雨だれ<1> まだ愛故描写なし。  
 
 真夜中に携帯電話が鳴った。絵理は明かりのない部屋で手さぐりして腕を伸ばした。  
傍らで眠っていた男が気配に気づいて目をさます。裸の体に毛布を巻いて、絵理は携帯電話を取った。  
「もしもし?」  
「絵理?起きてた?」  
 電話の向こうは母だった。  
「ううん、寝てた。どうしたの、こんな時間に」  
 携帯の時計によれば、時刻は既に12時を回っている。常識的に考えて電話の時間ではない。  
「お隣の英(ひで)ちゃん、憶える?」  
「・・・憶えてるけど、どうかした?」  
 憶えてる、どころの話ではない。二度と思い出したくなかった。  
「今日、亡くなったそうよ」  
 その言葉に、絵理は母には気付かれないよう胸を撫で降ろした。朗報だったら聞きたくなかったが、  
一番待ち望んでいた知らせだった。  
「そう」  
「明後日お通夜で明々後日お葬式だそうよ。急だけど、帰ってこられる?」  
「そうね、なんとかしてみる」  
「わかったわ、遅くにごめんなさい」  
 それだけ言って、電話は切れた。  
「どうした?」  
「幼馴染が死んだって。明後日お通夜で明々後日お葬式だけど、帰ってこられるかどうかの確認」  
 ベッドに横たわったままの男の隣に絵理は潜り込んだ。  
「幼馴染の訃報の割には、淡々としてるんだな。仲が良かったんじゃないのか?」  
「まあね。幼馴染っていったって、田舎の幼馴染はきれい事だけじゃ済まないから・・・  
これでもいろいろあったのよ」  
「へえ。たとえば、こんなことも?」  
 男はそれと分かるように体を密着させてくる。  
「それは別の男」  
 絡んできた腕を解かないまま、絵理は体を任せた。目を閉じる直前、部屋の隅に置かれたピアノが目に入った。  
 
 星明学園中高では毎年全校対抗の合唱コンクールがあり、中・高から一クラスづつ優勝クラスには  
NHKコンクールの都大会に参加する権利が与えられる。  
大学までの一貫教育だから受験がない分部活動や学校行事に力を入れるのがこの学校の方針で、  
数年前にはそれが功を奏して念願の全国大会に駒を進めたこともある。  
「鐘が鳴る 鳩が飛び立つ 広場を埋めた群衆の叫びが聞こえる 歌を 歌をください」  
 音楽室は高校も含め3つあるが、この時期はどの教室も朝から晩まで歌声が途切れることがない。  
ピアノもフル稼働している。  
「陽が落ちる 油泥の渚 翼なくした海鳥の呻きが聞こえる 空を 空をください」  
 この曲は、序盤と終盤はあまり分岐が多くない。問題は中盤だ。  
「こだまして 木々が倒れる」  
「ストップ」  
 本田絵理は歌いかけの声を止めた。  
「男子の今の入りかた、頭の「こ」の部分が聞こえない。もういちどちゃんと指揮者の合図を確認して、  
女子に頼りすぎだから自分が主旋律になると自信がなくなるでしょう」  
「はいっ」  
 序盤は難易度の低いピアノの伴奏が終盤になるにつれて難易度が上がり、自信をなくしていく。  
一度全体を通して確認しておくか、と絵理は思った。  
 
