わたし、高校1年生のアヤノの恋人であるシンヤは、イヌでサルでバカでアホだ。
学校ではサッカー部。一応レギュラーだから女子にはそれなりの人気。ただしお笑いキャラとして。
一度“サッカーばか蔵”って呼んでやったら、落ち込むどころか喜んでマネしはじめた。
ここのあたりまでが、彼がバカでアホの理由。
で、イヌでサルの理由というのは、そりゃもちろん決まってる。
夜討ち朝駆け、とまではいかないけど、遊びに行ってふたりきりになって、
それなり陽も暮れたりしてきた時とか、お互いの部屋で勉強してる時とかに、
「ヤラせてくださいお願いします」って真顔で言うんだ。何回も。
そのたび頬っぺた抓ったり、いや!と却下したり、物差しを逆刃刀に見立てたりとか、
もう何回もなんかいも言われてると、さすがに断る気力が尽きてくる。
だからわたしは、お願いおねがいと拝み倒すシンヤの懇願に精も魂も尽き果てて
(だって土下座しながら合掌されるとか何なの、こいつ本当にばかなの?)、
いかにも怪しげな、薄っぺらい紙袋を受け取ってしまったのだ。
シンヤの要求はただひとつ、これを着て、明日自分と一緒に登校してくれ、ということ。
それで大体中身はわかってしまったけど、わたしの気が変わらないようにか、
シンヤは帰り道、駅前のスタバで抹茶クリームフラペチーノを奢ってくれた。
「トールで」って言いかけたから、横合いからちゃんとベンティに訂正しておく。
「トー……」まだ言ってる。往生際が悪い。ベンティ。ベンティ。ベ・ン・ティ。
誰かにご馳走してもらうと、スタバはさらに美味しい。
家に帰ってご飯の後、部屋に入って紙袋を開けてみる。もちろんこっそり。
シンヤが寄越したのは、布地の極端に少ない──ああもう言ってしまおう。
いわゆる“エッチなしたぎ”だった。
ただ、ぜーんぶスッケスケのレースだったり、紐と卑猥なアップリケだったり、
エナメルとリベットがテカテカしていたわけではない。
見た目はごく普通っぽい──ビキニっぽい、ただ布地がずいぶん少なく見える下着だった。
二等辺三角形のカップが長辺ふたつを肩のほうに向けて並べ、そこから伸びた紐を、
首の後ろと背中で結ぶようになっている。色は黒。手触りはやっぱり水着っぽい。
まあまあ、なんというか、うわあ……と見るだけで眼をそむける感じじゃない。
別に服着てたら見えるわけじゃないのに、つけてるってこと考えてコーフンすんのかな。
イヌでサルでバカでアホな男子高校生の考えてることなんて、わたしにはよくわからない。
けど、着るだけでシンヤがアホほど喜んでくれるなら、いいと思う。
そしてブラの次は、ショーツだ。
──これは見た瞬間、うわあ、と言いそうになった。
後ろが紐、だった。しかもなんだかブラのほうにも増して布地が少ない。
増して少ない、なんてヘンな言い回しだけど。
前側の布地は、ちょうどクリスマスツリーを引っくり返したような感じだ。
底のほうがお臍の側へきて、先っぽが──アソコにあたる感じ。
残りはもう紐、紐、紐。腰の、ほんとに腿に近いところで履くようになっているらしい。
どんなふうになるんだろう。
思わずベッドに正座してたわたしは、何となく腿を擦り合わせてしまった。
約束したし、シンヤは喜んだし、スタバ奢ってもらったし、早く寝ないといけないし。
いろんなことがグルグル頭に回って、結局夜遅くまで眠れなかった。
──なんなんだろ、これ。
翌朝、シンヤと一緒に通学の電車に乗ったけど、乗る前から、いや、
うちを出てから……ううん、“あれ”を履いた時から、何かがヘンだった。
ブラのほうは、なんていうか水着の変種みたいなもの、って思えばいい。
けどショーツはそうはいかなくて、満員電車の隅に追いやられながら、
わたしはスカートの中が気になって気になってしょうがない。
