「瞬君…今年ももう終わるね…」
「みな姉?どうしたんだよ急に」
みな姉さんがいきなり呟く。みな姉は隣に住む一つ上の所謂「幼なじみ」と呼ばれる相手である。
ちなみに受験生の俺の家庭教師でもあるのだが、大晦日とお正月だけは勉強の休みを貰ったので二人して俺の部屋にこもり
みな姉は大学生だと言うのに、大晦日にどこにも行かず一緒にガキの使いを観ている…という状況だった。
「今年も何もなかったなぁ…と思って」
「何もって何が?」
「…」
俺の問いに返答をしてくれない彼女は、俺を見つめてくる。
「な…何?」
「瞬君…好きだよ…」
「…!?」
いきなりのみな姉の言葉に俺は口に含んでいた蜜柑を危うく吐き出す所だった。
「ゴホッゴホッ」
「ご…ごめんね?大丈夫?」
噎せている俺の隣りでみな姉が背中をさすってくれる。みな姉の手が温かくなんだか変な感覚だ。
やっと咳が治まった俺はみな姉の方に顔を向ける。心配そうに見つめてくる彼女に俺の心が苦しくなる。
「急に変な事言ってごめんね…瞬君が大学生になって彼女が出来たら
今年みたいに一緒に居られなくなっちゃうと思ったら我慢できなくて…」
俺から目を逸らしてみな姉が謝る。シュンとなったその顔があまりにも可愛くて俺は彼女を抱きしめていた。
「し…瞬君!?」
いきなり抱きしめられたみな姉は驚いて動けないでいた。
「俺も好きだ…てか俺みな姉一筋だったし」
抱きしめる力を緩め、目を見つめて告白をする。みるみる内に彼女の顔は真っ赤になっていく。
「あ…あの…本当?」
「こんな事嘘ついてどうするんだよ…てか受験が終わったら俺から告白するつもりだったのに…」
「瞬君から!?」
俺の言葉に驚くみな姉が可愛くて、もう一度思い切り抱きしめて耳元で「好きです付き合って下さい」と囁く。
「…はい…」
俺を抱きしめ返しながらみな姉が小さな声で頷く。
「受験生のくせに告白なんかしたら怒られるかな〜って思ってたんだけど杞憂みたいだったな」
胸の中にいたみな姉を解放し照れ笑いをしながら呟く。
「…ごめんね…瞬君受験生なのに私が我慢しなかったから」
「いや…その…俺の方こそごめん。大学落ちたら恥ずかしくて言えなかっただろうし…」
俺の別の意味での告白にみな姉の表情が急に引き締まる。
「そうだね!お正月返上で勉強だ!!私の告白が原因で落ちたりしたら…」
「え!?A判定もらったし今日と明日だけは特別に休みだったんじゃ!?」
「恋愛にうつつを抜かして落ちたなんて事になったらおじさんやおばさんにどう謝っていいか…
ですので明日からは今まで以上にビシバシいきますからね!」
お姉さん口調でキリッと言い放つみな姉に俺は露骨にげんなりするが、折角恋人同士になったのだここで終われるわけがない。
「明日からだよね?」
「うん…今日はもうすぐ終わるしね…明日からまた頑張ろう」
俺の言葉にみな姉は純粋な笑顔で返してくる。その言葉に再度みな姉を抱きしめて頬に手をあてる。
「ちょ…瞬君!?」
俺の行動に驚いたみな姉がわたわたしているが、関係ない。
「今日はあと数時間で終わるんだ…それまではみな姉とイチャイチャしたい」
俺の言葉に驚きつつ顔を真っ赤にさせながら、みな姉は恥ずかしそうに頷く。
みな姉の了承を得ると俺は自分の唇を彼女のそれに重ねた。
ちなみに勢いで服に手を入れようとしたらペチッと手を叩かれた。
「…ここからは大学に受かってからね…」
俺に告白した割に、真面目で奥手なみな姉が可愛すぎてどうしようもなくなる…。
ヤバい…早く大学に受かってキスの先がやりたい。みな姉以上に俺は猛烈に勉強に励むのだった。
あれ?俺みな姉の手のひらで転がされてる?これを見越して告白してきたなら、なんて女に惚れてしまったんだ俺は…。