「クックック。その真っ白な羽根も、こうして俺のザーメンで汚れちまったな。
その処女だった膣も、こうして俺ので汚してやったしな」
悪魔の身体の下から、天使は答えて言った。
「…赦します」
あくまで凛とした清らかなその声は悪魔を驚かせる。
「あン?」
「…あなたは罪人ではあっても、悪人ではありません。
あなたは力の使い方を間違っているだけなのですから」
「な、ナニ言ってやがる! オレは悪魔だぞ!!」
困惑した悪魔は叫ぶ。
悪魔は天使が悲嘆に泣き叫んだり、恨みがましく睨んだりするのは予想していても、
こんな態度を取るとはまったく考えていなかった。
「それに処女じゃなくなったらテメエはもうじき天使じゃなくなるだろうが!エラそうな口利くんじゃねえ!!」
「あなたは愛を知らないだけなのです」
白濁に塗れた天使は、悪魔の首に細い腕を回すと、その胸に悪魔の顔を抱え込む。
柔らかな乳房が変形し悪魔の顔を包む。
天使の乳肉の天上の至福の柔らかさに一瞬悪魔は意識を奪われる。
「…」
天使は胸の中の悪魔に語りかける。
「あなたは間違っています。それは、他人を傷つけたり屈服させる為の道具ではありません。
いとしい人に愛を伝えるための器官なのです」
「う、うるせえ! オレに説教なんかすんじゃねえ!」
「あなたは可哀想な人です」
「人じゃねえ! オレは悪魔だ!」
「わたくしもあなたも、神のお作りになったものであることに違いはありません」
「黙れッ!!!」
悪魔は叫ぶと、天使の唇を手でふさぐ。
そして再び猛りきった怒張で天使の白濁に塗れた性器に突き入れる。
「ふっ…っぐ、畜生、やっぱコイツは最高に具合がいいぜ…」
悪魔は眉根を寄せて天使の膣のその内側の妙なる快楽に耐える。
「て、天使って言ったって、所詮ただの女じゃねえか。憎い悪魔に無理矢理犯されても抵抗できねえんじゃ、
神の力っても大したことねえな!」
笑い飛ばす悪魔に、その体の下から天使が囁く。
「て、抵抗できなかったのではありません。……抵抗しなかったのです」
「なん……だと!?」
「愛する人に身体を求められて拒む女がいるでしょうか」
天使は微笑む。悪魔に犯されながら。
「な、な、ひ、ひとじゃねえ!いやそうじゃねえ!なんだそれは!アイ?!アイだなんて、ふ、ふ、ふざけんなッ!!!」
悪魔は突き入れた腰を動かすのも忘れてそう叫ぶ。
「…わたくしは、ずっとあなたのことを見ていました。
人を騙して魂を食べるときも、あなたは弱いものは見逃していましたね」
「ち、違うッ、オレはエラそうにしてる魂が好物なだけだ!」
「女性を襲ったときも、あなたは盲目の女性は避けていました」
「あ、あれは、あれは、目が見えないと俺の正体を見ても怖がらないから他のヤツにしただけだっ!!」
「炎を吐いて人を焼き殺すときにも、あなたは後ろにいた猫だけは焼かないように気を遣っていました」
「なっ、ち、違うっ!お、オレは、獣が焼ける匂いが嫌いなだけだっ!」
「だからわたくしはあなたに恋焦がれるようになったのです」
「な、なに言ってんだ!オレの話を聞けっ!」
天使は悪魔の首に腕を回すと、ゆっくりとその唇を悪魔に捧げた。
キスを終えると、天使は嬉しそうに微笑むと、悪魔に囁く。
「ですから、わたくしはあなたに本当の愛を教えて差し上げます」
悪魔の腰に、天使の細くて白い脚が絡みつく。
悪魔は腰の動きを止められない。
天使の中が気持ちよすぎるから。
天使の甘い喘ぎにを聞くたびに、身体の中に溢れてくる不思議な感覚がたまらないから。
そんな悪魔の腰使いを受けながら、天使は言う。
「悪魔にも知らないことがたくさんあるのですね」
「なんだと!?」
「天使は処女を喪うと天使でいられなくなる。それは正しいです。
父なる神は、わたくしたち天使に降俗の権利をお許しくださっていますから」