 絵理は音大を卒業し、非常勤講師を2年経て今年から常勤の専任講師になったばかりだった。この学校は生徒の意識が高く、  
行事にも勉強にも真面目な子供たちが多い。私大の付属に多い「付属上がりのバカ」も少なく、保護者の意識も高いから、我ながらいい職場に恵まれたものだ。  
「お疲れ様です」  
「お疲れ様」  
 職員室に入ると、先ほどまで受け持っていた3−Bの担任が声を掛けてくる。  
「どうですが、うちのクラスは」  
「女子はかなりいい感じです。が、男子が頼りないですね。  
しっかりパートリーダーになれるのが一人いるとだいぶ変わるんですが」  
 大会に出る以上校外の評判にかかわり、ひいては来年の志願者数に直結するだけに、合唱コンクールは教師の査定に影響する。  
少しでも良い出来で優勝したい、望めるなら都大会を勝ち抜いて出世したいと、  
音楽教員以上に深く関わる担任たちは休日と朝、放課後全てを返上して本番に臨む。  
「B組の田中瑞穂ですが、今度伴奏の指導をするので本人に伝えておいてください」  
「わかりました」  
 用件を済ませて絵理は校長に向きなおった。  
「申し訳ありませんが校長、地元にて不幸が発生したので明後日と明々後日だけお休みを頂戴できると助かります」  
「不幸?」  
「はい。よりによってこの時期に」  
「できればNoと言いたいところだがね」  
「すみません」  
 
 主任の佐藤先生と相談してOKが出れば、という条件をクリアし、絵理は連休を手に入れた。  
「ずいぶん急ねえ」  
「すみません、夕べ訃報が届いたもので」  
 佐藤先生はため息をつく。  
「明々後日は2−Eと1−Dの土曜練の依頼が入ってたけど」  
「担任の先生方にはお話ししてあります。代わりにお土産をせがまれました」  
「もう少し時期をずらしてくれればよかったんだけどねえ」  
「ハタ迷惑な時期に死んでくれたと思いますよ」  
「人が死ぬ時期ばかりは選べないもの。まして本田先生のご実家は地方でしょう?」  
「一度葬式に顔を出さないと何年も陰口を叩かれるような田舎です」  
 そのあたりの感覚は、23区以外の土地に住んだことのない佐藤先生には理解しがたいものらしい。  
「想像できないわ」  
 いっそそれくらい縁の薄い場所なら良かったのに、と内心絵理は思った。  
 翌日、放課後の指導を石井先生に交代してもらった絵理は大荷物を抱えて東京駅に向かった。  
東京駅まで一時間、東京駅から新幹線で二時間、更に単線のローカル線で四十分。  
乗り換えの回数は決して多くないのに、そういえば成人式と法事以外の理由では一度も帰っていなかった。  
大学時代はバイトと授業を理由に、就職後は仕事と副業を理由に(私立の非常勤講師の給料は安い)。  
 それ以上に、英ちゃんのせいだ。窓の外を流れだしたビル街を見ながら、絵理はため息をついた。  
 
