斗司明は放課後、図書室にいた。  
斗司明は読書を好むような文学少年ではない。  
周囲の大人の評を借りれば、やんちゃな、であるが、  
実際にはそんな生易しい性質の男ではなかった。  
ぎらぎらとした欲望を目の奥に宿す、  
獣的な危うさを見るものに与える男だった。  
もとより本に興味などない。  
斗司明は図書委員の朱美に呼び出しに応えただけだった。  
いや、呼び出しに応えるという表現には語弊がある。  
優位にあるのは自分のほうだ。  
斗司明はそう思っていた。  
 
ことは昼休みに遡る。  
返却本の配架のために朱美が人目につかない書架の陰に入ったとき、  
斗司明は彼女の二の腕を掴んだ。  
「お前、バイトしてるだろ。それもとびっきりいかがわしいやつ」  
「何を言っているのか、よくわかりません」  
朱美は表情を変えることなく言った。  
「じゃあ、これを見てでもわからないままでいられるかな」  
陳腐な台詞回しで斗司明はスマートフォンを取り出すと、  
保存してあった動画を再生した。  
 
液晶の画面の中で、全裸の少女が数人の男に体を預け、  
性的な行為に及んでいる。  
ミュートにしてあるため、音こそ漏れないが、  
少女は激しく喘ぎ、嬌声を上げていることがわかった。  
朱美に、その少女に覚えがないわけはなかった。  
朱美の顔が硬さを増した。  
「これ、学校側に出しちゃっていいのかな」  
斗司明は意地悪く言った。  
「要求はなんですか」  
感情を露にすることなく、朱美は答えた。  
 
「お、随分と頭の回転が速いじゃないか」  
「私の行為が問題であるとして、弾劾する気ならば、  
私の反応を聞くことなく学校にその動画を提出すればいいでしょう。  
なのに、人目に付かないところでわざわざ見せてくるのなら、  
別の意図があると考えるのが当然です」  
要求はなんですか、と朱美は繰り返した。  
 
「そうだなぁ。とりあえず、誠意を見せてもらいたいな」  
「先に言っておきますが、金銭的な要求は受け入れられません。  
そうでなければ、アルバイトなどやっていませんから」  
「じゃあ、要求するものは一つだ」  
斗司明は下卑た笑いを浮かべた。  
朱美はうんざりしたような溜息をついた。  
「わかりました。じゃあ、放課後、また図書室に来てください。  
そのときに、取り引き、としましょう」  
 
そうして、いま斗司明は、  
彼としては珍しくも図書室に来ているのだった。  
昼休みに比べると幾分か人が疎らな図書室で、  
適当に書架の間をうろついていると、  
「こっちです」と、  
朱美が声をかけてきた。  
斗司明は朱美に案内されるままに後に従った。  
図書カウンターの裏にある準備室へ入る。  
新刊図書や古書が詰まった段ボール箱が積み上げられた部屋の片隅に、  
壁と一体化したような、古ぼけた鉄のドアがあった。  
朱美はそのドアのノブに鍵を差し込み、鍵を開けた。  
鉄の軋むような音がするかと思ったが、  
ドアは重々しくも、音もなく開いた。  
 
促されるままにその部屋へ入る。  
その部屋は普通教室の半分ほどの大きさの部屋だった。  
壁際には積み上げられた椅子や、鍵のついたスチール製の抽斗棚が並んでいた。  
窓には日焼けしたカーテンがかかり、それを通した陽光が、  
室内を黄色く染め上げていた。  
「ここは図書資料室です。  
図書カードや利用者履歴簿が保管されていたりしますが、  
デジタル管理になった今では、ほとんど利用する人はいません。  
司書が年に一度入るかどうか。  
図書委員会の顧問教諭など、存在を知っているかどうかも怪しいものです」  
淡々と朱美は説明した。  
事実、斗司明もはじめて知った部屋だった。  
 
