白磁のような指先から水がしたたり落ち、
茂みの中の僕は瞬きもせずに、
そのしずくが落ちた水面に小さな虹の輪が踊るのを見ていた。
僕が隠れている茂みからいくらも離れていないところに
「神の浴み場」と呼ばれるその泉はあった、
そして、今まさに神の託宣を終えたばかりの巫女が一糸まとわぬ姿で沐浴をしていた。
この時刻、この場所で行われる巫女の沐浴を、僕は時折茂みの中からそっと覗く。
彼女はいつも神殿のほうを向いて水浴みをする。
だから、僕からは後ろ姿しか見えない。
細くくびれたウエストに反して、ヒップは豊かな丸みを帯び、
そこから伸びる形の良い脚は水面下へ消えていた。
しみひとつない背中にすんなりと落ちた長い髪は、
彼女が特別な存在であることを示すプラチナブロンドだ。
女性のもつ美しさを完璧に写し取った彼女の姿は、
まごうことなく地上に降りた女神のものだった。
この土地の女はみな、波打つ金髪と褐色の瞳をしている。その中で、数年に一人、
くせのない銀髪と、血の色を透かした赤い瞳を持って生まれる娘がいるのだ。
常人が持つ色を何も身に着けずに生まれ落ちた娘は、すぐさま神殿へ送られる。
そこで世俗の何物にも交わらぬまま、白い乙女として、神の託宣を告げる巫女に育て上げられるのだ。
初めて彼女を見たのは、十五の春だった。神殿での修練を終えて初めて託宣を行った彼女は、
僕より二つか三つ年上に見えた。これまで決して数は多くはないものの、幾度となく目にしてきた
白い乙女たちの中でも、彼女の静謐な美しさは群を抜いていた。
土地の者は、完璧な美を身にまとった女神の姿にひれ伏し、
彼女の唇から告げられる神の言葉を、涙を流しておしいただいた。
僕は一目で女神の崇拝者となった。託宣のあと、ふとしたことでこの泉の存在を知り、
沐浴する彼女の裸身を見守るようになったのも、決して俗物的な卑しい気持からではなかった。
そのような肉欲を抱くには、女神の存在はあまりにも高貴で畏れ多すぎた。
ただ、女神の姿を一目でも長く拝める光栄を、ほかの誰とも分かち合いたくなかった僕は、
今日も息を押し殺して、目の前の完璧な美が白い裸身を水にひたし、
銀の髪を水面に流す光景をみつめていた。
髪を洗い終った彼女は、つと優美な手を伸ばして、枝にかかる白い布をとろうとした。
がさり。
枝の隙間からぬっと伸びた大きな手が、その陶器の様な手首をつかんだのは、
ほんの一瞬の出来事だった。
ばしゃっ!
彼女は手首を振りほどくと、反射的に身を翻して後ずさった。
そこで初めて、女神の裸身の正面があらわになった。形良く盛り上がった乳房の上を、
いく筋ものしずくが滑り落ちている。突然の出来事に、赤い瞳には恐怖というよりも、
ただ透明な驚きが貼り付いていた。その目は静寂をおかした存在を確かめようと見開かれていた。
「こりゃあ近くで見ると想像以上の上玉だぜ。たまんねえな」
下品に濁った声についで、不届きにも女神の手首を拘束しようとした不逞の主が
がさがさと現われた。それは180cmもあろうかというがっしりとした大男だった。
赤銅色に日焼けした太い腕や、シャツからのぞく分厚い胸板には、
野生の獣のようにからみあう体毛がもじゃもじゃと生えていた。
「俗物とまみえたことのない巫女さんってのは、こんな昼日中から素っ裸をさらけ出しても羞恥心
ってものがないのかい。あんた、どこもかしこも丸出しにして、どうぞ私を好きにやって下さいって
言ってるようなもんだぞ。」
男はにやにや笑いながら、聖域であるはずの湖の中へ服を着たまま入り込んでいく。
「なぁんて、な。」
男は手を伸ばすと、彼女の細い腕を乱暴につかんでねじりあげた。
バランスを失った彼女の白い体は、背中から男の腕の中にどさりと倒れ込んだ。
男は彼女を羽交い絞めにすると、白い腰をがっしりとした太ももで抑え込んだ。
ばしゃ、ばしゃ!