 絵理は幼馴染で隣人の佐野敏幸(としゆき)と向かい合っていた。敏幸の目の前には大量の参考書が積まれ、  
絵理の目の前には世界史の教科書が広げられている。  
「1789年6月17日、第三身分を中心に憲法制定国民議会成立」  
「6月20日、テニスコートの誓い」  
「では7月14日、バスティーユ牢獄に押し入る前に民衆が立ち寄ったのは?」  
「廃兵院」  
 世界史では校内で追随を許さないと言われる敏幸は、なんなく答えて見せた。  
「じゃ、知ってるか?マリー・アントワネットの昔の音楽の家庭教師」  
「モーツァルトじゃなくて?」  
「そっちはプロポーズして振られたほうだろ。正解はグルック」  
「あ」  
 音楽にはまるで興味がないくせに知識の点ではなぜそういう細かいところまで知っているのか、  
絵理には敏幸の脳がわからない。一度脳みそを割って中を調べてみたいほどだ。  
「敏ちゃんの頭の中ではどこからどこまでが世界史で、どこからが文化史なのかわかんない」  
「全部世界史だろ。日本も含めて」  
 それくらいの頭でなければ、普通科の学年トップはつとまらないのかもしれない。2年生の期末テストでは世界史と現代文で満点、  
本人いわく苦手という生物、英語も八割は取っている。唯一数学が六割どまりだ。  
「敏ちゃん、もう志望校は決めた?」  
「今のところは早稲田か慶応の法学部。本格的に司法試験目指すつもりだから。絵理は?」  
「まだはっきりは決めてないんだけど、桐邦音大か国崎音大のピアノ科かな。  
プロは難しいと思うけど、教職を取って先生を目指そうと思って」  
 敏幸と絵理はどちらもN高の生徒だった。春休みを挟んで、四月から三年生になる。N高はこのあたりでは並ぶもののない進学校で、  
地元では唯一の音楽科があり、浪人を含めるとほぼ全員が大学に進学する。  
敏幸は普通科、絵理は音楽科でトップを取っていた。  
「N大の教育学部は?一番近場の国立だろ?」  
「あそこはセンター重視で実技のウェイトが低いし、実技の授業数が少ないから。  
敏ちゃんだって法学部がないから受けないって言ってたじゃない」  
「それに、絵理は一人暮らししたいって言ってたしな」  
 ぐい、と敏幸は絵理の体を引き寄せた。腕の中に抱き込み、指先を撫でる。そのまま、手首に口づけた。  
「実家通いじゃ、安心してこんなことも出来ない」  
「敏ちゃん」  
 絵理が敏幸にはじめて体を許したのは、高校に入って最初の夏休みだった。それから一年半になる。そろそろ  
親にも弟にも邪魔されない環境が欲しいと思うのは男の必然だ。  
「東京の大学に入ったら、一緒に暮らすか」  
「無理だよ。音大生は学生会館か寮しか選択肢がないって先輩が言ってた」  
「丁度いいだろ、こういう音が漏れないんだし」  
 冗談めかして敏幸は言う。  
「んもう、変態」  
「変態で何が悪い」  
 そのまま敏幸は服の下に手を差し込み、絵理の胸に手をやった。小さいころは俎板だったというのに、  
よくここまで自分好みのFカップに育ったものだ。いや、育てたというべきか。  
 押し倒して事に及ぶ間も、敏幸は絵理の指に気を遣うことを忘れない。知識ではなく経験で、絵理はそれを  
よく知っていた。  
 
 地元の駅からN駅までは、ローカル線で四十分かかる。N駅は地元で唯一の都会で、同時に新幹線の乗り換え駅も兼ねている。  
この路線は田舎にしては進学校が集中しており、入試レベルも進学率も高い。  
 それを支えているのが地元の旧家であり大地主、兼名士である多田家だった。N駅前に多田商事の本社と  
東京、大阪に支社を構え、雇用と経済を生み出している。このあたりで多田と取引のない地元企業は皆無だ。  
 地元の駅前に聳え立つ瀟洒な洋館が多田の本家で、絵理の母は昔から家政婦として働いている。  
絵理が東京の音大を視野に入れられるのも、その雇用があってこそだ。  
 駅前から山のふもとに見えるその洋館に頭を下げると、敏幸がやってきた。  
「いつものお礼か?」  
「うん」  
「よくやるな」  
「いいじゃない」  
「絵理姉(ねえ)、おはよ」  
「英ちゃん、おはよう」  
 英ちゃんこと英幸(ひでゆき)は敏幸の二つ年下の弟で、今年からN高校の一年生になる。  
「敏ちゃんの学ランもこんなにきれいだったのに、どうすればここまでボロボロになるんだか」  
 絵理は敏幸のブレザーをつついた。あと一年もつかどうか怪しい。  
「うるせえな」  
「英ちゃんは何か部活入るって決めた?」  
「ううん、まだ」  
「うちは運動部は強くないけど、文化部は結構盛んだよ」  
「そうなの?」  
「合唱部とか科学部とか、大会にも出てるみたい。英ちゃん合唱部だったし、どうかなっ  
て思って」  
「ふうん」  
 道の向こうから、駅に向かって数人の女子がやってくる。  
「佐野っちおはよー」  
「絵理、今の課題曲何?」  
 英幸が女子の制服を見比べた。絵理のセーラー服のタイは赤だが、他の女子は緑だ。  
「どうしたの?」  
「襟姉の制服って、他の人と違うの?」  
「ああ、普通科はタイが緑で、音楽科は赤なの」  
 ローカル電車が入ってきた。通学時間だけあって既に社内は缶詰だ。指先が押されないように守りながら、絵理は電車に割って入った。  
 
