外道魔法少女藍奈番外編 聖なる夜に妖精が  
 
01  
 
「クリスマスよ、藍奈!」  
 吃驚した。何を唐突に言っているのだろう、この妖精は。しかも勝手に体外に出て…。  
 ベッドでいつもどおり漫画を読んでいた私、仙道藍奈(センドウ アイナ)は、先程の言から、妖精が何を言いたいのかを推理する。そして出た答えが――  
「御免、ウチはほら、台所に神棚があるとおり八百万神教だからさ。キリストの誕生日は祝わないことを家訓にしてるんだ。  
それに死んだお爺ちゃんがクリスマスを祝ったら夢枕に立つって言うから尚更、ね。だからパーティとか華やかなことは諦めて」  
 とか適当な事を言って仰向けになっていた体を妖精から背けるように転がる。今丁度いいところなのだ。  
ヒロインが触手によって堕ちそうになっているページ。プレイの幅を拡げる為に、資料はよく読み解いておかなければならない。  
というか、正直面倒臭い。クリスマスなんて、要は馬鹿騒ぎしたいだけじゃないか。いろんなところからの陰謀に違いない。  
と、モテない人々からの電波が飛んできた感じがするのでそう言っておこう。いや、私も出会いはありませんよ?  
「何言ってんの、藍奈?クリスマスにやることなんてパーティなんかじゃ無いでしょ?」  
 また少し驚いた。てっきり美味しい物を食べたいとか、皆で騒ぎたいとかいうタイプの奴だと思っていたのだが…。  
「じゃあ、何やるの?クリスマス」  
「そんなの簡単よ。クリスマスにやること、それはね――」  
 妖精は一拍置いて、そして言う。  
「リア充の殲滅よ!」  
 コケた。私が。妖精は言いたいこと言った、というふうにガッツポーズとドヤ顔をしている。  
「…はぁ?」  
「藍奈、知ってる?クリスマスはカップル達がズッコンバッコンやって喘いでいる日なのよ。全くもってムカつくじゃない!  
私たちはこんなに頑張って魔物倒してるって言うのにさ、人間はホテルでパンパンアンアンやってるのよ!  
許せない所業だと思わない?キリストにもそれを信仰する人にも失礼だわ」  
 思わない、というより果てしなくどうでもいい。そして何で貴方がキリスト教の代表みたいになっているのだろう。  
「じゃあ行くわよ、藍奈!街へ出てカップル共へ触手の鉄槌を喰らわせるのだ!」  
「何でこのクソ寒い日に一々外へ…しかもそんなどうでもいい理由で」  
「おやぁ?いいのかなあ?」  
 何やら思わせぶりなセリフを吐く妖精。  
「この日はとにかく貴方と合体したい、ってな女性も多いからねえ。そこを魔物が付け狙う可能性は高いよ。  
魔物を討つ者として、見逃すわけにはいかないんじゃないかなあ?」  
 むぅ、そう言われれば確かに。行事ごとがあるなら人は兎角無防備になりやすい。  
そこを魔物が襲撃すれば、簡単に大漁旗が上がるような成果が得られるだろう。  
「…分かったわ。行くわよ」  
「そう来なくっちゃ!…ところで、藍奈ってリアじゅ…いや、彼氏とかいる?」  
 何を言いたいのかさっぱりわからないが素直に応えておこう。  
「…いいえ、いないけど。それにいらない」  
「藍奈。やっぱり君を選んで良かった!」  
 なんだか訳の分からない仲間意識を持たれてしまった。  
 おかしい、本編ではこんなにフランクな性格じゃなかったはずなのだが…。  
 
