リインがレナードとの関係を強要されてから随分たった。  
とはいえ普段多忙を極めるレナードと下っ端で新米のリインでは会う機会も少なく、たまに食事をしてその後という傍目には  
しごく淡白な付き合いだった。  
二人の間の緊張感は、だからほとんど悟られなかった。  
 
「今日の味はどうだ?」  
「……とても美味しいです」  
レナードとの会話に弾むような楽しいものは生じていない。そんなリインにレナードは目をすがめた。  
二人が会うときは以前のようにレナードが選んだ店で待ち合わせて、だった。以前と異なるのは個室に限らなくなり、レナードは  
堂々とリインを連れ歩くようになったくらいか。  
今も店の客の視線がちらちらとリインに注がれるのを承知で、優雅に食事をしている。  
リインもレナードの視線に晒されるようになって、周囲の状況に敏感になっていた。今も周囲の視線は承知している。  
だが視線に害意はないと判断していた。こんな視線はレナードのものと比べると何でもない。  
食事をしながら任務についての会話になる。今度初めての前線業務に携わるので、レナードは色々とアドバイスをしてくれる。  
さすがにその内容は的確で示唆に富んでいて、リインにとって参考になった。  
ふと、以前はこんな話をレナードは穏やかに微笑みながらしてくれていて、自分は尊敬の念を持って聞いていたと思い出す。  
そんなに前の話ではない、でも失われてもう戻らない無邪気な時間だ。  
今夜の食事はあっさりしたものだったので、酒も軽めで量も少なかった。  
いつもならこの後バーに行って、という流れだった。  
チェックを済ませたレナードがリインを見つめる。  
「これから、しばらく付き合って欲しい場所がある」  
珍しい提案だが、もとよりリインに拒否権はない。承知しました、と頷くリインをエスコートして二人は店を出た。  
 
その足で向かったのはセレクトショップだった。  
状況の飲み込めないリインを店員に任せてレナードはソファに座って、モバイルでメールを読んだり書類を作成したりしていた。  
女性の支度としてはさほど待たずにリインが現れた。  
「ほう」  
思わずレナードの口から声がこぼれる。普段はどちらかといえば飾り立てない服を着ているリインが体の線をあらわにするタイトな  
ワンピースを着用している。とはいえ下品ではなく清楚な色気を感じさせるものだった。  
髪を結い上げていつもよりは華やかな化粧を施している。  
ワンピースの丈は膝上15cmほどだろうか。すらりとした足は背後にラインの入ったストッキングに包まれている。  
普段は履かないヒールの高い靴を履き、控えめなアクセサリーをつけている。  
ドレスアップしたリインをつくづくと眺める。  
当のリインは何故このような格好にならなければいけないのか飲み込めておらず、店員にいいようにされてしまったようでひたすら  
当惑している。傍らの店員は至極満足そうだ。  
「これは見事に仕上がったものだ。さすがにセンスがいい」  
「いえ、こちらこそ腕のふるい甲斐がありました」  
リイン以外は満足の体で、リインの着ていた服はまとめてもらい、ショールを羽織らされて待機していた車におさまった。  
タクシーではない、レナードが何を言わずとも走り出したところをみると予定された行動なのだと理解する。  
「こんな格好でどこへ行くのですか?」  
「行き先は秘密だ。口外してはならない。保険で目隠しをしてもらうことになるが了承して欲しい」  
目のまわりの化粧に気をつけて目隠しをされる。それきり会話は途絶えた。  
随分怪しげな場所に行くのだろうか? またレナードの遊びかと視界を塞がれながらリインは車の振動に身をまかせた。  
 
