斗司明が件の資料室に忍び込むと、すでに先客がいた。
斗司明ほどではないが、女性としては背が高い。
だぶついた上下ジャージといういでたちながらも、
引き締まった四肢と腰のくびれ、
豊満な乳房と尻とが浮かんで見える。
体育教師の水川あやかだった。
この場所での淫行が露見したかと思い、
斗司明は内心に焦りを覚えた。
だが、「斗司明君だね」と尋ねるあやかの声は、
教育者としてのそれではない。
もっと薄暗く、粘つくような、甘い声だった。
斗司明は黙したまま頷いた。
「朱ちゃんのご主人様の」
そう言ったあやかの眼光には棘があった。
斗司明は答えない。
だが、それを肯定と判断したらしく、あやかは続ける。
「随分と果報者よね。
朱ちゃんにお金の関係なしに愛してもらえるなんて」
「そんなやっかみを言うためにわざわざ待っていたんですか」
「そう」
あやかは笑った。
だが、明らかな作り笑いであり、
見る者に違和感と不快感を植え付けた。
「知ってるかしら。
朱ちゃんはここひと月ほど、誰からの交渉にも乗ってないの。
私はまたあなたの仕業かと思ったけど、どうも違うのね」
あやかは室内をゆっくりと歩き始めた。
「朱ちゃんは自分で体を売るのをやめてるみたいなの。
なのに、あなたには体を許してる。
これがどういう意味か、わかるよね」
斗司明は答えない。
「私は朱ちゃんの体が無くちゃ生きていけないの。
それなのに、それなのに、君が朱ちゃんを独り占めにするから」
あやかは、ジャージの前をはだけた。
その下には、Tシャツはおろか、下着すらつけていなかった。
「あたし、おかしくなっちゃった」
感情を無くしたような顔に、形だけの笑みばかりがはりつき、
その頬を涙の筋が走った。
斗司明がたじろいだ。
その隙を、あやかは襲った。
豹のようなしなやかな身のこなしで斗司明に飛び付き、
押し倒した。
筋量と体重から見れば、
斗司明があやかを跳ね除けることなど容易であった。
だが、狂気に憑かれたあやかは、
斗司明を圧倒した。
あやかは斗司明のズボンのファスナーを下ろし、
大ぶりな逸物を引っ張り出しつつ、
自らも器用に腰をくねらせてジャージのズボンを脱いだ。
やはり下も、裸だった。
あやかは、斗司明の顔の上にまたがると、
自身は斗司明の股間に顔を埋めた。
斗司明の目の前に、あやかの女性の部分が曝け出された。
髪色と同じ、鳶色を帯びた暗い色をした柔毛が切れ込みの周囲を縁取っている。
ぱっくりと広げられた、貝の身のような切れ込みの内部は、
女としての脂が乗り切って、むっちりとふくらみ、
内奥から滲み出してくる、濃厚に匂う腺液で濡れそぼっていた。
切れ込みの上端の桃色をした肉の芽は、包皮をはねのけるばかりに突き立っている。
あやかは、その部分を、斗司明に押し付けた。
斗司明の鼻腔を、あやかの匂いが侵す。
あやかは鼻にかかった息を漏らしつつ、
斗司明のものに舌を這わせた。
「これが、朱ちゃんを奪ったもの」
あやかは、その先端に口づけすると、
小さな口に頬張った。
あやかの舌使いは乱雑だった。
斗司明の男根を執拗に小突き回し、ねぶりまわす。
削るかのようにして、歯が当たる。
斗司明の制止する声は全く報われることなく、
あやかは斗司明をなぶり続ける。
斗司明の意思に反して、
陰茎はむくむくと膨れ上がった。
怒張という表現がぴったりと合うかのように、
いいように弄ばれたそれは、
憤怒にいきり立ち、仰け反るようにして天を衝いていた。
あやかはそれから唇を離すと、立ち上がった。
激昂するそれの真上に腰が来るようにして、斗司明を跨ぐ。
あやかは現実を見ていない。
危うげな光を湛えた瞳が、虚空をさまよっている。
「朱ちゃんのものを、朱ちゃんを奪ったものを、私も」
あやかはたっぷりとした、柔らかな尻肉を両手で掴むと、割り広げた。
陽に焼けていない、白い肌に比べると、
少し黒ずんだその窄まりは、
蜜壺から溢れた滴りで、濡れて照り光っていた。
あやかはその上に腰を下していく。
肛門に斗司明の亀頭が触れた。
括約筋が収縮し、排泄孔への侵入物を、
彼女の乞い仇の侵入を、阻止しようとした。
だが、あやかはそれに構わず、腰に体重をかけた。
陰茎は撓むことなく、極太の亀頭があやかの肛門を突き破った。
あやかが叫んだ。
腰が、脚が、胸が震える。
肉の輪が激しく斗司明を締め付けた。
あやかは泣きながら、じりじりと腰を下していく。
肛門が内側に捲くれ込む。
張り出した雁首が腸壁を削る。
「あぁ、太い、痛い・・・・・・」
もともとそれほど開発されていたわけでもない、あやかの尻は、
血を滲ませながら斗司明の男根を呑み込んだ。
恐るべき大きさのそれを無理やりに捻じ込んだそこは、
痛々しいほどに広がってしまっている。
あやかは肛門に、焼き焦がすような疼痛を感じていた。
あやかは脚を広げ、斗司明にそこを見せつけた。
溢れ出た愛液が、接合部分を濡らしている。
「どうかしら、朱ちゃんじゃなくたって、
このくらいはできるのよ」
涙に濡れ、悩ましげに眉間に皺を寄せながらも、
あやかは勝ち誇ったように言う。
あやかが腰を浮かせる。肉茎が引き出され、
それに貼りついて肛門が捲くれ返る。
引き伸ばされ、引きずり出された内壁が、
限界に達してはずるずると、蛭のような動きで戻っていく。
あやかは抽挿を繰り返した。
突き込むたびに体を屈めて叫び、
引き抜くたびに身を捩って喘ぐ。
肛門は、あやかの愛液と腸液でどろどろに汚れ、
汚らしい水音で鳴いていた。
曝け出されたあやかの肉貝は、
際限なく潮を吹き出している。
「どう? どうかな?
