05 The Day After  
 
 少し硬い引き戸を開けると、肌寒い春先の空気が流れ込んでくる。  
 古い道具や本が集った場所に特有の匂いがして、少しだけ胸が弾む。  
 初めてここに来た日、自慢そうに部長がふんぞり返っていたのを思い出して頬が緩んだ。  
 一見すればガラクタのような古い道具や、いつのものかも定かではない書籍類、明らかに使いそうにない教材などなど。  
 林立する棚には、所狭しとそれらが詰め込まれている。  
 その中をかき分けるように奥へと進めば、そこが……  
「んー、あんまり変わらないか」  
 我が青春を捧げた、にしては少しばかりせまっ苦しい郷文研の部室だった。  
 見渡せば、俺達のカップが納まっていた棚には、後輩達の物と思しきそれだけになっている。  
 特に気に入った本を並べてあった本棚は少しラインナップを変えていたし、蛇口の近くには見慣れないものが増えている。  
「まあ、当たり前といえば当たり前か」  
 一人ごちてから見渡す。  
 ここを整理して目録を作るっていうのが郷文研の目的だったのだが。  
「全然やんなかったなあ」  
 大抵資料や本を読み漁り、淹れて貰ったお茶を飲んでいただけだ。  
 毎日ぼんやりと過ごしたのは、俺の人生で一番贅沢な時間だったと思う。  
 そりゃスポーツに打ち込んで優秀な成績を残すのは素晴らしいことだし、音楽にのめり込んで舞台にかける時間ほど幸せなことはないだろう。  
 絵を描き、ボールを追いかけ、書の道を求め、剣の道に生き、バイトに明け暮れ、必死に勉強するのも高校生らしくて良い事だ。  
 だが、俺にはこの薄暗い資料庫でのんびりと時間を潰すのがこの上なく好きだったのだ。  
 全国大会に出場もしなければ、栄誉ある賞を得ることもない。  
 けれど……ここで過ごした時間は、きっとこれから先生きていく上で大切なものになる。  
 そして……  
「ここに来られるのも、多分今日で最後か」  
 振り向けば、見慣れた黒髪をちょこんとゆらした少女がそこに居る。  
「何? 名残惜しい?」  
 卒業式後の人気のない旧校舎なんて場所へ行く俺のことを、何も言わず付いてきてくれている、俺の州崎ほとりだった。  
 ほとりがいつも同じで静かに微笑んでいる。  
 俺はがりがりと頭を掻いて  
「まあなあ、そりゃなあ」  
 と適当な返事をした。  
 そのまま何を言うでなく、いつもの席に腰掛けた。  
 ほとりもそのまま俺の少し後ろの定位置に。  
 むずがるほとりを、部長が無理やり連れてきたこともあった。  
 変なお茶を買ってきて、ほとりと二人でどうしようか途方に暮れた事もあった。  
 あまりに暑くて、大量の書籍や資料をどかして窓を発掘したこともあった。  
 文芸部が押し付けてきた本をどうしようかと頭を悩ませたこともあった。逆に書庫に色々押し付けもしたが。  
 春に、夏に、秋に、冬に。  
 この三年間の想い出の多くが、この場所にある。  
 
