委員長の小さな冒険  
 
「ねえ、委員長、ここってこれで良いんだっけ?」  
「え〜っと、うん、それであってるよ」  
「ねえ、いいんちょ〜、暑いよ〜、疲れたよ〜」  
「愛、駄々こねても終わんないよ。ほら頑張って!」  
私は白鳥沙夜。中学二年生。今は放課後の学校で、加奈と愛との三人で宿題をやってる。  
別に宿題を忘れたからとかではなくて、今やってるのは今日出された分。  
私達は小学校のときからの友達で、いつも放課後に残って学校で宿題を片付けてから帰る。  
理由は単純に三人でやったほうが楽しいからだ。  
まあ、ほんとはおしゃべりがメインだったりするのだけど、今日は週末ということもあって宿題がいつもより多くて、  
おしゃべりをする余裕もなく、今正に必死に片付けている最中なのだ。  
ああ、それから私、本当は委員長じゃないんだ。ただ、小学校のときに委員長だったことと真面目な性格とか行動から、  
今も友達からはそう呼ばれているだけ。ずっとそう呼ばれてるから、もう慣れちゃったけど。  
 
「やっと、終わったよぉ〜」  
「全く、なに、この量…」  
「…さすがに、疲れたね…みんな良く頑張ったよ」  
私達が宿題を片付け終わった頃には、少し日が傾いて空が赤く染まり始めていた。  
「でも、これで休みの日は好きなだけ遊べるね」  
「ああ〜、早く帰って休みたいよ〜」  
「今日は寄り道は無しだね…」  
私達はそれぞれ鞄を手に、ドアの方へと歩き出す。  
「あ〜、頭クラクラするよ。いいんちょ〜、助けて〜」  
「え?ちょっと、愛、なにを…ったぁ〜〜!」  
愛が私に寄りかかってきて、そのまま倒れこんでしまった。  
「ちょっと、愛、なにしてんの!」  
私と愛は、二人して床の上で絡まっている。  
ちょっと体にピリピリとしたものが走ったけど、捻ったりはしてないみたい。  
「委員長、大丈夫!?」  
「私は平気みたい…愛は?怪我してない?」  
「うん、愛も大丈夫……だけど、ごめん…ごめんね、いいんちょ…」  
「いいよ。怪我はしてないんだし」  
「えっと…それもあるけど…これ…」  
そう言った愛の手には、私の制服のブラウスが握られていた。  
どうも倒れこんだときに、私のブラウスを掴んだらしく、ブラウスのボタンが下からいくつか取れてしまっていた。  
「…しょうがないよ。…あ、ボタン見つかるかな?…」  
幸いなことにボタンはすぐに見つかった。でも、今ここでボタン付けをしていると、  
時間がかかって帰るのが遅くなってしまうかもしれないので、私はそのまま帰宅することにした。  
 
「ねえ、お腹大丈夫?」  
「うん、腰のとこに挟めば、どうってことないよ」  
「ごめんね、いいんちょ」  
「愛もそんなに落ち込まないの、ね」  
 
昇降口についたとき、突然加奈が声を上げる。  
「あ!あたし、良いこと思いついた」  
「?良いことって」  
「ちょっとだけ、我慢してね〜」  
加奈は私の前にしゃがみこむと、腰のところに挟んだブラウスを引っ張り出して裾と裾を結ぶ。  
胸のすぐ下で結ばれたため、私のお腹は完全に丸出しになってしまう。  
ちなみに胸も強調されてるけど、残念ながら私の胸は人並み以下なので、ほどんど意味が無かったりする…  
「どう!ヘソ出しだよ!」  
「…いや、どうって言われても…」  
「わ〜、いいんちょ、大人って感じでカッコイイ〜」  
加奈も愛も喜んで、カッコイイと私を誉めそやす。  
「う〜ん。でもあんまり派手な格好はちょっとね…」  
「え〜、カッコイイのに…」  
「愛もそう思うよね!あ、そうだ!愛、あたし達もやろうか?」  
「あ、そうだね、やろうやろう」  
「それはダメ」  
私は伊達に委員長なんて呼ばれてるわけじゃない。要するに、固い性格なのだ。  
「じゃあ、愛達の代わりにやって♪」  
「先生とかに見つかったら、ボタンが取れたせいにすれば良いんだし、ね」  
しばらく二人と、あ〜だこ〜だと言い合ってみたけど埒が明かない。  
う〜ん…ほんとはどうかと思う…だけど、二人は引きそうもないし…しょうがないよね。  
それに、いざとなったら解けばいいんだし…ま、このくらいなら、問題ないよね。  
「わかったよ。今日だけだからね」  
でも、人にこんな格好させて、楽しいのかな?  
 