「へぇ、こんな部屋があるとは知らなかった。  
でも、お前の言ったことが全部事実とも思えないがなぁ」  
「どういうことですか」  
「そんな誰も使わない部屋なら、もっと埃っぽくていいはずだ。  
なのに、ここはそんなに小汚くない」  
そして、斗司明の嗅覚は敏感に嗅ぎ取っていた。  
かすかに漂うカビ臭さに入り混じった、異質な生臭さを。  
「この部屋、誰かが頻繁に使ってるんじゃねぇの」  
「私は事実のみを言いました。  
『ほとんど、利用する人はいません』と」  
朱美はそう言うと、何気ない仕草でドアの鍵を閉めた。  
斗司明が怪訝そうに眉を顰めた。  
「ほとんどから除外される極少数の人間の中心的な一人が、私です」  
朱美は斗司明を見返りつつ言った。  
 
「アダルトビデオの出演に比べれば安いものですが、  
それでもお小遣いぐらいは稼がせてもらいました」  
目の前の清楚で真面目そうな少女が、  
いきなり公序良俗を逸脱したことを言い出し、  
さすがの斗司明も面食らった。  
朱美はブレザーの上着を近くの椅子に引っ掛け、  
リボンを外しつつ続けた。  
「稼げる額は一度に一万や二万、多くて五万でしたけど、  
発覚するという危険性を考慮すれば、下手にアダルトビデオなどという、  
不特定多数の目に止まるものに出演するより、  
ずっと安全だったわけですね。軽率でした」  
スカートを下ろし、それを上着の上に重ねる。  
ブラウスを脱ぎ、簡単に折りたたむと、  
それをブレザーの掛かった椅子の座面に置いた。  
朱美は清純そうな見た目に合わせた、白い下着を晒した。  
 
「お、おい、お前、なにやってるんだ」  
「これが希望だったんですよね。  
でも、残念。今日は危険日なんです。  
ご期待に添う事はできないかもしれません」  
そう言いつつ、朱美はブラを外し、ショーツを丸めて脱ぎ去ると、  
それらをブラウスの上に置いた。  
朱美は煌々とした光の中に裸体を晒した。  
しなやかな肢体は、ほっそりとしながらも、つくべきところには肉がつき、  
真っ白で滑らかな肌は、カーテン越しに窓から差す光を浴びて黄金に輝いていた。  
本来、このぐらいの年齢であれば生えているべき恥毛は、  
斗司明がアダルトビデオで見たときと同様、一本もなく、  
肉欲にまみれた男たちに体を委ねてきたとは思えないような、  
童女のような割れ目を露にしていた。  
朱美は常から丁寧に処理しているものと思われた。  
 
「ソックスは残しておいたほうが良いっていう人が多いけど、どうします?」  
恥らう様子を見せることなく尋ねる朱美に、  
斗司明は毒気を抜かれたように肯定ととれるような、  
曖昧な返事しか返すことができなかった。  
朱美は斗司明に背を向けた。  
痩せぎみな、滑らかな背中に浮き出した肩甲骨が、  
朱美が腕を動かすのに連動して、白い肌の下で動いた。  
朱美の両手は自らの尻肉を掴み、左右に割り広げた。  
柔らかな肉の狭間に、薄く色付いた窄まりと、  
淡紅色をした陰部の媚肉が縦に並んでいた。  
 
「見ていてください」  
朱美はそう言うと、指を窄まりに潜らせた。  
細く、しなやかな指は、抽挿を繰り返しつつ、  
一本、二本と朱美の肛門に入り込んでいく。  
静まり返った資料室に、朱美の切なげな吐息と淫猥な水音が響く。  
くちゅくちゅとしゃぶるような音を立てつつ、  
朱美の肛門は左右の人差し指、中指、薬指の六指をくわえこみ、  
とうとうその根元まで飲み込んだ。  
斗司明は股間が猛るのを感じながら、  
声もなくその光景から目を逸らさずにいた。  
朱美は肩越しに、自分の指と斗司明の視線が  
己の尻に刺さっていることを認めると、  
再び指を蠢かし始めた。  
 
