「さて、じゃあさっそく、『通貨』を発行しますかね。」  
 
 豊が玉座から立ち上がり、部屋の真ん中にある大きなベッドの上に上がる。そして野薔薇を手招き、彼女はためらうことなく、ベッドの上に上がった。  
 
「うむ、近くで見ると、なかなかエロい身体してるな。気に入った!」  
「わーい、褒められた!」  
 
 小柄ながらもメリハリの利いたスタイル、野薔薇の裸体に豊も好評価。そして褒められた彼女もまた、すごく嬉しそうだ。  
 
「大門君のオチンチンも、かなり大きくてステキだよ!」  
「おう、サンキューな!」  
 
 今度は野薔薇が豊を褒め返す。  
 
 
 
 
「いちおう確認しとくけど、」  
 
 野薔薇の体を横たえて、その上にのしかかった豊が言う。  
 
「日野元って、処女じゃないよな?」  
「うん、そうだよ?」  
 
 豊の指示を受けた彼の部下達は、このお遊びの事前情報として彼女たちのことをいろいろと調べていた。  
 アリバイや病歴など、いろいろと準備するためには必要な情報だ。  
 しかし、豊自身はその調査結果には目を通していない。  
 あくまでも、『クラスメイトとのセックス』を楽しみたいからだとか何とか。  
 これも言ってみれば、気まぐれである。  
 
 男の性器を見たときの反応を始め、セックスへの抵抗感などから察するに、男性経験があると踏んだ豊の確認は、彼女に肯定された。  
 
「じゃあ、遠慮なく行くぞ?」  
「うん!」  
 
 
 
 
 豊の愛撫は、実に丁寧で、ねちっこく、時間をかけて行われた。  
 
「あっ! ひぃん、ああん・・・」  
 
 野薔薇の全身を、くまなく豊の指先が撫でさすり、舌が這い回った。  
 
「いままで、何人くらいとセックスした?」  
 
「え・・・と、6人だったかな・・・・・・あ、7人だ。」  
 
「おおっ、発展家さんだねぇ。彼氏?」  
 
 発展家など、今時使われない言い回しであるが、要は男性関係が多いことをさしている。  
 
「・・・・・・う〜ん、ちがうよ、彼氏じゃない。わたし、まだ男の人とおつきあいしたこと無いもん。」  
 
 全身を愛撫される逃げ道のない性感に、野薔薇はのぼせるように息を熱くしながらも、豊に問われるまま答えていく。  
 
「じゃあ、行きずりかぁ。」  
 
 豊の指が野薔薇の割れ目にあてがわれ、あふれていた愛液をくちゅくちゅと泡立てるように動き回った。  
 
「ひ! くぅ〜〜ん、そ、それ、せつないからやだ〜っ!」  
 
「日野元は濡れやすいなぁ。もうビッチョビチョだよ。」  
 
 そして豊は、頭を彼女の股間に寄せ、割れ目に口付けた。  
 
「ひあ!」  
 
 両手の指で割れ目の肉を押さえ、割り裂くように広げると、そこにはぬらぬらと滑るピンク色の粘膜があった。  
 舌を広く、べろりと粘膜を舐めあげ、今度は尖らせた舌先で膣口をくすぐり、唇をあてがったクリトリスを激しく吸い上げた。  
 
「あっ、あ、き、ひ、ああ〜っ、ひああん!」  
 
 性器への口唇愛撫に、野薔薇は背をのけぞらせ、頭を振って悲鳴を上げた。  
 
 
 
 
 それから、たっぷりと時間を掛けた愛撫に、野薔薇はさんざん悩ましい悲鳴を上げて乱れた。彼女も、これまでこれほど  
丁寧な愛撫を受けたことがなく、ある意味未知の性感であったが、そのあたり素直に受け止めて楽しめるくらいには性に  
馴染んでいた。  
 何度目かのアクメに全身をふるわせた頃、野薔薇は愛撫から解放された。いよいよ次のステップに移るようだ。  
 
