そうだな……社交ダンスはその気になればいつでも習えるし……ポールダンスやツイスターはいつチャンスがあるかわからない。  
しかし絵理があの衣装でポールダンスを踊ってくれるとしてもそんな現場を見てしまえば俺の表情も  
平常通りの顔を演じている自信がない。ニヤけた表情や食い入るような表情を踊ってる最中の絵理に見られた挙句  
目が会ってしまえば言い訳の使用が無い。  
第一社交ダンスって元々は男がエスコートしないといけなかったんだよな……。何かこれでは俺の方がエスコートされてるみたいだ。  
俺より背の高い絵理が男装してもいい感じに決まりそうだが、俺の女装は多分気持悪さでアウトだろうなぁ…。  
「香春さん、それじゃ……アソコの床に置いてある、アレ……やった事ある?」  
「え?あのシートみたいなの……?あれもダンスのゲームじゃないの?」  
俺が指で示した方向にはツイスターゲームのシートが置かれていたが、絵理はそれをダンスゲーのシートと勘違いしてたのか……。  
しかし絵理がツイスターを知らないと言うのはある意味チャンスかも……。  
「ああ、ちょっと違うよ。あれツイスターゲームって言って本当はパーティーグッズみたいなもんだけど……」  
俺はそのゲームの手順を絵理に説明する。  
「………あんまりダンスとは関係無いように思うんだけど………」  
「うん。俺も何でアレがダンス研にあるのかと思ったんだけど……小さいころ友達の所で遊んだの思い出してさ、ちょっと  
 懐かしくなってさ………香春さん、知らないならやってみない?柔軟な動き得意でしょ?」  
「え………でも誰かもう一人駄目なんじゃ……」  
「どうもそれは大丈夫みたいだよ。これ準備したの工学部の連中らしいけど……ほら、あのルーレット見てよ。  
 あれを動かしてみれば自動的に手足を置くポイント指定してくれるようになってるからさ。」  
小さいころ遊んだ分はやたらと悪ふざけし合うのが目的でいきなり届きそうも無いポイントを指定したりして遊んでたんだが  
さすがに工学部の奴はこういった事にこだわるのかしっかり気を配って作ってある。本家から訴えられそうなほどに。  
多分あの一番上についてるのがスコアボードか。どうやら時間経過と共にポーズが難しくなる様にまで設定されてるのか…。  
「ね、やってみようよ香春さん。今なら人数もいないし待ってる連中に遊んでるの見られなくても済むからさ。」  
「え……うん………」  
思ったよりもあっさり引き受けてくれたもんだな……。俺の説明だけでは男と女がツイスターをやるのが  
時としてちょっと卑猥に見えたりすると言う事は伝わっていないようだ。尤も俺、嘘は吐いてないし。  
ルーレットに電源を入れて見ると、音楽と共にルーレット盤が光り出す。  
「じゃ、まず香春さんからどうぞ……。ちょうどペアーで遊ぶようになってるから次に俺が動くから。あ、香春さんそこの赤、左足だtって。」  
「えっ?こ、こう?」  
「そうそう……あ、俺はここの緑色か……よっと………」  
割と音楽が大きいのか……ダンスゲー前でたむろしてた連中や、こっそり絵理の後を付けてた連中が現れる。  
 
「ん……何だ何だ……」  
「あ、さっきの子……何だよ、あの男…やっぱりアイツが彼氏かよ……」  
「しかもツイスターゲームって……マジかよ…羨まし……」  
クソ……こいつらさっきまでこの部屋が静かだったのに数人が近付いて来ると我も我もと接近して来る。  
「あ……根元くん……人が………どうしよう……」  
「気にしない方がいいよ、香春さん……ほら、次そこの青、右手だって……」  
「え………うん……っと………」  
何か絵理の今のセリフは露出モノのエロゲーのヒロインみたいだなと思いながらも、絵理にはゲームに集中して貰う。  
いや、しかし……こうして絵理と二人だけでこのシートに乗っかってしかも皆に注目されて……考えてみれば  
ここでかっこ悪い転び方とか出来ないよな……。俺が早い段階で転んだりすれば『絵理に釣り合わないイメージ』が  
より一層強くなりそうだ。まぁ、一応絵理と一緒にいる事にある種の優越感は感じてはいるんだけど。  
しかし、この部屋に入ってしばらくは静かだったのに、絵理が何かを始めたら、どこで聞いてやがったのか、  
一気にこの部屋の人数が増えて来る。ダンス研の連中も戻ってきたら何事かビックリする事だろう。  
そして流石は絵理と言うべきか。そのギャラリーの中には意外と女の数も多い。  
「ねぇ……根元くん……このツイスターって……何か罰ゲームでもあるの?…んっ……」  
「いや、無いと思うけど、普通。……と…アブねえ……」  
「でも……そこの所……1000点以下だと恐ろしいペナルティがって……」  
「え、嘘?マジ?って……本当じゃん!何だ、こんなゲーム……バっくれ……」  
そう思ったのだが、なんて嫌なギャラリーだ。こっそりゲームを放置して絵理を連れて逃げようかと思ってたのだが  
