…うん…ん…
…あれ?…ここは…
私は確かに、自分の部屋のベッドに入って、いつも通りの寝付きの早さで眠りに堕ちたはず…
でも、目が覚めると、見慣れたデパートの、衣料品コーナーの試着室にいた。
静かに流れる有線のBGMと、遠くに聞こえる喧騒が、今が営業時間中である事を教えてくれた。
帰らなくちゃ…何故かそう思った私は、寝呆けた頭を持ち上げて、何とか立ち上がる…
…?
!?
目の前にある試着室の鏡に写る自分の姿を見て、声を上げそうになるのを何とか飲み込んだ。
…何で裸なの!?服は!?
足元に目をやるけど、床の上には、空のカゴがあるだけ…後は何もない…どうしよう…
カーテンを少しだけ開けて、外の様子を伺う…暇な時間帯なのかお客さんはいないし、店員さんも、少し離れたレジにいるのが見えるだけ。
いつまでもこうしてる訳にはいかない…もう一度カーテンの外を覗いて、そろ〜っと足を踏みだす。
そのまま、勢いで試着室の外へ…遂に出ちゃったよ!とにかく、この場を離れよう!
するするっと商品の間を抜けて、衣料品コーナーの隣の日用品コーナーへ入り、商品棚の陰へ。
ここでふと気付く…衣料品コーナーなんだから、何か適当な服、着てくれば良かったんじゃ…
そう思って、衣料品コーナーを見ると、一組のカップルがいるのが見える…こりゃ、戻れないね…
とりあえず、商品棚の間を、屈んで小さくなりながら進む事に…じっとしてる訳にはいかないからね。
何とか人目を忍んで、少しずつではあるけど出口に近付いている。
それにしても…何でこんな事になってるの?…
こんな明るいデパートの中で、いつ見付かるかも分からないのに、全裸で帰らなきゃならないなんて…そもそも、何で全裸であんな場所に…
!?
危な!?…ぶつぶつ考えながら移動してたから、注意力が欠けてて、人が来てるのに気付かなかったよ…
今、驚いたせいかな?急に胸がドキドキし出して苦しい。
それに、何故かアソコがむずむずしてるし…嘘でしょ…太ももがぬるぬるしてきてるんだけど…
こんな状況なのにこんなに濡らしてるなんて、私、いつからこんな変態になっちゃったんだろ…
ああ…触りたいよ…でも、早く帰らなきゃ…
あうん!…勝手に手が動いて触ってるし…気持ち良いよぉ…でも、早く行かなきゃ…
私は右手の中指で、クリを擦りながら出口を目指す…なにやってんだろ…
オナしながら歩いてるから、スピードが半減してる…半減どころじゃない気もする…てゆうか、もうイっちゃいそ…
あ!ダメ!こんな所でイっちゃうぅ…
「あああ!あは!あぁぁん!」
ヤバい…声出てる…
「君!何してるの!?」
その声に驚いて振り向くと、警備員さんが走ってくる…見付かった!
私は怠い体を無理矢理立たせると、警備員さんから走って逃げた。
「こらー!待ちなさーい!」
大きな声で叫びながら追い掛けてくる警備員さん…その声のせいで、そこら中のお客さんが、私達を見てくる。
男の人の好奇な目…女の人の軽蔑の眼差し…嫌なはずなのに、見られる度に、体の中から熱い何かが溢れだしてくる…
何で…こんなの私じゃないよ…
…あ!出口が見える!もうすぐだ!
そう思った瞬間、足がもつれて盛大にすっ転ぶ私…すかさず、転がってる私を取り押さえる警備員さん。
「よし!おとなしく…しろ」
覆い被さるように取り押さえながら、私の体見てる…目が怖い…
「これから、君に処罰を与える」
…処罰?え?何?
その時、私の下腹部に当たる固いもの…何で警備員さん下半身裸なの!?嫌!?こんな所でなんてやめて!嫌!いやぁぁぁぁぁ!
は!?
はぁ…はぁ…夢?
良かった…怖かったけど、ちょっと気持ち良かったかな…
欲求不満にも程があるね、私って…
ところで、ここどこ?…
寝呆けた頭を持ち上げて周りを見渡す…小さな個室の中で、後ろはカーテンがあって目の前には鏡…
その鏡には、驚いた顔をした、裸の私が写っていた。