 普通科と音楽科は教室が一緒だが、音楽科には防音の音楽室がある。通常の授業が終わってからここで弾いていくのが絵理の日課だった。  
今の課題はショパンの「英雄ポロネーズ」で、後半のオクターブ連打が  
難しい分弾きごたえがある。窓を叩く音がして、絵理は振り返った。カーテンを開ける  
と、敏幸だ。  
「もう帰るの?」  
「ああ。受験勉強」  
 そう言って赤本を取り出す。「早稲田大学法学部 入試過去問題」絵理には100年かかっても解けそうにない。  
「何の曲弾いてたんだ?」  
「ショパン。聞いたことくらいあるでしょ」  
「太田胃散の」  
「それもあるけど、革命とか、幻想即興曲とか」  
 そう言って、絵理はピアノの前に座る。  
「こんなのとか」  
 一曲弾き始めた。  
「何だっけ、この曲。英なら結構クラシック聞いてるんだけどな」  
「雨だれって、タイトルくらいは聞いたことない?」  
 言われてみれば確かに、正確に刻むリズムが雨音を連想させる曲だ。出だしはやさしい通り雨のようだが、  
次第に重苦しく陰鬱な表情になってくる。  
「暗っ」  
「計算とか一切しないで、いかにも感覚で作ったって感じ」  
「ピアノの詩人ってか」  
「そうそう」  
 
「どうしたの?二人とも」  
 そこに英幸が通りかかる。  
「英ちゃん」  
「何か面白い部活でもあったか?」  
「そうだね。文化部だと天文部とか」  
「運動部は?」  
「運動部は明日見てみようと思って。今、雨だれ弾いてなかった?」  
「お前、耳いいな」  
「ちょうど英ちゃんがクラシック好きとかって話してたところだったんだよ」  
 続きを弾き始める。  
「そうそう、隣からよくピアノの音が聞こえて、それでピアノ曲は憶えた。小犬のワルツとか、トロイメライとか、  
月の光とか」  
 ついていけんと言うように、敏幸が頭を横に振る。彼にとってはピアノの曲はどれもこれも同じように聞こえるらしい。  
太田胃散=ショパンはウィキペディアからの知識である。  
「同じ腹から生まれた兄弟なのに、何を間違えればこんなに違うんだか」  
「それよりそろそろ行かないと、次の電車逃すと45分待ちだよ」  
「うお、やべっ」  
 兄弟が時計を見やった。  
「じゃあね」  
「じゃあな」  
 二人が去ると、絵理はカーテンと窓を閉めた。  
「さて、練習練習」  
 
 夕食も終わり、敏幸は居間で過去問を解いていた。傍らでは父が野球中継を見ている。  
「あんた、テレビのついてる中でうるさくないの?」  
 母が声をかけるが、敏幸は知らぬ顔だ。  
「全然」  
 現代文と古文はほぼ満点だが、漢文が足を引っ張る。英語はセンターと早稲田では傾向がまったく違い、  
早稲田でかなりを取れてもセンターでは得点が落ちる。  
 隣家からは、かすかにピアノの音が聞こえてきた。  
「あ、悲愴」  
 弟が顔を上げる。ピアノ曲なんざ敏幸には聞き分けがつかない。5分も聞けば欠伸が出るが、  
弟にとってはそうでないらしい。  
「・・・絵理姉って、彼氏とかいるのかな」  
 ふと英幸が言った。  
「兄貴、知ってる?」  
「知らね」  
 わざと敏幸は言った。知らないも何も自分だが、秘密にしておこうと決めたのは両方の合意だった。狭い田舎や  
校内でやっかみや誤解やあらぬ噂を巻き起こしたくない。もし別れるようなことがあっても墓の中まで口外しないと決めた。  
「あっそ」  
 それだけ言って、英幸は自室の二階へと上がった。次は、世界史だ。  
 
