「それで、絵理さん……」  
「ね、絵理ちゃん、ここ寄ってこうよ!」  
「え……ここ……?ローラーブレード?」  
「…………」  
思わずムッとして閉口する俺。男子部員は俺以外含めて四人いるのに女子部員は俺らよりも絵理に興味津津だ。  
「あ、いいな!絵理ちゃん、ローラーブレードとか得意でしょ!?」  
一応、俺と絵理は並んで歩いているのだが、女子部員共が激しい勢いで絵理と喋ろうとするもんだからなかなか二人の会話は弾まない。  
そんな中、屋外の出し物の一つの、ローラーブレードやスケートボードを楽しむための区画にやって来たのだが。  
俺、ローラーブレードやって見たいと言う憧れはあったんだが、そのグッズを買うのがめんどくさいとかお金がかかるとか言う理由で  
結局憧れのままだったんだよな……小学生の頃は、ローラースケートをクリスマスに買ってもらった事があって、喜んで挑戦して見たのだが  
自分がローラースケートの達人になったと言う記憶は無い。犬のフンの上に盛大に素っ転んでそれ以来使わなくなった記憶はある。  
「ねえ、絵理ちゃん運動神経抜群なんでしょ?私らに教えてよ!」  
「でも、私も……初めてなんだけど………えっと……」  
絵理が困った様に首をかしげている。ははぁ……女子部員連中、絵理にあんまり自己紹介とかして無いんだな…。  
「おい、ちょっと待て……お前ら、取りあえず絵理さんがちゃんと名前覚えられる様に自分の名前紹介しとけよ。一昨日の飲み会じゃ覚えきれなかっただろうし」  
「あ………」  
「あ〜、ごっめ〜ん、絵理ちゃん……一応飲み会の時名前教えたんだけど……絵理ちゃん蛍に抱きつかれてそれどころじゃなかったわよね」  
男子部員B「って言うかよ、葛城と根元が隣に陣取ってたからじゃね?」  
そんなわけで、改めて自分の名前を名乗り直す女子部員達とオマケの男子部員三人。  
副部長を務める絵理と同学年なのが『実曽和和子』、俺と同学年で良くつるんでる二人のうち、眼鏡の方は『荻田凜』(女子部員A)、  
ちょっとぽっちゃりしているのが『酒井静乃』(女子部員B)、一つ下の学年で絵理の爪の手入れをしていた大人しいのが『加藤翔子』(女子部員C)  
それよりも騒がしいのが『元山朋美』(女子部員D)……そして男子部員は…Aが『蒲原』、Bが『芳友』、Cの先輩が『滝田』  
それぞれツインテール、セミロング。ポニーテールが好きらしいが……まあ、男子部員は絵理の頭の中でも順不同で構わない。  
男子部員の中で俺よりも先に絵理に下の名前で呼ばれる奴なんて出ないように注意しないとな…。  
ここにいない部員が男女ともに結構いるが、その内機会があったら絵理に詳しく紹介してやるとしよう。女子の方は。  
「じゃ、絵理ちゃん、行こうよ!男子も行くでしょ?」  
「うん、じゃ俺も、やった事ないけど……絵理さんがやるなら」  
「絵理ちゃん、やった事無いなら俺が根元の代わりに教えるよ!」  
結局全員ローラーブレードを楽しむ事になるのだが…。  
「絵理ちゃん、上手ーい!何、何?本当に始めて?」  
「何だよ…俺が教えるところ無いじゃん……」  
俺達より先にローラーブレードを楽しんでた連中も、新たに現れたセクシー衣装の絵理の滑りに目を奪われている。  
「うわあ……あの娘、可愛いな……声掛けない?」  
「いや、あの娘、確か昨日から彼氏とべったりだよ、ほらあそこの奴……」  
絵理をエスコートしようとしていた男子の目論見は絵理があっさりローラーブレードを使いこなして見せた事で崩れ去る。  
だが、問題は俺の方だ。竹馬なら得意だが…なんて言い訳はしてられないけど…思ったより高い!足首がグキッとかなりそうだ。  
「根元くん……大丈夫…?ほら……私の手……握っていいから……」  
腰を引いた体勢で区域を仕切る柵を掴んでいる俺に絵理が助け船を出してくれる。優しいなあ、絵理は…。  
「うん、絵理さんありがと……っとと……おおっ……」  
「そう、その調子……ほら、身体起こして……」  
 
やや腰を引き気味になりながらも絵理に助けられながらブレードを転がして見る。おお、なかなか面白い。  
「あはは、根元君、絵理ちゃんにエスコートされてるぅ〜」  
「根元、早く滑れるようになれよ、絵理ちゃん一人占めしすぎ!」  
「あの二人、絶対根元君が立場下になりそうよね〜」  
うむ……ローラースケートと違って一見難しそうだが、バランスのとり方さえうまく掴めば、むしろ…。  
「根元くん、結構上手いわよ……」  
「絵理さんも凄いな、やった事無いって言ってたのに、やっぱり運動神経あると違うね」  
「あッ…?ちょっと待って…根元くん……あれ……?」  
突然滑るのを中断して、片足のブレードの車輪を地面にこする付けている。  
「…このブレード…いきなり…………」  
「ああ、絵理さん、車輪がビニールテープの屑噛んでるよ…結構散らばってるからね、ここ…どれどれ……」  
学祭開始前の掃除は毎朝行ってるとは言え、あちこちの飾りや展示からはがれたテープや紙片は以外と散らばってる。  
腰を曲げて絵理のブレードの車輪に脚を伸ばす。  
「え……?根元くん?大丈夫……別に自分で……取るから…」  
「無理しないで、絵理さん…ローラーブレード履いてたら、やりにくいでしょ?」  
「いいから……あ…そんな強引に……ぁ」  
「絵理さん、すぐ取れるからそんなに慌てないで…!」  
そう言えば絵理は今朝のアソコを子供に覗かれたからか、余り腰の辺りに顔を持ってかれたくないらしい。  
「よし、取れ……」  
「あふぅっ……」  
「うわ?!」  
絵理の二本の白い美脚を目の前に、ビニール屑を抜き取った俺だが、その反動で絵理の太股にモフッと頭を押し付けてしまう。  
「あ、やべ…悪い絵理さん、大丈夫?……うほっ?!」  
「あ、ぁぁあッ…きゃ……?」  
「ブげふッ?!!」  
腰を引いてる絵理を支えようとしたのがかえって不味かったのか、脚をもつれさせる絵理。  
そう言えば俺まだろくに他人を支えられるほどブレード使いこなせてないじゃん、俺の馬鹿!  
柵に捕まる事も出来ないまま尻餅をつく俺に巻き込まれるような形で、絵理まで倒れこんで来た。  
一瞬真っ暗になる目の前。そして胸の上あたりにドスンっとぶつかる衝撃。  
「いててて………後頭部ぶったかも……」  
「んっ………やだ……」  
ん?何でこんなにでっかい桃が俺の胸板を占拠してるんだ?  
規格外にでかいけど、今まで見たどんな桃よりも美味しそうな桃だ。  
「わぁ…………」  
「………い、息荒げないで、根元くん………ん…」  
俺と向き合う形で俺の上に跨ってるかと思っていたのだが……俺の目の前にあってそして胸板に乗っかってるのは……  
でかい桃にも見えたそれの上部から絵理の上半身…俺が呼吸をするとその背中が仰け反って…  
「わッ?!…え、ええッ…絵理さッ……ご、ごめん……!どこも怪我無い?っていうか……」  
「んぅっ……ぁ……きゃッ…!?やだ……ぁ……根元くん……どこ触って……ぁ…す、すぐ退くからっ…」  
目の前にデンと乗っかってる張りのある美しいこれは……絵理のお尻……だよね…間違い無く……  
触ったらアウトなんだよね…もちろん……また恒例の生殺しタイムスタートですか?  
「あら、あらら〜…大丈夫、二人とも…」  
「おい、根元…さっそく尻に敷かれる練習か?」  
「もうすでに根元が絵理ちゃんの下僕なのは公認じゃねえか」  
「根元、物凄い顔して無いか?」  
 
