今日も、……行っちゃおうかな。
私の家の近所の銭湯は、今どき珍しいけど男の人が番台に座ってる。
女湯の脱衣所だって何喰わぬ顔で眺めてる。
銭湯なんて滅多に行くことはないし、それを知ったのは家のお風呂が故障したときだった。
もちろん、最初はすっごくびっくりしたし、このまま服を脱いじゃっていいのかどうかすごく不安になった。
でも、他のお客さんも全然気にせずに、男の番台さんの前で裸になってるから、
私も『ええいっ!』と躊躇いを吹っ切って、裸になって浴室に向かった。
番台さんは多分女の裸なんか見慣れているから、私の裸にも大して視線を向けることはなかった。
でも、……そうは言っても、私は彼氏でもない男の人に、すっぽんぽんの姿を、見られちゃった……。
裸を見られるのはもちろんすごく恥ずかしいし、すごくいやだ。
なのに、ここの銭湯を『裸を見せることができる場所』だと考えた瞬間、私の心に電撃が走ったんだ。
「……こんばんは」
「はいいらっしゃい。……おおあんたか、ゆっくり(お風呂に)つかっていきなさい」
番台さんには、もうすっかり顔を覚えられてしまった。それくらい頻繁に、私はここに来てしまっている。
……そう。男の番台さんに『裸を見せることができてしまう』という事実が、私を狂わせてしまった。
私は変態なんだ。露出が好きなんだ。
男の人に裸を、それも自分から見せてしまうなんて、とてもはしたなくてすごく恥ずかしいのに。
でも、恥ずかしいはずなのに、……いや、恥ずかしいから。とても、気持ちがいい……。
Tシャツを脱いだら上はもうブラだけ。ジーンズを脱いだらもう完全に下着姿。
そして、……やっぱりまだ慣れない、ブラをそーっと外して、おっぱいは完全に丸出しに。
そして……パンツも……!
……脱いじゃった。もうこれで、ヘアまで丸出しのすっぽんぽんだ。
で、いつものように小銭を持って、番台へ……。
「すみません……ボディソープとシャンプーください……」
私はいつも、ここで使い捨てのボディソープとシャンプーを買うことにしている。
わざわざ裸になってから、男の番台さんの前にとことこ歩いていくんだ……。
「はい260円です、お釣りは240円ね。ちょっと待ってなさい」
番台さんはがさごそとお釣りを用意している。その間私は、素っ裸のまま手持ち無沙汰に突っ立っている。
男の人の前で、私、全然身体隠してない……。
手を伸ばされたら触られてしまうくらい、こんなに近い距離なのに……。
「銭湯、好きかい?」
「あ、はい。自分の家のお風呂じゃやっぱ狭いですから」
「おーそうだろそうだろ。ゆっくり暖まっていきなさいよお、……あ、10円玉がないなあ。おーい」
他の従業員さんに、お釣りの10円玉を持ってきてもらうみたいだ。
ああ、まだしばらく裸のまま立たされないといけないんだ……。
「……でも珍しいねえ。こんなにお若い女の子が銭湯によく来てくれるなんて」
番台さんは裸の私を見ながら話しかけてくる。
やっぱり私の身体、見たいのかな。あ、今さっき視線が私の胸の先っぽに来た(気がする)……!
「あ、あんまり私の同い年くらいの子は来ないですよねえ、やっぱり……」
今日は何か、長話になっちゃってるなあ。まだ私、解放してもらえないんだ……
「特にここは俺が番台やってるからねえ。今どきの子はやっぱり、銭湯でも男に裸見られるの、恥ずかしがるからねえ」
えっ!そんな、何言ってるの……!
「い、いや、私だってその、恥ずかしいですよやっぱり……。銭湯で裸見られちゃうのは、し、仕方ないかな〜って思ったから……」
わ、私が男の人に裸を見られて平気とか、そんなわけないじゃん!
「ほんとは女の人にこそ来てもらいたいんだけどねえ。うちのお湯は美肌にいいんだよ」
「はあ……」
「ちょっと気をつけして、身体をよく見せてみて」
……な、なんてこと言うんですか!
「……はい」
何で私言うこときいてんの!ああ、番台さん私の全身、じっくり眺めてるよう……。
……やばいっ、裸で寒いから(そうなんだよ、きっと!)、……胸の先っぽ、立ってきちゃった……。
見られてる〜!立った乳首、見られてるよ〜!
「……ほら。だいぶお肌が綺麗になってるじゃないか」
あ、そうか。私のお肌の状態をチェックしてたんだ……。
「あ、ありがとうございます……」
何で私、裸をじっくり見せた相手にお礼まで言ってるんだろう……。
ああ、早くお釣り用意してよ〜。いつまで私を裸のままにさせてるんだよ……。
「はいお待たせ、240円のお返し」
「あ、はい、ありがとうございます」
やっと解放された……はやくお風呂につかろう……。
はやくお湯でごまかさないと、垂れちゃうから……。