女子部員の一人の呟いた言葉に私はショックを受ける。  
どうして……どうして根元くんが私のホクロの事を知ってるの?絵のモデルを引き受けた時から昨日まで根元くんに  
背中の地肌を見せた事は無いのに……。まさか……本当に最初から、ばれてる……私の秘密、根元くんには知られてるの?  
ボディーペインティングの話題を振られた時には驚いたけど、その後の根元くんの言い訳を信じて自分を誤魔化してたけど…。  
そんな……あの日のスクール水着のペイントは完璧だったのを自分でも念入りにチェックしたのに……。  
あの後何もボディーペインティングについては触れてこなかったから、警戒を緩めていたんだけど…。  
やはり全部知ってたの……いや、あれからずっと根元くんに胸もアソコもお尻の穴も…見られ続けてたの…?  
彼に対する警戒心は少しずつ弱くなっていたけど、彼以外の人から知らされた話で私の中に不安がじわじわ広がる。  
不安が広がっているのに、なぜか始めに彼にボディーペインティングの話題を持ち出された時程の警戒心が持てない。…何で…?  
女子部員C「あの……絵理さん……どうしたんですか……?」  
絵理「え?あ、何でも、無いわ………」  
私が髪を弄られてるのを見てる二人のうちの一人の子が私の異変を感じ取って尋ねて来る。必死で平静を取り繕う私の心臓が不安な気持ちで高鳴って行く。  
やっぱりばれてるならどうして根元くんは私の事をなかなか脅迫しようとしたりしないの?まさか今までの姿を全部カメラでこっそり盗撮して写真をためてるの…?  
そんな……根元くんはムッツリな所はあるし、別段格好良いわけでは無いけど、いい人だと思ってるのに…。  
でも……飲み会に呼ばれた日に一番最初に絵を見せてくれた時には背中のホクロなんて描いて無かった筈なのに…どうして…。  
副部長「でもこんな位置にあるホクロまで描くなんて……絵理ちゃん、モデルの時どんな格好してたの…?」  
女子部員A[ひょっとして、本当に脱いでたの?出会ったばっかの根元くんの前で…」  
絵理「み、水着……着てたんだけど……」  
女子部員B「でもこの部分、見えてたなんて……物凄い切れ込みの水着じゃないの?」  
副部長「いわゆる市民プールとかだと出入り禁止レベルのヤツ?」  
絵理「やだ…ッ……ただの、スク……ワンピースよ………」  
女子部員A「え〜?だってワンピースじゃ絶対見えないよ、このホクロ!」  
副部長「案外根元君の願望で描いたホクロがドンピシャだったとか!」  
女子部員B「でも実曽和さん、絵理ちゃんざっと見た感じ他にホクロ無いし…ちょっとそれ怖くない?」  
副部長「よし、後で根元くんはそれも含めていろいろ尋問よ!絵理ちゃん、期待してて!」  
女子部員A「でもさ、他の絵理ちゃんの大事なトコ…それは全部根元君の妄想でしょ?」  
絵理「んっ………う、うん………」  
 