このシートの周りを興味深げに取り囲んでやがる。  
しかも今の俺と絵理のやり取りを聞いていやがったのか、そう見えるだけか……嫌な壁になっている。  
「なぁ、おいペナルティだってよ!何があるんだ?」  
「さあ……ひょっとして上から水でも降ってくんのか?」  
「罰ゲームで皆の前で一発芸とか?」  
……無責任な事を言っているギャラリー共め……水をかぶるのも皆の前で一発芸も絵理には嫌な展開だ。  
「まぁ、がんばろうか……香春さん……」  
「え……でも……」  
「香春さんなら大丈夫だよ。俺ちゃんと出来るだけ付いてくからさ」  
「もう……根元くんて、本当に……失敗しても知らないわよ…」  
俺の言葉に少し頬を赤くしながらも、渋々絵理も了承したようだった。  
「ちょっと……だ、いじょうぶかな………香春さん、ゴメンよ……」  
「やんっ……根元くん……息くすぐったい………」  
 
最初のうちの手足を置いて行く段階はさほどでもないのだが、このゲームすでに置いた手足は指定された奴以外動かせないんだよな。  
今の所は絵理の地肌が見えてる部分にしか俺の顔が近付いたりはしないけど……マジでキツイくなって来てるな、コレ。  
絵理と違ってあまり柔軟でない俺にはあまり余裕が無い。今のポーズが苦しいと思って次のポーズに移るが、  
絵理の身体に手で触ったりしないようにしないといけないからその移行も結構大変だ。  
一方絵理の方は手足の長さと身体の柔らかさのお陰で段々難しくなるポーズも難なくこなしている様子だが顔が赤くなって来ている。  
しかしそれはどんどん増えてきたギャラリーが遠慮なく絵理の次々変わるポーズを見ているのだから仕方が無い。  
でも、それは絵理が大勢の前に出るのが、注目を浴びるのが苦手だと言う部分から来るものであって自分の恰好の無防備さ  
に対する自覚の無さは相変わらずだ。まあそうでもないと絵理のボディペインティング技術の高さの理由にならないけどな。  
それでもまだ俺以外の誰にもバレてないというのは不思議と言えば不思議だがその方が都合がいい。  
でも、裸には見えなくても、絵理の身体のセクシーなラインはボディーペインティングの薄膜によって守られてるだけで、  
絵理の乳房が柔らかく揺れ、弾んだり絵理の股間部分が思い切り伸ばされるのが見えてるんだよな……。  
全身タイツよりもピッチリしたスーツを着て踊っているかの様に見えてるんだよな……。  
「わ……胸……揺れた……」  
「んなもん、わかってるって……あの揺れ方、スゲぇ……」  
時折髪の毛でいつも隠されている頂点に当たる部分もその形も露わになるが、それでも絵理が裸と気付かないギャラリー。  
そんな声がきっと絵理の耳にも入ってるんだろうが、絵理の方はあくまでこのゲームに集中して誤魔化してる感じだ。  
俺の腿の上に絵理の乳房が押し付けられる。うわ……ズボン越しでしかもあまり感覚の無い太股でもこの快感……。  
身体は柔らかくて当然あのでかい乳房も柔らかいんだけど……それでもその柔らかさは全く別物であるから、絵理のアクションに  
乳房の方が追い付けていない感じだ。  
「うッ……よっと……ぉお………」  
「はぅっ……根元くん……いきなり動かないで………」  
乳房と認識した途端俺の脚はそれを避けたいのか押し付けてみたいのか自然と動いてバランスを崩しそうになる。  
ズボン越しでもこの何とも言えない柔らかい感触……。でも絵理のこの見事な巨乳……昨日葛城に揉まれてた時の反応からしても  
かなりの敏感さだったな。現に今も。  
「うぅっ……はァっ……んっ………」  
絵理の脚が俺の前でピンっと張られる。凄くきれいな脚。綺麗だけどしなやかさを併せ持つ脚。  
マゾ性癖なんて無いのにこの脚であの鋭い蹴りをまた喰らって見たい様な心地がする。  
何と言うか狙った様に……ひょっとしたらそういうプログラムが組まれてるのか……。  
絵理のポーズがどんどん際どいものになってくと言うのか……ギャラリーにとってもペアを組む俺にとっても……。  
こんだけのポーズを取っていてもほとんど汗をかいていない絵理の顔が無防備に俺に近づけられる。  
 
「うわ……わわッ?」  
「んっ……根元くん……次そこ……」  
絵理の方はもともとの身体の柔らかさから無防備で苦しそうなポーズを簡単に取るけど俺が手を脚を伸ばす度にその上身体をずらして  
手足を置きやすくしてくれるんだけど……その動き方が余りにもエロすぎる。  
手足を置いた状態で避けるので腰や肩、太股を捻って避けてるんだが、その度に絵理の乳房がプルンと揺れ、なだらかな臀部が、  
引き締まったウエストが強調される。……でも俺……ギャラリーのせいで恥ずかしくて凝視出来ないんだ……。  
そのギャラリーは絵理の美しいスタイルの繰り出すアクションポーズを堪能してると言うのに!  
