女とは醜悪だ。自己中で我侭で他人の事なんかこれっぽっちも考えていない。
そういう生き物なのだ。僕はそれを物心ついた頃から知っている。
奴等と関わるとろくな事がない。できるだけ遠くに居た方がいいのだ。
不満があろうと、ぐっと堪えた方がいい。奴等は陰湿だ。変に抵抗すると、余計に面倒くさくなる。
「あ、そうそう、それ、今月のヤホオクの分だし。出しといてね。」
姉はリビングの入り口にある大きな紙袋を指差した。
使わないブランド鞄や洋服が詰まっている。中には未使用品もたくさんある。これら全て、男からのプレゼントだ。
姉には複数の男がいる。本命は一人。他はカネヅルだ。金持ちの男を引っ掛け彼女を装い、金を巻き上げる。
バイトをしていない姉の通帳に7桁の預金があるのはそのお陰だ。
直接お小遣いとして現金を貰う事もあれば、こうして高い鞄や宝石を貰う事もある。
僕はそれをヤホオクで換金し、入る金の3%を手数料としてもらっている。
手間を考えると効率が激しく悪いバイトだが、仕方が無い。金が貰えるだけマシなのだ。
愚かな男共は、高校時代周りから学園のアイドルと言わしめた程の、甘く幼いその圧倒的な美貌とその優秀な肩書きに騙される。
姉は中高を通じて文武両道を貫き、高校は県下有名進学校に進み、部活ではさまざまな大会に出場し、賞を取っている。
また、学校外でも、書道とピアノは先生になる資格を持っている。
そして現在は文系学部にも関わらず半期100万の授業料のお嬢様女子大学に通っている。
元々姉はマトモだった。女子大に入学するまでは。性格が良かった事はお世辞にも一度たりとも無いが、
少なくともここまでは腐っていなかった。それが何故か、大学に入ってから生活が荒れはじめた。
姉は幼い頃から容姿の綺麗さは群を抜いていた。女の子は容姿がいいと人気者になる。
親類など周りからベタベタに褒められた。だから姉は自分に絶対的な自信を持った。
さらに神は姉に二物を与えた。姉は生まれつき頭が良いのだ。習い事や運動をやらせても
がむしゃらな努力をせずともすいすいと身に付けてゆく。それが姉の性格を歪ませたと僕は勝手に思っているが、
どうやら世渡り術を見に付けるのも上手いようで、姉は男だけでなく女にも人気だった。
もしかして、これは僕の単なる嫉妬なのかもしれない。まぁ多分そうなのだろう。
そうであろうが無かろうが、とにかく僕はこの我が家のお嬢様が大嫌いだ。
大学で何があったのかは知らないが、とにかく一度痛い目にあえばいい。
どこぞの暴力団に捕まってボコボコに犯されればいい。
その問題のお嬢様は今僕の目の前で、床に座布団を枕代わりに敷き、シャツにパンツという
恥じらいも糞も無い格好で寝転がりながらポテチを食っている。
どうせその食べこぼしも掃除しないんだろう。両親が居ないからって今日は特に好き放題している。
「来週までには頼むから」姉はそう言うと、殻になったポテチの袋の中に残ったカスを口の中に流し込み、
袋をクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げた。しかし袋はゴミ箱からは1m以上も離れた所に飛んでいった。
「入れて」姉はテレビの方に向いたまま、でかいケツを掻きながら言った。
「お前なぁ、いい加減にしろよ。母さんと父さんが旅行行ってるからってやりたい放題しすぎだぞ」
僕が少し注意すると苛ついた姉は立ち上がり、わざとドスドスと床を踏みしめながらゴミ箱まで歩き、袋をゴミ箱に叩き込んだ。
「命令すんな根暗」
姉は僕にそう言うとまた寝転がり、ギャハハと下品な笑い声を上げた。