路面の状態が変わったのに気付いたのは随分経ってからだった。坂道を上がり敷石状の路面を少し走って停車した。  
「着いた。手を」  
目隠しをされたままレナードに手を取られて、降り立ったリインはそのままどこかの屋内に歩を進めた。  
木の廊下を進んで部屋に入って、やっと手がはなされて目隠しを取られた。  
控えの部屋のようだ。テーブルと椅子が置いてある。  
「ここは?」  
「山荘だ。持ち主は詮索するな。今夜のことは他言無用だ」  
言いながらレナードはリインの手首に細い布を巻いて結んだ。布の色はどこかで見たような配色と考え、リインはそれがレナードの  
髪と目の色と同じと気付く。布とそちらに目がいったのでレナードも察したようだ。  
「そうだ。……この布はほどいても、ほどかれてもいけない。――私の側を離れるな」  
謎かけのような言葉を残して、レナードはリインをエスコートして部屋をでた。  
山荘という割りには大きな建物だ。廊下の奥まったところにある大きな扉を開けると結構な広さがある。  
そこには比較的多くの人がいた。立食パーティーのようで、グラス片手に談笑する、主に男性達がいた。  
女性同伴で男性のほうは皆体格が良く、よくよく見ればそれもそのはずで軍人、だ。  
しかも皆高官のようだ。中佐か大佐クラスの佐官、将官が本部から離れた場所に集っている。どこか現実離れしたまるで何かの芝居の  
ようにも見える。連れている女性は皆あでやかだ。そして自分を同じように傍らの男性の髪と目の色の布を手首に巻いている。  
――所有の印か。  
ということは今の自分はレナードの所有物なのだ、とリインは苦々しく思いながらも観察を続ける。  
つい方角と退路を確認してしまうのは、身についた職業病というべきか。  
入ってきた扉のほかにも扉が廊下に面して一つ、隣に通じているらしいのが一つあった。  
扉の向かいには大きな窓があり、その向こうはバルコニーになったいる。斜面を利用して建ててあるらしい山荘だ。  
点在するテーブルには料理が盛られ、給仕が人垣を縫うように歩いている。  
どうやら軍の高官の秘密パーティーのようだ。  
しかし皆、連れている女性が若くて美人だと感心してしまう。妻帯者がほとんどだろうに、背徳感がただよってきそうだ。  
リインがつい不謹慎だな、と呟くとレナードからだから他言無用なのだと再度釘を刺された。  
適当に酒をもらい隅の方に控える。女性の方は軍で見た人もいるがそうでない方が多いように思える。  
何故こんな所にこんな格好でと、どう繕ってもリインの気分は晴れなかった。  
 
食事は済ませた後だったので酒を少しずつ飲みながら、軍の上層部での交友関係を談笑する様子から探り、部屋を泳ぐ熱帯魚のような  
女性達を目の保養とばかりに眺めることにした。  
談笑している男性陣は会話の合間に相手の連れている女性に、時折ちらりと視線を投げかける。  
値踏みをしている目だと思う。なら自分はいったいいくらなんだろうか。  
レナードにはまだ声がかからないが、遠巻きに見られているのは感じる。レナードもだがリインも。  
嫌な、視線だ。  
「鬱陶しい」  
ぼそりと呟くとレナードは片方の眉を上げる。そこに声がかかった。閣下と呼ばれないのはここに閣下が複数いるためか。  
「少将どの。珍しいですな。こちらにいらっしゃるとは」  
「ええ、連れてくる者もいませんでしたので」  
適当な挨拶の後は専門的な話になっている。関心を表さないように、それでも上層部の軍人同士の会話というのは興味深く、失礼に  
ならない程度に離れてリインは控えていた。見ているとどうやら同伴の女性はあまり『主』の側を離れないようだ。  
そうでなければ空き部屋でも探してこもっていたい気分なのだが、とリインはグラスを手に持ち壁の花になる。  
どうやら近々停戦になりそうな地域の復興策と、今後の方針についての話がまとまったらしい。こんなところでも軍が動くのか。  
そして命令によってリインのような下っ端が駒となる。  
今はまだ本部で訓練期間だが、いずれ前線に出る日がくる。その時の作戦はこんな風に決められたものなのかも知れない。  
レナードとの話を終えた高官がリインに目を移した。  
その視線の中に先日ホテルのロビーでいきあった佐官と同じものを感じる。だが連れの女性の視線も痛い。一体なんだと言うのだ。  
「あなたを引っ張り出したのが……軍関係者ですか?」  
「少尉です。ご存知でしょうか、ジェイムズ・アドラー元中佐の娘さんです」  
父の名前を出されて驚いてレナードを見る。昔レナードを指導したとは聞いていたが、そして更に驚いたことに相手も父を知っていた。  
ああ、あのと納得されたのは意外だった。父はそんなに有名だったのだろうか。家では当然ながら仕事の話はせずどちらかといえば  
寡黙な人だったので、軍での父のことはほとんど知らなかった。  
「あの中佐のお嬢さんが、これほどとは……」  
舐めるように見つめられて不快ななにかが肌を這う。布を巻いている手首に至っては凝視されている。  
「彼のお嬢さんであなたのお連れでは、ほどくわけにもいきまんせんな」  
そう言って去っていった高官と連れの女性を釈然としない思いで見送る。  
奥歯にものの挟まったような、他の人間はわきまえているのに、自分だけが部外者でいるような居心地の悪さをリインは感じた。  
 
