*ファンタジー注意。
長老の言うことには、エルフのクリトリスは長細いらしい。
それで僕は東の洞窟までやってきた。
花が咲き乱れる季節の少し前、つぼみが程よくふくらんでいる。
僕の勘だとこういう人目につかないけど恐くもない場所にエルフっていそうなんだよね。
でも結局、ヘトヘトになるまで探したけどいなかった。
岩にもたれておにぎりを食べ、明日は西の洞窟に行こうと思いつつもう一個に手をのばすと、
「うきゅっ」
僕はエルフをつかまえていた。
「いいじゃないのぉ、一個ちょうだい!」
ひらひらの花みたいだと思った。
僕の手の平とちょうど同じくらいの大きさで、羽のほうがでかい。
「言っとくけどね、花の蜜だけじゃ飽きるの。たまにはしょっぱいのも欲しくなるのよ」
鈴の音に似てる。りんりん高い声。
「黙ってないで気前良くぽーんとあげちゃいなさいよ。
ていうか手ぇ離して!」
「エルフって君みたいなやつばっかなの?」
「……失礼なこと言ってるでしょ」
ちっさいエルフはいきなりトーンダウンして僕をにらみつけた。
「気分悪い。帰る」
「おにぎりぐらいやるよ」
「ほんと?!……やっぱいい。離して」
「なんでだよ」
「お礼に何かしろとか言うんでしょ。面倒くさい」
「あ、そういうのアリなんだ? 何個でいいの?」
エルフはしまった、って感じに眉をよせて、唇をかみながらしばらく考え込んだ。
「ちょっと見せて」
交渉成立、さっそく僕は満腹エルフの花びらのような服をかきわけてクリトリスを探り出し、そして見たままの感想を言ってみた。
「これってさぁ、ちんぽじゃないの?」
「違うわよ。生殖しないもの」
「せいしょく? なに、エルフ語?」
「だからぁ、白いの出ないの」
「うっ?! うん、そう……」
ついまごまごしてしまったけど、気を取り直して続ける。
「じゃさ、ここの穴は何なんだよ」
「それは大人になるときに必要なの」
? うーむ。
それにしても変な形だ。エルフの耳って長いけど、クリトリスまで耳と同じに長くって尖ってる。
何気なく、ちょんとつつくと痛そうな顔をした。
「あ、ご、ごめん……」
「触ると痛いのよね、敏感すぎて。自分で触ってもそうだから気にしないで」
女の子はここが気持ち良いのよって隣ん家のお姉ちゃんは言ってたのに、エルフは違うのかな。
皮もないしつるつるのむき出し状態だし。
「ふ〜ん……」
「他の子に入れたら気持ちいいの。そういうものなの」
聞いてもいないのにあっけらかんと言われてしまった。
「こうやっておにぎり置いておけば来るんじゃないか?」
エルフは僕の作戦案には乗り気ではないようで、小馬鹿にした目つきで黙っていた。
長いこと間抜けな時間が過ぎて、エルフがむかつく溜め息をついたので僕もあきらめておにぎりを撤収しようと弁当箱に手をのばすと、
「むきゅっ」
僕はまたエルフをつかまえていた。
「君らさぁ、馬鹿なの? それともエルフが馬鹿なの?」
「何こいつ、この人間の子供。やたらむかつくんだけど」
「あんたが食いしん坊だからでしょ」
「先につかまってるやつに言われたくないんですけど」
「なんだ、大人の儀式なんだこれ」
「花下ろしっていうのよ」
筆下ろしみたいなもんだろうか。
僕は後からつかまえたエルフを仰向けにして脚を押さえ付けた。
「ちょっとぉ!まだそんな季節じゃないでしょぉ!」
「わかってるわよ。今してもすぐ大人になるわけじゃないし、大丈夫よ」
ゆっくりと、諭すように言い聞かせながら花びらをめくりあげ、長いクリトリスに先っぽから根本まで花の蜜をぬりたくり、
「いっぱいいっぱいイっちゃって」
嬉しそうにそう言うと、細長いクリトリスの先っぽをにゅるっと相手の中に押し込んだ。
「いはっひゃめてぇ……っ」
「すごぉいっぬるぬるしてて……あんっあはぁんっずりゅずりゅいってるぅ」
淫乱なエルフっているんだなぁ。
気持ちいい気持ちいいって腰を振ってるのを眺めてから、僕は上に乗っかってるエルフの折れそうに細い腰を指でつまんで揺さぶってみた。
「ひゃっ?! あっあっあっやだやだぁさわんないでぇ!」
「やめてぇっひゃめてぇっ」
りんりんりんりん鳴き合うエルフ達が可愛いすぎて、僕まで一緒におかしくなってしまいそうだった。
蜜があふれてきて、ずっちゅずっちゅと音までしだして、僕の指にいたぶられながら何度も何度もイっちゃうエルフ。