わ、わわッ?絵理が焦って立ち上がろうとして俺の胸板にお尻を乗せたままもがくんだけど……見える…!見えてる!  
皺の少ない窄まりが……下のお口に繋がって行くラインが…………あぁ…こんな至近距離で……絵理の大事な部分が…!  
つい触ってしまいたくなるではないか!指先で撫でたり、気付かれるギリギリの範囲でつついてみたり。  
「絵理さんッ……お、落ち着いて……さっきみたいに、普通に立ち上がれば……」  
「ぃッ……だ、だめっ……根元くんッ……息……かかってる……」  
え、『イキかかってる』……?ってそんな冗談を考えている場合じゃない!  
先程のブレードの使いこなしを見てみれば絵理なら簡単に立ち上がれそうに思えるのだが、流石に皆の前で恥ずかしいのか、冷静さを失っている。  
それにブレードのせいで立ち上がりにくい状態なのだから、なおさらだ。  
それに俺が喋ると絵理の尻に直接俺の熱い息が浴びせられているんだから、絵理も俺の視界に丸見えになっているのではないかと疑っている様子だ。  
狙いすぎ感のある雰囲気さえ漂うポーズで転倒している俺らをチラ見してる連中には絵理がお尻を突き出したように俺の上に馬乗りになってても  
その部分に気付いている様子はないが、それでも絵理の尻の形の良さと長い美脚に目を奪われている。  
「おい、根元暴れるなよ。お前が暴れると絵理ちゃん立てないだろ?」  
「なんか根元君……めちゃくちゃうれしそうにしてない?」  
「絵理ちゃん、ほら……私の手に捕まって、根元君の事は置いといて」  
「そうそう、尻に敷かれて喜んでる根元は置いといて、俺らと滑ろうぜ」  
「あ、だ、大丈夫……すぐ立てるから……って……根元くん……すぐ退くから暴れないで……」  
いや…そうは言うけど……この状況、気持ち良いかもしれないんだけど……何もしないと言うのはかなり恥ずかしくてきついんだけど。  
「絵理さん…もう少し……前の方に行ってもらえる?その方がお互い立ちやすいと思うんだけど。」  
「え?う、うんッ……」  
そろそろと腰を持ち上げて俺の胸板からお腹の方に、腰の方にお尻をずらそうとする絵理。  
「ぐはッ!?……え、絵理さん……そのまま腰動かすとっ……!」  
俺のシャツのボタンに絵理のアソコが擦りつけられて、敏感な身体をさらに自ら刺激してしまう絵理。  
「はぁあッ……んっ……やだッ………」  
「・・・・・・・・・・・・・」  
絵理の背中がピンっと仰け反る。それと同時に俺の視界に納まる二つの美しい器官もピクピク動いている。  
……うまくジーンズ生地の特徴を再現しているため、絵理の割れ目も後ろの穴も上手く塗りつぶされてるけど…。  
絵理のアソコってあんまりハミ出てないのか…自分で弄って慰めたりする事、殆ど無いのかな……。  
でも今朝見たいに大きく開脚すると、割れ目が強引に開いて、内側の可憐なピンク色が剥き出しになるんだ…。  
ああ、俺完全に見てしまってるよ…絵理に話しかけるのも忘れてそこに吸い込まれるように釘づけになる。  
絵理の身体の、特に二つの美しい部分のヒクつきに合わせて俺の股間と鼻の奥の血管もその様子にピクピクと反応する。  
これは生殺しという拷問なのか?それともご褒美なのか?  
「んっ…?!…やッ……あ、根元くんッ……少しいい?昨日貰った鎖、根元くんのベルトに引っ掛かって…ごめん…ちょっと待ってて…!」  
「う?!絵理さん、ちょっと……そんなにズボン引っ張られると……」  
「ぁ……?やだ……そんな…」  
 
