サーシャは、カメラのスイッチを入れた。
録画開始の赤いランプが灯る。
この無機質の、冷たい輝きを放つレンズが、
これから何千人、何万人という人間の瞳となるのだ。
そう考えると、サーシャの躯の芯に、熱く痺れるような興奮が走った。
心臓が、早鐘のように脈を打つ。
サーシャはベッドの上に転がった。
裸だ。
彼女が彼女の両親から享受したもの以外、
今は何も身に付けてはいない。
室内は撮影に十分な光量を確保するために、
点けられる明かりはすべて灯してある。
晧々とした光の中に、彼女は肢体を投げ出す。
サーシャは、カメラに向けて大きく股を広げた。
道徳的に考えれば、決して見知らぬ他人に晒してはならない部分を、
カメラのレンズに向けて曝け出す。
丹念に刈り込まれ、見目良く整えられた柔毛に飾られた秘裂。
そこからは、すでに女の悦びを味わい、
ぷっくりと膨らんだ、貝の身のような媚肉がはみ出し、
奥底から滲み出る情欲に、唇を濡らしていた。
白い尻肉の谷間の、菫色の窄まりが、
物欲しげにひくひくと蠢いている。
サーシャはカメラに視線を送った。
艶めかしいそれを受けても、
金属とプラスチックと少量のガラスで構成されたそれは、
相変わらず、冷たい反射光だけを投げかけてくる。
だが、サーシャはそのレンズの先からの熱い視線を感じ、意識した。
サーシャはベッドに置いてあった、それを手にした。
長大なものだった。
男性器を模した、黒い樹脂製の張型だ。
太さは彼女の腕ほどはある。
だが、それほどの太さが気にならないほどに、
その張型は長かった。
五十センチは優に超えるだろう。
人間のそれの大きさではない。
サーシャは実物を見たことはなかったが、
きっと馬のものはこれぐらいだろうと思った。
自分は、これから大勢の見ている前で、
畜生に犯されるのだ。
サーシャは言いようのない昂ぶりを覚えた。
指を舐め、たっぷりと湿し、
それを尻の孔になじませ、解きほぐす。
これほど巨大なものが、この小さな窄まりから体内に入るのだ。
準備をするに、足りないということはないだろう。
だが、すでに開発された彼女のそこは、
あっさりと指を飲み込み、びりびりと尾?骨を痺れさせ、
快感を脊髄を走らせて脳に届けた。
調教されすぎたサーシャのそこは、もはや彼女の細指だけでは、
慰めることは出来ないほどに、貪欲な性欲の口腔となっていた。
サーシャは、張型を小さな窄まりに押し当てた。
濡れた肛門に樹脂製の亀頭がひやりと当たり、
火照った窄まりが、熱を奪われて身を竦ませた。
だが、それに構わず、サーシャは張型を差し込んだ。
淑女のようなおちょぼ口をしていた肛門が、
貪欲な軟体生物が獲物を呑み込むように、
人口の亀頭の表面をしゃぶり、頬張った。
サーシャの尻を、体を内側から押し広げていくような異物感が襲った。
異物感は苦痛に、苦痛は快感にへと連結して、
彼女の神経を蝕んでいく。
肉壺の奥から、熱い蜜が溢れ出てくる。
脚が震え、腰が砕けそうになる。
身を縮こませ、快感の衝撃を堪えたくなる。
だが、今の自分は、無数の男たちの肉奴隷なのだと言い聞かせる。
サーシャは、カメラに向けて脚を開き、
その部分をよりはっきりと写させた。。
張型を奥へ、より奥へと進ませる。
無理やりに突き込んでも、排泄のために作られた臓器は、
逆から押し寄せる不躾な侵入者を受け付けず、
最悪、裂けて彼女に死をもたらすだろう。
その死の間際に訪れるであろう、
今際の苦悶を思うとサーシャは恐ろしくもあったが、
それとともに襲い来る悦楽の奔流を味わってみたくもあった。
サーシャは、これまでに排泄器官を調教してきたそのように、
図太い張型をゆっくりと出し入れしながら、さらに奥へと押し進める。
粘膜を、筋肉を、腹腔を騙し、なだめながら、
