「旦那様、寝酒をお持ちしました」  
「ありがとう、そこに置いておいてくれ」  
トレイに酒を移したデキャンタとグラスをのせて、メイドが顔を出した。主はベッドに上体をもたせ、書類を見ている。  
片足はベッドの上に伸ばし、片足はベッドの下に下ろしてある。湯上りなのかパジャマにガウン姿だ。  
側の卓にトレイを置いて、礼をして部屋を出ようとしたはずなのに。  
「……何故旦那様の上に座らされているのでしょうか」  
片手は書類を持ち、それに目を落としながらもう片方の手は、メイドの腰にしっかり回して怪しい動きで撫でている。  
それをひきはがそうとしながらも、使用人はあくまで丁寧な口調を崩さない。  
「いい加減、私のものになりなさい」  
「ですから嫌だと申し上げているでしょう。使用人に手をつけるなど、主の風上にもおけない行為ではありませんか」  
気丈な態度を崩さないメイドを、主は書類を卓に置いて見つめる。  
そろいの制服なのに、きっちりと着こなしていて文句のつけようがない。それなのに覆う面積が多いのに色気が感じられる。  
もう片方の手も腰に回し、腕の中に囲い込む。  
「私は気にしない。主の要求に応じるのも使用人の務めではないかな?」  
「そんな、理不尽、な、……むぐっ」  
それ以上の文句は実力行使で封じられた。  
 
「やっ、嫌です、旦那様」  
「脱がされるのが嫌か。自分から脱ぐとは積極的で嬉しいが、男の夢として恥じらいながら脱がされてくれ」  
メイドをベッドにうつぶせるように倒して、制服の上のエプロンのリボンを解き、後ろのボタンをはずしていく。  
抗う手は両手首をまとめてベッドに押し付けている。  
「旦那様なら、いくらでも良家のお嬢様が選べるではありませんか。それに嫌なのは服を脱ぐこと、そのものです」  
「着衣でとはまたマニアックだな」  
ボタンを外し、背中をあけてそこから手が前へと忍び込む。下着の上から胸を手で覆われ、メイドは硬直する。  
「あっ、やめて、ください。嫌、です」  
「それこそ嫌だ」  
むにむにと胸をもんで中心を押し込むと、ひくりと体が動く。項をきつく吸うと綺麗な痕がついた。  
胸から手を抜いてワンピース型の制服のスカートをまくり、太腿を撫で回すと慌てて閉じようとするのを膝を入れて阻止する。  
「手首を押さえていては手が足りないな」  
主は真面目に言い、ふと己のガウンの紐に目をとめる。しゅるりと紐を抜き去ってそれでメイドの手首を縛る。  
メイドは主に体を押さえ込まれながら、それでも逃げようともがいている。  
既に髪は乱れて制服は脱げかけ、スカート部分はまくれ上がっている。  
涙目で手首の紐を外そうとしている姿を見て、主は目を細める。  
「泣き顔も似合うとは思わなかった。沢山泣かせてあげよう」  
「――それこそ、嫌です」  
 