「んじゃあ、そろそろいくぜ?」  
 
 そういって豊は、完全に勃起したペニスを持ち上げた。いつの間にかそれには、コンドームが被されている。先ほど野薔薇を  
愛撫している間に、側に控えていた香多那が装着していたらしい。日本人離れした大きさであるために、そのコンドームも  
特別製のものが用意されていたようだ。  
 執拗な愛撫に狂わされて、とろとろに蕩けきった全身、力なく横たえている野薔薇は、うつろな瞳でそれを見た。  
 
「んはぁ、それ、ほんとにおっきぃよぅ・・・。」  
 
 だらしなく身体を開いている野薔薇の両足を持ち上げ、豊はペニスを彼女の股間にあてがった。  
 
「あん、すごい、ぞくぞくする・・・、そんなオチンポ入れられたら、あたし死んじゃいそう・・・。」  
 
 言葉こそ不安の意味を持つが、声音は嬉しそうな、期待に満ちたものだった。豊はその期待に応えるように、あてがった  
ペニスを一気に、野薔薇の膣に押し込んだ。  
 
「あひゃう!!!」  
 
 亀頭がずぶりと膣内に潜り込むと、野薔薇は悲鳴を上げ、  
 
「ぅあーーーーーーーん!!」  
 
 ずぶずぶとペニスが奥まで突き込まれるに合わせて、長い歓喜の声が上がった。  
 
「ひっあああっ、すごい、すごい、しんじゃうしんじゃううっ!!」  
 
 ずん、と膣奥をペニス先端が突き上げた。  
 
「ひうっ! うあん! ずんずんきてる! おなかがおしあげられちゃう!!」  
 
 そして豊は、そのまま何度も繰り返し、膣の行き止まりを突き続ける。  
 
「な、なにこれっ!? あたしのまんこ、こんなに深くまでオチンポ入れたことない、ないのにぃ〜〜っ!!」  
 
「へぇ、じゃあ、日野元の膣奥バージンは俺がいただいたってことになるな。」  
 
 たしかに、膣の奥までのすべてをペニスで制圧した男は、豊が初めてと言うことになる。  
 
「あうっ! あはんっ! バージンあげちゃったあっ、あたしのまんこ、大門君のものにされちゃったぁっ!!」  
 
 嘆いているのか喜んでいるのか、まぜこぜになったよがり声で、野薔薇は泣きまくる。  
 腰ごと抱えるようにして持ち上げ、力強く突き上げる。女の身体を軽々と扱い、ペニスの長いストロークをすべて使って、  
激しいピストンを繰り返していく。  
 実際、野薔薇の経験した今までの男達に比べて、豊のセックスは比べものにならないくらい気持ちいい。これが始めてとは  
思えないくらい、セックスのリズムがフィットしている。単純に、肌の相性と言うべきか、あるいはセックスの主導を握る豊の  
巧みさからか。  
 仰向けの野薔薇に覆い被さる正常位から、立て膝ついて腰を持ち上げるようにして抱え込み、力強く集中して腰をたたきつける。  
 
「日野元のまんこ、なかなかこなれてるな。これならこっちも、思いっきり出来そうだ。」  
 
 女子高生のヴァギナにズブリと填まった赤黒いペニス。よほど食いつきがいいのか、男の出し入れに合わせて周囲の媚肉が  
激しく変形する。ペニスが引き抜かれると逃すまいと収縮し、押し込まれるとその巨根の体積分、下腹部が膨らむ。  
 
 豊は、挿入した数度のピストンで、概ね野薔薇の性感をつかんでいた。どのあたりをどのように擦ってやれば喜ぶか、  
そういう弱点のようなものを心得ると、後は巧みに、それを集中したり、時には焦らしたりと巧妙に彼女の快楽を高めていった。  
彼女の場合、膣の奥をカリで擦ってやると狂ったように泣き喚く。  
 
「おちんぽすごいよっ!! あたしのなか、ごりごりえぐられてるっ!」  
 
 野薔薇が、行き場のない快楽に狂い、イヤイヤと頭を振りながら泣く。豊が腰を押しつければ声高く唸り、腰を引けば切なく  
咽ぶ。彼女のか細い両手はきつくシーツをつかみ、荒ぶる快楽に吹き飛ばされないようにしているかのようだ。  
 
