親の離婚を機に引っ越した家のお隣りさんの男の子。それが健ちゃんだった。
健ちゃんは私にとってお兄ちゃんでありお父さんのような存在で。
母が不在がちなこともあって虐められっ子な私の甘えを一手に引き受けてくれるのが健ちゃんだった。
健ちゃんのおかげで笑顔でいられる私は辛くても学校に行くことが出来ていた。
クラスの人達と会うのは正直物凄く苦痛だったけれど、健ちゃんのクラスとの合同授業の時には安心に似た余裕をもっていられた。
健ちゃんの隣に座る人がどんな人かなんて考えたり、その人は何となく健ちゃんに笑い方が似てるかもなんて思ったり、「その人」の名前はなんだろうと興味をもつことが出来たり……
そうして私はいつしかその人に恋をした。そのことがただひたすら嬉しかった。
別に叶わない恋で良かった。
誰かを好きになれる自分がいたことが単純に嬉しかった。
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ある日、私の机に一枚の紙切れが入っていた。
紙切れには資料室で待ってますの一文と、碧井という「その人」と同じ苗字だけが書かれていて、それは私を動揺させるには充分な威力を持っていた。
悪戯かもしれなかったけれど私は健ちゃん以外に好きな人がいることは言っていなかったし、私と彼の接点などないに等しかったから、誰かに仕組まれたという可能性を放棄した私の足は迷わずに資料室へと向かっていった。
資料室に行くとそこには碧井くんが本当にいた。
「あ…茜ちゃん……だよね?来てもらってありがとう」
「あ、えと……はい…」
「それで、あの…ちょっと健介から聞いたんだけど」
「、え」
「俺のこと、好きって本当?」
「…!!!」
健ちゃんは碧井くんにバラしてしまったらしい。
それはよかれと思って?
それとも私の面倒を誰かに交代したくなったとか?
しばらくなにも言えなくて呆然としていると碧井くんに「なあ、」と声をかけられた。
思わず声の方向に顔をあげると、
「ん…!!っ」
キスを、された。
突然のことにびっくりする間もなく彼は素早くネクタイを外してそれで私の腕を縛り上げた。
「なにするの…ッ!?」
恐くなって涙声になる私に構わず、今度は私のセーラー服からスカーフを抜き取って目隠しにしてくる。
「やだ…碧井く…お願いだから外して…!」
「駄目だよ」
懇願する私に構うことなく、碧井くんは少しの躊躇いもせずにセーラー服を勢いよくたくしあげその下のブラジャーも剥ぎ取ってしまった。
「やだよ…碧井くんやめて…」
首筋から鎖骨にかけて指を這わせてみる。
それから真っ白な彼女の胸を弄んだ。
下から掬うように掌で遊んだり、乳輪を縁取るようになぞったりしているうちにどんどん固くなる突起。
「あっ!!や!」
それをピンッと弾いてみるとそれまで押し殺していた可愛い彼女の声を聞くことが出来た。
「あ…はぁ…や、あおいく……うああッ!!」
真っ赤に実った突起を口に含んで転がすと、彼女の喘ぎは止まらなくなっていった。
ピチャピチャとわざと音をたてながら時折歯を当てるとかなりイイらしく、脚を擦り寄せたり腰が反ったりしている。
なので今度はスカートの間に手を差し込んでみた。
「!!いやっ!!やだ、だめぇッ!!!」
ソコに触れられるのがよほどショックだったのか、今までよりも強い抵抗をしてくる彼女。
それを抑えつつ下着の上からワレメをなぞると少し濡れているのがわかった。
「いあ…ッ!くぅ…んあっ」
そうして見つけたクリをゆるゆるとなぞると彼女の力は面白いように抜けていく。
力が緩みきった所を見計らって僕はクリを思いっ切り押し込んだ。
「あ!!きゃあッ!!!」
大きく返ってきた反応に喜びながら下着を脱がせ、彼女の秘部にむしゃぶりついた。
「や!なに…あ!!あんっ!」
歯で敏感な芽を扱いたり舌を穴に差し込んだりするたびに溢れ出す愛液。
それを最後に大きく啜り、パンパンに大きくなったモノを取り出すと彼女の秘部に当ててニ、三度スライドさせた後、一思いに貫いた。
「!!!ぃやあぁあ!!!!やだ!!!いたいいぃ!!!」
激しい痛みに泣きじゃくる彼女に構わずどうにか自身を最後まで収めると、そのままの勢いで激しくついた。
「…うあぁあ!!ぃた、や、あおいく……ッいやっっ!!!」
スカーフの色が変わるくらいに泣いて痛がる彼女。
ちいさく「ごめん」と謝ると、限界がきた僕はとうとう欲望を彼女の中に吐き出した。