その時、姉の携帯が鳴った。
「携帯取ってよ」姉は僕に言った。
僕は無視して二階に上がろうとした。
「取れよ糞坊主!!」
糞坊主とは言うまでもなく僕のことだ。僕は机の上の携帯を姉の顔面めがけて投げた。姉はそれを素早くキャッチした。
「お前、後でどうなるか覚えとけよ」昔の餓鬼大将のような脅し文句を言って僕を睨みつけた。
となると早めに金目のものはどこかに隠しておかなければならない。僕はリビングを出た。
「あ、もしもし?カズちゃん?」
急に口調どころか声も変わった。カズちゃんとは本命の彼氏だ。
トラックの運転手をしている元ヤンキーだ。不思議な事に本命は金持ちではない。
二階に上がる。姉の部屋は物が散らかっている。
雑誌、服、化粧品、靴。玄関の下駄箱に入りきらなくなった靴は自室に靴居れを持ち込んで保管しているようだ。
頭おかしいんじゃないだろうか。
自室に篭り明日の中学の宿題をする。今年は僕も受験だ。
少なくとも姉が通っていた高校よりは上を目指したい。だがそうなると県下最難関しか道は無い。
なかなか難しい。せいぜい40人程度のクラスでトップ争いをしているような今の成績では夢のそのまた夢だ。
学年のトップに立って始めてチャレンジできるレベルだろう。
一階から姉の声が聞えてきた。えらく大声だ。珍しい。たまにヒステリックな声も聞えた。
しかし僕はさして気にせず宿題を続けた。
数時間後。静かになったと思ったら急に姉がドタドタと凄いスピードで階段を上がってきた。
そして僕の部屋のドアを叩き開けて一階にあった鞄や服が入った紙袋を僕に投げつけた。
「あんたこれヤホオクに出しておけって言ったでしょ!」袋は僕の顔面に直撃した。
ブランド鞄は重く、使い込まないと固い。当たった袋はかなり痛かった。
「来週までに出せばいいんだろ!文句言うなら自分で・・・」
僕は姉を見た瞬間言葉が停まった。
姉は泣いていたのだ。鬼の形相で僕を睨みつけてはいるが、しかし目は真っ赤になり、幾筋もの涙が頬をつたっていた。
「何よ!?私に文句言うの!?」姉は椅子に座る僕の方にズカズカと大股で歩いてきた。
そして突然僕の髪の毛を掴んで引っ張った。
「あんたを見てると苛々すんのよ」姉はそう言い、今度は僕の首を両手で鷲掴みにした。
僕は息が止まり、あまりの苦しさに立ち上がった。
「ぐるじい・・・やめて・・・」
姉は僕の顔面を殴った。僕はベッドに倒れこんだ。
そして姉は僕の上に馬乗になり再度首を絞めた。
「ムカつく・・・あんたが居るだけでストレスが溜まる・・・」
頭に血が上る。このままでは殺される。僕は姉の手を力づくで掴みその皮膚に爪を食い込ませた。
「痛い!」姉は腕を離した。僕は必死に息を吸い込んだ。
その直後、姉の平手打ちが僕の頬を直撃した。そして間髪入れず逆の頬を叩かれる。
バシバシと往復ビンタが繰り返された。僕は抵抗してまた姉の腕を掴んだ。
「い、いい加減にしろよ!僕が一体何をした!?何故殴られなきゃならないんだ!?」
「はぁ?そんなの決まってんでしょ!あんたがムカつくからよ!」
姉は僕の腕を振り払うとまた僕の頬を叩いた。しかし突然、姉はその手を止めた。
「これ見てみな」
そういうと姉はベッドの上に落ちていた僕の携帯を拾い上げた。
「返せ」僕は手を伸ばしてそれを取り上げようとした。
しかし姉はそれをかわした。
その瞬間、姉は自分のシャツをブラごと捲り上げた。真っ白でシミ一つない乳房とピンク色の乳首が見えた。
「ちょっ!何やってんだよ!」僕は腕で顔を隠した。