「だろうが!お前はもうじき…ホラ、その輪っかが薄くなってきてるぞ」
天使の頭上の光の輪がかすれてきている。
「ええ。天使は、下界で人間に恋したときは降俗の儀式を行います。
その儀式の後に処女を喪うと、天使は人間の女の子になれるのです」
「だから何だよ!オメエだって人間になりかけだろうが」
「その儀式を経ずに処女を喪った場合、天使は人間になるのですが、その相手に呪いが掛かるのです」
「何?」
「処女を奪った男根に呪いが降りかかります」
「なななな、何だって!?」
悪魔は必死に天使の膣から男根を抜こうとするが、天使の脚が悪魔の腰をしっかりと抱きしめていてそれは叶わない。
「もう遅いですよ。呪いはもう成就してしまいました」
「じょ、成就って何だ!?」
腰の止まった悪魔に、天使は下から腰を突き上げる。
「たいした呪いではありません。生涯、その膣でしか射精できなくなる呪いです」
「なっ、うそっ、そ、そんなっ」
「ウソではありませんよ。天使はウソはつけませんから」
「ちょっ、ちょっと待てっ、待て、止まれ」
「もう遅いですよ。呪いは先ほど発動してしまいましたから。
あなたは生涯、わたくしの膣でしか快楽を得ることはできないのです」
「ふうっ、あっ、そ、そんなっ」
天使は、かつて天使だった人間の女は、悪魔に優しく微笑みながら言った。
「ですから、わたくしも生涯を掛けてあなたに真実の愛を教えて差し上げます」
「…というのが、ママとパパの馴れ初めなのよ」
と母親は娘と息子に教えている。エロスな部分はうまくキス程度にぼかしているが。
「うっそだー」「うそー」
「ホントよ。ママはね、昔天使だったの。
悪魔だったパパがね、『オレは悪魔を辞めるからお前も天使を辞めてくれ』って言ってくれてね。
ママはホントに嬉しかったのよ」
「えー」「パパ悪魔なのー」
「いいえ。悪魔だったのは昔のことよ。今はちゃんとあなたたち二人のために真面目に働いてくださってるの。
だから、パパにちゃんと感謝しないといけないのよ――あら。ほら、パパが帰ってきたわよ」
マンションのチャイムが鳴り、鍵が開く音がする。
「あ!パパだー」「パパー」
どことなく悪魔の風貌が見える幼い男の子と、天使に似たやはり小さな女の子が玄関に向かって駆け出す。
「おかえりなさーい」「パパー、おしごとおつかれさまー」
そう言いながら二人の子供が抱きつくのは悪魔。いや。元悪魔のサラリーマンである。
「ただいま。お前らちゃんといい子にしてたかー」
そう言いながら元悪魔は二人の子供を片腕で一人づつ抱き上げる。
「わー」「きゃーー」
「あのね、ママがね、パパは悪魔だって言うの」
「ママも天使だったって。ホント?」
「ママそんなこと言ったのかー。ホントだぞー」
「えーーー」「うそーーー」
「だから、パパはお風呂に入らない悪い子は食べちゃうんだー。さ、一緒にお風呂入るぞー」
「わーーーい」「わーー」
二人のちびっ子が先を争って風呂場に駆けていくのを見ながら、元悪魔は元天使の妻にカバンと上着を渡す。
「いいのか? ホントのこと言っちゃって」
「いいのよ。こうやって少しづつ本当のことを教えておけば、いつか事実を知ったときにショックを受けなくて済むでしょう?」
そう言うと、奥さんは夫にキスをする。
唇を割り、下が絡み合う濃厚なキス。
そのキスが終わると、元天使な奥さんは夫に囁く。
「ねえ、あの子たちもそろそろ手が掛からなくなってきたし…ね。三人目、作りましょうよ」
その甘い囁きを聞きながら元悪魔は思った。
――ああ。この最愛の女を作ったヤツのモットーは「産めよ殖えよ、地に満てよ」だったなあ。
給料を増やすには資格をもう一つ取って手当てを増やさなきゃ。
そう思いながら元悪魔はネクタイを元天使の、最愛の妻に解かれていた。
おしまい