「……う、ぅうん?」
シンが目を覚ますと、身体が何かに支えられるように、とてつもなく柔らかな感触に包まれたのを感じた。
目に入ったのはお姫様専用のように装飾のつけられた天井、左右の視界の端にはわずかに盛り上がる純白の布。
その純白の布が自分の頭を包み込むように柔らかな枕だと、シンが気付くのにはそれほど時間は要らなかった。
気を失っていた、シンは小さくそう呟くと自分の寝転がっている床を押そうと腕に力を込める。
少しばかり体が重いのを感じながらも、シンが体をあげるのと同時に目に飛び込んできたものに、シンは目を疑った。
自分が寝転がっていたのは尋常ではないほどの大きさのベッドで、肌触りは抜群にいいものだった。
大きさもキングサイズが霞むほどの大きさを誇り、もはや部屋一室はありかねない大きさである。
しかし体を起こして目に飛び込んできたのは紫色の長い髪をした、シンが抜刀術を叩き込んだ少女だ。
確実に右脇腹に抜刀術を叩き込んだはずなのに、そこをかばう様子もなく平然とベッドに寝転がっている。
それと同時にシンは絶望を覚えた、気を失ってから自分は再び捕らえられてしまったのだと。
当然のごとく脱走に備えてか逆刃刀は近くにない、それがないとシンの戦闘力はたかが知れている。
気を失う前、紫色の長い髪をした少女に抜刀術を叩き込んだあの時に逃げなければならなかった。
シンが頭を抱えると、ベッドの揺れを感じたのか、紫色の長い髪をした少女がシンを振り向く。
そして次の瞬間、見た目相応の無邪気で無垢な微笑みを見せると、耳の後ろに髪を通しながら口を開いた。
「目が覚めたかい? 悪かったね、妹達が手荒な真似してさ。わたしはアメリア、名前くらい聞いとこうか?」
「……ボクはシン。先に言うけど、名前以外は何も言わないよ。誰の差し金?」
「差し金? 変なことを言うね、わたし達はわたし達がしたいことをしただけ。今時珍しい純情くんらしいじゃないか、楽しませてもらうよ」
「は? 純情くん……?」
アメリアの言葉の意味がわからないといったように、シンが頭の上にいくつものクエスチョンマークを浮かべる。
もちろんアメリアの言う純情くんとは、シンがオクヴィアスに締め上げられたときに、勃起していなかっことだ。
アメリアはベッドの上で立ち上がるのと同時にローブを脱ぎ捨てると、服の中には何も着ていなかった。
ローブからはみ出すほどの紫色の長い髪が真っ白でみずみずしい肌にふわりとかかり、肌の白さと髪の美しさが際立つ。
わずかに膨らみを宿す胸は、まだ汚れを知らない淡い桃色の突起が白い肌に映えている。
また幼いのは上半身ばかりではなく、下腹部にはわずかばかりの産毛すらなく、女性器の周りは涼しげであった。
そして何を思ったのか、上着はもちろん下着も何も穿いていないのに、太ももの中腹辺りから漆黒のニーソックスを履いている。
胸の膨らみもわずかで女性器を覆う毛もまるでなく、幼さ抜群であるものの女性らしさは凄まじいものがあった。
背丈は性別の違いもあるから別としても、てっきり自分とほぼ同年代と思っていたシンに、これは予想外の攻撃だった。
ほぼ同年代と思っていたシンはそれならまだ監禁されたことに納得できるものの、相手は自分よりも遥かに年下。
それに加えて一度は自分自身の奥義とも言える抜刀術を確実に決めたにも関わらず、平気な顔をしているという事実。
しかしシンは後悔は後にすると割り切り、逆刃刀はないものの脱出を優先するために立ち上がった。
ところが誤算はもう一つ、足元のベッドの柔らかな感触のせいで全く踏ん張りが利かないということだ。
同時に気を失ってから間もないせいか身体も重く、シンは自分でも驚くほど簡単にベッドに足をとられ、バランスを崩す。
かつてこの大陸に来る前に使ったことのある上級貴族のベッドでも、その柔らかさには到底及ぶべくもなかった。
「あ〜ぁ、ダメダメ。このベッドは普通じゃないよ、わたし達姉妹用の特別な遊び道具だからね。立てただけでも凄いよ、慣れなきゃ立てもしないからね」
「特別な遊び道具? わぁっ!」
アメリアの言葉にうなずけないシンだったが、真正面からアメリアに肩からぶつかられて、そのまま仰向けにベッドに倒れた。
そしてベッドに倒れたシンは、まるでベッドが意思を持っているかのように深くベッドに包み込まれる。
同時にアメリアはその勢いのままベッドに倒れたシンの腹に股がり、自信に満ちた笑みを浮かべて見せた。
「ま、誰かから差し金をもらうようなことをしてるのは分かってるよ。二、三日尾行させてもらったから。でも別に殺そうとかは考えてないから安心しなよ、ね?」
「安心できないよ。今までも安心しなよって言って、殺しに来たやつもいるんだ。ていうかそこ下りてよ、じゃないとその、さ。色々と見えちゃうから……ふぐっ!?」
「ん〜♪エスニアの分析通りに純情くんだね、これなら見えないでしょ? ほらほら、どう?」
アメリアは自信に満ちた笑みから心底楽しそうな笑みを浮かべ、シンの顔に両足の裏を押し付けた。
気持ち湿っているようで、シンの額から頬、鼻から顎までアメリアのニーソックスを履いた足が滞りなく動き回る。
「やめっ! こら、人の顔を足で踏むな! つかちょっと、失礼だけど少し臭いし! 離せってば!」