「もう、もうおわりぃっおかしくなるうっっ」
「変な声。もうちょっとやらせてよ」
「ひゃめてぇ……」
上のエルフはよだれ垂らしてるし、やられてるエルフはやめてしか言わないし、エルフってホント意味わかんね。
激しく揺すってたら抜き差ししてるとこがじゅぷじゅぷ泡立ってきてぎゅうぅってお互いに抱きしめ合っちゃって、
仕方ないから腰をぐりぐりまわしてやったらビクンビクンってなんかやばくなってきた。
慌てて手を離すと、ふわって花が咲くみたいにエルフ達の身体がほどけて少しだけ大きくなった気がした。
ほんわか熱をもってぐったりしてる。
そっと引き抜いてやると、にゅぽりとした手応えで長いクリトリスが出て来た。とろりとした蜜も。
ハチミツよりも濃くて強い刺激的な匂いがむせかえってきて、僕はなんだか目眩がした。
はぁはぁと息を荒らして、突っ込まれていたほうのエルフが起き上がった。
なんでやられた側のほうが元気なんだろう。
「もうっまだそんな季節じゃないって言ってるのにぃ!」
と、花びらを濡らしたまま、ぷりぷり怒って洞窟の裏へと飛んでいってしまった。
僕の手の平の上で、熱くて甘くてやらしい蜜だらけでふるふる震えている小さなエルフは、後でみんなから怒られたりするんだろうか。
そんなならいっそのこと僕とずっといればいいのに。
内緒で部屋にいれてあげるし、毎日花畑で散歩しよう。
時々またこうやって他のエルフつかまえて入れさせてあげるよ。
長い耳まで真っ赤にして、クリトリスをひくひく濡らして、満足そうに目を閉じている僕のエルフを見ていると、心が躍ってしかたなかった。
せっかくだからペロってなめてみた。
小さくて細長い、隣のお姉ちゃんとは全然違う形のクリトリス。
蜜の甘さが強く舌をしびれさせてきてびっくりする。絡んだ蜜でなであげるようにそっと、根本から先っぽへと舌で押し包みねぶりあげた。
手の平にのせて腕も脚もつかまえていたから、目を覚ましたエルフが大きく身悶えしてきても大丈夫だった。
「っやだぁ! もう終わりって言ったぁ!!」
かたく尖るクリトリスをなめるたびに体がビクンて跳ねあがる。
「痛いの?」
僕はちょっと心配になって聞いたけど、口ごもって困ったような目をしたからそのままなめ続けた。
女の人って一緒の反応するんだな。
隣のお姉ちゃんも「もう終わり」ってなってからもずっとペロペロしてたら同じ顔してた。ずっと「イっちゃう」ばかり言ってた。
「いっちゃったからぁっ……ほんとにもう、あんっ限界なのぉ……っ」
のけぞった喉がふるえてる。可愛い。
先っぽだけを口で吸ったら、ちゅるんってクリトリスが入ってきた。
「いひゃぁっだめぇ、それだめぇっ」
お尻を浮かして硬直して、よっぽど気持ちいいんだな。
「あついよぉ……っすごいよぉ」
口の中に入ったつるつるのむき出しのクリトリスに舌を全部押しつけたらコリコリしてたので、ぬるぬる転がした。
「やだぁいっちゃうっいっひゃうぅ」
ねぶりあげてはイっちゃって、敏感だなぁ。
ちゅるんちゅるんて吸いあげると泣きじゃくりだした。
でも可愛いくてやめられない。
どうやったらもっとイってくれるかな。
舌と口で、やわらかくゆっくりこすってずっとずっとちゅぽちゅぽして、
あとなんだか根本がいいみたいだから唇で挟んでくりんくりんまわして、
しつこくしつこくいたぶって、ああ、指が穴の中に入ればなぁ、クリの裏も思う存分いじめてあげるのに。
ジュポジュポしてもっと鳴かせてあげるのに。
イヤとかダメとか言えないぐらい、イクしか言えない壊れた体にしてあげるのに。
ぬるんぬるんってクリトリスが僕の舌でなめまわされ、蜜だらけのエルフが悶えて火照って泣きじゃくる。
甘過ぎる味に僕の脳みそがヒリつき灼けてく。気持ちいい。
手の中で溺れてくようにエルフが気を失うまで僕はたっぷりとクリトリスを堪能して、ビクビク脈打つ小さな熱い体をそっと両手で包み込んだ。
「あたしも帰る」
あっさりとそう言われて、驚いた僕が何かする前にエルフはするりと手の中から飛び出してしまった。
「お、怒られちゃうんじゃないの?」
「なんで? 誰に?」
「だって……その、そういう季節じゃないって、さっきの……」
「ああ、でも花畑が満開になったら皆でいっせいにすることだもの。別にたいしたことないわよ」