 愛用だった机の上は、自分の頃と変わらずいい加減に整理されている。  
 個人的な荷物だけは持ち帰ったが、そういえば読みかけの本や資料の整理整頓は現部長……朝井に押し付けたのだった。  
 さすがの朝井も一瞬愕然とした顔をしていて、歳のわりに落ち着いたあの後輩が動揺するのを見られただけで俺の選任は間違いではなかったと思えた。  
 因みに朝井の後ろで村越が呆れたような諦めたような目をしていて、きっと俺達が居なくなった後も上手くやっていけるだろうという不思議な実感を覚えた。  
 窓の外は紫陽花の花壇。卒業式の後は告白の最盛期だ。いや、告白に最盛期なんて言葉が相応しいかどうかは定かではないのだが。  
 実しやかに伝えられる我が校伝統のジンクスは、今日も若者の心をしっかりと捉えて放さないようだった。  
 紫陽花の咲く六月、文化祭のある十月、そして卒業式のある三月。紫陽花の花壇では生徒達が右往左往している。  
 すぐ近くの旧校舎最上階に陣取る俺達郷文研や文芸部は、それらを眺められるのが特権だった。  
 卒業生を呼び出した後輩の女の子が、それぞれの進路を選んだ三年女子が、在校生に伝えたいことを残していた男子が。  
 それぞれが少しずつ離れた場所で緊張した面持ちで手持ち無沙汰にしているのをにやにやして眺めていると  
「ホント、悪趣味ね」  
 とほとりが近寄りやはり地上の様子を窺う。  
「俺らの秘密の特権だからな、最後まで楽しませてもらうさ」  
 何となく後輩二人の姿を探してみる。  
 まあ、居るはずもないか。今しがた校門で別れたばかりだ。  
 二人が言葉も交わさず、それでもつかず離れずで歩き去るのを見送ってからここに来たのだから。  
 先輩の俺が言うのも何だが、もしも何かの手違いであの二人が素直に付き合ったりすることがあるとすれば、それは多分ずっと先の話だと思う。  
 あの頭でっかちの朝井と、面倒くさくて意地っ張りに手足を付けたような村越があっさり行くはずがない。  
 微妙に離れた二つの椅子も、それを物語っている。  
 とはいえ朝井が村越以外を選ぶとは思えないし、逆もまた然り。地上の様子と後輩二人の行方を重ねてみていると、悪いことをしているのに楽しくなってくる。  
「こんな悪事を働くのも、今日で終わりね」  
「ああ、まあ色々悪さしたもんだな」  
「ん、ホントだよ」  
 隣を向けば、いつの間にかほとりがじっとこちらを見つめている。  
「色々悪さしたケドさ」  
「うん?」  
「ここで、したことは、なかったよね」  
「…………まあ、何となくな」  
 
 いくら人が来ないとはいえ、一応校内だ。そりゃ白状すれば、ふとしたほとりの仕草が可愛くて押し倒したくなったことの一度や二度……  
 すみません、もっといっぱいです。わりといつも悶々としていました。色々ごめんなさい。  
 けれど、万が一そういう所を誰かに見られでもしたらと思うと、小心者の俺には無理なのだった。  
 いや、正直行っちまおうか、と思ったことの一度や二度……  
 すみません、もっといっぱいです。もうほとんど毎回必死に堪えていました。色々ごめんなさい。  
 そんなことを思い出していると、ほとりがくすくすと笑い始める。  
「何そんな百面相してんのよ、何? そういうことをここでしなかった理由、思い出してた?」  
「……ん、まあな……って、ほとりッ!」  
「ねえ修」  
 すっ、と俺のすぐ傍に顔を寄せて、とんでもない秘密を囁くように、ほとりが耳打ちをする。  
「あたしだって女の子なんだから、男の子のそういう視線なんて、すぐ分かるんだから」  
「……あー、その」  
 参った。静かな笑みを浮かべるほとりの、その瞳が光る。  
 夜空を詰め込み磨き上げたようなその瞳が、期待と興奮と、背徳に濡れている。  
「先に言うけど」  
「ん」  
「もうスイッチ入ったから」  
「ん」  
「止められないから」  
「ん……大丈夫」  
 ほとりが居住まいを正す。  
 ぴんと背を張って、ほとりがお辞儀を一つする。  
「どうぞ……その、よろしくお願いします」  
 その仕草に、頬と箍が緩んだ。  
「ほとり」  
 本当に、この女は。  
「ひゃうッ」  
 力任せに、噛み付くように、泣きつくように、抱き寄せ唇をむさぼり啜る。  
 夢中になって絡めていた舌を放せば、ほとりはぼんやりとこちらを見ている。  
 愛らしい、守りたい、大事にしたいと思う気持ちと、だからこそメチャクチャに壊してしまいたいという気持ち。  
 二律背反の気持ちが煮えたぎる心を押しつぶして、もう一度、今度は優しく囁くように触れるだけの淡いキスをする。  
 
