
「もう、変な道具はないですよね?」  
「……」  
男は無言で、とある道具を取りだした。  
「……!!」  
少女の顔がみるみるうちに赤くなり、思わず後ずさる。  
「そ、それ、お、おち……いえ、その、男の人の……」  
「ちなみに動く」  
男の手に握られた「張り型」が、大きく振動し始めたのをみて、少女は短い悲鳴をあげた。  
「や、嫌ですよ!そんなの使いませんから!やだ!嫌ですってばぁぁぁ!!」  
 
有能な魔術師である夫は、今夜も愛しい可愛い妻を「無理矢理」可愛がったのだった。  
 
 
終わり。  
 

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