姉はニヤニヤしながら携帯を自分の首元にもっていき、自分の胸が写るように僕を撮影した。
「ほら、見てみ」姉は写真を僕に見せた。
まるで僕が女性とHをしている最中に女性が撮影したように見えた。
「これを・・・よっと。ほら、この宛先」
姉は僕に携帯を見せた。宛先を見た瞬間、一気に血の気が引いた。書道の先生だ。
そして僕の初恋で方想いの人だ。
もう30代半ばだが、僕が小1で書道を始めたその時から密かに思い続けていた。
「あんたこの先生が好きなんでしょ」ニィと姉の口元が左右に広がった。
「な、なんで知ってんだよ」
「なんでって、そんなもの、みてたら分かるわよ」
姉も同じ書道教室に通っていた。姉はその先生の最初の生徒の一人だ。
しかし中3になる頃にはほぼ先生と同じレベルに達し、教室が終わる前によく先生と一緒に生徒の作品の品評をしていた。
先生にも展覧会があるが、姉は先生と同じ展覧会に出、賞も取っていた。
「あんなバツ一の年増婆の何がいいんだか」
姉は鼻で嘲笑った。そこまで貶されるとムッとする。
「いいから携帯返せよ!」僕は携帯を引っ手繰ろうとした。
「送信っと」姉は笑いながらボタンを押した。
「うわあああああああああああああ!」僕は発狂した。確かに画面には送信中という表示が出ていた。
「何しやがんだ畜生!!!」
僕は携帯を取り上げ必死に送信中止ボタンを連打したが、間に合わなかった。
「畜生・・・畜生!」僕はベッドを思いっきり叩いた。
「なんでこんな事すんだよ!僕に一体何の恨みがあんだよ!」
「恨み?そんなもの無いわ。ただ、あんたがウザいから。つか男の癖に泣くなよキモい。吐き気がするくらいあんたキモいわ」
姉の理不尽なセリフに我慢の限界を超えた僕は姉の首を掴んで横に押し倒した。キャッという弱い悲鳴を一瞬あげ、姉は簡単に倒れた。
そして今度は僕が馬乗になった。僕は姉の頬を思い切り叩いた。バシンと乾いた音が鳴った。
「畜生畜生!お前さえいなければ!お前さえ!」何度叩いても僕の怒りは収まらなかった。
これまで僕は姉への暴力を封印していた。
去年喧嘩した時、キレた僕は姉を蹴飛ばした。足は下腹部を直撃し、姉は聞いたことも無いような鈍い悲鳴を上げてうずくまった。
僕は姉が予想以上に痛がった事に動揺した。そして短いスカートから覗く下着に血痕が見えた。僕は絶句した。
僕は姉を殺してしまった。大袈裟だがその時僕は本気でそう思った。母が駆け寄り姉はすぐに病院に連れて行かれた。
しかし結果的には大したこともなく、血痕も関係ないようだった。しかし、力関係が完全に逆転し、
僕は手を挙げればもう、一人の女性を殺してしまえる力をもっている事を知った。
それ以来僕は暴力を封印したつもりだったが、その決心は2年も持たなかった。
「もう限界だ。僕はお前の奴隷じゃない!」僕はバシバシと顔面を殴り続けた。
姉は痛いよ辞めてと泣き叫んでいる。僕はその姉の悲鳴に怯み、手を止めてしまった。ふと我に返ったのだ。
姉は腕で顔面をガードしていた。一瞬、腕の間から覗く口元が動いたかと思うと突然姉は上半身を引き起こし
今度は僕の首を掴み僕を倒しこんだ。そしてまた姉が馬乗になり首を絞めた。
今度は爪を立てている。僕は姉の腕を振り払おうとしたが、喉元に姉の爪が食い込んだ。
「あんたは所詮その程度なのよ」だんだんと視界が狭くなる。
「さっきだって私の歯が折れるくらい平手じゃなく拳で殴ればよかった。だけどあんたにはできない。そんな度胸は無いから」
僕はなんとか姉の手を剥がした。食い込んだ爪が僕の首の皮膚をえぐった。
僕はゼエゼエと必死に息を吸った。目元からは涙が溢れた。