 片手だけでボタンを取っていくと、白いレースのブラが見えてくる。  
 何も言わずそっと上に引き上げて、シャツを開いて胸を晒した。  
 肌寒い空気の中、今日まで散々良い様に弄ってきたほとりの胸が震えている。  
 いつも思う。野いちごって確かこんな風じゃなかっただろうかと。  
 ピンと勃った乳首をそっと舐める。  
 上目でほとりの顔を見れば、自分の指を噛んで声を殺しているようだった。  
 内心ゾクゾクとする。自分の指が、舌が、いや吐息でさえほとりにとっては耐え難いものであるということに。  
 その事実一つで、抑えきれないくらいに昂ぶる。  
 まだ胸を少し触っただけだというのに、俺もほとりもすでに呼吸が荒い。ほとりの吐息が甘く鼻をくすぐる。  
 本人は無意識なのだろうけれど、水蜜桃のような唇が俺の名前の形に動く。  
 桜色に上気し始めた肌を、再び唇に向かって舐め上げていく。  
 まるで自分の匂いを塗っているよう。動物のマーキングか何かでもあるまいに、それでも想像して興奮した。  
 自分の匂いで汚したほとりの姿。  
 いつも大事に綺麗にしてある黒髪を。  
 淡雪色の素肌を。  
 少しでも力を込めれば壊れてしまいそうなほど可憐な腕を。  
 飴細工のお菓子のように華奢な首筋を。  
 走ることを覚えたばかりの小鹿のように躍動する下肢を。  
 柔らかな線を描く胸の稜線を。  
 生き生きとした表情に変わる愛らしい顔を。  
 その全てに自分の匂いをこすりつけて、汚してしまう想像。  
 それだけでもう終わってしまいそうになる。  
 犬か、俺は。  
 唇に触れれば、そのまま舌を吸い唾液を飲み、逆に自分のそれもほとりの口中に流し込む。  
 片手で小さな肩をかき抱いたまま。もう片方は手のひらに収まるほどの胸をもみしだく。  
 初めこそ力を入れすぎたりもしたが、ほとりを傷物にしてもう一年以上経つ。  
 そのくらいの加減はもうおぼえている。  
 頬に軽くキスをしてから、耳を甘噛み、鎖骨へと舌をもう一度這わせていく。  
 体中をまさぐり、俺が触った場所などどこにもないくらいになったほとりは、すっかり解れたようで。  
「は、は、は……」  
 短く荒い呼吸で、切なそうな目をして、もう一度せめてもの逆襲のように俺に抱きついてきた。  
「ほとり、準備出来てるな」  
「……どうして一々言うのよ」  
「そうやって嫌がってくれるから」  
「…………いっつも思うけど、してる時の修って意地悪だ」  
「そうかな?」  
「こんな悪いこと、他の子にしたら、絶対嫌われるんだから……だから」  
「ああ……それ以上に、そんなことしたらほとりに嫌われる。そんなの嫌だからな」  
「そうだよ、嫌いになるからさ」  
 他愛のない言葉を交わしてから  
「なら、ほとりが満足させてくれるんだよな?」  
「ん……頑張る」  
 そっとそこに手を伸ばした。  
 他の子がどうなのか知らないけれど、ほとりはすぐに濡れて溢れていく。  
 うっかり外し忘れたショーツは、すっかり濡れて、愛液がしたたっている。  
「あー、やりすぎたか?」  
「修が……やりすぎなかったこと、ない」  
 不服そうに頬を膨らませるその顔に、もう一度キスをする。  
「つい、我慢できなくなるんだよ」  
「ホント、他の子にしたらダメだよ……こんなの」  
「ああ、だから」  
「ッ!」  
 指が秘所の突起を探り当てて、そのまま転がしてみせる。  
「ダメ! ダメ! それ強い!」  
「脱ごうな、そしたら続けるから」  
「だから、続けちゃ……やだ」  
 ぐい、とお姫様抱っこで机へほとりを連れて行く。  
 