とりあえず、加奈が適当に結んだ裾を自分で結びなおして少し整えてから、私達は昇降口から出る。  
もう校内には、運動部の生徒くらいしか人はいないからか、学校の敷地内で誰かとすれ違うことはなかった。  
校外に出ても、私達以外には誰もいない。こんなんじゃヘソ出しも意味がないね。  
「ねえ、いいんちょ、お腹寒くない?」  
「ん?大丈夫だよ」  
「でも、もうちょっと早い時間だったらなぁ〜。そうすれば人も少しはいたのに…」  
「…その場合、私はこんな格好になることを、断固として拒否してたよ」  
「え〜、せっかくカッコイイのに、人に見せないのはもったいないよ〜」  
だから、あんまり見せたくないんだけど…  
しばらく歩いてると、前からおじさんが歩いてきた。  
あ…やっぱりドキドキしてくる…  
……  
おじさんは私のお腹を見ることなく通り過ぎていった……二人を盾にして、さらに鞄でガードしてたから当たり前だけど。  
「…いいんちょ、隠れたら意味無いよ」  
「なんで隠れるかな〜。見せびらかしてこそのヘソ出しでしょ!」  
そうは言われても、やっぱり…なんか、恥ずかしい。  
つい「それなら自分でやれ」とか言いそうになるけど、さっきダメって言った手前、そういうわけにもいかない。  
 
ああ、なんでダメって言っちゃったんだろう…ちょっと自分の性格が恨めしくなる。  
「でもね、変だと思わない?この格好」  
私はよく見えるように両手を広げて二人の前に立つ。あんまり手を広げる意味は無いけど。  
膝丈ほどの紺色のスカート、真っ白なブラウス、手には鞄と、着ているものは至って普通の学生だ。  
唯一つ、ブラウスの裾を胸の下で結び、お腹が丸出しであることを除けば。  
それに、一緒にいる二人はお腹を出してなどいないのに、私一人だけヘソ出しなのはおかしいでしょ。  
「ね?さすがにちょっと…と思わない?」  
「全然。すごくカッコイイと思う」  
「愛もそう思うよ。みんなに見せようよ〜」  
ああ、ほんと、なんでダメって言っちゃったんだろ?せめて三人でなら、開き直れるのに…  
かと言って、今から「一緒にやろう」とも言えないし…あ〜、どうしよ…  
「お、前から人が来たよ。今度は若い男の人が二人」  
「愛、良いこと思いついたよ。みんなで手を繋ご〜」  
手を繋ぐ?  
私がその意図に気付くよりも早く、加奈はその意図に気付いたみたいで、  
あっという間に私の両手は愛と加奈の二人に握られ、隠れることも、お腹を手で隠すことも出来なくなっていた。  
…手を繋ぐって言うよりも、手を押さえられてるだけな気がするけど…  
私はお腹を晒したままなのに、二人は前へと、男の人達がいる方へと歩き、  
私は手を繋がれてお腹を晒したまま、だんだんと男の人達に近づいていく。  
「ねえ、いいんちょ。あの人達がまっすぐこっちに来たら、見られちゃうね」  
「あ…なんか、あたしまでドキドキしてきた…」  
握られた手から、二人の興奮も私に伝ってくる。  
ゆっくりとゆっくりと時間は進み、男の人達はまっすぐにこちらへと向かってくる。  
きっと、もう私の格好に、お腹が丸出しなことに気が付いてる…  
距離が縮まれば縮まるほどに、私の鼓動は強くなる…  
おじさんからですら隠れた私に、若い男の人、それも二人…ちょっとハードル高すぎるよ…  
もう誰が、誰の、どこを見てるかがわかる距離まで近づいてる…  
…ああ…見てる…見てるよ…しっかりと、真ん中の私を…そのお腹を…  
この人達は見ていることを隠そうともせずに、私の顔やお腹をまじまじと眺め回してる…  
三人で並んで歩く女の子。その中で一人だけ、お腹を晒した女の子を…見るなって方が、無理かもしれないけど…  
いつもは衣服に隠されたお腹を…私の無防備に晒されたおへそを…  
…男の人達が…今…見てる…  
…それに…私はどう見えてるんだろう?…両手を繋がれた姿は…  
心細いから、手を握ってもらってるのか…それとも、隠せないように、手を押さえられているのか…  
気の弱い子の、ちょっとした冒険か…それとも、二人にこんな格好をさせられているのか…  
 
