学校が終わると、里香と待ち合わせをしているコンビニに向かった。  
 
里香は小学五年生で、高校に通う俺とは、だいぶ歳の差がある。  
同じマンションに住んでおり、あるときその敷地内でサッカーボールを蹴る彼女を見て、  
それが知り合うキッカケになった。  
水曜日は、学校の授業が早く終わることもあり、その後いつも彼女のサッカーの練習相手をしていた。  
 
コンビニの正面の車を止めるブロックの上に、里香が脚を広げて座っているのを見つけた。  
その恰好は、スカートの中が丸見えだ。中に黒色のスパッツを履いているみたいで、  
本人はかまわないのかもしれないが、こっちは嫌でも意識してしまうのでやめてほしい。  
小学五年生に欲情するわけにはいかなかった。  
 
さっぱりした黒髪が、少しボーイッシュな雰囲気を匂わせているが、  
二重の瞳をきょろきょろさせたりするところなんかが、女の子らしかった。  
 
左腕をだらんと下げて、右手を伸ばしてボールをころころいじりながら、暇をつぶしているようだ。  
こっちの存在に気がつくと、立ち上がっていきなりボールを投げつけてきた。  
 
「うお、あぶねえ」  
 
里香は笑い声をあげて、小走りで寄ってきた。  
 
二人でならんで公園に向かう。里香の頭のてっぺんが、俺の肩ぐらいの高さにある。  
上から彼女の顔をちらっと覗くと、とくに手入れを感じさせない、それでもすべすべな柔らかい肌をしているのが見えた。  
 
途中自動販売機で、喉が渇いたときのために、ペットボトルのスポーツドリンクを買った。  
 
公園に着くと、彼女は言った。  
 
「ねえ、どうしても強く飛んでくるボールが怖くて、キーパーを上手く出来ないんだけど、どうすれば解決できるかなあ」  
 
「やっぱりボールを怖がらないこと。それだなあ」  
「でも正面から蹴られると怖いんだよね」  
「当たってもそんなに痛くないから。痛いときもあるけど慣れるし」  
「慣れるまではどうすればいいの?」  
「ひたすらボールの痛みになれる特訓をするとか」  
「SMみたいな?」  
 
そこで思わず言葉が詰まってしまった。どこでその英語二文字を覚えたのか。  
小学五年生相手に、どきどきするわけにはいかない。  
聞かなかったふりして、話を先に進めた。  
 
「とりあえず、俺が蹴るボールの痛みに耐えることができれば、小学生相手に恐れることはなくなるだろう」  
「うん」  
 
二本の木の間をゴールの代わりにして、その前に里香を立たせた。  
PK戦のような形にして、キーパー目掛けてボールを蹴る。正面から飛んでくるボールを慣れるために。  
最初は安全に、彼女の膝の辺りを狙うことにした。  
 
 

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