こう股間の大事な部分が圧迫されて……しかも圧迫の原因を作っているのが絵理本人だなんて……いけないとは思うが何か気持ちいい。  
いや、本来はやや体型に問題ありかもしれない俺はもっと股間部分に余裕のあるズボンを履いてるんだけど、今下半身の問題で  
丁度その部分が窮屈感が上昇中してて……ああ、何でおれの下半身はこう言う事に対してもっと落ち着いて構えていられないんだろうか?  
俺自身が立ち上がるよりも先に、大事な部分が立ち上がってしまうなんてみっともないことこの上ない。  
ってかもう充分に立ち上がってる…立ち上がってる状態でぐいぐいと刺激なんてされると残るは発射のみ。  
でも…絵理のしまってるけどボリュームのある尻肉や太ももに胸板や腹部を圧迫されるのって、冗談抜きに気持ちいい。何故か重いとは感じない。  
それに尻に敷かれた状態で絵理の肩口から背中…お尻や太もも裏のラインを鑑賞するなんて…しかも髪型を変えてるから今は完全に背中丸出しだ。  
絵理の方もきっと顔を恥じらいで赤くしながら、なんとか鎖とベルトが絡んでるのを外そうとしているに違いない。  
「さっきから思ってるんだけど……これって……」  
「……絵理ちゃんが根元のズボン下ろそうとしてるように錯覚しちゃうよな……」  
「え?ぁ………や、やだ………そんな……」  
「ちょっと……先輩達、そんな言い方駄目ですよ……」  
おのれ……部員共…この事態を楽しんで観察しやがって…いや、実際俺もそれなりに楽しいのかもしれないけどさ。  
と言いたいんだけど…皆が見てると、ズボンが膨らんでるのが発覚したりとか俺が血走った眼で絵理の後姿を観察してるとかばれないとも限らない。  
ベルトと鎖を離すのに妙に手間取ってる絵理。皆が見ているせいで相当焦っている様子だ。  
部員連中も手伝おうかと声をかけてるが、脚を広げぎみに俺に跨ってる状態ではそれは恥ずかしい。  
俺のベルトをはずせば簡単に立ち上がれると思うんだが、絵理の手で皆の前でそれをするのは問題がある。  
回すのか?この位置から絵理の鎖のアクセサリーと俺のベルトが絡んでる部分に手を回さないといけないのか?  
そんな事をしたら絵理に俺のお腹の上に座らせたまま後ろから抱きつかないといけないでは無いか…………………  
よし、そんな事は今すぐ実行しよう!こんな綺麗な背中から尻へのラインと白い肌、この快感を味あわされて我慢など出来るか!  
「絵理さん、ちょっと…俺が外すから…て、あれ!?」  
絵理を腹部に乗せたまま上半身を持ち上げてる最中に絵理の尻が俺から離れて行く。  
え、何、外れたの?でも、勢いをつけて起き上がった俺の上半身が…突き出した手そのまま絵理のくびれた腰に向う。  
「わ、絵理さんっ!?外れた?って、ああッ?!!」  
「あ……外れた……やだ…私ったら……ッ?……きゃ!?……ひゃあぁんっ…?!」  
「がっ!?」  
絵理が思わず放った腰のひねりを加えた強烈な肘鉄が俺の鳩尾に見事にクリーンヒットする。  
「ね、根元くっ……ぁ…どこ触って…ゃんっ……」  
そして俺の手に撫でられた尻が脱力して俺の股間の真上にドスンっと落下する。  
「んぐふッ?!んぶっ!!」  
「んひゃぁっ…?」  
でもこの状況で鳩尾に攻撃すると俺の身体は絵理を腰に乗せたまま前屈みになり、顔を絵理の丸出しの背中に擦りつけてしまう。  
今日の絵理の生肌部分が多かったのは本当にラッキーだった……と言うべきか。別に触っていいわけでは無いんだけど  
 
「あ……根元くん……やだ……」  
「わ、悪い…絵理さん……俺が外そうと思ったんだけど……」  
「うん、いきなりだからびっくりしたんだけど……痛かったでしょ……?ごめんなさい……私が鎖をはずせば良かったのよね…」  
「あ……そうか……つい……俺ベルト取ろうと思ったんだけどさ、タイミング悪……」  
絵理は腰の鎖をはずそうと、俺はベルトを外そうとしたのがかぶってしまったのだ。  
「でも……私……立ちたいんだけど……根元くん……」  
困った様に愛らしく顔を赤らめて目を伏せる絵理。思わず抱きしめる手に力がこもる。……あ…!絵理を抱きしめたままだった。  
と言うか、絵理の顔の位置、近すぎるよ…お互いの息が顔に届く範囲で。  
「あ、ああ…つい、ごめん…俺何やってるんだ…」  
今は俺が絵理が立ち上がるのを妨害してるのはまさしく俺が抱きしめてるからだった。  
しかも俺の手の位置……今日は手工を付けない普通の半袖の右腕を絵理の胴体に回して…その肘から手首はちょうど絵理の胸の真下辺りに  
回されているので、ちょうどその部分に絵理の柔らかい二つのモノがタプンっと乗っかっているんだけど…  
凄い……凄い質感と重量感だよ、絵理……こんな明るい場所で皆の見ている前で、絵理の大事な部分の生肌が……生乳がっ!!  
そしてもう一本の左腕は絵理のくびれた腰を後ろから左に回る様にして…ちょうど掌は絵理のカットジーンズの真上にピットリと…。  
絵理の体温と肌の感触をそのまま地肌に…いや、俺の腕に触られている絵理の方も乳房や腰でそれを感じ取っている。  
どうしよう……凄くうれしいハプニングではあるんだけど…今の段階で絵理の塗装部分に地肌で触れてしまった…!  
気付いてないフリをしないと…でもこのまま右手をちょっと捻れば俺の掌に直接絵理の胸が…左手も少しずらせばそのまま絵理の股間に…。  
絵理の心臓が凄くドキドキしているのがわかる。そして俺の心臓も。全裸な上に敏感な絵理がそれに気付いて無いはずはない。  
もし周囲の目が無ければこの体勢で絵理を押さえ込んで顔や肩口にキスをお見舞いしたくなりそうなほど興奮する。  
俺を簡単に振りほどく事が出来る絵理だけど、それをしようとはしない。  
それほどの身体能力を持ってる絵理が恥ずかしそうに俺の腕に抱きしめられている。  
それでいて時折困った様に身じろぎする絵理の身体の内側から伝わってくる美しくて力強い躍動感。  
自分より力の弱い普通の女の子に抱きついたとしてもここまでの興奮なんて得られないんじゃないだろうか。  
そう、愛しさと性的興奮…そのせいで絵理のお尻の真下で俺の息子の硬度が最大硬度に達し始める。  
「ぁ………」  
その息子がズボン越しに絵理の柔らかいお尻の肉を変形させると、絵理が困って身じろぎする。  
困ったな……昨日のツイスターダンスの時も苦労したけど、今日は簡単に収まりそうもない。  
「ちょっと根元君……!絵理ちゃん……!皆注目してるよ……!」  
「本当に根元、場所わきまえろよ……いちいち見せつけやがって……」  
「この場に葛城いなくて良かったよな…絶対絵理ちゃんにこのままダイブとかかましそうだし」  
俺と絵理のお約束とも言えるハプニングとやり取りが周りには相当イチャついてる様に見えるらしい。  
「取りあえず…身体の向き変えた方が起きやすいと思うよ…」  
「……うん……そうする……ごめん……」  
俺が絵理の身体から手を離すと、絵理が身体の向きを変えて俺と向き合う体勢になると俺の肩に手を置く。  
一瞬俺の方に身体を預けるような仕草をすると、絵理はローラーブレードをつけたままあっさりと立ち上がった。  
絵理が立ち上がるのに合わせて俺は脚の角度を変えて何とかうまくズボンに出来た巨大テントを隠す。  
絵理もそのテントの事を知ってるためか、あえて俺を起こして恥をかかせるような真似はして来ない。  
立ち上がった絵理は再びブレードを滑らせようとするが、女子部員達に囲まれて今の事を早速からかわれている。  
 