「気持ちよさそうに善がってる日野元、可愛いぜ。」  
 
「やぁあん! はずかしいよう!! アヘってるカオ見ないでぇ〜っ!!」  
 
 セックスに乱れる自分の顔を可愛いなどと言われて、嬉しいよりも猛烈に恥ずかしくなってきた。野薔薇はシーツを離し、  
両手で顔を覆って身悶えた。  
 
 挿入前の愛撫の時から、何度もアクメに達していた野薔薇だが、今、豊にペニスをねじ込まれ膣内を犯されるにいたって、  
奇妙な感覚を感じていた。  
 
「なんかいもアヘってるのに、ぜんぜん終わらないっ! アヘるのがどんどんおおきくなってるっ!」  
 
 野薔薇の身体は何度も絶頂の痙攣を繰り返しているのに、それでもセックスは終わらない。豊がセックスを止めないから、  
というだけではない。  
 今までのセックス経験で、「おわり」と身体が覚えていた絶頂とは、次元の違うところに向かおうとしていた。これまでの男に  
与えられた絶頂が、頂点などではなくただ階段のワンステップでしかなかったことを、この男のセックスによって教え込まれよう  
としているのだ。  
 
「なにこれ、なんかおかしいよっ! こんなセックスしらないよっ!! こわいっ、おかしくなっちゃうーーっ!!」  
 
 野薔薇が、自身の中に沸き起こる未知の感覚に戸惑い、おびえるものの、それを凌駕する快感の波がすべてを覆い尽くし、  
彼女を追いつめていく。  
 
「大丈夫、大丈夫、気にしないで、どんどん気持ちよくなって良いんだからな。」  
 
 激しい腰使いとは裏腹に、お気楽な語調で豊が言う。実のところ豊にしても、思いの外に具合の良い野薔薇の味わいに、  
急激な射精感の高まりを感じていた。しかし彼は、セックスの最中に、相手の女に無様なアヘ顔を見せないくらいの自制心を  
持っていた。ポーカーフェイスともいえるその表情は、彼が持つセックス経験の、その豊富さの裏付けである。  
 
「ああーーーーーーーーーっ!! だめっ、だめぇ〜〜〜〜っ!!! くる! くるっ! きちゃうっ!! おおきいのきちゃうぅっ!!!」  
 
「日野元は『イク』んじゃなくて、『来る』なんだ、欧米派なんだな〜。」  
 
 女の絶頂に於ける洋の東西の違いなど、そのような線引きは広く公にはないが、野薔薇の絶頂は欧米の女がよく口にする  
『COME』に近いのかもしれない。  
 ・・・などと、具にも付かないことを考えながらも、豊は、抱いた女を自身の男で絶頂に向かわせるカタルシスのようなものを  
楽しんでいた。  
 
 そのように、心にまだ余裕がある豊に比べて、野薔薇はそんな軽口にも反応できないくらいに追いつめられていた。  
 息も荒く、喘息にも似た苦しげな表情の野薔薇。短い呼吸の中あげる嬌声は、その度に短く途切れ、スタッカートを効かせた  
楽器の音色のようにも聞こえる。  
 そしてその声もいよいよ限界が近い。絶頂にあらがうように声量もどんどんと大きくなり、少女の悲鳴はいよいよ断末魔の  
高まりを見せた。  
 
「もうだめっ! くるっ! くるーーーーーーーーーー〜〜〜ッッ!!!」  
 
「くっ!」  
 
 野薔薇が絶頂した。全身がびくびくと痙攣し、同時に彼女の意識が遊離する。普段肉体に感じていた重力からも解放された  
ような浮遊感。  
 
 同時に豊も、腰の奥に溜まった熱い衝動を解放する。涼しげな表情だった彼も、さすがにこのときばかりは奥歯を噛み、  
快感に呻いた。  
 
 野薔薇の絶頂によってきつく閉じられた膣道は、その全体で豊のペニスを締め付け、ただでさえ細い尿道をさらに絞る。  
若さ故の勢いと、同じく若さから来る大量の精液は、びゅくびゅくと何度も激しく脈打って、きつい尿道から吹き出した。  
 