 
02  
 
「…ねえ」  
『何?』  
「ラブホ街で待ち伏せするのは分かるんだけどさあ…コスチューム装着早すぎない?完璧に浮いてて恥ずいんだけど…」  
 私のコスチュームは白いフリルや赤いリボンを付けた服に同じくフリルのミニスカート、そして白いブーツに白い手袋と、  
純白すぎて雰囲気に全く合っていなかった。魔力のお陰で、特に寒いわけではないのだが…。  
『急に出てきた時のためよ。間に合いませんでした、じゃ洒落にならないでしょ』  
 自分は私の体内に逃げておいてよく言う。後で触手調教だ。さっきの漫画で出てたプレイ一通り試してやる。  
『あ、ほら、早速現れたわ!』  
 そう言われて周囲を見回すと、この寒い中いちゃいちゃとしているカップルが一組、路地裏へ入っていった。  
『ホテル街なのにわざわざ路地裏を選ぶなんて…怪しすぎる』  
「ただ単にお金が無いだけなんじゃないの?それか青姦趣味とか…」  
『shut up!御託はいいから追いかけよう』  
 なんでいい発音して言うんだ、この妖精。  
 結局、妖精の言の強さと、何らかの意志に勝てずに、私はそのカップルを追いかけて行った。  
 そして見つけたとき、カップルは濃厚なキスの最中だった。  
「あー、性のプライベートとか見る気起こらないなあ…これは違うよ。他いこ、他」  
 特に魔力も感じられない。これは外れだ。行為を邪魔する気もないし、私はその場をとっとと離れたかった。  
 無論、出来れば帰って温かいご飯を食べたかった。  
『り…』  
「り?」  
『リア充爆死しろぉ!』  
 不意に妖精が体内で叫んだ。途轍もない音量だったので、私は一瞬頭がグラグラとしてしまった。  
そして、その一瞬が触手の主導権を妖精の渡す羽目となった。  
「きゃああああああああっ!」  
「う、うわぁ、なんだこれ!?」  
「ちょ…おま、何やってんのよ、一体!」  
『五月蝿い!相手もいないこんな夜は、相手の居る奴の邪魔をしてやることこそ我が使命!そうしないと嫉妬狂いになっちゃそうなのよ!』  
 妖精は叫びながら、主導権を握った触手で先程までキスしていた男と女を絡めとった。  
 …ただの嫉妬じゃないか。どうやら妖精、自分の国ではお付き合いには恵まれなかったようだ。  
『ほぉーら、触手でアンタのマンコ貫いちゃうよ。処女だったらちょっと可愛そうだけど君はどうかなぁ?』  
 悪役のような言い方である。…よく考えれば、私も本編ではこんな感じだ。もう勝手にしてくれ。  
「ひっ…い、いやぁ…お願い、やめて…」  
『んー、しょうがないなあ…い』  
「い?」  
『い』  
「…ほっ」  
『え』  
 というと、妖精は触手を女に勢い良く突き入れた。…酷いフェイントだ。  
「うっ、ああああああああ!いたぁっ、痛いいいいい」  
『あらら、処女だった。良かったね、忘れられない日に忘れられないもので女になれてさ』  
 突き入れられた女は、ポニーテールを振り回しながら必死に痛さを訴える。勿論、妖精は遠慮なんてしていない。  
 男も何か吠えてるが、触手に絡まっているのでは負け犬の遠吠えに過ぎない。  
「あ…ああっ、ふああん…何、これぇ、痛いのに、感じちゃうよぉ…」  
 まあ、この触手はそういうものだから当然だ。抽送を繰り返されれば、処女だろうと何だろうと、百戦錬磨の性狂いになる。  
「お、おい、なにか聞こえたけど…」  
「やだ、何があったの」  
 と、又もや無謀なカップルがこちらを覗き込んで来た。そしてそれは勿論妖精の目に止まり…。  
『また出たか、リア充め!爆散しろぉ!』  
 あわや、カップル二組めも触手によって捕えられた。  
「うあああああっ!あうう、ふぅん…ああ、これ、すごい…セックスってこんなだったの」  
 ショートカットの女もすぐに触手に突かれて、あっという間に性の虜である。  
 というか、これが普通のセックスだと思ったら、貴方この先がっかりしちゃうこと請け合いなんだけど…まあいいか。  
 
 
03  
 
 いつの間にやら、舞台は最初のホテル街へ。  
 そこには当たり前だが沢山のカップルが居るわけで…。  
『この…リア充共がぁ!私の目の前でイチャイチャとはいい度胸だ!全員圧死しろぉ!』  
 何故圧死なのかがさっぱり分からないが、沢山いたカップルはやっぱり全員触手に捕らえられて、男女引き離されてしまった。  
 そして勿論、有無を言わさず挿入、抽送。何だこの地獄絵図。  
「あ、ああ…なんでよぉ、こんなの知らない…」  
「うう、ああん、初めてって、痛いんじゃなかったの…?気持ちいい、気持ちいいよぉ」  
「ひゃああああん、こんなの…耐えられない。あの人のより、ずっと大きい…」  
 元は処女でも非処女でも、この触手に貫かれた後は全員同じ性狂いだ。始めは痛がっていようと、そのうち自分から求めるようになる。  
『ふくくくく、いい気味だなあ、リア充共め。この触手を味わったら、人間の男のモノなんてBB弾位にしか感じなくなっちゃうよ』  
 酷い例えだった。人間の男全員があの小さな弾以下宣言とは、恐ろしい。  
『さあ!そろそろ全員中に沢山出すよ!狂って狂って狂いまくって、触手狂いになるがいい!』  
 そう宣言すると、触手は一斉に彼女たちの中に白濁液を放出した。  
 性狂いになっている女性たちは、その放出によって全員絶頂へと追いやられてしまった。  
 そしてあとに残ったのは、絞めつけられすぎで気絶した男達の山と、秘所から血や白濁液を流して、腹をぽこんと膨らませた女の山だけであった。  
 
 
04  
 
『あーすっきりした。丁度夜明けだし、今年も沢山のリア充共に制裁を加えることが出来た』  
「夕ご飯…食いっぱぐれた…」  
 何だかやることやった的ないい笑顔(予想)の妖精とは裏腹に、私はお腹をぐーぐー鳴らしてふらふら歩いていた。  
『だがまだ全てのリア充が滅びたわけではない。リア充あるところ私あり!戦え私、いつかリア充が滅びるまで!』  
「また来年のクリスマス…?」  
『いいや、次はバレンタインデー。夏休みも、学生が女の子から女になる境目だって聞くしなあ。とにかく、リア充は滅ぼす!』  
「…さいですか」  
 もうどうでも良くなったのは、決してお腹が空いていたからではない。この妖精には何を言っても無駄だろうと思ったからだ。  
決して「途中からモノローグでしか喋ってないなあ、今回私どうでもよくね?というか何でこの作品が抜擢されたの?新作にすればいいじゃん」とか思っていない。  
『さて、帰ろうか藍奈。徹夜だから眠くなっちゃった』  
「…私も、いろいろ疲れた」  
 朝日を背に浴びて、ゆっくり帰ろう。  
 ああ、そういえば今日は聖夜か、性夜ではなくて。ならば一つだけ謝ることがある。聖地エルサレムはどっちだったか…どっちでもいいか。  
私は適当な方向を向いて一言。  
「お爺ちゃん、勝手に殺してごめんなさい」  
 ちなみにお爺ちゃんは御年88歳。まだまだ現役の米寿である。  
 
外道魔法少女藍奈番外編 END? Merry Christmas!  
 
 

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