「えりちゃん、ピアノひいて」  
 小さいころの思い出は、いつも絵理と兄との3人だ。あまり運動が得意でなく、本に浸っているほうが好きだった  
英幸は、それゆえに家の中で過ごすことのほうが多い子供だった。兄も似たようなもので、家の中は子供らしいボールよりも絵本のほうが多い有様だった。  
 そのうちに隣家の絵理がピアノを習い始め、どうやら才能もあったらしくめきめきと腕を伸ばしていった。  
そのピアノを聞くのが英幸の趣味になり、同じ目線で話がしたくなってピアノ曲を聴きあさるようになった。それが恋愛感情に変わるのに、時間は必要なかった。  
 隣家からは、相変わらずピアノの音が聞こえる。ベートーヴェンの「月光」第三楽章だ。少しだけ窓を開けて英幸は電気を消した。  
月の狂気を楽譜に落としたような、不安定で激しい曲だ。低くうねっては駆けあがり、たたみかけるように主題が繰り返される。  
―こんなにきれいな曲を弾くのに、兄貴には股を開くんだ。  
 兄と絵理の関係を知ったのは二月前だ。公立の推薦入試とインフルエンザの流行が重なり、大事を取って三年生だけが臨時休校となったのだ。  
仕方なしに自宅に戻ると、兄の靴の他に革靴がある。誰か来ているのだろうか、そう思って階段を上がろうとし、足が止まった。  
「ん、や、あんっ」  
 押し殺したような喘ぎ声が英幸の耳を正確に射た。  
「敏ちゃん・・・はあんっ」  
「絵理・・・っ」  
 聞き間違いもしない、兄の声だった。  
「や、そんなとこ、触っちゃ・・・」  
 物音を殺して、居間に取って返した。知らず知らずのうちに股間は否応なく反応し、存在を主張してくる。  
両親は普段から共働きで、夜まで帰ってこない。英幸の偶然さえなければ、確かに誰にも邪魔されない絶好の状況だった。  
聞きたくない気持ちと本能とが交錯した。  
「あんまり、動か、ないで」  
「無理。すげー気持ちいい」  
 ぎち、ぎちとベッドの軋む音がする。音を出さずに階段をのぼり、自室に駆け込むと、英幸は膨らんだジッパーを降ろした。  
兄の部屋からはそれとわかる水音が聞こえてくる。右手が怒張を握りしめ、知らず知らずのうちに摩擦を始めていた。  
「ん、んん、はあっ」  
 言葉もなく喘ぐ絵理の嬌声が、既に限界に近いことを告げていた。痛いほどに膨れ上がったそれを強くこすり上げ、英幸は倒錯した絶頂を迎えた。  
 何食わぬ顔で今帰ったような素振りをした英幸を、何もなかったかのような表情で絵理と敏幸は迎えた。  
彼女は相変わらず「幼馴染のお姉さん」の表情をしていたが、英幸にはそれが張り付けた仮面のようにさえ思えた。  
 二月前を思い出して、英幸はほくそ笑んだ。誰のものでもないと信じていた彼女が、既に文字通り兄のものであると  
知ったときの絶望たるや、誰にも分るものではない。そして二人は、自分にさえその関係を隠しているのだ。  
 二人がその関係を周囲に隠しているなら、それを利用してしまえばいい。  
普通科と音楽科のトップが不純異性交遊など、田舎の高校にとっては絶好のスキャンダルだ。学校どころか地元にさえいられまい。  
―さあ、どうしようか。窓を閉めて、英幸は目を閉じた。  
 
雨だれ<1>、終わり。  
 

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