食い込むのだ。すごく。
ううん、食い込むというよりも少し違うかもしれない。ぴったり、張り付いてくる。
どこにっていうと、アソコに。内側の、あの、おしっこが出るあたりに。
痛くはない。きつくもない。ただ、なんていうか、何かを挟んでいるみたい。
電車の震動に合わせて身体を動かすたび、なんだかアソコのあたりが、
指二本ぶんくらいの太さのロープに載せられているような気がする。
満員電車プラス恋人の特権として、腕で作った輪の中に、わたしを軽く閉じ込めて、
シンヤはのんびりと車窓の風景を見ている。
わたしは149cmのちびだから、180cmのシンヤとは名実ともにデコボココンビだ。
どうにも腰の辺りのおさまりが悪くて腰をもぞもぞすると、シンヤが見下ろしていた。
駅のホームで並んでる時、「アレは?」「うん」で済ませてしまったから、
わたしが今、「E:エッチなしたぎ」になってるのは知っているはずだけど。
ねえシンヤ結局何がしたいのって聞こうと思った途端、がたん!と大きく電車が揺れた。
カーブなのかブレーキなのか、乗っている人間全部が傾いて、
不平不満を漏らしながらまた真っ直ぐに戻っていく。
それだけならまだ、今日の運転は荒っぽいねなんて笑えるんだけど、
わたしはそれどころじゃなかった。一気に頬が熱くなって、へんな汗が背中に滲む。
アソコに、何かの拍子で撚れて細くなったショーツの先端が。
まだこどもの頬みたいにふにふにしてて頼りない秘丘を乗り越えて、
ただでさえぴったりサイズの布地が。
わたしのアソコのかたちを括りだして剥き出しにするように──吸い付いてきた。
「アヤノ、それ、どう」
シンヤが、今日の天気でも尋ねるみたいに言う。
「それ、先輩から教えてもらったんだけど、凄いんだってさ。
何か生地が特別製で、履いてるだけで…………なんだって」
軽く囲っているだけだった腕が、いつのまにか強い。
胸と胸が合わさったら、ブラの中の胸までツンと疼いた。
ブラの布地が、温度の無い舌みたいに、ぺとっ、て。
その間にもシンヤは、笑いをこらえているような、期待を込めた顔つきで、
表面に微妙な粒粒があってとか、汗を吸収してどうとか、そんなことを喋る。
うるさい、バカシンヤ。なんてものを着せてくれたの。
「いま、どんな感じ? 下も履いてくれてるんでしょ、どう?」
わたしに、答える余裕は無かった。
今やショーツは、秘丘を完全に越えて、内側を細く包み込んでいた。
ほんの小さなクリトリスに、表面に細かな粒粒があるとシンヤの言う、
特別製の布地が絡み付いている。くらくらするほどの感覚が伝わってくる。
ぴとっ、と張り付いただけならまだしも、電車は震動している。
わたしは布地をアソコから追い出すために、小刻みに腰を揺らしている。
音はないけれど、両側からクリトリスを、くにゅくにゅと揉みしだかれているのも同じ。
罵るより前に、ああ、って感じの溜息が出た。
気持ちいい。頭の中で静電気が弾けて、じゃなかったら炭酸を流し込まれているみたい。
いつのまにかわたしは濡れてる。愛液がショーツの紐と、前側の布地に染みていって、
──今度は布地が、明らかに音を立てて、クリトリスを舐めた。
両脇を交互に辿った後、皮ごと先端をなぞり、唇で挟むみたいに布地で扱かれる。
これが本当に指とか舌とかでされていたら、わたしは痛かったり驚いたりで、
それどころじゃなかったと思う。
けど、今わたしのアソコに張り付いてクリトリスを擦り、舐っているのは、
ただの布地だ。それが、たまらなく気持ちいい。
眼を潤ませ、息を荒げてとろとろになるわたしを見下ろして、
シンヤは大好きなプロサッカーの試合でも見るみたいに、
感動と興奮の混じった表情をしていた。
「アヤノ、いま、すごくエロい顔してる」
──うん、だって、気持ちいい。