「うわ……あんな恰好でブリッジ………あの衣装薄っぺらすぎねぇ?」  
「ってかあの女の子新体操とかヨガとか出来るのかな……汗全然かいてねえよ……」  
「いいな……あんなにスタイルいいなんて………」  
この状態で絵理の身体を興奮した涎の出そうな顔で凝視なんてしてたらギャラリーに何か言われて絵理にもバレそうだ。  
クソ……絵理よりも俺の方が恥ずかしいなんてどういう事だよ!ギャラリーに対する唯一の優越感は  
絵理が薄着でも何でも無く全裸であると知っている事。  
ああ、クソ……秘密を知る俺には絵理の生の下乳が……乳首が、お臍が、アソコや後ろの穴が見られる筈なのに……!  
絵理は今本当は全裸に靴とコスプレ用のプロテクターしか着けていない状態なんだぞ!  
見たい……絵理と会ってる回数が多いとは言え今の姿を視線で犯したい……でも出来ない……でもこれだけ距離が近ければ…。  
こっそり絵理のいい匂いを嗅ごうと深呼吸しようとした俺の鼻を絵理の髪の毛が思い切り撫でる。  
「ぷふぅっ?か、香春さん……鼻に……髪が………」  
「ッ?!根元くん………大丈夫?ああ、もう………髪の毛縛っておけばよかったわ……」  
心なしか絵理の目が軽く陶酔に潤んでいる様にも見える。ゲームそのものに酔ってるのか、それとも状況に…。  
そう言えばとっくにスコアは1000点を超えてる様だが……ポーズが難しくなるにつれて絵理と俺が絡む様な配置に変化して来る。  
手足が長くて俺よりも背の高い絵理と胴長短足な俺のペア。自動的と言うか止むを得ない形で俺を絵理が跨ぐような形に納まる。  
「あッ………」  
絵理の口から微かに戸惑う様な声が漏れた。さっきまでは無防備だったのに。段々恥ずかしくなって来たようだ。  
いや、違う……それ以上に俺の息が度々絵理の肌にかかって絵理を刺激してしまっている様子だ。  
ゲームに熱中するふりをするという防衛手段もだんだん崩れて来ている様子だ。  
それにさっき息がかかったのはあくまで側を顔が通っただけであって、今みたいに絵理の身体の近くに俺の顔があるわけじゃない。  
本当は俺の息をこっそり吹き掛けてみたいような気持もあるのだが、こんな状況で感じやすい絵理にそれをやったら可哀想だ。  
絵理の方は平常心を装っているのだが、それでも本能的に俺に対する疑いがあるせいか俺の顔の位置が気になってる様子だ。  
でもこんなに絵理が恥ずかしがってばれない様に、気付かれない様にと願ってるような雰囲気だとこっちまで恥ずかしい。  
絵理の見せる恥じらいは悪戯心もくすぐるが、俺の良識まで刺激して来る。  
 
「うわ……あの二人すげえな……かなりのスコアじゃねえか……」  
「さっきから見てるんだけど……ほとんどあの娘のナイスフォローのおかげじゃないの…?」  
「ってかあのコスプレの子……身体柔らけぇな……」  
「やだ……あの恰好であんなポーズ取って恥ずかしくないのかな…………」  
さっきまではあまり汗も掻いてなかった絵理の肌に、うっすらと汗がにじんで来る。  
大丈夫かな……生肌の手足が汗で光ってても自然だけど、ペイント部分がそうなったら皆に怪しまれるだろう。  
第一、その汗で塗装が緩くなって溶けかかったりしたら大変だ。  