ベッドにうつぶせにされて、上からのしかかられて身動きの取れないメイドは身を捩っているが、主の両手は制服の下、下着の上から  
両胸をもんでいる。耳に舌を這わされて背中は主の胸が密着している。  
「だんな、さま。お願いです、こんなことはやめて、後生ですから」  
頬を赤らめて哀願するメイドの姿は、胸に迫るものがあるが主は意に介さなかった。  
「手を縛っていては服が脱がせないな。胸はまた今度見せてもらおうか」  
「またなんて、また今度なんて、ある訳ないでしょう。いい加減に、あ……っ」  
主の手がお尻に触れ、ひた、と覆われ熱いその感触に思わず声が出てしまっていた。  
手は下着を分け入って直接素肌にふれ、お尻をもんでいる。強くもまれて背中に力が入る。手が離れてほっとしたのに下着の中心を  
こすられて、その衝撃に身がすくむ。  
布越しに執拗に掻かれて、胸は相変わらずもまれているし力がどんどん抜けていく感覚に、メイドは切実に危険を感じる。  
「お前はどこが感じるかな? ここかな?」  
布をずらして指が中に入り込んで、その生々しい感触に背筋が粟立つ思いがした。  
「……や、やだ、やだぁ……」  
蕾を撫でられておののくメイドが本気で泣き出したのに、内心うろたえ舌打ちする思いで主は指を中に沈める。  
狭い中を丁寧にほぐしていくが、気遣いは届かない。  
それでも中は反応するように蜜がこぼれてくる。  
「泣かないで、そんな意味で泣かしたくはないんだから」  
「だ、って、指が気持ちわるい……」  
しゃくりあげるように、言葉を紡ぐメイドをひっくり返し、下着を取り去る。  
「じゃあ、指じゃないものをあげよう」  
「えんりょ、します」  
「まあまあ」  
にこりと笑って、猛ったものをあてがい先端を沈める。  
「いっ、指より気持ち悪いじゃないですか、やめて、それ以上は、ほんとに――いったああ」  
 
「使用人の口調とは思えないな。もう使用人としては置いて置けないか」  
「そ、んなこと言ったって、ほんとうに痛い、ひいっ、押し込めないでっ」  
メイドは痛みに、主も力加減など分からないままのメイドに締め付けられて双方嫌な汗をかいている。  
「もう少し、力を抜いて」  
「むり、そんなの無理」  
「やれやれ、手間のかかる」  
主は手首の紐を解いて指を絡め、耳を食んだ。舌先を耳に入れてわざと音を立てる。  
「今に下もこれくらいぐちょぐちょと音をさせるようにしてやる」  
メイドの注意がそれたタイミングを見計らって、主は腰をすすめて奥まで到達した。  
「――ほら、入った」  
「いゃ、ひど、い、どして、こんな……」  
もはや片言でしかしゃべれないメイドの指に絡めた己の指に力をこめて、主は少し引いてまた中に入る。  
途端にメイドが、顔をゆがめる。  
「なんでっ動くんですか、じっとしていればまだ耐えられるのに」  
「それは、酷というものだ」  
主はまたゆるりと動く。メイドはそのたびに、泣き言を投げつけ主を拒む。  
ようやく耐えられるかと思ったのに、主の動きはだんだん大きくなってきて、それとともにいつもは冷静な主の顔から落ち着きが  
失われていた。眉をひそめて何かに耐えるような表情になっている。  
主に手をつけられ、無理に体を繋げられてメイドはその情けなさにますます泣きたい思いになる。  
唐突に主が動きをとめ背筋を震わせた。同時に中に入っていた主のものがびくびくと跳ねるような動きになったのに気付いた。  
 
主がしばらくしてからメイドの上からどいた。大きく息をついて、主は実に満足そうに笑った。  
「やっと私のものになったな」  
震える手でメイドは制服を整える。身動きした途端に足の間に生じた違和感に、顔をしかめる。  
主は無遠慮にそこに布をあてがって拭う。その手をメイドははねつけた。  
「私は、この屋敷に勤めた時から旦那様のものです。こんなことをして確認なさる必要はありませんでした」  
その言葉に主はメイドを抱きしめる。  
抱きしめられながらうつむくメイドは、続く主の言葉に顔をあげた。  
「お前が好きだから、愛しているから全部欲しかったんだ」  
その言葉に別の意味で涙がこぼれそうになったメイドは、しかし。  
「だが私はまだ満足していないので、今度は素直に抱かれなさい」  
主の反省していない台詞に柳眉を逆立てる。  
「一体、何を考えていらっしゃるんですか」  
主は、メイドの怒りをさらりとかわした。  
「お前のこと」  
真っ赤な顔で振り上げたこぶしは宙でとまり、主に握りこまれた。  
 
 
終  
 
 
 
 

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