この人達には、どっちに見えてるんだろう?…  
ほんの僅かな、だけど、とても長く感じる時間。  
私にとって、長い長い時間。  
その間、私は無防備な体を、男の人達に晒し続けた。  
 
「…あのさ、逃げないから手を繋ぐのはやめて。ほんと、お願いだから」  
手が自由でないと、不安になる。自由だったとしても、きっと隠せない。隠したら、また手を繋がれてしまうだろうし…  
それでも手を繋がれてるのは、手を自由に出来ないのは…自分が、無力になってしまった気がして……少し、怖かった…  
「いいんちょ、顔真っ赤だよ〜。可愛い〜」  
「じゃあ、もう手は繋がないよ。だから、隠れちゃダメだよ?」  
「…うん…ありがと…」  
ありがと…なのかな?…私、ひどいことされてるのに…  
 
 
私はお腹を晒しながら歩き続けてる。  
私達は同じ小学校に通っていただけあって、帰る方向が一緒だ。  
いつもは楽しい帰り道だけど、今は…あんまり楽しくない。  
私は自分の格好を気にしないように、二人とおしゃべりをしながら歩く。  
それでも誰かとすれ違うたびに、自分の格好とか、その人が私を見ていないかとか、どうしても気になってしまう。  
やっぱり、女の子が三人も固まって歩いてれば、それなりに目立ってしまうみたいで、男の人は私を見る人が多いみたい。  
だけど、一部の人を除いて、ほとんどの人は私を見ても、特に気にしてる感じはしなかった。  
最初の二人は、どちらかと言えば一部の人のほうで、まじまじと見るような人の方が例外みたい。  
それでも、私のことをじっと見る人がいないわけじゃないけど…  
この格好で街中を歩いて少し慣れてきた私は、今の自分の格好にもうほとんど抵抗感はなくなっていた。  
 
 
「ん?あれってさ、寺尾先生じゃない?」  
加奈が指差した先に、見覚えのある男の人がコンビニ袋を提げて歩いていた。  
「ああ、あの先生っぽくない先生か〜」  
「買い物の帰りみたいだね」  
寺尾先生は小学校の時の担任で、気さくな感じで生徒に人気のあった先生だ。  
私の中ではちょっといい加減だけど、偉ぶった感じがしない良い先生って印象。  
私もつい命令口調で話しちゃうことがあるから、偉ぶらない寺尾先生を尊敬してたりする。  
…加奈と愛が顔を見合わせて、嫌な笑いを浮かべてる…  
「せっかくだし、挨拶しようか」  
「さっ、いいんちょも一緒にいこ〜」  
私はまた二人に両手を掴まれて、引っ張られてく。  
「え!?ちょっと、手は握らないって…」  
…さすがに、この格好で寺尾先生の前に出るのは、ちょっと嫌だな…  
 