「うわ………エロいポーズ………」  
「畜生……あの男何だよ……たどたどしい動きのくせに……俺と代われ……」  
「あの娘……さっきアニ研のコスプレ喫茶にいた子だよな……これってパフォーマンスか?」  
「たまんねえよ、あの女の子……動き方色っぽすぎるだろ?」  
絵理の放つ色気がこの状況下でさらに強烈になってるらしく、男達は皆羨ましそうだ。  
彼女連れの男達まで、彼女そっちのけで絵理に釘づけになってるほどで、女たちも絵理のセクシーさに羨望や嫉妬に似た物を抱く。  
「あの娘、顔真っ赤だな……恥ずかしいんじゃねえの……?」  
「ひょっとして、俺らが見てるの気になってるのかな……可愛いじゃん……」  
「まぁ、見てろよホント……あの胸……揺れまくりだな……」  
その乳房が俺の背中に押し付けられてるけど……まさか柔らかい中にあるゴムみたいな感触って……。しかも二つ。  
「……………やば……………」  
Tシャツに上に一枚羽織っていた俺だったがさすがに汗をかきそうなのでこれが始まる前にTシャツだけになったんだが  
思ってた以上に守備力が低いぞ……。触った事は無いけど、明らかにこの感触って………。  
思わず下半身が元気になりそうになってしまう、というか硬くなり始めてる。まずい…次にどんなポーズが来るかわからないのにそんな…!  
「えっ?つ、次、そんなとこかよ……こう、少し……う、腰いて………ん、とおォッ……」  
「……?根元くん……動きおかしいけど、どこか攣ったの?」  
まあ、攣ったというか硬直しかけてると言うか……それをかばいながら何だけど……うまく身体を捻ったつもりだったが。  
あ……!しまった!思いっきり絵理の股間の中心部分に俺の物がズボン越しに擦る様に当たってしまった。  
「きゃぁ?ひゃぁんっ……?!あッ?」  
「わッ…ごめん、香春さんッ…もう、限界!」  
いろんな意味で……このポーズはもうヤバい。絵理どころか周囲にもばれるかもしれない。  
「んがっ…!いてッ……!」  
「んん………ッ……はァ……」  
 
仰向けに尻餅をつく形になる俺とそれに巻き込まれて絵理の尻が俺の腰上に落下して来る。  
うわ……柔らかくていい感触……。そしてその衝撃で一際大きく絵理の乳房が跳ねて弾んだ。  
「ご、ごめん、香春さん、大丈夫?脚とか痛めなかった?……ぁ…」  
「……ん……大丈夫だけど……その………根元くん………」  
絵理の大事な部分がズボンの下で硬くなってる俺の物の真上に当たってしまってる様子だった。  
……これってまずいような……いや、でも昨日も似たような事が飲み会の席で……いや、でもあれは酒の勢いと言うか  
かすっただけっぽくて……でも、これは不可抗力なんだけど、どう言い訳しようかな……?  
絵理の方もその感触に対する対処に困ってる様子だったが、絵理の性格上俺を困らせるリアクションは取れないようだ。  
俺の上で汗ばんだ身体で少し息が荒くなってる絵理。色っぽ過ぎて困る。そしてこのポーズはいわゆる男の憧れの…騎乗位とか…。  
いや、そんな事考えちゃダメよ、俺?何やってんの?今はこれを柔らかくする方法を考えて緊張何かしちゃ駄目だぜ?  
