「美奈姉さんおはよう」  
「あ…お…おはよう有君」  
俺の発した朝の挨拶に動揺しながら目の前の女性が答える。  
俺の名前は片桐有。目の前の女性は朝岡美奈。三つ年上の隣に住むお姉さんだ。  
片桐家と朝岡家は俺達が生まれる前から家族ぐるみの付き合いがある。  
俺と美奈姉さんは所謂『幼なじみ』という間柄だ。  
「あ…あの…私こっちだから」  
そう言うと美奈姉さんはだっとのごとく走り去って行った。  
彼女の後ろ姿を見つめながら、俺は一つ溜め息を吐く。  
「俺とじゃ嫌なのかな」  
ここ数日、彼女は俺を見ると先ほどのように逃げるように去って行ってしまうのだ。  
原因は親同士が決めた俺との『婚約』。世間的には『許嫁』と呼ばれるやつかな。  
まぁどっちでも意味は一緒か…。いや違うのか?そんなしょうもない疑問が浮かぶが気にはしない。  
 
昔読んだ漫画に影響されたのか、お互いの家に男と女が産まれたら結婚させようと言っていたらしく  
で、俺と美奈姉さんが産まれたから本当に結婚させようって話になったらしい。  
その話を俺達は数日前に聞かされた。で、その結果が現在の状況である。  
「っざけんなよ糞親父が!!美奈姉に避けられまくってんじゃねーか!!」  
高校に向かいながら俺は、一人ブツブツと小声で愚痴を呟いていた。  
許嫁とか関係なく元々俺は美奈姉さんが好きだ。そりゃ、最初にこの話を聞いた時は  
「美奈姉をどこの馬の骨にやらなくてすむ」などと内心喜んでいたが、  
美奈姉さん自身が嫌がっているのであれば話は別である。  
本音を言うと美奈姉さんも俺の事が好きで、今回の話も喜んで了承してくれるものだとばかり思っていたのだが…  
実際は俺の事なんて何とも思っていなくて寧ろ嫌がっている…と。  
あぁ〜知らぬは本人(俺の事ね)ばかりなりってか…。  
小さい頃は「美奈ね〜将来有君のお嫁さんになるから絶対浮気しちゃダメだよ」とか  
「有君…キスして…大人がするキス」とか俺的リア充爆発だったんだけどな。  
 
そんなモヤモヤした気持ちのまま学校で過ごしていた。  
 
 
 
「はー…こんな気分の時は家でオナるに限るな」  
家に帰るなり、俺は美奈姉さんに似た嬢が出ているAVを見ながらしこっていた。  
美奈姉さんを汚している気がして、この嬢のAVは封印していたのだがどうせ報われないのだ。  
もう構うまい。思う存分美奈姉さんを犯しているつもりで俺はオナニーをした。  
「美奈姉さん美奈姉さん…はぁはぁ…」  
嬢の霰もない姿を美奈姉さんに変換して、俺はひたすら愛しい人を脳内で犯していた。  
「好きだ…美奈…美奈!!」  
ありったけの想いのたけをぶちまけながら、俺は自身の息子の精液もぶちまけた。  
「いや…ギャグじゃねえけど…」  
誰に言うともなく呟く…オヤジか俺は。溜め息をつきながら、ふと窓を見ると  
窓の向こうには凍りついたように固まったままの美奈姉さんがいた。  
勿論俺と息子も固まった。向かいの部屋は美奈姉さんの部屋だが大学からまだ帰っていないと思い  
俺はカーテンも閉めずにオナニーをしていたのだ。勿論窓は開けっ放しだ。  
「あ…あの…これは男の習性と言うか…えっと…」  
動揺して下半身を露わにしたまま俺がしどろもどろに言い訳をしていたら  
「…有君も…男の子だもんね…ごめんね…」  
真っ赤な顔をした美奈姉さんが窓とカーテンを閉めながら謝ってきた。  
終わった…。もう燃え尽きたよ…。糞親父、母さんごめん。破談だ…。  
どのみち美奈姉さんにその気がないのだから破談は仕方ない…。  
だが、その理由が俺が美奈姉さんを想ってAVでオナニーしたのが原因って!?  
 
殺される。俺は明日美奈姉さんのご両親に殺される。  
糞親父はどうでもいいとして母さん先立つ不幸をお許し下さい。  
その日俺は最後の夜になるかと思い、窓とカーテンを閉め切り  
改めて美奈姉さんを想ってオナニーをしたのだった。  
 
 
 
次の日、俺は覚悟を決めて騒がしいリビングに足を踏み入れると  
そこにはすっかり出来上がった糞親父と美奈姉さんの親父さんが宴会を開いていた。  
後ろの方には小さく縮こまる美奈姉さんがいるが様子がおかしい。  
「おお!!有君!!美奈を想ってオナニーをしちゃう位美奈の事を愛してくれているんだってな!!」  
「!?」  
美奈姉さんの親父さんのストレートな発言に俺は顔を真っ赤にしてしまう。  
「いや〜美奈の奴有君は自分の事を好いていないから許嫁なんて無理とゴネていたんだが、とんだ杞憂だったね」  
美奈姉さんの親父さん改め酔っ払い親父が嬉しそうにまくし立てる。  
「有君これからはオナニーで我慢するのではなく美奈で性欲を満たしてくれよ!!」  
そう言いながら酔っ払い親父共は酒を煽り続けていた。  
居たたまれなくなったのか美奈姉さんが呆然としている俺を俺の部屋に連れてきた。  
「ご…ごめんね…なんか有君の例の現場を有君のお父さんも目撃してたみたいで  
しかも私の名前を呼びながらしてるって私のお父さんに言ったみたいで」  
美奈姉さんの言葉を聞きながら俺は目の前が真っ暗になるのを感じた。  
美奈姉さんには見られてしまったけど、家には誰も居なかったはずだ。  
糞親父は一体いつ帰ってきて、しかも俺のオナニーを見たんだ…。  
呆然としている俺に美奈姉さんが更に声を掛ける。  
「こんな時にこういう事を言うのもなんだけど私嬉しかった…  
有君が私の事を好きって言いながらしてた事…  
私も有君の事…好き…です…だからもし…ああいう事がしたいなら私でして下さい」  
顔を真っ赤にしながら美奈姉さんが俺に告白してくれた。  
 
「美奈姉さん!!」  
美奈姉さんの告白が嬉しくて俺は力一杯彼女を抱きしめた。  
「俺も好きだ!!ずっと好きだった!!」  
 
 
 
 
晴れて俺と美奈姉さんは許嫁となったのだが、片桐家も朝岡家も大らかだな。  
てか糞親父…一体いつ俺のオナニーを見たってんだー!!  
 
 
 

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