「先生♪お久しぶりです」  
「先生、こんばんわ〜」  
「…あ、あの…お久しぶり…です」  
……なんで私、ヘソ出しで寺尾先生の前にいるんだろ?…  
 
やっぱり、知ってる人の前でこの格好は緊張するよ…  
「えっと…三枝(愛のこと)と浪川(こっちは加奈)だから、ひょっとして白鳥か!?ずいぶんイメージが変わったな」  
違うんです…違うんですよ、先生…私は好きでこんな格好してるわけじゃないんです…  
「ねえ、先生、委員…じゃない、沙夜の格好、どう思います?」  
「愛達はすっごくカッコイイと思うんだけど、先生はどう?」  
先生は上から下まで一通り眺めてから、私のお腹をまじまじと見つめる。  
…これは、二人が意見を求めたからで、先生はそういう人じゃ、ない…ですよね?…  
「う〜ん…カッコイイねえ…そう見えなくもないかな…だが、男の目から言わせてもらえば、エロい!だな」  
……私の中の寺尾先生のイメージが……確かに教師っぽい人じゃなかったけどさ…  
それでも、そんなこと言う人だとは思わなかった…  
でも…先生も男の人なんだから…そういうことも考えるのが普通なんだよね…  
「いいんですか?教え子にそんなこと言って」  
「もう、うちの生徒じゃねえからな。しかし、白鳥は学校からここまで、その格好で来たのか?大胆になったんだなぁ」  
「あっ、それは愛が…いいんちょのブラウスのボタン取っちゃって…」  
「それで、あたし達がちょっと無理矢理に…沙夜は今でも、自分からこんな格好なんてしませんよ」  
ああ…私はなんて言えばいいんだろう?何を話せばいいんだろう?  
知らない人の前ならもう平気だけど、先生の前だと思うと頭がうまくまとまらない…  
せっかく久しぶりに、先生に会ったのに…黙ったまま、さっきから何も喋ってないよ…  
勇気を出して…何か言わなきゃ…  
「あ、あの、先生…私の格好、変ですか?…そんなに、エッチ…なんでしょうか?」  
…私、なんでこんなことを聞いてるの?…どう答えて欲しいの?…  
「い、いや…冗談のつもりなんだが…」  
「先生の冗談は、面白くないってことですよ。つまらないから、真面目な沙夜には冗談に聞こえないんですよ」  
先生は照れくさそうに、だけど楽しそうに笑ってる。  
「う〜む、つまらんか…まあ、それは置いといて、ちょっと刺激的なのは事実だな」  
先生の目は優しそうで、私をいやらしい目で見ていた人達とは、やっぱり違う。  
「先生、今忙しいですか?途中まででいいから、あたし達と一緒に帰りませんか?」  
「ん?そうだな、今から帰るところだから、一緒に帰るか」  
 
「やっぱりエッチに見えるんだね。その格好」  
四人での帰り道。愛が先生には聞こえないように、私に小声で話しかけてくる。  
「…そうみたいだね」  
さっきの話、先生は冗談だって言ってたけど、注意してくれてたんだと思う…  
「じゃあさ、いいんちょは、今までずっとエッチな目で見られてたのかな?」  
 
たぶん…そう…  
ほんとは、自分でもわかってたんだと思う…最初の二人に見られてから…  
私のお腹をまじまじと見つめるその視線は、いやらしくて…  
でも、先生に…男の人に言われるまでは…  
お腹なんて…おへそなんて…そんなに…大したことじゃないと…思い込もうとしてたのかも…  
…それなのに、私はなんで先生にあんなことを言ってしまったんだろう…  
『そんなにエッチなんでしょうか?』  
なんであんなこと言ったの?…そんなこと言えば…先生は私を…  
………  
ああ…そうか……そうなんだ…  
…見て欲しかったんだ…私を…  
私の…体を…  
私のことを、先生に…知ってる男の人に、見てもらいたかったんだ…  
少しだけ大胆な格好をした私を、見て欲しかったんだ…  
最初は二人に言われたからだったけど、人前でお腹を晒して、こんな格好で歩き回って…  
今も、先生がすぐ側にいるだけで…すごくドキドキしてる…  
ヘソ出しなんて私ぐらいの子も普通にやってることなんだと思う…だけど、  
私にとっては、お腹を…おへそを人に見せることなんて、まして男の人に、こんな街中で見せたなんて、初めてのこと…  
 