周囲から何とも大胆な崩れたポーズに驚きと共にからかうような歓声が沸き起こって来る。  
「おいおい、何だよ、その転び方?有り得ねぇだろ?」  
「ひゅ〜ひゅ〜、こんな時間から仲良しだねぇ!」  
「彼女ぉ、そのままのしかかっちゃえ!」  
「やだ、あんな綺麗な人が……」  
「その……香春さん………なんて言ったら…………」  
「それはこっちの台詞なんだけど………んっ……はァ……」  
起き上がろうとした俺だが絵理の身体がビクンと竦んで俺の上に座ったまま切なそうにモジモジと動く。  
マズイ。少しでもこの状態で身じろぎしたら絵理の大事な部分を責めてる事になる。まだ、絵理に告白もしてないのに、何こんな状況に陥ってんだ俺。  
ええい、落ち着け……俺のズボンの盛り上がった部分にあたってるのはあくまで薄い布地越しであって、生では無くて…  
実際生なんだけどそれを知っている事は絵理にも気付かれるわけにはいかない。  
絵理の方も大事な部分を刺激されながらも、俺が起きるに起き上がれない理由を察したのか俺に跨ったまま困りきりだ。  
多分このまま立ち上がったら俺のズボンのテントが晒されて俺が恥を掻くと思って気を使ってくれてるのか……  
どうすりゃいいんだ。この状況で絵理以外の事を考えている余裕なんてない。でもまさに騎乗位状態でそんな考えをしたら。  
俯いていながら困った顔で俺の顔をチラチラと見ている絵理の目が軽く潤んでいる。  
こんな時にそんな色っぽい表情を、仕草を見せないでくれと言いたいのだが、絵理の大事な部分は俺のモノに刺激されてて。  
―――――――ガラララッ……―――――  
そんな時ドヤドヤとした声が聞こえたと思うと半分程度開いていた出入り口のドアが大きく開かれる。  
「おわッ?何だよ、俺らが留守の間に!何だ……面白半分で置いといたツイスターじゃねえか!」  
「あら。本当……って……あなた達……何してるの?」  
「あんたら、ひょっとしてダンス研の人?」  
何となくこのゲームを設置した連中に噛みつきたくなる。八つ当たりというか、責任転嫁みたいな気分で。  
 
「ああ、俺が部長。それでこっちが副部長で今日の出し物のリーダー。あ、ひょっとしてツイスター終わったところ?」  
「やったじゃん。1000点大きく飛んで5200点なんて……!」  
「仕方無いだろ?ペナルティがあるなんてわかりづらい所に書いてあるからよ!」  
「ん?いやこのペナルティは単なる煽り!だってこの方が皆ノリが良くなりそうだしな。」  
「うぅっ……何だよ、俺真に受けたぞ!」  
「いや〜……でも俺としても多少無理なポーズになるかもとは思ってたけど……そんな決めポーズは無いと思うぜ?」  
「仲いいわよね、お二人さん……ハイスコアおめでとう!」  
「なっ……?あ、いやこれは………だな…………大丈夫、香春さん………」  
「もう………知らない………!」  
未だに絵理を股間の上部分にまたがらせている事に気づく俺と諸事情からまだ立ち上がれない絵理。  
そんな俺達二人に対するダンス研のツイスター製作者と担当者の揶揄に、周囲からからかうような笑いが巻き起こるのだった。  
思わず二人揃って真っ赤になる絵理と俺。いや、絵理……悪いとは思うけど最高にナイスな表情だ……。  
そして取りあえず早く大人しくなれ、ムスコよ……絵理のためにも……。  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
「根元くん……大丈夫だった……?」  
「うん、全然平気だけど……その俺結構重いんだけど…俺に巻き込まれて怪我とかしなかった?香春さん」  
さすがにこれ以上ダンス研の部屋で出し物を楽しむのは無理だと判断した俺達は足早にダンス研展示室を出たのであった。  
「いや、ごめん……みんなが見てる時あんなゲームしてると香春さん独占してるっぽい気分になっちゃって……」  
あの後、皆に囃したてられた俺達は、なぜか完全に出来ちゃってるカップル扱いまでされて、皆の前でキスする様に囃したてられ  
それを俺が腰を痛めた様に見せかけて、振り切って逃げてきたわけだが……ある意味惜しかったかも……。  
「根元くんは………その……女の子と……あんなゲームしてると……興奮……しちゃうの?」  
「うん、正直言うと……ってか、香春さんの動き、凄く綺麗だったし……本当に!ただ、あんまり見てたら……その……」  
「……その……?」  
「なんて言うか、こんな綺麗な人と一緒に踊ってるって信じられない気分になって……香春さんに引きよせられそうになって気分がハイに……」  
「ッ!やだ……何言ってるのよ……!ああ、もう……この質問はここで終わりよ……!」  
俺の方はまだあの気分から冷めてないのか、そんな言い訳をしてしまう。  