六本の指は後孔の淵をさするようにしつつ、  
ゆっくりと外側へ向けて動いていた。  
時折朱美が苦しげな呻きを漏らす。  
白く、柔らかそうなふとももの内側には、  
秘裂から流れ出した滴りが輝いていた。  
朱美の肛門はゆっくりとその径を広げ、  
ついに一杯に開いた。  
500mlのペットボトルが入りそうなくらいに広がった孔は、  
本来ならば秘められるはずの内臓の内壁を、  
外気と男の視線とに曝け出していた。  
鮮やかな紅色をした直腸の内壁は、  
露に濡れた緋牡丹のように艶めかしく照り輝き、  
朱美の呼吸に合わせて蠢いていた。  
その下淵から零れた腸液が、尻の谷間を伝い、  
女陰に向かってゆるゆると流れるのを斗司明は見た。  
 
「どうですか?」  
朱美はやや乱れた呼吸で尋ねた。  
斗司明の頭は血が逆巻き、答えるべき言葉を持たなかった。  
排泄のための器官が、糞をひり出す、汚穢に塗れた孔が、  
これほどまでに魅力的に思える自分に、  
斗司明は混乱しつつあった。  
朱美の尻の孔は、魂を喰らう肉食花のような、淫蕩な魔力をもって  
斗司明の視線を貪っていた。  
朱美は返事を待つことなく、次の動きに移っていた。  
尻の孔を押し広げていた指を、擦り動かす。  
淵が捲れて紅い内壁を晒すと、朱美はむずぐったそうに喘いだ。  
指はそのまま外側へ動いて、再び尻肉を掴む。  
ひしゃげがちになった丸い尻の肉の、指の這った部分に  
粘液が後を曳いていた。  
無理やりにこじ開けられていた肛腔は、遮るものがなくなったため、  
おもむろにその口を窄めていき、  
見る間に貪婪に咲き誇った肉花は、蕾にへと戻った。  
 
それは、元に比べると幾分赤味と腫れぼったさが加わっていたが、  
あれほどまでに貪婪なまでに大きく開いていたとは思えないほどに、  
慎ましやかな窄まりだった。  
朱美は両手を離した。  
ふっくらとした尻たぶが左右から蕾を覆い隠した。  
それまで息を殺していたのか、斗司明は大きな息をついた。  
朱美は、指にまとわりついた自信の体液を舐めとりながら言った。  
「黙っていてくれるのなら、  
あなたは好きな時に私の体を求めてくださって結構です。  
もちろんお金は頂きません。  
学校側からアダルトビデオを見ているような生徒と認識され、  
同級生から密告者として見られるよりは、  
上等な条件だと思いますが」  
朱美は、右手で右の尻肉を掴んだ。  
谷間に隠れていた、ひくつく窄まりが再び露になった。  
 
「先ほども言いましたが、今日は危険日なので、  
お相手できるのはこちらの方までです。  
こちらに来る前にちゃんと洗浄処理はしていますが、  
抵抗があるというのなら、また他日、  
本来の方で、ということにしますが」  
艶めかしい視線が斗司明に送られた。  
「いかがですか」  
朱美の尻孔がひくんと震えた。  
 
斗司明は朱美の視線に期待の色を見て取った。  
いや、斗司明の意識が朱美の肉体を貪ろうと  
逸りたったことによる錯覚かもしれない。  
斗司明は獣のような獰猛さを全身に漲らせつつ、  
朱美に歩み寄ると、彼女を押し倒した。  
斗司明はズボンのファスナーを下ろすと、自らのものを引っ張り出す。  
太く、大きいそれは、猛々しく咆哮するように反り返り、  
肉欲にはちきれんばかりだった。  
斗司明は朱美の尻肉を鷲掴みにすると、大きく押し広げた。  
ついさっきまでほぐされていた蕾は、  
悲鳴をあげるように綻んだ。  
朱美は自ら尻を高く掲げた。  
 
斗司明は自らの剛直の先端を朱美の蕾にあてがった。  
窄まりは、凶暴な奔流を拒むかのようにわずかに縮んだが、  
すでに十分すぎるほどにほぐされていたそこは、  
斗司明の肉槍によって簡単に突き破られた。  
じりじりと斗司明は朱美の腸内へと侵入する。  
朱美の眉間には深い皺が刻まれ、長く吐き出す息が苦悶を物語っていた。  
斗司明の肉茎が、全て朱美の尻に呑みこまれた。  
朱美の腸内は熱かった。  
柔らかな肉襞が無数に斗司明の男根に絡みつき、ぎちぎちと締め上げる。  
ねっとりと扱き上げるような蠕動に加え、朱美自身が喘ぎを漏らしつつ、  
全身を細かく震えさせており、それらの感覚が一度に斗司明を包み込む。  
斗司明は男根から脳髄が鋳溶かされていく感覚に襲われた。  
 