副部長「ねえ、ほらツインテール……あ〜ん、これもなかなかいいじゃない……」  
女子部員D「でも香春さんの背たけとギャップありすぎません?」  
女子部員B「そう言えば絵理ちゃん両サイドの毛はやたら伸ばしてるよね、ポリシー?」  
絵理「え?うん………」  
私の髪の毛を弄るのもそこそこに上の方の子三人が私の身体での発見を楽しそうに語り合う。  
本来ならそれが照れくさくこそばゆく感じるんだけど、今は不安感でそれどころじゃなかった。  
周りの女子部員の人達に聞いてみた方がいいのだろうか…根元くんが初めて会った日に学祭でボディーペインティングを  
やって見る事を部長が提案していたと言ってた事が本当の事なのかどうか……。でもそれを確かめるのは地雷を踏みに行くようなものだ。  
絵理(私も……根元くんを問い詰めてみないといけないの……?)  
もし脅すつもりならば、こっちもそれ相応の手段に……でも…本当に彼がそんな事を企んでいるの…?  
面白みの無い私と一緒にいるのがすごく楽しいと言ってたのに……。飽きずに連続で誘ってくれてるのに。  
今朝だって余りの恥ずかしさでどうすればいいか分からなくなってる私に優しくしてくれたのに…。  
私の作ったお弁当をこちらが恥ずかしくなる位に無邪気に喜んで食べていたのに。  
疑いたくない気持ちもあるけど、自ら抱えている秘密ゆえに、どうしても警戒心が先だってしまう私。でも……いけない事に…私はそれに対して興奮を覚えてもいた。  
…正直に言うと…私自身ここ数日の味わったことの無い気分に酔いしれていた。彼と出会ってからのボディーペインティングには楽しさがあったから…。  
私が本当は全裸だと知っている上で、私を皆の前で押し倒したり、ツイスターゲームに誘ったり…。  
ツイスターゲームでは身体の各所を根元くんの顔に近づけたりいろんなポーズを取ったりして…。  
その後も背中を指で弄り回されたり、私も彼に胸を押し付けてしまったり、その胸が揺れるのを散々見られて…  
いや、彼と出会う前には出来るだけ人込みを避けていた私を人が大勢いる中、連れ回して…  
服を着ていると思い込んでる人に見られるのと、本当は全裸だと知ってる人に見られるのではこんなに違うなんて…。  
根元くんは私とハプニングで密着したりする度に、男の人の大事な部分を硬くさせて……。  
あの時だって恥ずかしかったけど…でも私の裸を認識したうえでの物だとしたら、なおさら恥ずかしい。  
だって私は根元くんに押し倒されたり馬乗りになってしまったりした時に痺れるような快感を感じていたのだから。  
あれらの出来事の時、私自身が誰よりも自分が皆の中でただ一人裸を自覚していたから。  
塗装の上から彼の体温を感じて…胸をあんなに揺らして脚を広げたりして…自分が本当は裸である事に高揚していた。  
私……なんて事をしてしまったんだろう……出会ってまだ間も無い根元くんの前であんな気分に陥っているなんて。  
絵理「っ…………んっ………!」  
だめ……あんな事を思い出したり淫らな妄想をして濡らしてしまったら…。私の使っているボディーペインティングの塗料は私自身の愛液に弱く出来ている。  
今、周りに他の子がいて私の身体に触ったり私の様子を見つめているのに……。  
私、一体今何をどうしたいの…?根元くんに真相を問い詰めて彼から逃げたいの…?  
このままでいたらどうなってしまうの?ここから亀裂の様に私の全てが皆にばれて言ってしまうと言うの?  
どうして……もっと危機感を抱いてもいいはずなのに、身体が疼くような痺れを感じてしまってるの?  
 
絵理「ふぅっ………ぁっ……んんっ…………」  
思わず、太股同士を擦り合わせようとしそうになって慌てて自制する私。  
女子部員C「あの……絵理、さん……あの……」  
絵理「!……ぇッ……あ……何……」  
私の沈黙状態を私が退屈しているのかと思ったらしく女子部員の一人が顔を覗き込んできた。  
私自身がいろいろ考えてはいてもそんなに時間はたっていなかったらしいけど…。どうしよう…今少し顔が赤くなってないかな…。  
女子部員C「絵理さん……座ってる間、爪の方……弄ってみないですか……私もつい最近覚えたばかり…ですけど…」  
やや元気系の女の子の中で一人、一番大人しそうな後輩の子がオズオズと尋ねて来る。  
絵理「え……でも……時間、かからないかしら……」  
女子部員C「あ、ぜひ……やらせて下さい……お願いします……それに髪の毛、弄られてる方は待つのも退屈だし…」  
この子もそういう経験があるのだろうか……。  
絵理「うん……それじゃ…私もやった事ないから、お願いするわ……」  
女子部員C「あ、あの……それじゃ、失礼します……」  
絵理「えっ?あ、脚の方なの……?」  
その子が私の前の床に腰を下ろすと私の靴と靴下をスルスルと脱がしてしまう。  
絵理「ぁっ…………!」  
女子部員C「あ……包帯、大丈夫ですか……?」  
絵理「う、うん……怪我とかしてるわけじゃないから………」  
やだ……本当は裸に靴と靴下だけという格好も恥ずかしいんだけど、人の手でその少ない布地を取られてしまうなんて…。  
その後輩の子の手で完全に生裸にされてしまう私……だれも私の秘密に気付いて無いけど、こうして身体の各所を触られて…。  
それにその後輩の子の視点がちょうど椅子に座る私のお臍と大事な部分の中間位の高さにあるなんて……。  
だめ……興奮しない様にしなきゃ……アソコが視界に入ったりしたら……。  
女子部員C「うわぁ……こうして触って見ると、絵理さん…肌はスベスベだけど、すごく締まってる……」  
女子部員A「ちょっとー!その言い方なんかいやらし〜」  
絵理「…………」  
女子部員C「あ、すみません、絵理さん………」  
女子部員D「あ、いいな……ね、私ももう一方の脚、やらせて」  
女子部員C「あ、じゃ……私こっちの脚……」  
 