 まるで真空のような吸着具合で膣肉に締め付けられる豊のペニス、その先端から射精された大量の精液は、あらかじめ  
ペニスに装着されたコンドームの膜に遮られて直接野薔薇の膣内を犯すには至らなかった。  
 しかし、逆流するでもなく吐き出された大量の精液は、ゴムをぽっこりと膨らませるほどの体積で、ただでさえ余す隙間の  
ない膣の中、はっきりとした存在感を示していた。  
 
 
 
「ぁはぁ・・・・・・・・・・。」  
 
 呼吸すら忘れた長い絶頂の後、長く熱い吐息と共に、少しづつ野薔薇の意識も肉体に回帰する。  
 絶頂の高みが収まるに連れ、直前まで喰い締められていた歯も開き、だらしなく開け放たれた弛緩の表情へと変わっていく。  
薄く開いた瞼に隠れ、普段の黒目もかすれて見える。  
 
 豊も、長い長い射精を終え、詰めていた呼吸を再開させた。  
 抱いた女を絶頂させ、そしてその女に射精するのは、肉体的、性的な快感と共に征服感を伴って、男にとって極上の快感を  
味わえるものだ。  
 
 しかし、今の射精は極上と言うには少し足りないものがある。  
 その快感の中には、女の膣内に生で射精し、子宮を制圧する悦しみが含まれていないからだ。  
 
 もちろん生姦ゴム姦どちらを好むかなど、単純に趣味嗜好によるものである。彼はその嗜好からゴムの装着を選んだのか。  
 否、豊は生の膣内射精を好まぬわけでなく、むしろ好む質である。  
 好む質ではあるが、とある思いつきに従ってのことであるため、あえて、今は少しお預けとしているのである。  
 
 
 
「日野元の身体、すげえ気持ちよかったよ。」  
 
 豊が言うものの、野薔薇が反応するまでにはずいぶんと間が開いてしまった。  
 その間、だらしなく開いた唇から涎もこぼれ、視線も移ろな有様だった。  
 ようやく意識が回復した野薔薇は、まだまだ艶の残る吐息に乗せて、一言呟いた。  
 
「・・・・・・・・・あたしも〜、超、気持ちよかったぁ〜・・・・・・。」  
 
 
 
 
 それからしばらく、他愛のない艶話、つまりは馬鹿エロトークでくすくすと笑い合っていた二人。ようやく野薔薇の呼吸も  
落ち着いてきた頃合いに、豊はようやく腰を動かした。  
 
「じゃあ、そろそろ、抜くぜ?」  
 
 ずる、ずるり、と、泡で白くなった濃い目の愛液を掻き出し、野薔薇の膣から豊のペニスが引きずり出された。  
 
 膣から引き抜いたペニスは少しも硬度が落ちた様子もなく、コンドームが膣の締め付けに引っ張られて外れるようなことも  
なかった。そして、そのコンドームは、ぴちぴちにペニスに張り付いたまま、射精されたザーメンをしっかり蓄えていた。  
 ゴム先端にもうけられた精液だまりまでもが、大量に射精されたザーメンでパンパンに膨らみ、小ぶりなミカン程度の大きさと  
なってペニス先端から飛び出ている。  
 いったいどれだけの量を出したのか。おおよそ常人の10倍以上はあろうかという大量射精だ。  
 別段長い間禁欲していたわけでもなく、むしろ本日も、野薔薇を抱く前に香多那たちメイド姉妹を相手にたっぷり放出していた  
わけで。これも彼の絶倫たる体質の所以か。  
 
 先ほどから気配を潜めて情交のそばで控えていた香多那が傍らに寄り添い、恭しく豊のペニスを捧げ持つと、丁寧に  
コンドームを外していく。最初に竿を握り、牛の乳搾りのような指使いで、尿道に残った精液を最後まで絞り出してから、  
根本あたりの縁をくるくると、そして途中からは竿に沿ってずらすようにして、破れないように気をつけながらの作業だ。  
 そして、取り外したゴムをしごくようにして精液を先端に集めてから、手早く結んだ。ゴムの口辺りを結ぶのではなくて、  
精液だまりを膨らませた状態に近い形で結んだものだから、まるで小さな水風船のような弾力がある。  
 最後に、今度はゴムの口を結び、竿の長さに相当する長いコンドームの胴を使って、手際よく蝶々結びを作り終えた。  
 これが、この国の通貨、『ザーメン』である。  
 