「その……香春さん……言いにくいんだけど………その衣装………」  
絵理が恥ずかしがるとは思っていたけど、何故か言わずにはいられない。  
「さっき汗かいてたけど……その布地、水着とは違うんだよね……その……透けたりはしてないよね……結構薄そうだし…」  
「や、やだ……そんな言い方しないでよ……そんな事無いわよ……ね…?」  
もともと汗をかくような事も想定の範囲内なんだろうけど、絵理が思わず自分の格好を確認し、俺に確認まで取ろうとする。  
 
俺の前で身体を捻って、背中やわき腹、腰回りを確認している。うは…色っぽい捻り方……脇腹から太腿へのラインが素晴らしい。  
別に特に塗装が薄くなってるわけじゃないが汗ばんでいる絵理の肌が余りにもエロチックでムラムラしてしまう。  
手や足や首などの地肌以外の塗装部分までが汗で軽くテカっているもんだから俺はより一層絵理の裸を意識してしまっていた。  
そのせいか、どうしても絵理から見れば『ムッツリ』な内容の言葉が出てきてしまう。  
第一、周囲のこのエロコスプレに対する視線もより一層何かを探ろうとするような流れをはらんで来る。  
「な、何かあの子……妙に色気有りすぎねえか……」  
「あれ、タイツとかそんなレベルじゃねえよ…………」  
そんなヒソヒソ声だけでなく絵理自身汗をかいた自分の肌の感触に、そわそわし始めている。  
なにしろ肌に当たる空気は間違い無くさっきよりも冷たく感じるだろうし、俺の質問で不安にも駆られて。  
「わお、ちょっと立ち寄るだけのつもりだったのに結構時間食ったな…。」  
「そうね……取りあえず葛城さん起きてるかもしれないし……何か買って一回準備室に……」  
「あ、ちょっと待って香春さん………さっきのゲームのお礼というか、香春さん頑張ってたし。ここ寄ってこうよ。  
 何か気に入ったものあったら買ってあげるよ。」  
「えっ……そんな、別に……あれは成り行きで………」  
「いいからいいから。いろいろ本格的にお礼とかさせてよ。全体的に俺が借りっぱなしなんだしさ。」  
「あッ…………」  
手作りアクセサリーをここでは販売しているのか………。手作りアクセサリーといってもさすがに大学のサークルで  
作ったものは図画工作レベルな作りと言う事は無い。それなりに本格的で低価格だ。路上販売の規模がデカくなった感じか。  
ちょっとした綺麗なガラス玉や水晶をあしらったアクセサリー、ブローチやバッヂ、ファンシーなリボンやマニアックな物まで。  
今まで自分に興味無いからこう言う物に立ち寄る事も無かったしプレゼントしたい相手もいなかったが。  
今日は堂々と入る目的が、理由がある。カップル連れが多くいるこの仲にも。  
絵理が百点満点で俺が五十点に満たないとしても、絵理が百点なら他の連中なんて八十以下だ。これ絶対!  
鼻高々な気分でその中に絵理の手を引いて入って行く。……そう言えば絵理、手を繋ぐぐらいはもう許してくれてるのか。  
だが問題もある。おしゃれに関してほぼ無頓着な俺に絵理がどのようなプレゼントを好むのかわかりづらい。  
絵理ならプレゼントされたこと自体を喜んでくれそうだけど、それに甘えるわけにもな……  
室内の一角にある猫耳やウサギ耳のついたカチューシャや帽子が置かれているスペースがある。  
思い切って絵理に猫耳でもプレゼントしてみようかな……いや、いくら絵理とは言えドン引きされるかも……  
いや、しかし恥ずかしがりながらそれを装着して赤くなってしまう絵理の顔も見てみたいけど……  
でも絶対に絵理に似合う。動物好きだし、猫好きそうだし。第一つけたら可愛いのは間違いないから失礼など断じて!  
その隣にはネコの尻尾飾りや猫の手を模した手袋やブーツまで置いてある。これは、いけるか……?  
今のコスプレ衣装に釣り合うかは不明だけど、エロ度が上がりそうなのは間違い無い。  
あ、でも……尻尾は服につけるタイプだとしたら着けられないか……  
「根元くんちょっと……ほら……」  
「えっ?何、えっ?えぇッ?あぅ……」  
 
俺の頭の上にウサギ耳付きのカチューシャを乗っける絵理。思いもよらぬ行動にあっさりそれを喰らう俺。  
「あら、根元くん……わりと似合ってるじゃない……ふふ……。……?どうしたの?」  
「あ、いや……それ、俺が………。って、香春さん!」  
「だって、根元くん……そこに立ち止まって……何か企んでたでしょ?……今のと同じこととか…」  
「っ!?ソンナことナイヨ!只珍しいと思って……ちゃんと頼んで付けて……あ………」  
「……根元くんのムッツリ……」  
おのれ……絵理、なんて可愛い行動を……これは何としても絵理に良い物プレゼントしてしまわねば!  