「やだー、絵理ちゃん顔真っ赤〜!」  
「ね、根元君ってやっぱりムッツリ肉食系よね〜」  
そのからかいに真っ赤になってポツポツ返事をしようとする絵理だが、女子部員連中だけでなく周りの観客にまで  
同じような好奇の視線を向けられて縮こまってしまっている。  
「根元、お前上手い事やりすぎだろ?」  
「っちゅうか、ありゃ只のヤリすぎ」  
男子部員の連中が肘で小突いたりしながら羨ましがる。  
いや、その男子部員連中だけじゃない。絵理を連れ回してる上に何かと美味しい目にあう俺に対して、ギャラリー内の男連中が  
何故こんなダサ坊が…と言いたげな嫉妬混じりの視線を向けている。いや、まいっちゃうよね。  
それはそれとして…俺の方は取りあえず少し休むか。そうして無いと息子の張り切りぶりが納まらない。  
根元「絵理さん、ごめん……多分傷とかはついて無いから普通に着けれると思うけど…」  
俺のベルトに引っ掛かっていた鎖のアクセサリーを外して手渡しながら絵理に謝った。  
このコーナーの中にある石のベンチに腰かけている。  
「……根元くん……滑らないの……?」  
そうすると絵理もなんとその同じ標識の上に俺と肩をくっつける様に座って来た。  
「ッ…!絵理さん、大丈夫だった?……その恰好だと、膝とか肘とか傷つかない?」  
「うん…平気。私は根元くんの上だったから……その…根元くんこそ………その……重くなかった?」  
「いや、むしろ気持ちよか……」  
「むしろ?」  
「あ、ああ。そうじゃなくて……全然重くなんて無かったよ…」  
「そう………ふぅっ…………」  
絵理さん……俺の真隣でそんなに色っぽいため息ついて髪を撫で無くても……  
絵理の胸が腕に生on生で乗っかってた感触が…掌で絵理の塗装部分に触ってしまった感触がハッキリ残っている。  
これでは今夜も眠れないどころか…絵理の顔を見る度に膨れ上がるドキドキ感が一層激しくなってしまうでは無いか!  
「もう!…キミのせいで…これじゃ私までドジみたい……」  
「昨日からごめん……」  
「一昨日からだと思うな……」  
「……だよね、やっぱり……」  
それに絵理の方も…ハプニングが重なる度に、だんだん無防備になってるような気がする。  
まあ、等々お互いの地肌同士で絵理の塗装部分に当たってしまったからな……絵理も最早気が気でない状態なのか。  
思わず目を奪われるように頬が赤くなっていて…目が潤んでいる。元々セクシーな絵理だけど、それにさらに艶がかかっている。  
……やっぱり絵理も立て続けのハプニングで身体を触られたり恥ずかしい姿を見られたりする事に興奮しているんだろうか。  
くっつけてる肩から、絵理の心臓の鼓動が伝わって来ている。さっき絵理を抱きかかえた時も心臓の鼓動は感じたけど、  
色っぽい女の子って、心臓の鼓動まで色気を孕んでいるんじゃないかと思ってしまう。  
露出度が高い塗装をしているからだけじゃない。丸出しの肩やお臍も肌が汗ばんでるのも間違い無くいつもより色っぽい。  
絵理……今は何を考えてるんだ?そして俺が今考えてる事……伝わってしまってるのかな。  
だって敏感な身体を持つ絵理が俺とくっついてる状態で、俺の心臓の鼓動とか呼吸を感じ取ってないわけが無い。  
多分俺が絵理の顔を、全身を見ているのを絵理の方は気付いている。ローラーブレードを楽しむ連中を見てるけど、きっとこちらに意識が向いてる。  
何を話せばいいんだろう。今日のこの後の予定……明日も誘ってみると言う事…そう言う事じゃない。  
色々話したいけど、今は何故かそんな気分じゃない。絵理の事をもっと知るためにも喋りたいのに。  
絵理の方も元々多く喋るタイプじゃないから、俺が喋り出さないとただ時間が過ぎて行くばかり。  
俺と絵理が話し込んでると思ったのか、部員連中も自分達なりにローラーブレードを楽しんでる。  
このまま…他の美術部員連中に見られるの覚悟で、絵理が驚くのも覚悟で、絵理の肩か腰…思い切り抱きよせてみようかな…。  
いっそ勢いに任せてキスでも……!キスなんてした事無いけど、どうせ始めては絵理にささげるんだし!  
 
「あ、オッパイのお姉ちゃ〜〜ん!」  
「わッ?!」  
絵理の肩に手を回そうとしていた俺はその声に仕切りの柵の上から落ちそうになるほど驚く。  
「っ?!!……あ………」  
「絵理さん、あの子だ……」  
とんでもない呼び声に振り向くと、昨日ケーキを作ってる時に出会った親子連れ、つまり今朝助けた親子連れがこちらを見て手を振っていた。  
しかし『オッパイのお姉ちゃん』って……そりゃ絵理のオッパイは素晴らしいから仕方が無いけど、でも人前で無邪気にそんな呼び方は…!  
「おいおい、オッパイのお姉ちゃんって…いったい誰だよ……」  
「あんな呼び方は無いわよね……」  
「ほら、あのエロい恰好の子じゃねえの?」  
皆からも『オッパイのお姉ちゃん』が自身の事だと認識されて絵理が顔を赤くする。  
母親の方は娘のとんでもない呼び声に慌てて黙らせようとしているが、第一思春期すら迎えて無さそうな子供にそれを理解させるのは難しい。  
今朝、絵理を「水着のお姉ちゃん」と呼んでる時も慌ててとめていたよな、このお母さん。  
と、その時俺の服の裾をクイっと引っ張りながら絵理が小さな声で俺に尋ねて来る。  
「……根元くん……なんで…さっきので私の事ってわかった様な顔、してたの……?」  
「さっきのって?」  
「だからっ…あの子が私の事呼んだ時…」  
どうやらオッパイのお姉ちゃんと呼ばれた時点で俺がそれがすぐに絵理の事だとわかったのがばれたらしい。  
「あ……いや、それはその……不可抗力と言うか視覚効果と言うか……ゴメンッ…悪気は無かったんだ…」  
「っ……もうっ…キミは本当にムッツリなんだから………」  
顔を赤くして胸を手で庇いながらプイと目を逸らす。  
「お姉ちゃん、オッパイのお姉ちゃん、コレッ!」  
準ちゃんが何かが大量に入ったビニール袋を持ってトコトコとこちらに向って歩いて来る。あれは林檎が沢山入ってるのか?  
そうなってくると、あの親子は無農薬野菜販売イベントに行って来たんだな。俺も行きたかったんだよな、それ。  
「ちょっと、準……そんなに走ると……破れるわよ」  
「あ、あああ!リンゴ、こぼれちゃった!」  
準ちゃんの持っていたビニール袋のお尻が裂けると、そこから一気に林檎がこぼれて転がって行く。  
ローラーブレードを脱ぎ捨てて、靴に履き替えると慌ててその場に向かう俺と絵理。  
「準、ダメでしょ…あんなに走ったら袋破れるって言ったのに…あ、どうも、すいません、また……」  
母親の方も新しい袋を取り出しながら、呆然とする娘に駆け寄ってくるが、俺と絵理が林檎拾いを手伝い始めると頭を下げる。  
「すごい量ですね……なんか林檎のお菓子でも作るんですか?」  
「あ、いえ…準が、お姉ちゃんに林檎あげようよって言って…私も何か御礼はすべきと思ってたから…」  
「あう……オッパイのお姉ちゃん…お怪我、もう大丈夫…」  
「え?……うん、大丈夫よ……ありがとう……準ちゃん、優しいんだ……」    
結構広い範囲に散らばってしまった林檎を次々に胸に抱える様にして拾っている絵理。  
林檎にはそれぞれ緩衝用のネットが付いていて、極端に傷がついてしまった様な林檎はあまり無い様子だ。  
「あ、絵理さん……俺が袋に入れるから……」  
「うん」  
絵理の抱えた林檎を俺が受け取り準ちゃんの母の開けた袋の中に入れる。準ちゃんも拾ってきた林檎を袋の中へ。  
7、8個のリンゴを袋の中に入れて次のリンゴを背後に立つ絵理の腕から抜き取ろうとした時。  
「きゃっ………?」  
「ん?あれ?」  
 