白い乙女は、男の腕の中から逃れようと必死でもがく。
悲鳴一つ上げずに、ひたすら安全なところへ逃げようとする姿は、
人間というより、打ち上げられた白い大きな魚が本能的に水を求めてびたん、びたんとのたうちまわっているかのようだった。
「やあ、うまそうなおっぱいだぜ。」
男は手を前に伸ばすと、桜色に突起した小さな乳首を指先でいじり始めた。
「っ……!」
彼女の体躯は、電流が走ったかのようにびくっと震え、大きくのけぞった。
白い乳房はツンと天を向き、男はその先端を両方の指先で執拗にこねくり回した。
「あ・・・、あっ、い・・・や・・・・・・」
いつも淡々と託宣を読み上げる高貴な唇から洩れでたのは、
おおよそ女神らしからぬ、恐怖に満ちた吐息交じりの細い声だった。
「いや・・・あ・・・はっ・・・!!」
男の手が、陶器のような白い首にかかる。
乱暴に彼女の顎を上を向かせると、彼は唇を彼女のそれに強く重ね合わせた。
「んっ、んん・・・・っ!」
美しい唇が強引に割られ、男の舌が彼女の口腔をねっとりとしゃぶりつくす。
目をきつく閉じ、頭を激しく振って抵抗する彼女の口元から、いく筋もの唾液が流れ落ちた。
だが首にかかった男の腕は彼女の頭を押さえこみ、自分から逃げ出すことを決して許さなかった。
「あんた震えてるぜ・・・寒いのか。」
男はにやにやしながら顔を離すと、腰を抱く腕に力を込めて、彼女の上半身を引き上げた。
「きゃああああっ!!」
悲鳴と共に、水面から美しい曲線を描くつややかな尻と、白い太ももが引き上げられた。
宙づりになった精巧な陶器の様な足首が、自由を求めてばたばたと空をもがく。
「騒ぐんじゃねえよ。俺があっためてやるからさ。」
男は軽々と片手で彼女を宙に抱き上げたまま、胸の谷間に黒い頭を埋めると、
乳房をもみしだきながら執拗に舌を使って攻め続けた。
ジュ・・・チュル・・・。
もみしだかれた乳房はいびつに歪み、男の唾液で汚され続けた。
「ああっ・・・や、やめて・・・あんっ!」
彼女は男の体の上で、美しい上半身をのけぞらせながら叫び声を上げ続けた。
初めて他人に体をまさぐられる嫌悪感と裏腹に、女神の声は次第に別の熱を帯びつつあった。
「こんな・・・こんなこ・・・と・・、ああん・・・」
乳房をはみ、腹をなぞりながら、男は自分の肩に彼女の両足を広げて乗せた。
銀色に光る茂みに隠れているはずの彼女の秘所は、今や男の眼の前に大きくさらけ出されていた。
「な・・・ いやあああっ!」
彼女の眼は羞恥心で潤んだ。赤い瞳からつつうと涙が流れ出たが、
それは、まるで血の雫のように見えた。
か細い声を無視して、男は白い股の間に顔を埋めた。
「ああっ・・・! あああっ・・・やあ・・・!」
「へへ・・・大人しくしろよ」
暴れる体を押さえつけ、押し広げた股の奥の茂みに舌を這わせる男の姿は、
白い小鹿をとらえて肉をむさぼる巨大熊のようだった。
ばたばたと宙をける足の間から、
やがて男の唾液とは別のとろりとした蜜のような液体が伝い落ちてきた。
「ああああああっ!・・・あああっ!」
彼女の悲鳴は、今やひそやかな恥じらいを完全にかなぐり捨てて湖の上に響き渡っていた。
男の舌が茂みの奥の小さな隆起をとらえた瞬間、
「ひあっ、ひいいいっ!」
彼女はひときわ大きな絶叫を上げた後、急にがっくりと男の肩にしなだれかかった。
「はあっ・・・はあっ・・・」
その目はうつろに見開かれ、甘い吐息が口から洩れでる。
四肢をだらりとさせた彼女の裸体を満足そうに一瞥した後、男は浅瀬にある岩の上に、
その裸体を横たえた。
「ようやくアソコが潤ったな。そんじゃま、男ってやつを教えてやるとしますか」