 
「うっわー、すごい量!」  
 
 アクメの忘我から立ち直り始めた野薔薇が、香多那によって手渡された『通貨』を見て感嘆の声を上げた。いままで、  
野薔薇が身体を許した男たちの、その誰のものとも比べものにならない大量の精液。手のひらに載せられたそれは、  
ゴム越しにまだ暖かい熱を伝えてくる。  
 
「それを、部屋の外にある『配給所』に行って渡せば、食料と交換できるからな。」  
 
 優しく髪をなでる豊に言われた野薔薇であるが、未だに全身、特に腰の力が抜けていてなかなか起きあがることが  
出来なかった。  
 
 
 
 
 
 
 
「『配給所』って、ここでいいのかな?」  
 
「はい、ここが食料他、いろいろな必要品を支給する、『配給所』です。」  
 
 野薔薇の問いかけを向けられた少女は、にこやかな笑顔で応えた。  
 しかし、その笑顔から受ける印象とは異なり、言葉はいたって平坦で、抑揚に欠けるものだった。  
 
   
 
 激しいセックスの余韻がようやく抜けて、何とか腰を持ち上げることが出来た野薔薇は、『謁見の間』と名付けられた  
セックスルームを後にした。  
 未だにしびれが残る腰でふらふらと、言われた通りの道順を進むと、大きく開けた部屋に出た。  
 いくつかのテーブル、椅子が並ぶ、レストランのような場所だ。  
 
 部屋の入り口で野薔薇がきょろきょろとあたりを見渡していると、その部屋の奥にある扉から声がかけられた。  
 現れたのは少女、それも、野薔薇たちよりも小柄な、中学生程度の年齢とおぼしき少女だ。もちろん、一糸まとわぬ全裸である。  
 彼女は野薔薇のそばへ弾むように駆け寄って、先ほどの応答をした。その少女の、全裸を当たり前とする立ち居振る舞いに、  
野薔薇もおおよそ、彼女が大門豊によって含められた側の人間だと察した。  
 
「私は、黒野加々海、香多那の妹で、黒野珠(くろの たま)と言います。」  
 
 そのように自己紹介をして、珠はぺこりと腰を折った。  
 
 そこそこ女としての成熟を見せ始めた野薔薇たち高校生と異なって、珠と名乗った少女の身体はまだまだ子供らしさの  
抜けきらない、発育途上の体つきだった。  
 骨も細く肉も薄く、それでも変化を見せ始めた女の特長。子供と大人の境目がくっきりと現れた年頃の身体は、独特の  
魅力にあふれていた。  
 胸の大きさは確かに控えめだ。しかしそれは彼女の魅力を引き立てるべく、均整の取れた大きさであるといえる。カップに  
すればA、あるいはB、小さく控えめな大きさが、可憐な愛らしさとなって彼女を彩る。  
 姿勢正しく立つ彼女、その太股にしても閉じ合わせていながら股間に大きく逆三角の隙間が出来てしまう。その儚さは  
人の目をついついと引き寄せ、自然と股間に注目させる。  
 そして、その彼女の大事な部分、幼い外観の媚肉が合わさったスリットが、心持ち上側に寄って出来上がっている。  
まだ陰唇のはみ出しも殆ど見られない、シンプルな造りだ。スリットの上部には、申し訳程度の若い草むらがちょこんと  
生えていた。  
 
「ここは、国王様より発行していただいた通貨を、食料に引き替える場所です。  
 通貨の『ザーメン』はお持ちですか?」  
 
 にこにこと、目を細めた人懐こい笑顔の珠であったが、相変わらずその声は抑揚乏しく、囁くような細い声だ。  
野薔薇はそんな珠の印象を、小動物のハムスターに通じるものがあると思った。  
 