すると突然、姉はあろうことか僕の頭を両腕で抱き、僕にキスをした。僕は一瞬何が起こったのか意味が分からなかった。
キスといっても、生易しいものではない。えぐるように姉は僕の口を貪った。
僕は反射的に姉の頭を殴り、姉を振り払ってベッドの端まで逃げた。
まるで、映画のヤラレ役が恐怖のあまり腰を抜かしながら化物から逃げるように。
そして僕は自分のベッドの上にも関わらず何度も唾を吐いた。何度も何度も吐いた。毒が体内に侵入するのを防ぐために必死に
吐き出そうとした。
姉はゆっくりと近寄ってきた。僕に顔を叩かれたからか、頬を紅潮させ、薄気味悪い笑みをたたえている。
「あんたさ、私の弟だよね」
姉は僕が筆箱に入れておいたはずのカッターナイフを握っていた。
「弟はお姉ちゃんには逆らえないんだよ」
両手をつきながら、まるで獲物を狙う豹のように、ゆっくりと近づいてくる。姉は見たことの無い表情をしていた。
これが人間の表情なのか。まるで獣だ。こいつは完全に狂っている。正気の沙汰ではない。
今なら平気でナイフを僕の喉元に突き立てそうだ。
僕は逃げるために立ち上がろうとした。しかし立てない。足がガタガタと震えて力が入らないのだ。無様にもシーツを蹴るだけだ。
姉は僕に近づき、ゆっくりとナイフの刃を首元に当てた。
「やめて・・・助けて・・・」僕は震えながら出ない声を絞り出し助けをこうた。
「可愛い」姉はそう言って手で僕の顎に触れた。顎に滴る僕の涙を中指で掬い、ペロっと舐めた。
そしてナイフを当てたままキスをした。僕はギュッと歯を噛み締め姉の侵入を防いだ。
僕が頑なに拒絶し続けていると、キスは諦めたのか、姉は僕の唇をそっと舌先でなぞると、
僕のシャツを首元まで捲くり上げ、胸の辺りにナイフを添えた。
僕はそのナイフが腹に突き刺さらない事を祈りながら、ただ姉の常軌を逸した行動に耐え続けるしかなかった。
姉はもう一度そっと僕の唇を舐めた。そのくすぐったさに、僕はピクリと体を仰け反らせた。
そのせいで、ナイフの刃先がチクリと皮膚に掠った。
僕は姉のその変態的な行動に激しい嫌悪感を覚え、きつく目を閉じて腕で顔を覆った。
それを見た姉はクスリと笑った。
姉はゆっくりと刃先を下半身に向かって腹の皮膚に沿わせながら移動させた。
刃が皮膚に触れているので、逃げるどころか、息も満足に吸えない状況だった。
ナイフがヘソの下の短パンのウエスト部分に触れた。そこでナイフは停まった。
僕はなんとか上半身を引き起こして言った。
「な、何がしたいんだよ」
僕の下半身の上に伏せていた姉も起き上がり、僕と向かい合った。
そして、ぐいと近づいてきた。顔面の距離が近い。僕は少し後ろに退いた。
「誰が起きていいって言ったのよ」
姉はナイフを僕の頬に突きつけた。刃先が頬に触れた。
僕は避けようとしたが、鋭い刃は簡単に頬の薄い皮を破った。生暖かい血液が頬を垂れる。
「あんたさぁ、なんでいつも私に楯突こうとすんの?」
姉の口調は非常に冷静だった。その不自然な冷静さが余計に恐怖を増長させる。
姉はニヤけながら流れる血液を舐めるように眺めた。
そしてそっと人差し指で傷口に触れた。
「顔はキモい、性格は根暗、成績は悪いし運動もできない」
姉はえぐるようにグリグリと傷口をいじりながら言った。
傷が広がり、出血が酷くなる。ヒリヒリと地味な痛みが蓄積されてゆく。
「そんな、無能で、」
姉は強調するように言い、ぐいぐいとほじくるように傷に爪を立てた。
「キモいあんたが」
爪が食い込み、皮が捲られた。ジリジリと痛みが増すのと同じ様に僕の怒りはどんどん膨れ上がった。
