朝、部屋のドアが開く。
「優希、朝だ起きろ」
その言葉を発したのは、まだ浅く眠りについている彼の姉。
彼女はまっすぐベッドの傍まで来ると、高い身長から弟の寝顔をクールに見下ろす。
「ん〜」
優希と呼ばれた少年は、美少女のような秀麗な顔の作りと珠肌に似合わず、やや雄々しく唸る。
「今日は私とデートの約束だろ」
しかし寝返りを打つ。もっと寝かせろと言わんばかりだ。
なので、容赦なく布団を引っ剥がす。
「む」
すると優希は一瞬固まって、そして身震いした。
「起きろほら」
体に触れて、揺する。
と、ぴく、と反応したかと思うと、
「って、うわああっ!?」
優希の髪の毛が突如として伸び、彼女の体に巻きついた。
そのまま呆気なくベッドに引きずり込まれて、二人の体は重なる。
しゅる、と髪の毛が解けて元に戻る代わりに、甘えるように彼女を抱き締める。
「やめんか特異体質」
校倉優希(あぜくらゆうき)は幼い頃から大病を患い、一か八かの人体実験を施された。
それがシェイプシフター手術というもので、結果は成功。
手術で得た特異体質により、優希は体の形状を感情や体調によって無意識に変化させられるようになる。
但し、サンプルとして半永久的に観察対象となっており、姉の校倉一片(ひとひら)は、その役割も兼ねて弟の面倒を見ている。
「っ!?」
太腿を小突く感触に気づき、一片が息を漏らす。
布団代わりに抱いている内に匂いと柔らかさを意識したのか、太く硬いものが主張していた。
「はぁぁ…全く」
一片は腕を緩めてやって、楽な体勢に変える。
そしてパジャマ越しにそこを触れると、ぴく、と動く。
「熱い、な」
掌に温もりが伝わって、そして――。
「あつっ!!」
反射的に離すと、そこは真っ赤に湯気を上げていた。
パジャマと下着は焼け焦げて、まるで熱い鉄が露出しているかのようだ。
「優希のせいで私の身体、傷だらけなんだからな」
少し恨めしそうな目で、弟を見る。
「ねえ、ちゃ…?」
ようやく目が覚める優希。
すぐ目の前に一片の顔があって、優しい表情で目を閉じている。
そして、股間がすっとすることに気づく。
「あ、わわっ」
「起きたか」
一片はすぐに気がついた。
「ご、ごめん僕また何してっ?」
「寝惚けるな。優希が起きないから、起こしに来た」
起き上がって、顔を近づける一片。
「その私にこんな危険なモノ押しつけるなんて、少しお仕置きが必要だな」
右手に分厚いグローブをはめながら、悪戯っぽく笑う。
「ちょ…あっ!」
優希のものを、断熱性のグローブが包む。
ふにふにと掴み、そして軽く上下に擦り、親指の辺りで先端を捏ね回す。
「やめてよ…今、すごく…っ!」
悶える弟にも、一片は容赦なく、恍惚に浸り続ける。
「――っ!」
扱きを強めたら、あっという間に射精した。
出しきった後も、そのままぴくぴくと痙攣して、快感に囚われる。
「う…はぁ……酷い、よ」
やっと声を出せた優希は、情けなく涙で潤んだ表情をしていた。
それは下手な女の子よりも、可愛いかもしれない。
「…優希のイク顔、いつ見ても加虐心を煽るな。うふふ」
乗りかかって真上から見下ろす一片。
優希が少し視点を下げれば、彼女の襟から胸元が覗く。
思わずそっと、乳房に触れる。
「……」
「……って、ええええっ!?」
ジュウウウウ、と音を立てる一片のパジャマ。
「姉ちゃん…姉ちゃん…」
欲求が暴走を始めたのか、肌に触れる部分から衣服が溶ける。
見る見るうちに優希のパジャマはぼろぼろに溶け落ち、真っ裸に。
そして接している部分から侵食するように、一片のそれも溶けて剥き出しになっていく。
「こここ、こら! いいかげんにしろっ!」
このままでは火傷を負いかねないと、一片が声を大きくして怒る。
「…! う…ごめん」
すると剣幕が効いたのか、すぐにしゅん、となって収まった。
一片は仕方ないな、と溜息を吐く。
「全く…これで服ダメにしたの何回目だ。優希?」
「……」
上からの口づけ。
そっと唇を離して、目を見開く。
「…お姉ちゃん」
うっとりとした表情に、惹き込まれそうになる一片。