はて……少し傷がついただけで、林檎がこんなに柔らかくなるはずが…しかもやたらとサイズが大きい気がするけど…。  
リンゴのサイズでは無く、そうマスクメロン並みの…いや、それよりも大きいか?  
しかも弾力なんてある筈は……しかもあまり冷たくない…なんだよ、この思わずもっと揉んでみたくなる感触は。こう、ギュムっと。  
「あ……やッ……やめ…」  
「お兄ちゃん……オッパイのお姉ちゃんのオッパイにぎにぎ……」  
「あらあら……」  
俺の正面にいる親子が俺が後ろに伸ばしている手の方向を見ながら目を丸くしている。オッパイにぎにぎってなんですか?  
「…ぁああッ!!?」  
「…………ッ……」  
振り返る俺の視界に、戸惑いと恥じらいとで真っ赤になった絵理の顔、そしてその少し下では…。うわお?!  
俺の掌に今度は絵理の右側の乳房がプルンと見事に握られていて…俺、揉んじゃったよね……生で揉んじゃったんだよね?!  
道理でリンゴにしては柔らかすぎるし温かいし、しかも一回りも二回りも大きかったわけだ…。  
そして俺の指の間に感じる柔らかい中で唯一硬い部分……これ、絵理の乳首……生乳首……!  
バカバカ、俺の大間抜け!俺、「柔らかい感触」を認識した後しっかり揉みしだいてしまったぞ?!  
今までいろいろドジやってもその部分を掌で触ったりはしない様に気をつけてたのに…。  
昨日、顔をうずめる結果にはなってしまったけど、あれは真っ暗な中での事で…いや、昨日の事はどうでもいい!  
「あ…………絵理さ……ん…その…わざとじゃなくて…よそ見してたから……ゴメン!!」  
「だっ……だったら、早く手、どかして…もうっ……!」  
絵理の胸に押し当てていた時の手の形をそのままに、そこから手を離す…すごい喪失感とともに…  
何て言う素晴らしい柔らかさと弾力…温かさと手触りと…この手の平よりも明らかに大きくて……  
今までも触って気持ち良く感じた物はたくさんあるが、今の感触は問題なく最高の感触だった。  
「………その、手の平見てるの……やめて……」  
「あ、ああ………ごめん……本当に……」  
絵理の胸を握っていた自分の掌を思わずまじまじと見つめているのを絵理が見咎める。  
絵理の方を見て謝るべきなんだけど…絵理の顔を正視する事が出来ない。視線が首より下に絶対に行ってしまう。  
一応、服の上から触ってしまった事にはしないといけないけど…実際に生で触ってしまった後だと絵理を誤魔化しきれるのか?  
「お兄ちゃん、お兄ちゃん……あれも、取って……」  
「い、いや……あれは取れるものじゃ……」  
準ちゃんが絵理の上半身をさしながらおねだりをしてくるが、準ちゃん…オッパイは取っていいものじゃないんだよ?  
「ちがうの、お姉ちゃんの髪のアソコ、虫さんちょうだい……」  
絵理の三つ編み状の房になった髪の毛の上を8センチほどの芋虫がノソノソと移動している。  
「え?ちょ、絵理さん、ちょ、ちょっと待って……そこ…でっかい芋虫が……」  
「っ?!あッ…ぁっ…!いやあッ!?」  
絵理の口から今まで何度か聞いたことのある悲鳴とは明らかに異なる怯えた悲鳴が漏れる。  
絵理が芋虫を振り落そうと身体を揺すると、芋虫が髪の毛から絵理の乳房の方に移動してしまった。  
「ひっ……ぁ…ゃだ……ぁっ…!」  
蜘蛛が大の苦手だってのは前にわかったけど…虫系全般が完全に苦手みたいだ。  
絵理がパニックになって身体を振ると、絵理の柔らかい乳房がさらに激しく揺れ乱れる。  
「準っ?あんた、さっきの芋虫どこに入れてたのよ?」  
「ううん、棒の先に乗せてたんだけど、いなくなっちゃったの…でも、いたの…」  
「や、やだッ…やだッ…と、取れないっ…ひっ…ぁっ…ぃゃ…ぁっ…」  
芋虫は絵理の乳房の肌の上にしっかり脚をついている。彼らは脚の先が吸盤みたいになってるから、簡単には落っこちない。  
それどころか、絵理が身悶えしているせいで芋虫も驚いて、絵理の乳房に逆にますますしっかりとしがみつく。  
「っ……ね、根元くぅんっ……」  
「お、落ち着いて、絵理さん、取るから……あんまり暴れられると!」  
 