口調はさっきよりも強く言い放つシンだったが、アメリアのニーソックスの合間から覗く顔は赤い。
それもそのはず、顔を踏まれているシンからすればアメリアの股間が丸見えだったのだ。
それに加えて湿ったアメリアのニーソックスの肌触りがどこか気持ち良く、顔を擦られるのに抵抗がなくなりそうな背徳感もある。
また若干汗臭さも混じってはいるものの、同時にシンの鼻を襲う女の子らしい甘い匂いや柔らかさが混じり、抵抗が薄れかけた。
しかしさすがにシンにもプライドと言うものがあり、面白おかしく顔を踏まれて黙っている訳にはいかなかった。
シンはアメリアの足を両腕で一本ずつ掴むと、そのままゆっくりと体を起こしながら形成を逆転させていく。
アメリアは徐々にシンの腹部からずり落ちていき、シンの体が徐々に起き上がっていった。
今度はシンがアメリアを見下ろす形になり、シンの両腕に足を握られているせいで、アメリアは仰向けで大股開きになっている。
しかしそんな形成とは裏腹に、アメリアの表情には確かな余裕があり、シンの表情には余裕がなかった。
何故ならシンからすれば体勢そのものはこれ以上ないくらいに有利だが、アメリアはニーソックス以外は何も着ていない。
顔を踏まれていても顔を赤くするし、アメリア達が認める純情くんのシンには返って、全裸のアメリアが目の前にいるのは不利だった。
ところが自分からローブを脱ぎ捨てて、なおかつ股間を見られても気にしないアメリアは余裕綽々といった表情を浮かべる。
むしろこれからシンがどのような行動を取るのかを楽しみにしているように、抵抗する気がまるで感じられなかった。
しかしシンの脱出という目的を遂げるには絶好のチャンス、シンはアメリアから目を逸らしながら口を開く。
「わ、悪いけどこのままボクは帰らせてもらうよ。その、キミにはもう何もしないから構わないで。いや、ホントに」
「そんな照れなくてもいいのに、良かったでしょ? わたしの足、でも臭いのはお互い様。わたし達、尾行してる間はお風呂入ってないし。シンもでしょ?」
「そんなところまで見てたの!? は、いやいや。何でもいいや、とにかくボクは行かせてもらうから。それと勝手に呼び捨てにしない。それじゃあね」
「行かせな〜い、エスニア! イエナ! 出番だよ!」
アメリアの言葉に従い、今まで気配の欠片も感じられなかったシンの背後に、突如として二人の気配が生まれる。
同時にシンの両腕が背後に回されながら何か柔らかいものに拘束され、また仰向けにベッドに引き倒された。
そしてそれぞれ両腕に、気持ち湿った柔らかいものがのしかかったかと思うと、シンはベッドに大の字になっている。
その時、シンの視界に飛び込んできたのは自分の両腕に股がる二人の裸の少女だった。
「アメリアお姉様に続く二女、イエナ。お相手します」
シンの左腕に股がっているのはメガネを掛けていて、やや短い丸い切り口をした髪をした少女はそう言った。
シンがオクヴィアスに絞め上げられていたときも左腕を抑え、シンの抵抗を無に等しくしていたのが彼女。
名はイエナ、アメリアを長女とする5姉妹の中の二女に生まれた、大人しい性格の持ち主だった。
イエナはシンの肘よりわずかに手首よりの位置に腰を下ろし、両手でシンの二の腕を抑えている。
イエナの股間の柔らかな感触と水気に温もりがシンの腕に伝わるが、しっかりとシンの左腕を抑えており、わずかな自由さえ許さない。
「ウィンスレット姉様に続く四女がエスニア、押さえます」
そしてシンの右腕を掴んでいるのは、長く艶やかでシンと同様の銀色の髪をした少女も言った。
先ほどシンの抜刀術を伏せて回避し、反撃まで決めるほどの優れた戦闘能力を持つのが彼女だった。
名はエスニア、アメリアを長女とする五姉妹の中の四女に生まれた、大人しくも高い戦闘能力を誇る。
エスニアもイエナと左右対称になるように、シンの右肘よりわずかに手首よりの位置に腰を下ろし、両手でシンの二の腕を抑えている。
また同様にエスニアの股間の柔らかな感触と水気に温もりがシンの腕に伝わるが、しっかりとシンの右腕を抑えており、わずかな自由さえ許さない。
その時、シンはアメリアやイエナ、そしてエスニアの三人の体格が非常に似通っていることに気が付いた。
しかしシンはそうそう長く彼女らを見ることは出来ない、何しろシンの周りの三人はアメリアのニーソックスを除き全裸なのだ。
どうすれば良いのか分からず、シンは思い切って目をつぶり暴れようと体を動かしながら声をあげる。
「は、離してくれ! 君達には何もしない、だから離してくれ! 少なくとも服くらい着てくれ、恥じらいが無さすぎるだろう!」
「ちょっとうるさいよ、シン!」
「だから呼び捨てにするなって言ってるうぶっ!?」
「アメリアお姉様の言うことが聞けないって言うの?」
わがまま気質なイエナの声がシンの耳に届くのと同時に、シンは我が感覚を疑った。
口の中に突っ込まれた柔らかで温かな感触、同時に口の中から意思とは関係なく、どんどん溢れてくる唾液。
ほのかな甘い香りに続いて口の中に広がるかすかな酸味、いわゆる汗の味だった。
シンが左側に目をやると、そこには器用にもシンの左腕を抑えながら、左足をシンの口に入れるイエナの姿がある。