目が覚めるとそこには誰もいなかった。
アレを夢だと思おうとしても下半身が訴える非情な痛みと机にあったものと同じ文字で書かれた「ゴメン」というメモがそれを許してはくれない。
家に帰って私は泣いた。
ひたすら泣いていた。
こんなこと誰にも言えない。
お母さんにも、ましてや健ちゃんにも。
健ちゃんは私の気持ちを伝えてしまった自分を責めるかも知れないし、もし碧井くんに言った理由が私から解放されたかったからだとしたら私はもう立ち直れないかもしれない。
その日から私は誰にも会えなくなってしまった。
時間が経つにつれ意味もなく私だけが悪いように思えてきて、そうするとお母さんが心配して声をかけてくれるのも、健ちゃんがドアの前まで来て名前を呼んでくれるのも今の私には辛くて。
そしていつしか私は毎日来てくれる健ちゃんにたいして怒鳴り散らすようになっていた。
僕が中学に上がる頃、彼女はやって来た。
僕の家の隣に引っ越してきた女の子の名前は茜といった。
茜は可愛らしい女の子だった。肩らへんで切り揃えられた染めたことのない綺麗な黒髪と、アーモンドのような形をした薄い色素の瞳が印象的な美少女。
性格だって特に変わったところはなく、愛らしい笑顔と人懐っこい無邪気さに惹かれ、僕達はすぐに仲良くなった。
「健ちゃんは優しいね。私と喋ってくれるのなんか健ちゃんだけだよ」
茜は学校に居場所がないらしく、よく僕の部屋に遊びに来ては淋しそうに愚痴を吐いていた。
茜はいい子なのに彼女自身を見ようとしないクラスの連中は片親の茜を虐めているらしかった。
母親が綺麗な人なのもまた恰好のネタとなり、気付けば茜は売女の娘ということになっていた。
「茜はいい子だよ」
そう言って彼女の頭を優しく撫でる。
彼女は何かあるたびに僕に話してくれた。
「グループ授業とかなんであるのかな。早退しちゃった」
「体操着がびしょびしょだったの、酷いでしょ?」
「アドレス流されてるみたい…変えるから健ちゃんも一緒に考えてよ」
「すきな人ができたの」
僕はひたすら聞き手にまわった。
茜の愚痴は全て受け止めて、たまに僕なりのアドバイスを伝えたりして。
そうすることで話し相手に飢えている茜が嬉しそうに笑うのが何よりも幸せだった。
けれどある日を境に、茜は学校にも行かず家に引きこもるようになってしまった。
僕は毎日茜に会いに行った。
声をかけたり名前を呼んだりしても何の反応もないのが淋しかった。
茜はおばさんにも顔を見せていないらしく、このままじゃいけないと思った僕はなんとかして茜を部屋から出そうと声をかけつづけた。
しばらく続けているうちに茜の拒絶は激しくなり、ある日茜は怒鳴り声を挙げて僕を追い返した。
「帰って!健ちゃん早く帰ってよ!!」
「あかね…」
「帰れって言ってるの、わからない!!?」
こんなにも怒りの感情を露にする彼女を僕は始めて知り、そして怒鳴られながらも久しぶりに彼女の声を聞けたことを本当に嬉しく思っていた。
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僕の学年がひとつ上がり、茜が僕より下の学年になることが決定した頃、茜はようやくドアを開けてくれた。
そして色んな話をぶちまけるように話してくれた。
碧井に呼び出されてレイプされたとか、
僕が碧井に茜の気持ちをバラしたことが凄くショックだったとか、
死にたくなる衝動が抑えられなくなっていた時期があったこととか、
それでもおばさんには少しずつ話が出来るようになったこととか、
それから僕が毎日名前を呼ぶことが本当は凄く嬉しかったこととか
「私ね、私健ちゃんが…」
「好きだよ、茜。それから本当にごめんな」
僕はこの日、昔から隠していた気持ちをとうとう茜に告白した。
いつだって僕は茜を好きで、その気持ちだけで行動を起こしてきた。
茜が好きだから、いつも一緒にいた。
他の奴が茜の魅力に気付かないように変な噂を流したのも
笑顔になるなら多少面倒な愚痴話でも喜んで聞いていたのも
碧井を諦めさせる為に、碧井に高い金を払って協力してもらったのも
その後碧井と入れ替わって僕が茜を無理矢理レイプしたのも
全部全部茜が好きだから。それだけが理由。
「私なんかでいいの…?私みたいなどうしようもない女で…」
「茜がいい。ずっと茜だけ見てきたから」
一生このまま種明かしをしないのだって、茜が好きだから。
それだけが理由なんだよ。