「抱っこ……」  
「俺でも、ほとりくらいなら抱き上げられるよ」  
「これ嬉しいケド……重くない?」  
「もっといっぱい食べろ、俺にばっか作ってないで」  
「ん……」  
 キスをねだるほとりに、軽く唇を重ねてから机の上に座らせる。  
「机、汚れちゃう」  
「大丈夫、樹脂シートあるから」  
「でも本とか」  
「どかす」  
 ぐいといい加減に机の上のものを脇にどけてから、申し訳なさそうに腰掛けているほとりのそこへ顔を近づける。  
「ちょ、服、ちゃんと脱がせて」  
「ダメだ。このまま」  
「だって汚れて―――」  
「今日でこの格好も最後だろ? 汚したい」  
「……修の意地悪」  
 その拗ねた声を同意と受け止めて、ショーツに手を掛けた。  
 僅かに身じろぎをしてから、脱ぎやすいように上手く体重を動かしてくれる。  
 片足だけ脱がせて、そのまま顔を中へ。  
 女の匂いをさせるほとりのそこに、一瞬眩暈を覚える。  
 唾を飲み込み、そっとそこへキスをした。  
「ッ! 何回言っても、止めてくれない」  
「何が嫌なんだよ」  
 舐め、吸い、ひだを唇で挟んで。  
 そこも、そここそが俺のものだと言わんばかりに匂いをつけていく。  
 必死に堪えるほとりの声が、吐息が聞こえて、俺の愛撫で気持ち良くなってくれていると思い嬉しくなる。  
 女のそれは演技だ、なんてことを言う男もいるが、俺はそんなことはないように思う。  
 自分がことさら上手いとは言わないが、ただほとりに関しては違う。  
 ほとりの僅かな呼吸や身じろぎで、それが良いのか悪いのか不思議と分かった。  
 勘違いだと言われればそれまでかもしれないが、少なくともそれでほとりは嬉しそうにしてくれる。  
 それだけで俺は満足だった。  
「今日は、ホントにみんな着たまま……」  
「ああ。なあ、代えあるんだろ?」  
 それまで伏せていた顔を上げる。ほとりは俺の顔を見て、恥ずかしそうに頬を一際桜色にしてから  
「………………」  
 ぷいっとそっぽを向いた。  
 そんなほとりの頬に、そっとキスをする。  
「ありがとう」  
「だからこのタイミングで、そんな優しい声でそんなの!」  
「ありがとう、ほとり」  
「ッーーーー! ホント、修は意地悪だあ」  
 もうどうしようもなく可愛くて、もう一度抱きしめて、恋人らしい優しいキスをしてから  
「好きだから、こうなっちまうんだよ」  
 と囁いた。  
「ズルいなあ、ホントに」  
 ポケットをまさぐり、財布を取り出した。中には避妊具が忍ばせてある。  
「……そっちだって、準備してたんじゃない」  
「当たり前だろ? 俺はいつだってほとりのことメチャメチャにしたくて仕方ないんだから」  
「……そんなしょっちゅうあたしってされてるの? 修の中じゃ」  
「あははは」  
 当たり前だ。  
 