僕は目を閉じ、歯を噛み締め、必死に耐えた。
「私に逆らえる道理が、あるわけないでしょ」
そう言った後、姉は真っ赤になった指先を僕の反対側の頬に擦りつけ、血をねじくった。
「これと同じ血が私の体の中に流れてると思うと死にたくなるわ」
そう言った挙句、姉は僕に唾を履きかけた。
至近距離からの唾液は僕の口に直撃した。僕はそれをすぐに腕で拭った。
そろそろ僕の怒りは限界を超えつつあった。僕は姉の顔を睨みつけた。歯は折れそうなほどギリギリと噛み締めていた。
姉は常に僕を見下すような目つきで見つめ続けた。
だが、ナイフがつきつけられている以上、下手に動けなかった。
姉はすっと僕から体を離れさせた。しかしナイフはしっかりと体を沿わせていた。
しかし、威圧し続けていた姉の顔が離れ、僕は少し緊張状態から解き放たれ、小さな溜息をついた。
僕はこの怒りを静めるために、何か反抗せずにはいられなかった。
「あ、あのヤンキーに振られたのかよ」
僕は、あえて姉を嘲笑うかのような言い方で言った。
これがさっきの一階での口喧嘩からくる単なる八つ当たりだとしたら滑稽で無様な話だ。
僕がそう言うと姉は明らかに動揺した。僕を見下していた瞳は逸れ、左右に細かく動いている。図星か。
「ざまぁみろ―」僕がそう言って馬鹿にしようとした途端、姉はそれに被せて大声で言った。
「はぁ!?私が振られる!?有得ない。馬鹿にしてんの!?」
姉は唇を噛み締めた。キィッという奇声のような声が喉の奥から微かに聞え、顔が一気に紅潮した。
姉はナイフを両手に持ち替え、天高く振り上げた。しまった!今度こそ殺される!
僕は反射的に顔を腕で覆い、目を閉じ、ナイフが突き刺さるのを覚悟した。
手から汗が噴出し、体中の筋肉が硬直した。ヘソの辺りがムズ痒くなる。
一瞬だが、時間がスローに流れ始める。その間、意外にも僕の脳内は冷静だった。
僕はそのスローな一瞬で様々な事を考えた。
このナイフが腹に突き刺さったらどんなに痛いのだろうか。すぐに死ぬのか。
何度も刺されるのだろうか。自分の娘にめった刺しにされた息子を見て両親は一体どう思うだろうか。
果ては、刺さったあと、もし生きていたら、しっかりと病院に連れて行ってもらえるだろうか。
もしかして出血したまま放置されるんじゃないだろうか。など。
しかし、一通り考え尽くしても、いっこうに腹に激痛はやってこなかった。
力み、強張っていた筋肉が徐々に弛緩し、僕は留めていた息を大きく吐いた。そして、ゆっくりと目を開けた。
姉はナイフをベッドの上に下ろして俯いていた。
「馬鹿みたいだ。私」姉はボソリと言った(と思うが、声が小さかったのでよく分からなかった)。
間一髪のところで僕は肉塊になるのを回避できた。僕は少しの間、呆然としていた。
が、少しづつ、先ほどからの怒りが沸々と沸いてきた。
姉は今、無防備な状態で俯いている。今だ。自分の生命を守り、仕返しをするなら今しかない。僕は覚悟した。
僕は姉の手から素早くナイフを抜き取り、空いているドアの方に目掛けて投げた。
ナイフは廊下をすべり、階段を落ちて行った。
「あっ!」と姉が言った頃には遅かった。僕は姉に飛びかかり、押し倒した。
体力では互角か、それ以上なのだ。勝ち目はある。僕はもう一度姉の上に馬乗になった。
「いつまでもしたい放題できると思ったら大間違いだぞ」
僕はできるだけ凄みが出るように怒鳴った。
つもりだったが、
「んで?私を殴るの?」
こちらの威勢が半分削がれるほど姉は冷静だった。
「ば、馬鹿にすんな!」なんでだ?なんでこうなる?