俺がその芋虫を絵理の胸に触れないように指でつついて落そうとするが、以外と足の吸盤の力あるんだよなコイツら…。  
しかもあまり指先に力を込めると、柔らかい芋虫の身体が絵理のオッパイの上でブジュって言う事になりそうな気がする。  
お腹側の方に指を回せば簡単にはがせると思うんだけど……絵理の生乳の真上だぜ……?はたして触っていいものか…。  
さっきも思いっきり触ってしまったんだけどさっきはあくまでハプニング。今回はわざと触ると言う事になる。  
…でも絵理の本気で怖がってる様子を見ると、躊躇ってる余裕は無さそうだ。  
「あの…私、取りますけど……」  
「あ、俺が取ります!」  
芋虫の腹側の真ん中あたりに指を引っかける。無論絵理の乳房にも指先が少しめり込んで。  
「きゃぁっ…ぁっ……んっ……ふぅっ………!」  
俺の指が掠った瞬間、絵理が驚いて硬直する。大丈夫、俺は気付いて無い、気付いてない振りを通すんだ…。  
あ……芋虫の野郎、最後の抵抗か、一番後ろの方の吸盤状の脚で絵理の小さな乳首にしがみついて…なんて美味しい奴なんだ…。  
芋虫の抵抗で絵理の乳房が乳首を引っ張られる形で持ち上げられる。  
「こ、こら………早く離れろ………」  
「ぅうッ………ひ………ッ……んっ……!」  
何とか俺の指に移動させた芋虫を近くの茂みに放り投げようとすると、準ちゃんがその芋虫を欲しがる。  
「あ〜、お兄ちゃん……芋虫さん、ちょうだい……チョウチョになるまで私、飼う。」  
「準ってばっ……!ダメよ、その芋虫多分ガの幼虫よ……」  
「え〜、そうなの?じゃあ、いらない〜」  
「絵理さん……もう大丈夫だから……怖かった……?」  
「う、うんッ………あ、ありがと………」  
「わ……?」  
俺のシャツの肩をいきなりギュッと握りしめてなかなか離そうとしない。  
「お姉ちゃん、ごめんね……虫さん嫌いだったの?」  
「ぅ、うん……へ、へ…平気ッ…だから…ッ……」  
「もう、準ったら……朝からすいません…あの、林檎、地面に落ちちゃったですけど、朝のお礼に受け取ってください…」  
「………き、きに……気にしな…しないで……ください………」  
俺にしがみついたまま震えている絵理。身体中に鳥肌が立っている。まともに喋れない状態だ。  
考えてみれば危険の無い虫とは言っても絵理の場合地肌に、生乳の上に止まられたのだからその感触が抜けないんだろうな。  
それにしても自分から俺にしがみついてるなんて……絵理は今自分のやっている事に自覚が無い状態なんだろうなぁ…。  
或いは取り乱した姿をここまで見られてしまった事による羞恥から来る転移行動って奴か?  
でも……思わず髪の毛や背中を優しく擦ってやりたくなるこの気分、なかなか悪くは無い。どれ、頭を撫でるくらいは…  
ぽふッ……  
「絵理さん、もう芋虫いないから、落ち着いて……」  
「あ……………ん…んん………」  
髪と背中を擦ってやると絵理がフルフルと身体を震わせ始める。俺の服の肩の部分を掴む手にも逆に力が入る。  
安心させるために頭と背中さすってやったつもりなんだけど…これにも反応しちゃってる…。  
ああ、絵理…そんなのも可愛いよ…たまらん破壊力だ。  
絵理の身体……今朝から激しく刺激されっぱなしの上に皆にもほぼ監視されっぱなしの状態だから、もう限界なのか。  
それに嫌いな虫とかがいきなり出て来ると、身体がしばらくむず痒くなるような感触…それも手伝っている様子だ。  
「二人とも、何があったの?」  
「あ、根元!お前、絵理ちゃん泣かしたのかよ!」  
「ちょっと、大丈夫……絵理ちゃん、何があったの?」  
 
ローラーブレード用の敷地内で滑っていた部員連中も、俺と絵理がいつの間にか場所を離れていたのに気付いて駆け寄って来る。  
結構嫌なタイミングだな…絵理の方はまだ喋れる状態じゃないし、それ以前に何があったか知られたくないのは絵理自身だ。  
「おいおい、何言ってるんだよ…俺がそんな事するわけないだろ」  
「ね、絵理ちゃん、根元君にまたセクハラされたの?」  
「っ……ちがっ……じゃなくてっ………」  
顔を覗きこまれそうになった絵理が俺の服を掴んで無い方の手で顔を隠しながら消え入りそうな声を出す。  
まだ上手く喋れないほどのパニック状態であるが故にその表情を大勢の人間に見られたくないのだろう。  
多分、部員連中は絵理が虫が苦手で本気でパニックを起こしたのを知ったら面白がるだろうから。  
……でも、適切な言い訳が難しい状況だよな…ここは一つ、ショック療法で絵理を驚かせて元に戻して見るか?  
何より、人目があるとかそんな事を気にしてはいられないほど、俺の理性が追い詰められていた。  
この可愛い絵理を、本当は全裸の絵理を、愛おしい絵理を今はただ……!…俺の物なんだ、絶対!  
「……絵理さん……!!」  
「っ?!あ……!」  
俺は皆の見ている前で、自分よりも背も高くて年上の絵理を、正面から抱きしめるのだった。  
俺の胸板に柔らかく押し付けられる二つの乳房。舌を出せば届きそうな位置にある絵理のうなじ。  
柔らかいながらも、腰や背中にまわした手から感じる絵理の躍動感。  
皆の前での俺の暴挙に絵理も驚いて対応出来ない。それ以上に何が起こったかすぐには理解できていないのか。  
そして絵理よりも早く反応を見せる周りのギャラリー達。  
「わ、うわ……マジっすか、根元先輩!」  
「え…お兄ちゃん、お姉ちゃんどうかしたの?」  
「あらあら……じゅ、準……そんなに見ちゃダメ!」  
「根元君、ついに行っちゃった〜!」  
「何だよ、根元、ついに告白か?」  
「ひゅ〜ひゅ〜!」  
「どうするの?絵理ちゃん?」  
絵理がうろたえる。俺がしっかりと絵理を抱きしめてる事、それを見られている事に頭が回ったようだ。  
「ぁ……な、何……何で……ぇ……待っ………ぁ……」  
絵理……その手の位置をどこに置けばいいのか困ってるのも凄く可愛いよ……。  
絵理……今、全裸なのを俺は知ってるんだよ…こんなに綺麗で可愛いのに…変態とは対極のイメージなのに…。  
むしろ、全裸である事は絵理であるからこそ許されてるんだ…じかに感じられる体温も肌の感触も何もかもが美しい。  
こんな照れくさいノロケ感情が自分の中にあるのが驚きだが、絵理をこうしてアグレッシブに抱きしめてる幸福感の前には些細な事。  
「やッ………は、離れてッ……!」  
「わっ?!ごめん、絵理さん…」  
事態を理解した絵理が激しく身じろぎをしたので俺もようやく絵理を離す。  
「……あ………。…ッ………!」  
好奇の目で自分の動向を窺う周囲を確認し、そして最後に俺の顔を見て顔を赤くし、踵を返して絵理が駆け出す  
 