レナードにはそれから数人が同じように話しかけ、談笑していた。側にいながら周囲にも注意を向けていると最初の頃よりも人数が  
減ったように思えた。よく見ると談笑していた男性同士が何か話をして笑い合うと、相手の連れている女性の手首の布をほどいて  
その女性と連れ立って広間を出て行くのだ。  
そうかと思うと連れの男性に耳打ちされた女性が自分でほどいたりもしている。  
中には嫌がっているように見える女性の布を無理にほどいて連れていく姿もあり、この場合は残された男性と消えた男性の連れの女性が  
悲嘆とも憤怒とものさまざまな表情を浮かべて残ったりしていた。  
それの意味するところを考えて気分が悪くなってくる。  
いい加減、向けられる視線にもうんざりしていた。男性からは値踏みされ中にはあからさまに欲望むき出しの、女性からはレナードを  
見た後ににらまれたり、最初から敵意むき出しだったりした視線だ。  
だが幸いなことにレナードにリインの布をほどけ、と言い出す者はいなかった。  
さすがに疲れて、寄せられる視線にも辟易したリインはレナードに断ってバルコニーに出た。すぐに戻ればいいだろう。  
結構な森の中に建てられた山荘のようで、清浄でひんやりとした空気が心地よい。  
よどんだ思惑で濁った室内から解放され、さっき感じた頭痛も幾分軽くなったように思えた。  
そんなリインは背後からの声に飛び上がらんばかりに驚いた。見事な気配の消し方。敏感なはずのリインは接近を許したのが信じられず、  
勢いよく振り返った。月明かりに佇んでいるのは軍のトップの上将だった。  
条件反射で直立不動になって敬礼してしまう。しばらくして今の格好では滑稽なだけだと我に返る。  
そんなリインがおかしかったのか上将は笑っている。いつまでも笑いが止まないのは笑い上戸なのだろうか。  
「いや、悪かった。見本のような敬礼をされて……一人か?」  
「あ、いえ中に……」  
「レナードと来ていたね。彼が来たのに驚いている。こんな集まりには顔を出さない男だから」  
「閣下の、お連れの方は……」  
おそらく会場で一番の美人を連れていたのは見かけている。  
「レナードに任せている。私が君と話をしたいと頼んだから」  
上将が話? 接点など全く思い当たらないリインは緊張して身構える。  
「君、ジェム中佐の娘さんなんだろう? 中佐がお元気かと伺いたくて」  
父の愛称だ。  
「父をご存知なんですか?」  
「知っているなんてものじゃない。レナードと地獄の特訓で鍛えられたし、戦場で命を救ってもらったこともある」  
意外すぎる父の過去に驚くしかない。そんなリインを見つめて上将は楽しげだ。  
「いや、忘れられない戦役があってね。君が生まれたからって顔を見るために、二週間はかかると予想されていたのを五日で制圧した  
ことがあった。鬼と言われた彼がそんな風になったから、あれは語り草だった」  
その後親ばかになった父のことを延々言われ、恥ずかしくてリインは反応に困った。  
 