尻肉を掴む手に力を込める。  
腰をゆっくりと引くと、陰茎が肛門から引きずり出される。  
とろけるように熱い肉襞が亀頭に縋りつく。  
尻孔の淵は陰茎に貼りつき、外側に捲れかえっている。  
「ん、あ、あ、あ、あ、あ、あ・・・・・・」  
朱美は堪らずに嗚咽を漏らした。  
背中が大きく反り返り、涙と涎で端正な顔をぐしゃぐしゃにし、  
リノリウムの床に爪を立てる。  
斗司明は亀頭が肛門に引っかかるところまで引き抜くと、一気に突き込んだ。  
孔の淵が今度は内側に向かって没入していく。  
 
亀頭が乱暴に肉襞を掻き分け、腸壁を押し広げていく。  
「ゃ、あ、ああ、あああ、ああああっ!!」  
朱美が悲鳴をあげる。  
びくびくと腸内が激しく震え、斗司明を締め上げた。  
斗司明は野獣のような唸りをあげて、朱美の腹の中に放った。  
溶岩のような熱をもった白い迸りが、朱美の直腸を灼き溶かしていった。  
 
それより後は、斗司明の記憶も定かではない。  
ぼうっと靄がかかったような意識の中で、  
斗司明はひたすらに朱美の尻を犯し続けていた。  
あえぎ、よがり、啜り泣き、痴れ狂っていく朱美のはらわたは、  
犯せば犯すほどに斗司明に新たな愉悦を与え、  
その代償として彼の子種を搾り取っていった。  
いつしかその行為は肛姦のそれではなく、  
性器同士のまぐわいのような激しさとなり、  
朱美の肛門が擦り切れて血を滲ませるほどになってでも、  
斗司明は朱美の肉体を貪った。  
また、朱美もさらに激しく尻を貫くことを求めた。  
凶獣は淫獣の尻を本能と欲望に任せ、穿ち続けた。  
 
★  
 
斗司明が気が付いたとき、すでに資料室は薄暗くなっており、  
そこで彼は床に脚を投げ出して座っていた。  
斜陽の残光が室内を照らす中で、  
朱美はすでに制服を着て壁際のロッカーに背中を預けていた。  
「気が付きましたか」  
あれほど淫乱な姿を見せたのが嘘のように、  
朱美は淡々とした様子で斗司明を見下ろしていた。  
「体力が尽きて気を失うまでお尻で楽しむ人は初めてです」  
そう言いながら、朱美は斗司明の傍らに歩み寄った。  
その歩みはどこかぎこちない。  
 
「ちょっと待ってくれ」  
斗司明の心に、あった好奇心が鎌首をもたげた。  
「あんだけやりまくったんだ。お前、尻大丈夫なのか?」  
朱美は小さく溜息をついた。  
「あまり大丈夫ではありません」  
そう言うと、背中を向けたままスカートの後ろ裾をつまんでたくし上げた。  
朱美は下着を履いていなかった。  
乱暴に握りつぶされ、ほの赤く色づいた尻肉の間、  
斗司明が目茶目茶に蹂躙した部分に、  
円筒形に丸めた布が捻じ込んであるのが見えた。  
「開いたままになってしまって、しかもそのままだと、  
とめどなく精液が流れてきてしまうので、応急処置です。  
帰りに自転車に乗るのが憂鬱です」  
朱美が手を離すと、スカートが膝下までを覆い隠した。  
 
「もう一個だけ」  
斗司明は人差し指を立てながら尋ねた。  
「お前、ほかにもいろいろ小遣い稼ぎなんてあるだろうに、  
なんであんな真似をしてるんだ」  
朱美は振り向いて、微笑んだ。  
その微笑みは、今日見た中で、いや斗司明が今まで見てきたどの笑いよりも、  
淫蕩で、貪りつきたくなるほどに毒々しい笑みだった。  
 
「だって、好きなんですもの」  
(了)  
 
 

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