朱ちゃんじゃなくたってこのくらいできるんんだよ。
朱ちゃんを手放してくれるなら、あたしが肉便器になってあげる。
朱ちゃんよりおっぱいは大きいし、
先生をいじめるのは楽しいと思うよ」
あけみは涎を垂れ流し、蕩けきった顔で言った。
だが、斗司明の反応は冷たかった。
「だめだ」
朱美の顔が凍った。
斗司明が続ける。
「あんたじゃ全然だめだよ、先生。
あんたは確かに手馴れてるし、いい体だけど、
あいつの体に比べると全然だ。
あいつが煮えたぎる毒液だとすれば、
あんたは精々ぬるま湯が限度だ」
あやかの顔が怒りに歪んだ。
人の形相がここまで変わるかと思うほどの変化だった。
斗司明の背に、冷たいものが走った。
交渉を蹴られ、自尊心を傷つけられた朱美の瞳に、
理性の光はもはやなかった。
獣のような唸り声をあげて、激しく腰を動かす。
肛門が擦り切れる。
腸壁が削られる。
はらわたが掻き回される。
まるく、豊かな乳房が跳ねて揺れた。
とめどなく汗が噴き出しては、背中に流れを作る。
肉壺から蜜が零れ、撒き散らされる。
あやかは肉食獣が爪を立てるような手つきで、
自分の下腹に手を押し当てた。
爪が白い肌に食い込む。
あやかはもう泣いていない。
あやかは笑っていた。
狂った笑いをあげていた。
自らの体を壊れるほどに使い、
斗司明から精を絞り喰らおうとしている。
「わかる?
君のちんぽが、ごりごりってあたしのお腹をけずってるの。
ちんぽが、お尻の孔からあたしの子宮を犯そうとしてるの」
あやかはより強く下腹を抑えた。
滅茶苦茶に蠢く腸壁が、斗司明をなぶる。
性技でも魅了でもなく、
あやかは手淫のように、肉体的な刺激を斗司明に与えることで、
無理やりに精を奪おうとしている。
あやかは、骨と肉で出来た窄精装置と化していた。
あやかは、自らの腹をしたたかに殴りつけた。
内臓が跳ねた。
堪らず、斗司明は放った。
紅く爛れたあやかの腸が白く焼かれた。
あやかは咆哮をあげた。
★
「・・・・・・先生」
ぽつりと、呟くような声がした。
斗司明が見ると、半開きになったドアの向こうに朱美が立っていた。
斗司明は自分が、そしてあやかが、
ドアに鍵をかけていなかったことに気付いた。
斗司明に裸でまたがるあやかの姿を目の当りにし、
朱美は必死で冷静さを取り繕うとしているようだったが、
愕然としたかのように目を見開き、青ざめていた。
「朱ちゃん」
恍惚とした表情で、あやかは立ち上がった。
すでに萎えかけている斗司明の陰茎が、
ずるりと抜け落ちた。
血を滲ませ、だらしなく、むごたらしく開いたままの肛門から、
どろりと白い雫が滴った。
あやかは、そこの知れない闇を湛えたその穴を見せつけるようにして、
肩越しに言った。
「朱ちゃんが最近遊んでくれないから、
朱ちゃんのお気に入り、貰っちゃった」
あやかは、指先で肛門の内縁をなぞると、
その指先にこびりついた、体液の混合物をねっとりと舐めた。
「おいしいね、これ」
朱美は、震える手でドアを閉ざした。
斗司明は跳ね起きた。
だらしなくうなだれた逸物を、どろどろのまましまい込むと、
あやかを跳ね飛ばして、ドアを開けた。
「朱美」
はじめて斗司明は朱美の名を呼んだ。
だが、それは朱美には届かなかった。
暗く、閉ざされた部屋で、
あやかが一人、狂った笑いを続けていた。
(了)