僕は思い切り、姉の頬を引っ叩いた。パシンという大きな乾いた音が響いた。
しかし、姉は赤くなる頬を気にする素振すら見せずブレる事無く僕を睨み続けている。あれ?なんでこんなに強いんだ?
もう完全に形勢逆転しつつある。こんなはずではない。
ヤケになった僕は姉のシャツを捲くり上げた。叩いても効かないのだから、
姉を不快な気持ちにさせるには目の前にあるシャツを捲くるしかとっさに方法が思いつかなかったのだ。
すると、たわわに実った2つのおっぱいと、それを隠す淡いピンク色のブラが露になった。
中学生の僕にとって、姉とはいえ、年頃の女性の裸はあまりに刺激が強すぎた。
僕は思わず目を逸らしてしまった。そして、ふと我に戻る。僕は姉に仕返しをするつもりだったのだ。
何故服を剥いだ?姉を不快にさせるつもりだった。しかし姉はさっき自ら胸を露出して見せたではないか。
姉のようなビッチは、男に胸を曝け出す事など朝飯前なのだ。なんの攻撃にもならないのだ。
深く考えない反射的な行動に後悔した僕は、そっと視線を胸に・・・ではなく、姉の顔に戻した。
姉は相変わらず動揺は微塵も見せていなかった。
むしろ、反抗して見せた。
「で、どうすんの?実の姉の服を剥いでどうすんの」
「ぐっ・・・」次の一手が出てこなかった。もう完全に僕の負けだ。
悔しいが、僕はゆっくりとシャツを下げようとした。そうするしかなかったのだ。勢いが完全に削がれた。
すると、突然姉は噴出すように笑い出した。
「それだけ!?でかい口叩いてそれだけ!?あんた本当に馬鹿じゃないの!?」
僕は腕を止めた。姉はこんなに大笑いしている。僕は一方的に貶され、命まで奪われそうになったのに
ここで、はいごめんなさいと僕は負けを認めてしまってもいいのか?
