「あっ」  
――という声が出たときには、往々にして手遅れであることが多い。  
今回もその例に漏れず、俺が年賀状を用意していないことに気づいたのは、既に31日のことだった。  
「……まあ、いいか」  
手遅れではあるが、その程度で済む問題だ。どうしても挨拶をしたいなら、年賀メールという手もある。  
そしてそうまでして連絡しなければならない相手は、俺にはいない。  
「うん、問題ない」  
小学生のころ、せかせか十何枚も書いていた少年はこんなにずぼらな大人になりました。  
「問題ない。じゃないでしょ、こらっ」  
こたつの中で足を蹴られた。向かい合ってこたつに入っている幼馴染の彼女の仕業である。  
ちなみに今は、彼女の家の雪はきを手伝った労いに、家に上げてもらい暖をとっている、という状況。  
「でも、送る相手いないし」  
「普通に生きててそんなことあるわけないでしょっ。友達が1人もいなかったわけでもないでしょうに」  
「それはそうだが、何年も会っていないのにいきなり年賀状を送りつけるのもどうかと」  
「年賀状ってそのためのものであるでしょ」  
そうだったのか。さすが、今でも昔の友達のほとんどに年賀状を送り続けている奴の言うことは違う。  
「小学校のころの友達とか、未だにあんたがどうしてるかも聞いてくるんだから」  
「ああ……そうなんだ」  
音信不通のままでいると、そのうち、死亡説が広まってしまうかもしれない。  
「いちいち私が対応するのも面倒だから、ちゃんと年賀状出してあげなさいよ」  
「うん、その気になってきた。そうしたいのはやまやまだが……もう大晦日だな」  
「そーね。ま、そんなことだろうと思って、今年は私が手を打っておいたから」  
と、彼女は書き損じて手許に残しておいた年賀状を俺に見せる。  
差出人である彼女の名前の隣には、連名するように俺の名前が書いてあった。  
「どうよ?」  
「どうよって……お前、これ」  
「なぁに? どっかおかしいとこあった?」  
「いや……こんなん、同棲してるもんだと勘違いされて余計に問い合わせが来るぞ」  
「あっ」  
――という声が出たときには、往々にして手遅れであることが多い。  
今回もその例に漏れず、二人の名前が並んだ年賀状は、既に(おそらく)発送された後だった。  
「……まあ、いいか」  
手遅れではあるが、その程度で済む問題――「なわけないでしょ、こらっ」  
「どうせ一緒に住んでるようなもんだろ」  
「家が近所でよく行き来するだけで、お互いひとり立ちすらしてないでしょっ」  
「これからも年賀状はお前に任せるよ。苗字いっしょになったらちょっとは書くの楽になるだろ」  
「 」  
「あっ」  
――という声が(以下略)  
 
 

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