「あの…先生はこういう格好、お嫌いですか?」  
私は勇気を出して先生に話しかける。そうすれば見てもらえるから…  
「いや、嫌いじゃないな…白鳥は、気に入ってるのか?」  
「…そうですね…最初はちょっとと思いましたけど、今はそうでもないです」  
私の格好の話をすれば、先生の目は自然と私のお腹を見ることが多くなる。  
先生は話しているときも、お腹をじっと見たりはしない。  
でも、あんまり見られても恥ずかしいから、少しだけ…たまに見てくれるだけで…  
それだけで……なんか、嬉しい…  
「はぁ…先生、せっかく真面目な沙夜がこんな格好してるんですよ。もっと褒めてあげなくちゃ」  
「いや…立場的にな…」  
「加奈…私は…」  
加奈が私の肩に手を置いて、私を見る。  
加奈の私を見る目は優しくて、いつもみたいな感じじゃなくて…ちょっと真剣な感じ…  
「沙夜だって、意見…聞いてますよね?それって、不安だからですよ。一言だけでいいんです。認めて欲しいんですよ」  
「いや…俺だって、男だからな…か、可愛いとかは思うぞ…」  
可愛い……先生に…可愛いって、言われた…  
「先生、「とか」は余計ですけど、良い感じです。出来るなら、もっとよく見て具体的に褒めてあげると、もっと良いです」  
「……すまん、白鳥」  
先生は一言謝ってから意を決したようにしゃがんで、私のお腹を見つめる。  
先生の顔が…私のお腹のすぐ目の前で…  
先生…私は…少しだけで良いんです…そんなにじっと見ないで…  
「口下手で、すまんが……えっと…柔らかそうな感じとか…ちっちゃいおへそとか…そういうところが可愛い…と思う…」  
 
ああ…先生の息が…お腹をくすぐるよぉ…  
先生の…息が…言葉が…見られてることを…実感させる…  
「先生、柔らかそうですか?なら、少しだけ触ってみたらどうですか?」  
…なんか加奈の声のトーンが違う?…少し、興奮してるような…  
「あ、ああ、ちょっと触るぞ」  
「ひゃっ!」  
「…思ったよりも柔らかいんだな…その割りに、押すとしっかりと押し返してくる」  
せ、先生が…私のお腹を触ってる…  
指で撫でたり…突っついたり…なんか、ちょっと子供っぽい…  
でも、信じられない…先生が…私のお腹を触ってるなんて…  
先生にお腹を見せたのも、今日が初めてなのに…触らせてるなんて…  
あ…先生…おへその周りを撫で回してる…おへその淵に沿って、指を動かしてる…  
くすぐったくて…お腹がむずむずして…でも、嫌じゃない…不思議な気分…  
恥ずかしくて、お腹を引っ込めたくなるような……でも、嬉しくて、触っていて欲しいような…そんな変な感じ…  
だけど、やっぱり……触れられているうちに…撫で回されているうちに…  
だんだんと、私の中で恥ずかしさが大きくなって…  
触られてるんだと思うと…我慢できなくなってくる…  
「あ、あの…先生…そんなに触らないで…私…恥ずかしいです…」  
先生は、はっとして私のお腹から手を離す。  
「あ、ああ…悪い…柔らかくて…つい、な」  
「良かったね、沙夜。先生が夢中になっちゃうくらい、可愛かったって」  
うん…恥ずかしかったけど……先生に触られるのは、嬉しかったかな…  
 
結局、それから先生とは、意識しちゃってあんまり話せなかったけど、  
この格好で先生と一緒に歩いてるだけで、私には十分だった。  
たまに先生の視線を感じて、たまに見ず知らずの人の視線を感じて、見られてることを意識する。  
それだけで私の心臓はドキドキと激しく動く。  
お腹を出して歩いただけの、ほんの小さな冒険だけど…今の私にとっては大きな、精一杯の冒険…  
 
明日は休日だし、三人で遊びに行くことになると思うけど、今日みたいな格好はもうしないつもり。  
私には何のきっかけもなく、こんな格好は出来ないから…  
でも、もしも何かあったら…そのとき、私はどうするのかな…  
 
 
終わり  
 
 

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