サーシャは巨大な偽りの陰茎で腸内を埋めていく。
便などとは比べ物にならないほどの圧迫感が、
腹部を襲い、責め苛んでいく。
直腸が、S字結腸が、陰茎の形に拉げられ、引き伸ばされていく。
あれほどの長さを誇った張型が、
すでに半分以上サーシャの中に潜り込んでいた。
真っ白な尻に、無機的な黒さでてかる張型が刺さり、
互いの色をより鮮明に引き立てている。
サーシャが呻いた。
張型がこれまでになく深くまで入り込んでいるのだ。
だが、サーシャはより深くへと張型を捩じ進めた。
せっかく、これほどの長さの物を手に入れたのだ。
全てを味わわなければもったいない。
張型の殆どが、サーシャのなかにすっぽりと納まった。
無駄な肉がなく、すっきりとなだらかだったサーシャの腹は、
彼女の体内を犯す、黒く巨大な人口の男根の形に、
痛々しく張り出していた。
サーシャは、その様子をカメラのレンズに映した。
尻肉の狭間に埋まる、張型の基部を掴み、捩じってみる。
肛門が、直腸が、S字結腸が、下行結腸が、
張型によって擦りまわされ、のたうつ。
筋肉が造反を起こしたように突っ張り、
粘膜は啜り泣くようにして腸液を沁み出させる。
白い腹部に浮き出た、
グロテスクな頭部が身を捩るように蠢いた。
サーシャは叫んだ。
疼痛と苦悶と快楽が、サーシャの脊髄を擦りたて、
脳を震わせた。
だが、その叫びが誰かの耳に届くことはない。
音声入力の出来ないウェブカムは、彼女の口腔から溢れ出る、
爛れるように甘く、饐えたように酸っぱい声を、
他の誰かに聞かせることはないのだ。
サーシャはそれでも声を漏らし続けた。
声を堪えることが出来ないのだ。
サーシャは、長大な人口の男根をくわえ込んだ肛門と、
それによって形を歪められた、自らの腹部をカメラに見せつけた。
サーシャは、レンズの冷たい光の向こうから、
幾万本もの灼けるような、
熱い視線が自分の体を突き刺しているのを感じた。
切なげに息を荒げ、眉間に皺を刻んだ、端正な顔に。
体が揺れるたびに、それにあわせて震える白い乳房に。
崩れそうになるのを必死で堪え、その部分を曝け出させつづける細い手脚に。
自らの腺液でどろどろに、濡れ潤びれて照り輝く女陰に。
そして、異形を呑みこんで妖しく蠢く肛門に。
遥か見知らぬ国の、見知らぬ誰かの視線が、
自分の体を嘗め回し、穴が開くほどに見つめている。
サーシャは片手で張型の基部を掴むと、ゆっくりと引いてみた。
腸の深部に達している亀頭が、
粘膜を引っ掻きながら後退して行く。
腹部に浮き出ていた異形の相が薄れていく。
サーシャは、腹部を満たす苦楽に喘いだ。
雁首によって、痕を刻まれた粘膜が、ひもじいと疼いた。
サーシャは張型を突き込んだ。
内臓が跳ねてのたうつ。
張型が腸の深部を穿った。
サーシャは張型を引き抜いた。
粘膜が抉られていく。
肛門が捲くれ返り、ピンク色をした内壁が露出する。
サーシャの腸は、苦痛と悦楽に染まった。
尻から生じた衝撃が、背骨を貫く。
サーシャの手が止まらなくなった。
もう自分でも、内臓を掻き回しているのか、
脳味噌を掻き回しているのかわからない。
息があがる。
意味のない声だけが、尻を穿つ律動に連動して零れた。
肛門を濡らす腸液の音が、ぐちゃぐちゃと虚しく垂れ流される。
腹部がぐねぐねと歪み、波打ち、尻を、腸を犯す怪物の顔を形作る。
頬を、煮えたような涙が伝った。
サーシャは、遥かから自分を灼き焦がす、数多の熱視線に、
己の全てを曝け出した。
濃い腺臭と、淫らな水音と、意味のない嬌声。
それらに満たされた部屋の中で、
蕩け、悶えつづける官能の火柱を、
機械は冷たい瞳で見つめつづけた。
遥か彼方から、彼女を妄想の中で犯す、
誰かの視線として。