しかし何だろうなこの心地よいくすぐったさは……。裸の絵理が傍にいる事へのムラムラ感は消えたわけじゃないが  
それにも勝る幸福な感じが膨らんで来るのが自覚できる。  
「何だよ、あの男……あんな美人といちゃいちゃしやがって……」  
「買うんなら早く買えよ………」  
「でもあの人綺麗だけど……男の趣味はイマイチかも……」  
そうだ……このチョーカーなんてどうだろうかな……黒いラバー製のガラスの飾り玉の付いたチョーカーだけど…。  
いや、それとも腰に巻きつける鎖の飾りも悪くないかも……。買ったその場で身につけさせたい。  
そこでちょっとプレゼントついでにちょっと絵理をひっかけて見るか……上手く行くといいけど。  
「どうしたの……?あら、根元くんはこういうアクセサリーつける事あるの?」  
「うん。これ何か俺に似合いそうじゃない?でも何か手首より太すぎてさ…」  
「え?根元くんこれチョーカーで首につけるのよ?」  
「うん、そうか……こんな感じッ?」  
俺が突き出したチョーカーに不用心に顔を近づけてきた絵理の首筋に狙いを定める。  
「きゃっ……ん、やだ、ぁあッ……くすぐったい……な、何………?」  
「香春さん、じっとしてて………ん、似合うな………」  
「えっ?何っ……いきなり、何を……何…何で私に……」  
「たぶんこれも絶対に似合うかな?」  
「やぁっ……はァ……そこはっ……ふぅんっ………冷たッ……」  
そりゃ、冷たいかもな……地肌に鎖は。色っぽい声をついつい漏らしてしまうのが何とも言えない。  
しかしこの前の蹴りを繰り出した時は反応が素早かったのに、絵理は本当に非暴力的なんだな…。  
戸惑ってばかりで立ちヒジや蹴りが入りそうな位置にいる俺を腕力で撃退はしない。  
皆の前でウッカリ発言をした時や恥ずかしい事を思い出させた時に軽く抓ったりするくらいだ。  
不意打ちが思ったより上手く決まって絵理の首にはチョーカー、腰回りに鎖飾りが付けられる。  
「わぁお!思った以上に似合う!バッチリだよ、香春さん……。あ、係の人、これ買うよ!」  
「あ、どうも……袋にお入れしますか?」  
「あ、このまま付けてきます。」  
 
「えっ…ちょっと、根元くん……え、ええッ……そんな……この恰好で……」  
「大丈夫だって……そのコス衣装でも香春さんならアクセサリー付けてても上手く似合ってるから」  
「もうっ!そ、そう言う事じゃなくて……いきなり、何よ……強引に……」  
自分の姿を見おろして赤くなる絵理。その反応に周りのカップル連れの男達が鼻の下を伸ばして女の方に腕をつねられる。  
俺は断じて絵理の地肌に触るような真似はしていないけど……強引にアクセサリーを付けた事で、絵理は自分の裸を、  
まだバレていない恥ずかしい秘密を自覚してしまったのだろう。何しろ自分で納得して自分の手で付けたアクセサリーでは無いから。  
そのせいで本当は裸であると言う事を絵理自身の頭の中でより際立たせてしまっている様子だ。  
今回のアクセサリーのプレゼントは絵理の魅力の引き立て役として上手く機能したと言う事か。  
「あと、彼氏の方の頭の……」  
店員が何か言いかけた時であった。  
「あッ、絵理ちゃん…それに根元くんも……二人っきりでずっる〜い……起こしてくれてよかったのに……」  
「葛城さん……?もう、大丈夫なの……随分眠ってたけど……」  
「あ、絵理ちゃん毛布かけてくれてったんでしょ?さんきゅ〜」  
「葛城、お前な……書き置き見なかったのかよ?何か屋台で食べ物買ってくつもりだったのに…でも良く適当に歩いてる  
 俺らの場所わかったな」  
「あ、それ?絵理ちゃんを見かけた人探して聞いて回ってたから、エッチなコスプレした髪の長い綺麗な子、こっちから来なかったって  
 聞いて回ってたらこっちの方に来ちゃったわけ!でも絵理ちゃん目立ってるね。」  
「やだ、葛城さん……そんな聞き方してこないで……ぁあ………」  
絵理の格好のエロさに関してはあくまで暗黙の了解事項な空気があったんだが、葛城はお構いなしと言う感じだ。  
「赤くなって顔を伏せる絵理を嬉しそうに見ている葛城が、絵理の付けたアクセサリーに気付く。  
「あ、絵理ちゃん、そのアクセ、どうしたの?うわ、カッコいい……セクシーだね。」  
「そ、そう……ありがと……根元くんにいきなりプレゼントされちゃって……」  
「へぇ、いいなぁ……あ、絵理ちゃん私も何か買ってあげる……ほら、このブローチ、前の服なんかにはピッタリだよ」  
葛城はあんなキャラだがこう言う事に関しては俺よりは遥かに当てになるんだろうけど……ブローチって…おい!  