 さて、珠の問いかけに、野薔薇は手に持ったコンドームを見せた。  
 
「これ、・・・でいいんだよね?」  
 
 ぷっくりと膨らんだ精液の風船玉、蝶々結びで飾ってはあるのだが、とても可愛いとは思えない。中身は、白くどろどろと  
粘つく男のザーメンである。野薔薇は、別段精液に嫌悪感を持つわけではないものの、それでもそれを可愛いとか愛おしいとか、  
愛着を持って扱えるほどにはなっていなかった。  
 だから、そんな男の精液が自分たちの食事と等価で交換されることに、何ともいえない可笑しさを感じていた。  
 
「ほんとにこれで、食べ物に換えてくれるの?」  
 
 野薔薇がそう言って、白濁液で膨らんだゴムを手渡した。気軽に片手で手渡す野薔薇に対して、受け取る珠は両手を  
差し出し、恭しく捧げ持った。  
 
「はい。豊様の精液ですから、とても貴重なんです。本来は食糧なんかで釣り合うものじゃないんですが。」  
 
 あくまでも豊様がお作りになったルールですので。  
 そう言って珠は、受け取った精液を愛おしそうに撫でてから、近くの机に歩み寄った。その机上にはハサミが置いてあり、  
珠はそれを手に取った。  
 何をするのか、野薔薇は見当もつかないまま年下の少女の行為を眺めている。  
 
「では、これが本物の、豊様の精液かどうか、確認いたしますね?」  
 
 顔を天に向け、あーん、と慎ましく口を開いた珠は、コンドームを口の上に持って行き、ハサミを使ってゴムに切れ目を入れた。  
 途端、ゴムの圧力に押された内容物が、切れ目を割ってどろり、とこぼれ落ちた。  
 珠は、そのこぼれてくる精液を、舌の上で受け取り、すべての白濁を口の中で溜め込んでから、唇を閉じた。  
 
「・・・・・・んむ、んん、ん。」  
 
 頬の動き、顎の動きが、見ている野薔薇に珠の口の中の動きを想像させる。いま、この少女は、男の精液を口に中いっぱいに  
含み、噛むようにして味わっている。瞼を閉じて、口の中の感触、味、臭いに集中している。  
 
「うわ〜、ほんとに食べちゃってる〜。」  
 
 野薔薇が感心したように声を発するも、珠は口内に意識を集中しているのかなんの応答もない。その頬も紅潮し、男の精液を  
味わうことで性的な快感すら得ているようにも見えた。  
 
(精液って、そんなに美味しいのかな?)  
 
 男の精液をまるで甘露のように味わって、普通のにこにこ笑顔を幸せにこにこ笑顔に変えている珠。目の前の年下少女を見て、  
野薔薇は漠然とそんなことを考えた。  
 
 そしてしばらくしてから、ようやく珠の喉が動き、口の中のものを嚥下していった。  
 小さな喉がひとつこくり、と動き、何度かに分けて精液を飲み干すと、最後にようやく口をあげて、ぷは、と熱い息をした。  
 
「はい、確かにこれは、豊様の精液です。」  
 
「味でわかるんだ?」  
 
 野薔薇の疑問に、当たり前ですよ、と素朴に返してきた珠。  
 
「いままで、たくさんいただいてきましたから、ちゃんと覚えてるんです。」  
 
 へー、と感嘆する野薔薇に、相変わらずのにこにこ笑顔で珠が言葉を付け加えた。  
 
「まぁでも、この島には豊様しか男性がいないので、私が確認するまでもないんですが。」  
 
 じゃあなんで? と野薔薇は確認行為の理由を聞いてみた。  
 
「私が、豊様の精液をいただくのが好きだからです。捨ててしまうなんてとんでもないことですから。」  
 
 にこにこ笑顔の頬に、幸せそうな朱を入れて、珠が答えた。  
 
 
 