「ん……今日大丈夫だよ?」  
「着ける。ちゃんと」  
「……ずっとだよね」  
「だって、もし万が一があったら……今の俺じゃほとりを守れないから」  
「もう……だからそういうこと優しい声で言わないでよ。ほら……貸して、あたしが着けてあげたい」  
「ああ」  
 初めての時は、思わずそのまましてしまったけれど。  
 もし本当に万が一があったら、そんなのろくな結果にならない。俺はほとりを抱きたいだけじゃない……ほとりとこれから幸せに生きていきたいんだ。  
 そんなごく真面目なことを思いつつも、俺のモノはほとりの中の味を思い出して勃起している。  
「……ッ」  
 そんなことを思っていると、ほとりが俺のモノを口に含んでいる。油断していた、ほとりが俺のモノを舐め回している。  
 この一年ですっかり上手くなったほとりのフェラは、とにかく丁寧だ。  
 舌がそっと優しく蠢き、唇が何度も竿を責め立てる。  
 あまりされると出てしまう。  
 俺はほとりの頭をそっと手で押さえて  
「も、良いから」  
「ん」  
 不思議そうにほとりが見上げている。  
「ダメ、仕返し」  
「仕返しって。ぐッ」  
 思わずほとりの頭を押さえる手に力が入る。  
「ちゅ、ん……んく、ちゅ……はぁ、んちゅ、ちゅ」  
「ッ、出るッ」  
「ん……じゅ、くちゅ、じゅ……飲む……」  
「飲むって」  
 興奮に濡れたほとりの目が、嬉しそうに揺れる。  
 上目使いで、呼吸も荒げて、艶やかな黒髪を乱して、しどけなく微笑む。  
「ちゅ」  
 鈴口の先を唇が軽く触れ、そうしてから一気にほとりがペニスを含む。  
「ん、じゅ、んちゅ……くちゅ、ちゅ、ちゅ」  
「んッ」  
 ほとりにされているというだけで、それだけでもうダメなのに、吸われ、舐められ、そして  
「うぅ、ッ、んんッ! くッ」  
「くッ!」  
 ほとりの口に、今日最初の精子を吐き出した。  
 ほとりの白い喉がこくり、こくりと飲み下す音が響く。  
 外からは別れを惜しむ声が聞こえてきていて、そんな中でほとりが精子を飲んでいるのだと思うと、ますます興奮してくる。  
「ぷは。いっぱい出た。一昨日したばっかなのに、もうこんなに貯まるんだ」  
「ああ、昨日は自分でもしなかったしな」  
「ねばねばだ、すごい濃い……出されたら、妊娠しちゃうね」  
 何を言い出すのか。  
 そんなこと言われては、一度口にだしたくらいでは収まるはずもない。  
 もう俺のペニスは固まり屹立し、ほとりの唾液やら精液やらに混じり、先走りの透明な液がにじんできている。  
「もう、出したばっかりなのに……その、まだ足りないんだ」  
「ああ、ほとりを抱かないと」  
「ん……あたしだって、してくれないと」  
 ほとりのほっそりとした指がゴムを手繰り、俺のモノに覆い被せていく。  
 ショーツを半脱ぎのほとりがちょこちょこと慣れた手つきで避妊具を着けているのを見ると、ますますモノがいきり立つ。  
 今から自分を犯す男の為に、甲斐甲斐しく世話をするほとりの姿にまた興奮してきた。  
 すっかり準備を終えた俺のモノに、もう一度だけほとりが口付けてから立ち上がる。  
 
 そのほとりを抱きしめて、机にもう一度腰掛けさせた。  
「いくよ」  
「ん……」  
 モノをほとりにあてがうと、先ほど俺が弄っていた時よりも濡れている。  
「ほとりさ、舐めて興奮したんだ」  
「ッ! だからいちいち言わないでよ」  
「嫌がるから言いたくなるんだ」  
「どうしてそんな意地悪す……あ、ちょっとヤッ」  
 ほとりのセリフが終わるのを待たず、そのまま一気に押し入った。  
「油断、させといて、から、するなぁ」  
「可愛い反応が、見たいからな」  
「だか、ら、今そういうこと、言うなぁ……ひゃんッ」  
 内側を削るように動く。女は最初が一番良い、なんてこと自慢そうに話す男子が居たような気がするが、俺はそうは思わない。  
 相手が良くなる所や好みが分かって、それを大事に出来る。  
 こういうのは、回数を重ねないと出来ない。  
 他を知らない俺が言っても説得力はないのだろうけれど、この女が一番に決まっている。  
 そう言う様に、自分の形を憶えさせる様に、がりがりと削り続ける。  
「えッ、あッ、はあ。ぅくッ、ちょ、待って、待ってやだ……」  
 散々中を食い散らかして、そうしてもっと奥へと腰を進める。  
「やッ、ああッ、ッ、くッ!」  
 思わず上がった声を、指を噛んで堪えるほとりの頬にもう一度キスをする。  
「んんッ、くッ、はぁ、ああッ、ッ」  
「なあ、女のここってさ」  
「う、んッ、あッ、んんッ」  
「男のカタチになるんだってさ」  
 溺れるような呼吸の中で、ほとりの目が妖美に光る。  
「あたし、の……修のになってる? なってる?」  
「ああ……ぴったりだ、他のなんか入れたら、カタチ変わるから、良くなくなるぞ」  
「やだ、そんなの、やだあ……あうッ」  
 再び奥へ、一気に突きこむと子宮が下りてきている。  
「ここ、来てる」  
「ん、来ちゃ、てる」  
 がんと叩きつけると、ほとりが肩に噛み付き唸る。  
「む、むー、はッ、んーッ」  
「それ、癖な」  
「うぅ、ごめんな、さい」  
「いや……」  
 それが、合図になる。ほとりが気持ちよくなる合図で、俺もそれで出そうになる。  
「俺もッ」  
「うん、うん、来て、いっぱいッ」  
「がぁッ」  
 必死に抑えて囁く声が耳を撫でて、俺はもう一度最後に腰を振る。獣じみた声が自分の喉から搾り出され、ほとりを力いっぱい抱きしめた。  
「あああッ、あッ、ふぁあぁぁッ」  
 力任せに、強引に、骨も折れよとばかりに抱きしめながら、出した。  
 避妊具ごしに、けれどほとりの奥を目指すように吐き出す精子。一瞬着けているのを忘れて、孕ませようと思ってしまうほどの射精だった。  
 いつも思う、エラそうなことを言っておきながら俺はほとりを孕ませたくて仕方ないのだ。  
 もし着けずにしたら、絶対に途中で抜くなんて出来ない。ほとりの子宮をメチャクチャに汚すまで止まったり出来ない。  
 ゴム越しにでも妊娠させたくて仕方なくて、射精しながら腰を振っているのだから、我ながら呆れてしまう。  
 