「士官学校を経て入隊したって話は聞いていたけど、レナードと、か」  
距離が近づき手首を取られた。やんわりと引こうとしたがかなわない。上将の目は面白そうに布を見ている。レナードの色を。  
親指が手首の近位側を撫でさする。上将の手が熱くてリインは少し息苦しい感じになる。  
「これをほどいてくれないか」  
手首をとられたまま何でもないことのように言われ、リインは呆けたようになった。  
上将の顔を見ても、穏やかな表情ながら冗談の雰囲気がない。広間でのやり取りでこの布をほどく意味は分かっているつもりだが。  
「あんなお綺麗な方がいらっしゃるではありませんか」  
「彼女は美人だろう? だがジェム中佐の娘さんには興味がある。『俺の娘は世界一だ』と言っていたから、確かめてみたい」  
「それは……親ばかの買いかぶりです」  
瞬間握られた手首に力がこめられた。  
「そうとは思えないが。だからレナードも……」  
父のことは確かに共通の話題ではあったが、最初に出会ったときにはそんなことは知らなかった。  
父の娘ということで近づかれたわけではないと思う。  
レナードとの関係はリインにとっては決して嬉しいことではない。  
ここで上将の求めに応じれば……今度は上将の一夜のお相手ということになるのか。  
レナードはそうなったとしても、おそらく何も言わないだろう。むしろ、上将の連れていた美人と楽しい夜を過ごすかもしれない。  
であればこれをきっかけに関係を終わらせることも可能かもしれない。  
広間のやり取りを見る限り、断る選択肢は所有されている側にはないように思える。  
断れば上将を不快にさせる。一介の新米少尉など、指先一つで潰されるだろう。  
簡単なことだ。自分でほどきさえすればいい。それで丸く収まる。それで。  
ゆっくりと手首に目を落とすと、上将の手がはずされた。レナードが何度か巻きつけて結んだ布。  
――ほどいても、ほどかれてもいけない。これを結んだ時のレナードの声がよみがえる。  
指先は結び目ではなく布端に触れる。結ばれているほうの手首を返して反対の端を握り、もともとかなりきつく結ばれていたそれを  
ぎち、と音がするまで引っ張る。一層かたくなる結び目。  
その間上将から目を外さずにいた。  
上将の顔には何か浮かんだようにも、浮かばなかったようにも見えた。  
 
「こんなにはっきり振られるとは。――そんなにレナードがいいのか?」  
とんでもない。リインはまっさきにその言葉が浮かんだのに内心で自嘲する。いいわけがない。でも。  
「簡単に身を任すことをしたくないだけです」  
偽らざる本音を吐き出す。レナードの脅迫には屈した。だが獲物にはなっても誰彼構わずという娼婦になったつもりはない。  
自分の体は自分のものだ。その信念だけは守り抜きたい。  
これで今後が生きにくくなったとしても仕方がない。リインは覚悟を決めた。  
上将は再びリインの手首を取った。無理にほどかれたらその時は諦めるのか、抵抗するのかと考えていたリインは、上将からの言葉に  
顔をあげた。  
「君のことは上層部ではジェム中佐の娘が入隊した、と話題になった。次いでレナードとの噂だ。興味を覚えた人物は君のデータを  
照会して容貌も興味を引いた。今後は私を振ったとして注目されるだろう」  
さすがに嫌がる部下には無理強いしない、と笑われる。  
「レナードが羨ましいな」  
言いながら手の甲に唇を落とされ、そんな仕草に慣れないリインは棒立ちのままだ。  
ちろり、と舌先で甲を舐められぞくりとしたものを覚える。  
「そろそろ戻るか。彼女もだが、レナードがやきもきしているだろう。話ができて楽しかった。中佐によろしく」  
そう言って上将は広間へと戻っていった。見送る視線の先にはこちらを見ている軍人達がいた。  
上将と入れ替わるようにレナードがやってきた。その姿をみてほっとしたのにリインは気付き狼狽する。  
レナードは味方ではないのに。前門の虎が去ったからといって、後門の狼に気を許してはいけない。  
レナードから手渡された水を飲んで、緊張からか喉が渇いていたのに気付く。  
そんなリインを見つめてレナードは低い声で尋ねる。  
「君は、……良かったのか? 上将からの誘いだぞ」  
「あまり私を馬鹿にしないで下さい。軽く見られるのは真っ平です」  
レナードが好きで断ったわけではないと匂わせると皮肉げな口元になる。  
「そうか、そうだな。そろそろ終了の時刻だ。行こうか」  
玄関ホールで再び目隠しをされて車に乗り込む。あまり愉快ではない時間を過ごした場所を後にした。  
 