ここでシャツを下げたら僕は一生姉に頭が上がらないんじゃないのか?諦めたらそこで試合終了ですよって安西先生も言ってた。
「う、うるせぇ!」僕はまたシャツを捲くり上げた。そしてブラを引っ張った。
ブラは簡単にズレ、大きな胸が露出した。
僕は目を逸らしそうになったが、負けるもんかと姉をにらみつけた。
数秒間、僕達はお互いを見詰め合う形になった。ブラは捲った。上半身は裸も同然だ。
次だ。次の一手を出さなければ。
僕がどうしようか迷っていると、姉は僕の腕を掴んだ。
「こうやんのよ」
そう言うと、姉は僕に自分の胸を強引に掴ませた。
「うっ・・・うわぁ!」
思わず妙な声が漏れた。今まで経験した事の無いような柔らかさと弾力が掌を包み込んだ。
姉はぐいぐいと僕に乳を揉ませた。
姉の手が僕から離れると、僕はとっさに胸から手を引っ込めた。
初体験だった。若い女性の胸を揉みしだくなんて、例えそれが姉だとはいえ、この体なのだ。
認めたくないが本能は激しく興奮したのだった。
僕は今この状況を飲み込もうと必死だった。そうやってぐずぐずしている内に、姉は僕の肩を掴んで
また押し倒した。そして馬乗になった。
「ちょっ・・・な、何すんだよ!やめろよ!」僕は抵抗しようとした。
すると姉は突然、シャツを脱ぎ、ブラジャーを外した。大きな胸がぽよんと上下に揺れた。
姉は僕の口を無理やり開けた。僕は抵抗したが、姉は構わず脱いだブラをクシャクシャに丸め、
口内にぶち込んだ。姉の手は僕の唾液まみれになりながらも、本人は全く気にする事なく、いや寧ろ
その荒々しさを楽しむかのように親指や人差し指で奥へ奥へ押し込んだ。顎が外れるかと思うほどだった。
僕はギチギチに詰め込まれたブラを涙目になりながらも必死に吐き出そうとしていると、
今度は姉は袋の中から革製の長いベルトを取り出し、それで僕の上半身と腕を縛りあげようとした。
当然僕は抵抗を試みた。バタバタと暴れると姉はあろうことかステンレス製の先が鋭いシャーペンを僕の腕に突き刺した。
「んんー!」幸い、ペン先が刺さっただけだったが、僕はあまりの激痛に泣き叫んだ。
「あんたさぁ、今どういう状況か分かってんの」
姉はタラタラと垂れる腕の血を気にも留めず、ペンを僕につきつけた。
その顔は冷酷で、僕の命なんかなんとも思っていないように、その時の僕には見えた。
僕はグスグスと鼻水をすすりながら必死に首を上下に振った。
「聞き分けのある子は好きだよ。シャツを脱いで両腕を出して」
姉は笑顔で僕に命令した。僕はそれに従った。
「腕を背中に回して」なんだ?逮捕でもされるのか?
姉は手際よく僕の体を身動き取れないくらいに縛りあげた。
「あはっ、なんて恰好なの?」
虐待を受ける捕虜のような恰好になった僕を見、姉は笑いながら言った。
おっぱい丸出しでショーツ一枚のお前も大概だぞと僕は心の中でつっこんだ。
僕を生きた愛玩人形にした姉は部屋の明かりを消し、窓のカーテンを全開にした。
半裸の姉はベッドの前に立ち、情けない状況の僕を見下ろした。
「いい眺め」姉は微笑みながら静かに言った。
窓から差し込む満月の明かりは、目が暗闇に慣れてくるにつれ、徐々に姉の体の柔らかなラインを写し出し、
艶やかな体の隆起を浮かびあがらせた。その体は蛍光灯下でみるよりも妖艶に見えた。
姉はゆっくりとベッドの上に乗った。ギシとベッドが鳴る。
僕はまるで巨大なクモの巣にかかった虫だ。クモは身動き取れない虫を満足げに眺めながら、ゆっくりと近づいてくる。
動けない虫は全てをクモに捧げたも同然だ。己の肉も、骨も、内蔵も、精神も、命も。
クモの意向次第で、殺す事も自分の元で生き長らえさせる事もできる。
クモは焦らずゆっくりと、味わうように虫を見つめながら体にまとわりついてくる。
そのようにして姉は僕の腿の上に跨った。
撫でるようにそっと手を僕の首筋から下腹に向かって沿わせた。