「あああ、は、はあッ、ふぁ、あ」  
 肩を揺らして、必死に酸素を求めているほとりをもう一度抱きしめてから、そっとキスをする。  
 ほとりの中からペニスを抜くと、少し収まったらしくくたりとなっている。ゴムを取っていい加減に括り、捨ててから  
「ほとり」  
「……ん」  
 俺にぐちゃぐちゃに乱され、自慢の黒髪を体液で光らせ、半端に脱がされた制服姿のほとりをもう一度抱いた。  
「その格好、無理やり犯されたみたいだな」  
「やったの、修でしょ」  
「ん……我慢出来なかった」  
「ホント、こんなこと他の子にしたら捕まっちゃうよ」  
「ああ、だからほとりがされてくれ」  
「……ホントはもっと、優しくして欲しいんだケド……ん」  
 頬に、おでこに、鼻に、耳に、首筋にキスをする。  
 どう表現すればいいのか分からないくらいの、凶暴な愛しさに耐え切れず、俺はほとりを抱きしめる。  
 まだ少し呼吸の荒いほとりの吐息と鼓動を感じて満足する。幸せな気分で、ほとりの頭を撫でた。  
「今、優しくするのは、だから卑怯……」  
「したいことを、してるだけだよ」  
 ほとりを見つめると、泣きそうな顔で微笑んでいる。そんなほとりがどうしようもなく可愛くて、望みどおり優しくキスをした。  
「ん……口の中、修のでいっぱいだったのに」  
「関係ないよ、ほとりにキスしたかったから」  
「……もう」  
 
 初めからそのつもりだったのだろう、濡れティッシュやら着替えやらを手早く出してからほとりは俺を追い出した。  
 ことが終わればもう俺はほとりの言われるがままだ。最後にもう一度だけキスをしてから資料庫から出る。  
 何となく手持ち無沙汰な、変な気分で校庭を眺めていると、まだ卒業生達は何やら名残を惜しんでいる。  
 この喜ばしい日に幼なじみを犯してにやにやしているといのはなんとも罰当たりで。けれどそれが悪甘くて気持ちよかった。  
 意味もなく窓を開けて、大声で自慢したかった。  
 俺のほとりは世界で一番可愛いんだぞ、と。  
 そんなアホなことを考えていると、掃除と換気と着替えを終えたほとりが出てくる。  
「おまたせ」  
「やることやっといて言うのも何だけど、バレないかな」  
「一応綺麗にはしておいたし、換気もちゃんとしておいたから多分大丈夫よ」  
「そっか」  
「……修はケダモノだから」  
「ん、すまん」  
「しょうがない変態でエッチなのを彼氏にしたら、大変だよ」  
「あー、申し開きも出来ません」  
 窓の外から、また何かの歓声が聞こえる。  
 とはいえ、もうそろそろ人の数も減り始めている。  
「そうだ。これ言っとかないと」  
「え?」  
 何が楽しいのか、ニコニコとしているほとりをもう一度抱きしめる。  
「卒業おめでとう、州崎ほとり」  
「もう」  
 仕方ない、みたいなため息をついてから、ほとりは俺を見つめて  
「卒業おめでとう、神流修」  
 ついばむ様な、キスで祝った。  
 
 

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