「体質をコントロール出来ないなら、これ以上、してやらないぞ」
「…頑張るよ。だから、お願い…もっと…」
鼻をくすん、と鳴らす。
そして、二人はまた薄く目を閉じながら、口づける。
冷静を装ってはいても、一片も同様に気持ちが昂っていた。
従順な弟から向けられる求愛に、我慢出来るほど人が出来てはいない。
「ん…ふ…」
絡まる舌。
人並の感覚にセーブしながら、優希はその味と、手で身体を貪る。
柔らかく形の良い生乳が押しつけられて、胸の上でぐにぐにと弾む。
「…ふは」
「…優希…優しく、溶かせ」
シェイプシフターの身体に接して、一片のパジャマも、じわじわ溶け落ちていく。
優しくすれば、肌は傷つかないことを知っている。
全身が露出していくにつれ、二人はますます情熱的に絡み合い、心まで溶けて――。
「あっ」
指先で撫でた秘部は愛液に濡れ、下着を溶かすまでもなく敏感だった。
「お姉ちゃん…」
「馬鹿…焦らすなっ」
しかし優希も、姉の言いなりでは済ませたくない。
指でじっくり愛撫を繰り返し、淫らに解す。
「ちょ、ま…っ!」
込み上げる快感に抗えず、絶頂を迎える一片。
手だけでイかし返された。
それでも不本意に感じるどころかこのままもっと溺れたくて、他に何も考えられない。
謎の多い特異体質だが、発情した優希の身体からは、そういう催淫効果も出るのかもしれない。
「良いの? お姉ちゃん…」
潤んだ目で今更そんなことを言うのは確信犯的に卑怯である。
「…朝に処理怠ったら、はぁ…他人に、危害加えるかもしれないからな」
絶頂の後の、まだ敏感なままの状態で、そこを広げてみせる。
優希は了解し、熱いモノを一片の下の口に、押しつける。
「火傷…させるなよ」
「うん、頑張る」
どちらにしても一片は、自分の身体はもう、優希専用であることを自覚している。
「来い」
「…うん」
下になった姉の身体に、自らのそれを挿し込む。
「…っ」
締りの良い器。
周囲から憧れられるスタイルと、硬質な格好良さを併せ持つ一片。
その全てを捧げるように、優希を芯まで受け止める。
「…、……あっ」
腰を動かし始める優希。
身体中で最も敏感な膣とモノが擦れ合う感触が、意識まで蕩けさせる。
注意はしても、やはりそれは火傷しそうなほど熱く太く、しかしそれが痛み以上に快感だった。
一片は自分も腰で受けつつ優希を抱き寄せ、深くキスをする。
「ふぁ…んっ、ゆ、き…っ」
夢中で交換する唾液の味は、内側から優しさを染み込ませるように、濃い。
そして――。
「…ぼく、で…る…!」
「なか…きて…っ!」
二人はぎゅっと、身体や感情といった全てが、凝縮された気がした。
『…ううっっ!!』
二人だけの、愛の交換。
時間はもう十時を大きく過ぎていた。
裸で抱き合いながら休憩をする二人を、邪魔するものも咎めるものもない。
「……あ」
そして目が覚め、時計を確認した一片は、固まった。
「ああっもうこんな時間かよ! おい、起きろ」
「…ん、姉ちゃん?」
一片の腕を抱き、無垢に目を擦る優希。
「デート忘れてるだろ。ほら、起きて準備だ!」
「ゆっくりしようよぉ」
「うるさい。…うわあ、午前中ほとんど無駄にした…今から取り返すからな」
と、妙なテンションで張りきる。
「でも、何処に行くの?」
「買い物に決まってるだろ。それからカラオケに映画にetc、夜はホテルだ」
そう言って起きて手を引く。
「まずシャワー浴びるぞ。朝食はすぐ作るからな」
汚れを流して、優希は身体のケアをした後、急いで朝食。
「でも姉ちゃん。買い物って、何買うの?」
パンを食べながら、訊く。
「馬鹿、洋服買い込むに決まってるだろ。優希はすぐ今日みたいに溶かすんだから」
「まだ多過ぎるくらい持ってるって…。第一、お金使い過ぎだよ」
「優希の出費は研究機関の負担なんだ。ケチケチせずに使えば良い」
そんなことを平気で言える一片は、頼りになるとも言えるし、大胆不敵だとも言える。
「率先して使ってるのお姉ちゃん――」
「ああ。”傷が絶えない私に代わって”、可愛い服や露出の多い服、たくさん着てもらうぞ」
「うっ…分かったよぉ」
おしまい