男はにやりと笑うと、自らのズボンを引き下ろした。すでにびんびんに充血し、
猛々しくそそりたった男根が姿を現した。
「・・・・!?」
彼女の瞳は、生まれて初めて見るそれを見つめた。
男は華奢な体の上にのしかかると、股を大きく押し広げた。
「なにをするのですっ・・・・」
「何って、あんたに本当の気持ちいいことを教えてやるんだよ」
ちぎれんばかりに押し広げられた股の奥に、男根があてがわれると、
彼女はこれから行われる 行為を悟り、恐怖で目を見開いた。
「いや・・・、やめて・・・。」
「やめてと言いながら、あんたのアソコ、もうすっかりその気になってビショビショなんだぜ」
震えながら男を見上げる彼女の乳房をぴん、と弾く。
「ひあっ・・・あ・・・」
今や彼女の肉体は、すでに刺激によってもたらせる快楽を理解していた。
男の動きのままに、白い裸体は大きく震えた。
男は自分のモノに手をあてがうと、一気に彼女の聖なる茂みの奥深くへと挿入した。
「ひぎぃいいっ! きゃああああっ!」
張り裂けんばかりの激痛に、彼女は悲鳴を上げて泣き叫んた。
だが、これまで何物にも侵されたことのない彼女の聖域は、男根の侵入をかたくなに拒んだ。
男はちっといまいましげに舌打ちすると、
砕けんばかりの勢いで腰を振りながら、彼女の奥に押し入り続けた。
「ひ・・・いた・・・いたあああ・・・いっ! やめて、・・・ひぎいいいいっ!!」
「これであんたも、生身の女になっちまいなあっ!」
そう言うと、男は一気に彼女の中へ身を沈めた。
「あああああああああああああああああっ!!」
恐怖と激痛に駆られ、彼女は絶望の悲鳴を上げた。
白い脚を真っ赤な血の筋が流れ落ちる。女神がついに生身の女に身を堕とした瞬間だった。
はあ・・・はあ・・・・。
「神の浴み場」と呼ばれる泉には、いつもとは違う異様な熱気と、隠微な息遣いが漂っていた。
精根尽き果てたかのようにぐったりと動かなくなった白い乙女を泉の岸辺に置き去りにすると、
男はさっさと立ち去ってしまった。
白い乙女は、男に汚されたままの裸身をあらわにしたまま、うつろな瞳で空を見つめていた。
その赤い瞳からは、いく筋もの涙が流れ、白い頬を伝って湖の中へ落ちていった。
白い太ももには、赤い血筋が生々しく残っていた。
がさり。
一部始終をすべて見届けた僕は、茂みの中から姿を現した。
彼女ははっとしたように僕のほうを振り返る。恐怖と悲しみに満ちたその表情は、
高貴な女神とは程遠く、蹂躙され、打ち捨てられた、一人のおびえる娘のものだった。
僕が託宣を聞きに来る村の青年だと分かった彼女は、震える唇で言った。
「たすけて・・・・・・」
それに答えず、僕は彼女に近づいていった。
ああ、神様。
罪深い僕を許して下さい。
神殿の乙女を、下卑た野心を秘めた視線で見ていた旅のよそ者に近づき、
あなたの女神の沐浴の場所を教えたのは、この僕なのです。
僕には意気地がなかった。
こんなに焦がれているのに。
こんなに女神を僕のものにしたいと願っているのに。
あなたの高貴な女神に触れることなど畏れ多くて。
でも今なら触れる。
あなたの手の中を離れ、その肉の身をただの人間の女に落としめた今の彼女になら、
ひとかけらの罪悪感を持つことなく、僕の欲望を彼女の美しい体にぶちまけることができる。
「たすけて・・・たすけてください・・・」
すがりつくように、彼女は細い腕を僕に差し伸べる。
そうだ。それでいいんだ。
さあ、僕に慈悲をこい、すがりつくがいい。
女神じゃない、
汚れたお前は、僕の可愛い玩具だ。
微笑みを浮かべながら、僕はもう一歩彼女に近づいた。