そして上半身を伏せ、僕を抱きしめた。力をこめて。押しつぶすかの勢いで。
姉の大きな胸が僕の体に密着した。お互いの肌はしっとりと汗ばんでいた。
吸い付くようなキメの細かい肌と、例えようのないほど柔らかく弾力のある肉体は
普段の態度からは想像できない程、暖かくて、気持良く、性的で、そして繊細だった。
興奮しているのか、僕の耳元から聞こえる姉の吐息は荒く、細かく震えていた。
髪から漂う、独特の甘ったるい香りで頭がクラクラする。姉の成熟しつつある女体は非常に淫美で情欲を激しく掻き立てられた。
これがあの姉では無かったら、どれ程良かっただろうか。
もしそうなら、間違いなく僕は彼女を押し倒し、本能が赴くまま野獣のように犯しただろう。
もちろん、拘束されていなければだが。
部屋は静寂に包まれ、僕は姉の心臓の鼓動までも感じとれた気がした。
そして同時に僕の欲望までも姉に察知される気がして僕は必死に冷静を装おうとした。
しかし、その努力は無駄だった。みるみる僕の愚息は怒張してゆく。
しばらく僕達は抱き合った。いや、僕達は抱き合ったというか、僕は抱かれた。
その後、「脱がすよ」と姉は小さな声でささやいた。
そしてゆっくりと、僕の下着を脱がせた。すると愚息ははち切れんばかりに膨張し、天を向いたのである。
僕達は姉弟だ。こんな事許されるわけがない…。しかし僕の体は呆れる程欲望に正直だった。
僕は恥ずかしくて、そしてこの状況を受け入れたくないがために、顔を背けた。
姉は再度体を屈ませた。
相手は同じ種(たね)を核とし、同じ腹から生まれ出て、殆ど同じ遺伝子を持つ女だとはつゆも知らず、
とにかく子孫を残そうと逸る僕の硬い愚息は、標的である姉の子宮に照準を合わせるかのように下腹部に密着した。
姉は先程の頬の傷をゆっくりと舐めた。そのくすぐったさと、気持の悪さからか僕の全身の皮膚が鳥肌立った。
やっぱりこいつは姉なのだ。興奮に支配されている最中、冷や水を掛けられるようにこれは姉なのだと思い知らされる。
「感じてんの?」
僕は、姉のこの勘違い甚だしい質問に答える事ができなかった。この愚息を持ち合わせながら否定しても滑稽なだけだ。
姉は僕の太ももに下ろしていた腰を少し前進させた。すると僕の愚息はピッタリと姉の陰部上部と密着した。
そして、姉はそれを自分の太ももで挟んだりしながら、溢れ出てきた自分の粘液を塗りたくるように指でいじりはじめた。
さらに僕の頬を掴んで無理矢理首を仰向きにし、屈んで唇と唇が触れ合うくらいの距離でこうささやいた。
「すごい勃起」
その、勃の破裂音が妙に強調されたように聞こえ、それが非常に下品な響きに感じ、
さらにスナック菓子の匂いの口臭が僕を不快にさせた。
姉はそう言った後、突然僕の張りつめた皮を無理矢理剥いた。僕はうめいた。皮が破れたかと思う程の激痛が走ったのだ。
剥かれた窮屈な皮は愚息自体をうっ血しそうな程絞めあげた。そして痛い程敏感な中身を姉は指でもてあそびはじめた。
「痛い!痛いよ!」口のブラのせいで、はっきりとした言葉にはならなかったが僕は必死に訴えた。
「痛いの?」
姉はかすれた甘い声で訪ねた。僕は必死に首を上下に振った。
「そう」姉は満足そうに言うと、僕の湖岸を触っている手ではないもう片方の手で頭をそっと撫でた。
「よしよし、痛いね。痛いね。」姉はまるで幼子を諭す母親のように優しく言った。
しかし、その母性溢れる微笑みとは裏腹に行為は一向にやめなかった。
爪を尿道に入れようとしてみたり、皮の間に指を入れたり、玉を握ってみたり。とにかく痛い事を繰り返した。
僕はまるで怖がる子犬のように情けない声を出しながら、詰め込まれたブラを噛み締め、
体を激しく捩らせながら、その激痛を伴う愛撫という名の拷問に耐えた。
すかし何を勘違いしているのか、僕の勃起は全く治まらなかった。