「これ何か絶対にいいよ?前のブラウスにピッタリ…あ、今のコスにも案外いいかもねっ」  
「えっ……?あッ……」  
乳房に安全ピンを付けたブローチを近づけられ絵理が慌てる。  
「ほ、ほら……これ、借り物の衣装で…布地が弱いから…」  
 
さすがに地肌に、あの美乳に傷がついては困る。  
「そうそう、今の格好で安全ピンなんか刺すとほら、地肌にこすれて……香春さん下着つけてな……」  
そこまで言いかけて慌てて口をつぐむ俺。だが絵理の耳にはしっかり入ってたらしくその耳まで真っ赤にして俯く絵理。  
……しまった〜!今の完全にセクハラ発言と同じじゃねえか……。  
「あぁ〜、そうか……じゃぁ……」  
絵理と俺に言われて他のモノを物色し始める葛城。  
「その……ごめん……今のは本当に……ゴメン、香春さん……」  
「……そんな所までじっくり見てないでよ………もう………」  
「何?あの男…あのダサさで二股か?」  
「ってか……どうもあのちっこい女、あの背の高い方に懐いてる感じだよな…」  
「いわゆるちょっとズレた三角関係ってヤツ?」  
割と鋭い所を突いているギャラリー一同。葛城は俺に異性としての興味は持ってません。  
「ねぇ、絵理ちゃん……コレ!コレなんかどう?これなら頭につけるだけだしっ!」  
「えっ、何を……きゃぁっ?」  
戻ってきた葛城は背の高い絵理の頭にポフっと猫耳付きカチューシャを器用に乗っけてしまう。  
うわ……ネタを奪われた感がするけど……異常なほどのハマリ具合だ。バッチリ似合っている。  
絵理が明らかにそれを恥ずかしがって身体をモジモジさせてるせいで、余計にそう思えてくる。この反応の方が絵理らしくて可愛い。  
「やだ、葛城さん……私にこう言うのは……」  
「違うよ〜。絵理ちゃんみたいな美人のほうがホントは似合うの!」  
「でも……私……こう言うのつける習慣は無い……」  
「根元君がポ〜〜ッとしてるよ!似合ってるって!」  
「えっ……やだ……根元くん、これは……見ないで……」  
「ほら、絵理ちゃんは猫だし……ウサギの根元君を食べちゃえ〜ッ」  
「きゃっ!」  
「あぁっ、しまった……!外すの忘れてた……っておわッ……」  
「んっ……あ、ゴメン、根元くん………」  
「ゃわッ…………………らか……」  
絵理が俺の方に思わず倒れこむのを受けとめる俺だがTシャツ一枚越しに絵理の巨乳が思いっきり俺の肩押し付けられた。  
明らかにさっきのツイスター中の背中に押し当てられた時よりも生々しい感じがする。  
俺の頭が思わず驚きと興奮で沸騰しそうになる。やばい流れであることこの上ない。  
「ぁ……あ、根元くん……鼻血っ……大丈夫………?」  
 
「あ〜根元君、絵理ちゃんにセクハラしようとしたんでしょ……」  
「い、いや……これは……さっきツイスターで強引に無理なポーズしたせいで、頭に血が……」  
「え?何?ツイスターって……ゲームか何か?」  
「な、何でもない、から……気にしないで………」  
ああ、猫耳の絵理……ウサギな俺は嘘つきです……。本当は葛城の言ってるのが当たりです。  
周りの奴ら、俺が鼻の下伸ばしてた挙句に鼻血出したの察してクスクスと笑ってやがんの……。  
取りあえず、絵理の肌に俺の鼻血がかからなくて良かったなぁ……そう思うのであった。  
 
 
 

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