 
 小さな腕時計のようなものが渡された。  
 一円玉ほどの大きさの液晶画面に、『4』と表示されている。  
 
「これが、いまあなたがお持ちになっている配給券の数です。」  
 
 珠の説明に、しげしげとその画面を眺める野薔薇。そして案内された室内には、多数の棚があり、そこには何種類ものラベルが  
貼られた小箱が置かれていた。  
 
「そして、こちらの棚から、お好きなものを選んでいただいて交換できます。すべて、加水と加熱で簡単に調理できますから、  
 すぐに食べられるものばかりですよ。」  
 
 それらの箱には様々な料理名が書いてある。写真も貼られていて、昨日今日と食事を抜いていた野薔薇にとっては非常に  
食欲をそそられる。  
 
 ぐう、と腹の虫も鳴り、早く食事といきたい野薔薇ではあったが、一つの疑問もあった。  
 
「みんなインスタントなんだね? 普通に料理したご飯とかはないの?」  
 
 食べられるのならば、調理方法にはこだわらない野薔薇であったが、そのあたりの疑問は残る。  
 最初、『食事配給』などと言われて、高校に併設された学生食堂のようなものを想像したからだ。  
 その質問に、珠は素直に答えてくれた。  
 
「この島では、一切の着衣が禁じられています。だから、火を使ったりする調理ができないんです。」  
 
 エプロン、コックコートのたぐいがなければ、火や油を使った調理法は難しい。髪をまとめる帽子も被れないとなれば、  
衛生的な問題もある。そういった理由から、食事はすべて冷凍食品やレトルト、インスタント食品だけになる。実際これは、  
国王である大門豊の食事にもいえることなのだが、彼自身それを不満とは思っていないらしい。食事のこだわりよりも、  
全裸でいることのルールを徹底することを選んだようだ。  
 
 野薔薇が選んだのはチーズハンバーグセット、ファミレスでおなじみのもので、当たり障りのないチョイスだったが、  
とにかく早く何かを食べたいと迷わずに決めた。  
 その部屋にある席に着く全裸の野薔薇の元に、同じく全裸の珠が調理済みの食事を運んでくれた。  
 
「おいしい!!」  
 
 感じたことが素直に口に出た。空腹だったからなおさらであるが、それを差し引いてもありきたりのファミレスメニューより  
出来がいい。  
 じゅうじゅうと音を立てるステーキ皿、その上に盛られた大きなハンバーグには、とろりと熱で溶けたチーズがかかっている。  
それを美味しそうに食べる野薔薇は、セットでついてくるライスやサラダ、スープなども、綺麗に舐めるようにして平らげていく。  
 
「ごちそうさまでした!!」  
   
 食事を終えた野薔薇に、珠はこのあとのことを説明した。  
 この建物の二階は国民のために開放された諸々施設になっており、多数配された個室を自由に使用することが可能とのこと。  
 テレビやラジオこそないものの、いろいろな音楽を試聴できるし、映画のDVDなども完備されている。そこいらのレンタル店など  
比べものにならないラインナップである。  
 とにかく基本的に、夜は自由に過ごして良い時間となっていた。  
 
「ねえ、他の食べ物も交換してイイ?」  
 
 しかし野薔薇は、まだ部屋に戻ることもせずに、食べ物の棚を見回っていった。そしていくつか、選んだものを珠の元に持って行く。  
腕のカウンタは、もうはや『0』になってしまった。  
 
「いいんですか? 明日の朝食や昼食の分の配給がなくなってしまいましたが?」  
 
 にこにこ顔をわずかに心配そうな表情にして、珠が言う。  
 
「大丈夫、大丈夫!」  
 
 陽気に答えた野薔薇は、交換した食料を持って配給室をあとにした。  
 
 交換した残りの食事は、サンドイッチのセットや、スナック菓子の詰め合わせなど。  
 
「これだけあったら、みんなで分けて食べられるよね。」  
 
 
 
 
 
 煌々と月の輝く夏の夜、さくさくと砂を踏む足音を響かせて、全裸の少女が弾むように歩く。  
 
 
 野薔薇は、それら両手にたくさんの食料をかかえて、友達のいる浜辺へと向かった。  
 
 
(続く)  
 
 
 
 
 翌日、そこには、元気に全裸ラジオ体操をする、野薔薇の姿があった。  
 
 

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