「え?あ、絵理さん!?ま、待って?あ、どこ行くの?」  
「絵理ちゃん、絵理ちゃんッ!根元君、絵理ちゃん逃げちゃったわよ!」  
「あぅ〜…オッパイのお姉ちゃん、リンゴ要らないの……?」  
「は、はははッ…根元、嫌われてやんの」  
「ちょっと…根元さん、絵理さん追いかけないんですか?」  
「ああ、って……ごめん、絵理さん、待ってよ!」  
俺から逃げたいのか、それ以上に周囲の視線に耐えられないのか。  
「え、絵理さんッ!待ってったらっ!」  
白い肌が異様に目立つ絵理。足早に歩いているその後ろ姿に声をかけると、明らかにビクンとしてその歩行速度を速める。  
「………ッ!」  
決して俺の方を振り向こうとせずに。  
ヤバい…本当に皆の前で抱きしめるなんてのは行き過ぎた暴挙だったのか…?  
いや、それだったらきちんと絵理を捕まえて謝らないと……いや、全ての事を打ち明けないといけないのかも…。  
否、打ち明けるべきだ…それで絵理に完全に嫌われる事になったとしても…俺は絵理に気持ちを伝えないと…。  
余ほど混乱しているのか、もう人目が耐えられないのかはわからないが、絵理の進んでいる場所は今朝方うろついていた農学部のゾーンだ。  
学祭の最中とは言っても真面目な出し物が多い研究の展示のエリアは、人どおりが少なくなっている。  
ここは…いちおう農学方面の研究の展示を行っているが野菜販売系の展示と違って人がほとんどいない。  
人混みに逃げた方がかえって逃げやすいと思うのだが、人の少ない所を選んでしまう絵理の性格。  
その建物の中に駆け込んだ絵理はそのままドアを開け放している部屋の中に入って行く。  
「………絵理さん!」  
絵理を追ってその低温室に飛び込むと、絵理が一瞬俺の方を振り返るが結局背を向けて固まってしまう。  
どうやら俺たち以外に今この部屋に入ってる人間はいない。いやこの部屋のある建物にも今あまり人がいない状態だろう。  
「あ…………」  
「絵理さん………その…いきなりあんな事してごめん…!その、さ…つまり…俺、その…」  
「…………………」  
「き、昨日も言ったけど…俺、絵理さんといて凄く楽しいって……それ、昨日よりも強くなっちゃって…」  
「ッ……………!!」  
「え、絵理さん!その、気が早いかもしれないけど……俺…」  
「待って……それ以上……」  
俺に背中を向けたまま答える絵理。決してこちらを振り向こうとはしない。  
「だけど、俺、本当に…」  
「お願い……私も混乱してるの………まだ根元くんに出会って五回目だって言うのに……」  
「う、うん…………」  
「……………どうしたらいいか分からないの……こんな経験無いし……」  
絵理の言葉に、今の態度に軽薄さは感じられなかった。ただ純粋さ故に困惑し混乱している。それが明らかだった。  
「………………わからないから……困る…………」  
「……………ごめん……」  
「っ……別に謝らなくても…………でも…別に嫌じゃないけど……でも…私…………」  
「…………………」  
「でも……まだ五回目何だから…根元くんは私の事、もっと知って欲しい……」  
「…………うん……ごめん、絵理さん……その…つい浮かれすぎちゃって…絵理さんが色んな顔見せてくれたら、舞い上がっちゃって…」  
「ッ……違うの…今日いきなり言われてもダメってだけで…それに…皆が見てるのに……」  
 
そうだよな…あの雨の日に絵理を傘に誘ってから、絵理に会うのはこれで五回目なんだ。  
絵理と一緒にいる時間が飲み会の時からの三日間、やたらと濃く感じられて、絵理の魅力を次々に発見して、絵理の優しさにまるで  
昔から包まれている様な気分に浸ってしまって…ああ、恋愛経験がこれまで皆無だったせいで焦りすぎてるよ、俺ってば…。  
「……本当にごめん……俺、こんな気持ち生まれて初めてだから、つい焦ってた…」  
そう、絵理が全裸であっても構わない…その俺だけが抱いてると思ってる気持が俺以外の男子にも芽生えてしまうんじゃないかと。  
俺よりもレベルの高い男がそんな感情を絵理に抱いてそれを絵理に告白したら…そう焦ってたんだ。  
出会って五回目だと言うのに一回ごとに信じられないレベルで魅力を増して行く絵理に嬉しさを感じるとともに、焦りも感じていたんだ。  
早く俺の物にしたいと、他の誰にも渡したくないと周囲にアピールする事ばかり考えていたんだ。  
絵理をゲットする事が大切じゃない。絵理の気持ちも尊重して正式に恋人になりたい…それが大切なんだ。  
「ごめ…」  
再度謝ろうとした俺に、やっと絵理が振り返る。その顔はまだかなり赤いままだ。  
「…もう…いいの…!さっきから根元くん謝ってばかり……あんまり蒸し返さないで……恥ずかしかったのに…」  
「………うん…あ、でも…」  
「え?」  
「そのさ…胸、触っちゃってごめん」  
「っ……!いいの……わざとじゃないでしょ……?あと………虫、取ってくれて……ありがと……」  
「うん…。でもちょっと絵理さんあの時可愛かったよ?」  
「もうっ…!全部忘れて………ん………」  
絵理がそう言いながら腕を擦り始めた。お互いに少し冷静さが戻ってくると、今のこの部屋の寒さが強烈に感じる。  
只の冷たい部屋では無い。液体窒素のタンクの保管にすら使われているレベルの寒さの部屋だ。  
「取りあえず、この部屋、出ようか……」  
「うん……」  
準ちゃんがくれたリンゴの事も心配だしね。  
「あ…?!どうしよ…鍵、かかっちゃってる……」  
「え………?」  
「あちゃ…俺ドアわざわざ閉めちゃったんだ…ここ結構厄介なドアなんだ…」  
そうか…この部屋、本来は低温の中で行う実験を行うための部屋になっていて、ドアを閉めると自動ロックされるんだ。  
しかも、そのドアを開けるためのカードキーの読み取り装置が部屋の内外両方についている。  
つまり普段はそのカードキーを持つ人間ばかりが白衣と上着を着てこの部屋を使っているのだ。  
今日は展示の日だから、ドアを開け放していてもそれで温度が上昇するのをいつもよりも激しい冷房で補ってるんだ。  
俺は農学部の学生では無いが、一年時の共通選択科目の際にこの部屋に入った事があったんだ。  
「でも、根元くん……そこの内線電話使ってみれば……?」  
「あ、そうか………怒られるかもしれないけど……」  
絵理の言う様に読み取り装置のすぐ横には無い専用の電話が取り付けられている。  
農学部の人間でない俺が外部の人間である絵理を連れた状態で使ってしまうのは問題があるかもしれないが仕方がない。  
「え〜と、番号は……って…おい!番号消えちゃってるよ!新しい番号のシール貼っとけよ…!」  
「あ……本当………」  
この電話から各部署へつなぐ番号を書いてある筈のシールの文字が何が書いてあったか解らないほど薄くなってしまっている。  
「……根元くん……携帯は?誰か知ってる人、呼んでみたら……」  
「ごめん…俺携帯、今準備室に置きっぱなし……」  
「もう……しょうがないわね……じゃあ、私の携帯貸してあげるから……」  
 