車のシートに深くもたれる。思わずため息も口をついていた。  
「疲れたか?」  
気遣う響きを感じレナードの方に顔を向ける。  
「ええ、二度と参加したくありません」  
手を握られて、なだめるように上からぽんぽんと軽くはたかれる。  
「君とのことを直接間接で探られて私も鬱陶しかったから、一度に知らしめるための参加だ。今後はもうないだろう」  
レナードを受け入れた時から彼との付き合いは隠すつもりもなかったが、今夜のことで周囲にはよりはっきりしたということか。  
どんどんレナードに外堀を埋められていっているようだ。  
「しかし上将の誘いを断るとは君も大胆なことをする。戻られて笑いながら言われた。『初めて振られた』と。これでまた少し  
騒がしくなるかもしれない」  
上将が今後注目されると言ったことを思い出す。これ以上の面倒はごめんなのだが。  
「だが、個人的には満足だ」  
ぽつりと言われて肩をだかれて引き寄せられる。唇にレナードの指がふれてなぞられる。化粧をしてくれた人が落ちない口紅と  
言っていたが指についたりしないのだろうか。  
頬に手があてられて唇が塞がれる。今目隠しをされているので、感覚の大部分を依存する視覚が封じられている。  
その分他の感覚が鋭敏になっているようだ。レナードの少し乾いた唇から熱い舌の感触、触れられている手の温もりなどがいつも  
以上に感じられる。舌が口蓋に至りくるくると刺激される。  
舌をなぞられて甘い痺れのような感覚に襲われた。ぴちゃ、くちゅと音が響いて生々しさに拍車をかける。  
運転手に見られているのでは、そう思うと恥ずかしくてレナードの胸を押すが、反対に抱き込まれてしまう。  
長く深く貪られ、開いた胸元に手が差し入れられ身がすくむ。  
精神的に疲労していたところに、呼吸もしづらくなる様な口内の蹂躙をうけて、力が抜けた体をレナードに預けてしまう。  
その間にも胸は忍び込んだ手と指でもまれて摘まれている。手のひらの下で乳首が柔らかさを変える。レナードは絡める舌の動きと  
手の動きを合わせてきた。ねっとりともみ上げきゅっと摘む。その際舌をしごかれて舌先を軽く噛まれる。  
背筋がぞくぞくして引き剥がそうとレナードの手を掴んでいたはずなのに、反対に胸に押し付けるようにしていた。  
乳首を爪でかかれ、びくりと体が揺れる。  
「こんなところでも、見られるのも嫌、です」  
どうにか言うと心配ないと一蹴される。乳首を掠めるように触られてレナードの服をつかむ。  
硬くなったそこに指先で加えられる刺激は大きい。  
「ふ……」  
息に混じってもれでる声を必死で押さえレナードの悪戯に耐える。  
「もうすぐ到着だ。これをはずそう。随分刺激的な姿だったが」  
目隠しを外されると、運転席との間には仕切りがあり、窓もスモークで見られてはいなかったようだと安心する。  
 