絵理「えっ………あ………?」  
浸りの一年生女子部員が私の脚を一本ずつ担当し出したせいで、やや足を開いたようなポーズにされてしまう。  
だめ……これじゃ、本当に見えちゃう…身体が反応し始めてるの気付かれちゃうかもしれない…。  
女子部員D「で、これどうやるの?」  
女子部員C「うん、それはね……絵理さん、すいません、少しくすぐったいかもしれないけど…」  
絵理「だ、大丈夫……うん……んっ……」  
そう言いながらも左右それぞれの私の脚に触れて足の爪に筆を使って液を付け始める。  
大人しそうな子の方はやや遠慮がちに、もう一人の子は強引だけどつたの無い感じで。それが何ともくすぐったい。  
女子部員D「あ、香春さん……指いきなり開かないでくださいよ…」  
絵理「あ……ごめんなさい……あんまり脚とか人に触られた事無くて…」  
副部長「いやはや…自分達で群がっといてなんだけど…なんか私ら女王様とそのしもべっぽいわよね」  
女子部員B「少なくとも根元君は絶ッ対絵理ちゃんのドレイよね、そうでしょ絵理ちゃん?」  
絵理「え?やだ…そんな事……」  
こうして両手は自由な状態で体のあちこちを触られているなんて…何か本でもあればいいけどそう言ったものは置いて無い。  
視界をどこに置くかも困る。私が視線を置いておくには一番楽だった場所には足の爪の手入れをしてくれてる女の子二人がいて  
そのままでは顔を覗きこまれて何を考えているのか興味を持たれてしまいそうだ。  
周りの女の子達の動向も気になってはいたけど、やはり私の心の中を占めていたのは根元くんがどうして私のホクロを知ったか、  
そして私の秘密を知った上で接触して来ているのだろうかと言う事…そしてそれにどことなくエクスタシーを感じている私自身の事。  
私の背後では三つ編みを作る前にいろいろ髪の毛を弄ってる三人のキャッキャとした会話が進んでいた。  
副部長「ねえ、ほら……お団子頭!」  
女子部員A「実曽和さん……いいからそろそろ三つ編みの方始めないと…」  
女子部員B「まあ、いいじゃない?三つ編みやる前にもう少し見てみようよ」  
この他愛の無いノリが楽しくないわけじゃないけど、心の中の不安がかえってそれに大きく影を落とす。  
女子部員D「あら、璃理……あんた上手いわね……」  
女子部員C「うん、私足の爪痛みやすい性質だから、毎日手入れはしてるけど、オシャレ用のはあんまりね…でも絵理さんは根元さんがいるし」  
女子部員D「………ん?…あれ?…香春さん否定は?」  
絵理「えっ?」  
女子部員D「……やっぱ香春さん、根元先輩の事まんざらでも無いんじゃないですか?」  
絵理「え?何で……やだ……ちょっと、何でそう見えるの……?」  
女子部員B「あらら……絵理ちゃん、根元君絶対に本気でアプローチかけて来てるのに……」  
副部長「絵理ちゃんなら引く手数多でしょ?わざわざ根元君に誘われても嫌がらず付き合うなんて」  
女子部員A「あ、別に根元君のレベルが低いってわけじゃないけどね…このサークルじゃ平均以上だし」  
そして、根元くんと私の関係の話題になると、周りの五人が一斉にその方向に飛びついて来る。  
私の脚の爪の手入れをしている一番大人しそうな子までが手を止めてこちらをキラキラした目で見ているんだから。  
 