「……どんな感じ?」
──ぬるぬるして、なめ、舐められてるみたい。
「それから?」
──すごい、キュッて押さえられてる。アソコだけ、こすられてる。
「そっか。……アヤノのあそこ、触ってみようかな」
──ん。うん。
膝上20cmくらいまで短くしたスカートは、シンヤが手を入れても、
あまりめくれ上がらずに済んだ。手のひらが、ぴたりとアソコを覆う。
ショーツの布地越しに伝わる体温に、わたしは無意識にアソコをこすり付けていた。
途端に耳元で、うわヌルヌル、とか囁かれて、括りだされた入り口あたりに、
新たな愛液が熱く滲んだのがわかった。
布地越しに、シンヤの指がクリトリスを撫でる。指先一本だけで、猫の喉をくすぐるように。
そうすると、ぷっくり充血したそこから覆いの皮が取り除かれ、
腰から頭から脚の爪先まで痺れるほど感じてしまう。
こりこり、くちゅくちゅ、ぬるぬる、にゅるにゅる──エッチな擬音ばかりが、
わたしの頭の中を駆け巡った。
ショーツは愛液のぬめりを借りてクリトリスを舐めまわし、
その布地の外側からは、シンヤの手が、ぷくっと膨らんだところを捏ねまわす。
わたしは必死になって喘ぎを押し殺す。ただ、そうして声を詰めているとどうしても、
この快感の逃げ場がなくなってしまって、余計に感じる。
シンヤが、ぬちゅっ、と音のしそうなくらいふやけたアソコを、
二本の指を使って押し広げた。入り口のところの花弁を左右に除け、
秘丘のふくらみを布地から完全に追い出してしまう。
そうするともうたまらない。水着みたいに伸縮性のある布地は、
エッチな玩具も同然で、わたしの弱い部分をダイレクトに刺激してきた。
あっ、はっ、んう、んふ、くふ──ん、んん、ぁん、あふ。
鼻にかかった息だけで喘ぐわたしを見つめ、指で布地越しにクリトリスをもてあそびながら、
シンヤはもう片方の手で、わたしが倒れないように背中を支えてくれる。
ただ、制服の背中の、ちょうどブラの紐を結んだあたりを軽くさするものだから、
胸の先端もシンヤの胸板で転がされて、もっともっとわたしは気持ちよくなっていく。
エッチな下着つけて、クリトリスにぴったり張り付かせて、電車の中で、
彼氏と一緒だけどこんなすごいことして、イキそうになってる自分。
シンヤの指はもう布地越しの責め手を心得て、こりこり連続して、
虫刺されの痕を掻くように、爪の先でクリトリスを愛撫してくる。
わたしのそれは、すっかり皮から顔を覗かせているから、痺れるほど感じる。
駄目押しに左右から挟まれて、くにゅりと大きく一度捏ねられたら、もうだめだった。
アソコがすごい、動いているのがわかる。声は出せないし身体もろくに動かせないから、
奥のほうからじわあっと滲んで、溢れて、紐に滲んで……息が苦しいくらい。
イッた後も、もちろんわたしは下着をつけたままだから、
ともすれば再燃しそうな布の愛撫に眉をしかめたまま、シンヤに身を任せていた。
アヤノかわいい、すげえかわいい、そう耳元で連呼してくれるけれど、
わたしのスカートの中は本当に大変なことになっている。
下着に含みきれない愛液が腿を伝いそうになるのも当然のことながら、
電車の震動のたびにまた、敏感になっているクリトリスを“舐められて”いるのだ。
シンヤのバカ、アホ、イヌ、サル、変態。ど変態。
低く罵っているうちに下車駅に到着して、やっと一息つける。
とりあえず──とりあえず何はなくとも手洗いへ寄って、どうにかしなくちゃ。
そう思って、さりげなく後ろを鞄で隠しながら階段を昇り、
いつもは全然使いたくもならない(だって汚れてるんだもん)トイレを探していたら、
後ろからシンヤに、ぽんっ、と肩を叩かれて、ヤツはあろうことか、耳元で囁かれた。
「だあめ、アヤノ。──今日、ガッコ終わるまでそれ、履いてて?」
──…………え?