ホテルについてレナードに連れられ部屋に入る。  
いささか乱暴にベッドに投げ出され脱がされた靴は適当に放り投げられる。  
随分性急に乱暴に触れてくる。ワンピースもすぐに脱がされて下着とガーターストッキング姿にされた。  
「お預けを食った犬のようだったからな。今日は加減してやれそうにない」  
物騒な宣言をされて下着も脱がされた。ストッキング越しの足を撫でていた手がすぐに付け根に移ってくる。  
「君の準備もいいようだ。目隠しされて興奮したか?」  
濡れてしまっているのを揶揄されて、恥ずかしく腹立たしい。  
「ち、がいます」  
何度か指が往復されるとすぐに抜かれて、レナードが入ってきた。圧迫感で腹部がはちきれそうな感じになる。  
濡れてはいるがほぐされてはいない。苦痛と紙一重の圧迫感。それが中を分け入って入ってくる。途中まで入って、浅く引かれ何度か  
馴染ませるように出し入れされる。張り出した亀頭で引かれる時に、腰に来る感覚に思わず熱い息が漏れる。  
足を肩に担がれて、いきなり奥を突かれ、思わず声がでてしまう。  
「んんっ、くぅっ」  
そこで腰をさらに密着するように押し付けられる。レナードの全部を受け入れてしまっていた。  
突き刺されるように出し入れされて襞がこすられて、その摩擦が腰を蕩けさせていくようだ。  
ほぐされてないので、中のレナードが馴染んでいない。だから、よりこすられる感覚が強くて意識してしまう。  
体勢からレナードが動くたびに羞恥がいっそう募る。ストッキングをはいたままでいつもとは違う眺め、いつもとは違うレナードに  
なすすべなく刺激されていく。奥を突き上げられると息が止まりそうになり、手前をこすられると襞がうねって、腰が跳ねる。  
もう痛くはない、圧迫感もない。むしろ……気持ちがいい。  
「あぁ……んんっ、や、ん」  
引く動作のレナードに中が引っ掛けられる。たまらなくよかった。  
奥まで入ったレナードが腰をねっとりとこねるようにした時、奥も入り口も同時に圧迫されて襞が、陰核でさえもいびつに力を加えられて  
背中がしなる。同時に胸を大きな手ですくわれて乳首をきゅっとつままれた。リインはレナードをぎゅっと締め付けたのを感じた。  
そこで動かれて光が走るような衝撃を受けた。  
「あっ、ああっ」  
こぽり、と液が漏れた。レナードが動くたびにくちゅ、ぐちゅと音を立てるが、音が大きくなるほど疼きが大きくなる。  
もっとと言いかけてリインははっとした。今、何を口走ろうとした?  
無理に開けた目に飛び込んできた自分の手首にはまだ布が巻いてあった。レナードの髪の毛は汗で額に張り付き、目は情欲に濡れている。  
その目は自分を欲しがって、捕らえて、食らい尽くそうとしている。いつもの視線よりも明確な意思がある。  
それを半ば喜んで受け入れている?  
自分の体は自分のものだと思っていたのに。今の状態ではレナードのもののようだ。  
今度は足を曲げられ、えぐられる角度が変わった。痺れにも似た疼くような感覚が湧きあがってくる。  
自分の中がうねっている。それがレナードの動きでこすられると勝手に腰が後追いをしてしまう。  
「いい、か?」  
「……あ、んぅ。はあっ、あ、あぁ……」  
レナードの熱に激しく容赦のない動きにどうしていいか分からない。  
こすられているところから生じる得体のしれない感覚は、あともう少し続いたら何か分かったかもしれない。  
目蓋を光がちらつく感じがした時にレナードが精を吐いた。びくんびくんと中で動くレナードのものを感じる。  
いつもよりそれをリアルに感じ、その時ですら自分がきゅうきゅうとレナードの脈動に合わせて動いているのを信じたくない思いだった。  
呻き声をあげてレナードが強く抱きしめてくると、本当に捕らえられた獲物のように思えてくる。  
 
 
息がおさまったらしいレナードから、繋がったままで抱き起こされた。レナードの腿の上に乗せられる。  
背中をゆったりと撫でられ下りてきた手は、臀部に当たりレナードへと引き寄せられる。下腹部は密着している。  
レナードの手は腕をつかんで、手首に移った。  
「随分固く結んだものだ」  
言いながら少し苦労した様子で結び目をほどかれた。  
「私を好きか?」  
「嫌いです」  
即座に言い返すと苦笑される。  
「私の恋人は気が強い」  
臀部をもまれながら鎖骨に落ちる唇の感触に目を閉じる。中で再びレナードのものが大きくなる。  
「今日は加減しない。腰が立たなくなるかもしれないが覚悟しておけ」  
先程は無視されていた陰核を指でなぞられて、きゅうっとレナードを締め付ける。そらした背をまた引き寄せられた。  
繋がったところから漏れるのはレナードの精液だけではない。感じたリインのものもだ。  
「……い、や、もう、やめてくださ……」  
これ以上抱かれたらどうなるか分からない。そこまで行ったら取り返しがつかない。漠然とした恐怖を感じるリインを愛しげに見やり。  
君は私のものだからな、そう言って笑うレナードはゆっくりと動き出す。  
捕らえた獲物をじっくりと料理するかのように。  
 
 

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