僕はさっき考えてたことを言おうとしたのに、口をパクパクさせただけでどうしても言葉には出来なかった。
あれだけ自信満々だったのに、今では幼稚な考えに思えて恥ずかしくさえあった。
「ところでさ、あんたは何しにこんなとこまで来たの?」
「……春休みの宿題」
「人間ってほんと意味わかんない」
同じこと僕も思ったから、苦笑いでごまかした。
ふわりと、もう僕の手が届かない高さまで飛んでから、
「じゃあね。ばいばい」
と手を振ってきた。
僕は何かを言いかけて、でも結局何も言えなかった。
あんなにイキまくって震えてたのに、どうしてこんなに簡単に僕から離れていくんだろう。
「あ、そうだ」
僕が黙っているからか、さよならを言ったほうがよくしゃべる。
「あんた、名前は?」
僕が答えた名前をエルフは口の中で何度かつぶやいて、うんうんと頷き、二度目の「じゃあね」の後に笑顔つきで呼んでくれた。
いきなり顔が熱くなった。
ひらひらと飛んでいって見えなくなってから、もしかしてあのエルフにも名前はあったのかなと思って、
「あ〜あ・・・」
なんだかすごく惜しいことをした気分だった。
寝る前に僕はエルフの花畑について考えてみた。
たくさんの小さなエルフが蜜でクリトリスを濡らして、お互いに入れたり入れられたり、そういう儀式をしている──
僕の名前を知っているあのエルフもその中に混ざっちゃうのかと思うと、やるせなくて胸が痛かった。
こんなんで僕はちゃんと大人になれるのかな……
長老が皆にあんまりエルフのことを話したがらなかったのもわかる気がした。
こっそり僕だけに教えてくれたように、いつか僕もきっと誰かに秘密を打ち明けたくなるんだろうか。
今は無理。絶対無理。
あのりんりんした鳴き声がいまだに耳から離れない。
最後に僕の名前を呼んだ可愛いらしい声も。
──じゃあね。ばいばい。
苦しくて息が出来ない。
「……ばいばい」
僕もはやく大人になりたい。
それから僕は、毎朝奇跡を待って目を覚ます。
少年ではなくなり、青年を過ぎ、それなりの恋をしては別れて、家業を継いで、独り身の僕を心配する親を看取り、
そうして自分の順番が近づいてきた。
憎まれ口をたたき合った奴らも先に逝った。
手の先にあるものが何も掴めなくなり、そろそろお迎えかと毎日空を眺めた。
妻もいない、子供もいない。結局僕は大人になれなかった。生殖という言葉が胸に響いて止まらなかった。
目がかすんで白くぼやける。今日の天気はまぶしすぎると目を細めると、子供が扉の内に立っていた。
「やっとあんたと同じくらいになったから会いにきたのに、またずいぶんと成長しちゃったのね」
羽の生えた子供。
「人間てすぐ大人になるのね? ずるいわよ」
耳の尖った子供。
そしてひらひらした花のような服の下にはきっと──
少年の日の草の匂いが蘇る。
花畑に僕はいたんだっけ?
「……そうだ、おにぎり……おにぎり作るよ、ちょっと待ってて」
「いらない」
愛らしい目元が僕を見据える。
またあっさり僕にさよならを言って飛んでいっちゃうのかな。
当たり前か。今の老いた僕にはもう引き止める力もない。
ろくに立てやしないんだ、杖すらもう掴めない。
あるのは乾いた笑いと溜め息ぐらいだ。
そんな僕のすぐそばまで何の迷いもなくまっすぐに歩み寄って、にこりともせずにエルフは言った。
「わたしが作るわ。あなたが死ぬまで」
「……ずっと?」
「毎日」
すぐ目の前にある花びらをかきわける指が震える。あの日と同じ尖ったクリトリスを見て、やっぱりあの日と同じ感想を持ったけど言わないでおくことにした。
「毎日?」
「うんそう、毎日」
無邪気でりんりんした声。命に疑問を抱いていない子供の瞳。
「はは、もっとはやく来てくれよ……」
残された日々なんて僕にはまだあるのかな。
あの日夢見た、めくるめくような毎日に思いを馳せながら、懐かしい蜜の匂いに僕はキスをした。
「ん……ごめんね」
何を謝ってるのか聞けないまま、僕の瞳は白く濁り、唇の先にある求めてやまなかった感触を抱いて、何かが自分からすうっと抜けていくのをただ黙って感じていた。
そうだ、また僕は君の名前を聞いてなかった。
でももう遅いんだ、ごめん、謝るのは僕のほう。
だって、何度も何度も君が僕の名前を呼んでるもの。
ばいばい。ごめんね。僕のエルフ。
──そんなに泣かないで。りんりんりんりん泣かないで……
end.