副部長「ね、今男子連中はいないんだし……実際のとこ、絵理ちゃん的には根元くんってどうなのよ?」  
女子部員B「あたしたち絶対言いふらしたりはしないからさッ」  
絵理「で、でも…いきなりそんな事聞かれても………私、わからない……」  
どうしよう……確かにここ数日根元くんと過ごして楽しかった事は間違い無いんだけど……でも、私まだ  
特定の男の人を好きになった事なんて無くて、恋愛なんて殆どわからなくて…初恋だってまだ…………  
もしここで彼の事を嫌いじゃないと答えたとしても、私の中にある物を考えると…私はごく利己的な答えしてるんじゃないのかと思う…。  
だけど、彼の事を嫌いとは言えない…。もし根元くんが私の事をだまして脅すつもりであっても…。  
私、なんて答えればいいんだろう…ただの友達と答えればいいんだろうか…そう答えればまたからかわれそうな気がするけど…。  
絵理「わ、私………ッ……」  
副部長「え?何?何?」  
でももし根元くんが私の事を本気で好きだとして…それを友達と言いきってしまったら…それが根元くんの耳に入ったら…  
根元くんはそれを悲しむんだろうか……そもそもどうして私ここまで根元くんに気を回してしまってるんだろう…  
根元くんの目的も気持ちもまだ完全に確認はしていないのに…。まだ出会って五回目だと言うのに。  
絵理「そのッ…………」  
どうしよう……どう答えれば彼女たちも私自身もそしてこの場にいない根元くんも納得する形になるんだろう…。  
女子部員B「わぁ……絵理ちゃん悩んでる……」  
女子部員A「しっ!」  
だめ……ここで安直な答えを言ってしまったら後悔しそうな気がする……一体何なの……この気持ちは……。  
副部長「さぁさぁ〜」  
女子部員D「実曽和さん楽しそう……あッ……」  
絵理「私……えっ!?」  
何とか言うべき事を探っている最中にいきなりドアが開くと。  
根元「お〜〜い、入るぞ〜」  
絵理「あ……根元くん………」  
そこには数人の男子の部員と一緒に根元くんが立っていた。……どうやらいつの間にか一時間経過していたみたいだ。  
副部長「あ〜〜〜〜…間に合わなかった……根元くん戻って来ちゃった…」  
女子部員A「ちょっと髪の毛触って遊び過ぎてたよね私ら……」  
女子部員B「い、今からでも……無難にポニーにしちゃいましょうよ!」  
根元くんが椅子に座らされて部屋にいた女子部員全員に髪の毛を弄られたり脚を触られてる私を見て目を丸くしている。  
根元「………あ〜…これって……皆で絵理さんにかしづき中?」  
男子部員A「じゃ、ねえだろ、これ……捕食中じゃねえのか?」  
女子部員一同『ッ!!ちっが〜〜〜〜うッ!!』  
 
根元「それにしてもまいったよ……俺の描いた絵、なんか黒いものが微かに動いてると思ったら、ハムシが一匹張り付いててさ…  
  皆が絵を見てるから、指でそいつ落そうとしたら、なんか危ない人と勘違いされそうになるしさ」  
絵理「え?」  
男子部員A「そうそう、根元、絵の作者なのにな」  
根元「露骨に俺が裸婦画フェチで絵に触りたがってるなんて視線送って来るもんだからさぁ」  
絵理「……………」  
そうだったの?ただの虫だったの?……疑ってごめんなさい、と心の中で根元くんに詫びる。  
副部長「え?どう見ても裸婦画フェチじゃないの?」  
根元「違います!……で……絵理さん、困ってるみたいですけど……」  
女子部員A「私らさっき絵理ちゃんの背中のホクロの話しててさ、それ絵理ちゃんが根元君に見せた記憶無いって言うから  
  根元君がどんな経緯でそれを知ったか話が沸いてたんだけど……何よ、ハムシって……」  
女子部員B「なんかガッカリ〜……」  
根元「え?ホクロ?背中?マジ?」  
副部長「そのホクロよ!根元君がどうしてこの事知ったのか、盛り上がってたのよ。根元君、絵理ちゃんのこの辺にホクロが  
  一つ欲しいと思ってたらドンピシャリだったとかってね〜」  
根元「へ〜……どれどれ……」  
絵理「ちょッ…!?根元くん、何してるのよッ……!」  
副部長「ほら、根元君、ムッツリでしょ?」  
冗談半分に私の背中側を至近距離から覗きこもうとする根元くんについ慌てて身構えてしまう。  
ホクロの事は誤解と片付けることができたけど…それでも私自身が自覚しなければいけない彼への疑いは残ったままだった。  
それだけじゃない。その疑いと共に私の中に巻き起こっている得体のしれない昂りも。  
 
 

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