「あ、サンキュ、絵理さん……え〜と……あ……え〜と………。………」  
全裸でバッグも特に持って無い絵理がどこから携帯を取り出したのかと言う事は置いといて。  
あれ…電話番号が全然浮かんで来ない………そう言えば俺携帯に結構いろいろ電話番号登録してたけど…本田とか葛城とか…  
部長とか男子部員連中とか……登録はしてあるけど全然番号を覚えてないよ、俺!  
「………ひょっとして、根元くん……普段登録に頼ってばっかで番号全然覚えてないの?」  
「ごめん……あ、でも絵理さん……誰かこの大学の…葛城あたり登録して無い?」  
「もうキミって本当に…あ、でもそう言えば葛城さんから電話番号聞いてたけど…えっと……」  
登録された番号の中から葛城の携帯につなげる絵理。どうやらこの部屋でも携帯は普通に使えるらしい。  
「あ…もしもし…葛城さん…私…香春……え?やだ…ッ…そうじゃなくて…ごめんね…ふふッ…」  
俺が見ている前で電話しているからか、絵理の表情や動きがどことなくぎこちない。頬も赤くなっている。  
まあ、ある意味他人の前で電話しているのって人によっては羞恥プレイに感じそうだもんな。絵理はその典型なんだろう。  
「ちょっと今、閉じ込められちゃって…あ、そうじゃなくて……  
「うん…根元くんも一緒…え?うん…理由は後で詳しく話すわ……うん…ありがとう…ごめんね…」  
絵理の持ってる携帯からそのまま葛城が飛び出てきそうな勢いで葛城がまくし立てていたらしいがどうやら葛城が来てくれるらしい。  
「葛城さん来てくれるみたい…あと十五分位だって…」  
そうか…あと十五分…携帯をしまう絵理の方に目を向けるのだが。本当に見た目どおりに服を着ていても寒そうだけど。  
「……絵理さん……ひょっとして…いや、実際凄く寒いんじゃないの?」  
「……だ、大丈夫……そんな事……」  
「いや、でもそんな恰好だし…鳥肌凄いよ?」  
「……あと、少しなら我慢できる、から………」  
冷房のお世話になる事が少なそうな絵理だけど、まるで今は寒さで縮んでいる様に見える。  
剥き出しの肩や腕、背中、二本の美脚、どれもが寒さに必死で耐えようとしている。  
上にも二枚、舌にも二枚着衣の俺でもかなりの寒さを感じている。  
絵理が冬場はどのようにして過ごしているのかは全く知らないけど、それでも夏場の熱い空気になれた人間がいきなり  
冷房の利きすぎてる部屋で過ごすと涼しいどころか寒くて風邪をひく事がよくある。それが少しの時間でも。  
ハッキリ言って冬場の寒さよりも性質が悪い寒さだ。  
ましてや汗をかいてた状態では汗腺が開き気味だから余計に酷くなる。  
朝から何度も全身に色っぽく汗を浮かべていた絵理。現にこの部屋に飛び込む前も俺から逃げるために走って汗をかいたばかりだ。  
絵理はしきりに大丈夫と言ってはいるが、二の腕をしきりにさすったり肩を撫でたりしている。  
「やっぱり絵理さん無理してるよ。えっと……何だ、今ここ上着とか置いてないのかよ…」  
俺が一年の時にこの部屋には長時間この部屋にいるときのために厚手の上着が数着ぶら下がっていたのだが、今は何故か置いて無い。  
そうなると……俺も極端に寒さに強いわけじゃないけど…絵理が本当は全裸なのを知ってて…  
いや、もし知らなくても今日の裸同然の服の絵理が寒そうにしているのに、自分だけ二枚も着てるわけにはいかない。  
「よし!それじゃ、絵理さん、ちょっと待ってて…」  
「え?きゃッ?根元くん……」  
 
俺がいきなり絵理の前で上のシャツのボタンをプチプチと外し始めるのを見て絵理が驚いている。  
「ちょっと…?根元くん……いきなりそんな…葛城さんもう少しで来るだろうし…見られたら……」  
「いいから…ハイ、これ!少しはマシだろうし」  
「え?…………ぁ……ッ……」  
俺が脱いだ上のシャツを渡すと絵理が放心したような顔になる。  
「あ……う、うん……で、でもッ……根元くんも寒いでしょ……?」  
「いや…絵理さんがここに飛び込んじゃったきっかけ作った挙句、間違ってドア閉めちゃったんだし…黙って羽織って?」  
「う、うん……あ、ありがとう………」  
おずおずとシャツを受け取りながら裸の肩にそれを羽織る。  
「とにかく…羽織ってるばかりじゃなくて袖通して前も閉じたら?」  
「……うん………」  
前にも言ったと思うが二人で並んで座った時は俺の方が背が高く見える。つまり俺の座高は絵理よりもかなり上である。  
そんな俺の座高に合わせて買ったシャツの長さは絵理の胴体をスッポリと覆い…絵理の巨乳に胸の部分がかなり押し上げられてるけど。  
丁度絵理の履いてるショートパンツまでを隠す形になってしまっている。  
……これって…見ようによっては彼氏の部屋で朝を迎えた女の子が彼氏のシャツを裸の上に着込んでる光景に似てるんだけど…。  
「…?どうしたの……根元くん…?」  
「あ、いや…似合ってるよ、うん!」  
「…似合ってるも何も無いと思うけどな……」  
…いつか長そでシャツでも試してみるとしようか、絶対にその方が似合う。  
しかし、この寒さ…冷房の適正温度とかを通り越して、10℃以下を示している温度計。  
シャツの下から見える絵理の白い生足がまるで寒さでさらに白くなっているようにすら見える。  
「少しはマシにはなったけど…絵理さん、あと十五分耐えれる?」  
「……うん……根元くんがシャツ貸してくれたから、だいぶ楽……」  
この部屋の冷房装置は部屋の天井の中央に取り付けられていて、操作盤もそこに付いている。  
本来は脚立が置いてあると思うのだが、展示室になってる今は見栄えの問題から撤去されている。  
部屋が閉じてる今は、極端に強い冷房を効かせている必要は無いんだし…絵理を肩車すれば届きそうだけど…どうするか…。  
1・絵理の持ってる携帯のアプリで一緒に時間つぶし…が、絵理の携帯には根元の名前が下の名前で登録されてるのを発見し…  
2・まだ絵理が寒そうなので、強引に絵理を抱きしめて組み伏せて脚を撫でて温めてやる。  
3・天井の冷房装置には肩車なら手が届きそうなので、絵理を上にして肩車して冷房を弱める。  
4・思い切ってズボンも貸してみる(長さが全然足りてないのは置いといて)  
 
 

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