「……何だよ、こんな居んのかよ。回数、少なくなっちまうな」
「皆子供好きなんだ」
「第一部隊長、それ意味違う」
服の残骸を手にしたまま、下品に笑う数人の屈強な男達。
周りはしっかりと固められ、対する私は文字通り「裸一貫」。
おまけに少し前の壮絶な処女喪失劇のおかげでお腹の奥が酷く痛む。
「さて、名前なんだっけ?」
「えーっと……」
「アイだ」
「おぉ、流石副長」
少し人の壁が空いたそこから、常にしかめっ面な知った顔の野郎が出てくる。
盗みをやって、あいつ――確かシドとか言った――の前に通される前に、川で丹念に私の体を洗った奴。
奥から出てきたそいつは、近場の石に腰かけて、懐から取り出した煙草に火をつけて一服。 部隊長と呼ばれた男が下卑た笑みを浮かべながら副長に近寄る。
「副長もお楽しみですか?」
「馬鹿言え……俺は妻一筋だ。お目付け役だよ」
その時、森までの道が僅かに一筋開け、それを見た私は反射的に最後の賭けに出た。
視線がそれたその一瞬、私はその一条の光に向かって走り出す。
「おい、逃げたぞ」
「あ」
だけど、私の最後の賭けは失敗に終わった。
脇から長い手が伸びてきて首にかかり、叫ぶ間もなく地面に押し倒される。
「……あの人にヤられた割には元気なのな」
「へー、逆に可哀想だ。隊長に気に入られたら骨までしゃぶられるぞ」
「のたくってないで、とっととヤれ。後がつかえてる」
「へいへい」
男が軽い返事を返す。
死んじまえ、全員。
強い力で腰を掴まれ、嫌な感触を感じた後、すぐにそれは来た。
「痛ぅぅッ!?」
体の中心を通って、硬い棒を頭まで貫かれる感覚が私の体を襲い、思わず声をあげてしまう。
いつだって、踏みにじられる側だ。私“たち”は。
脳裏に、こいつらみたいな下種にいいようにされた母の姿が浮かぶ。
私が、私たちが何をしたって言うんだろう。
「後ろ、いけるか?」
「無理だろ、小さすぎる」
「口いけ」
「そうするか」
痛みと情けなさに涙をこらえる私の眼前に、気味の悪い形をしたそれを突きつける男。
何をやれ、と言っているかはわかってる。断ったら酷いことになるのもわかってる。
それでも私は、歯を噛み締めて、首を振った。耐えられなかった。
「……ふぅ」
「まぁ仕方ないだろ。盗みで食ってる奴とはいえ、まだガキなんだから」
前にいた男がしゃがみ、四つん這いの私と目を合わせてくる。
絶対やらない、という思いを込めて思いっきり睨んでやる。
瞬間、頬に感じる衝撃と痛み。多分、今の私の表情は、呆然ってやつだろう。
頬を張られたことを頭で理解したすぐ後に、髪を掴んで上を向かされる。
「拒否権はねーんだよ。てめーがパクった飯の代金とでも思え」
焚き火の灯りに照らされて、浮かび上がるのは、悪魔の様なその顔。
心が痛むなんてことはないんだろう。むしろ人とすら思ってないかもしれない。
そんな思考が頭をよぎり、不意に目頭に熱いものがこみあげてきて、はじけた。
「ひ……ひくっ、うえ……ぐす……ひっく」
「……あーあ、泣いちゃった。言い方考えなよ」
「良いんだよ、強めに言ってやった方が。隊長よりマシだろ、強制って形なんだから。ほら、口開けろ」
「隊長は『やれ』とかは言わないからな……惨めだよ、やられてる側は。
それに比べれば確かに強制した方が『仕方ない』って逃げ道があるっちゃーある」
いくら身を堕としてても、痛みは、怖い。
こいつが言った通り、私を慰めるのは、『仕方ない』という一つの言葉。
これ以上反抗したらもっとやられる。だから『仕方ない』。
ここで口を開けば少しは早く終わるかもしれない。だから『仕方ない』。
ここで生き延びれば、いつか一矢報いる時が来るかもしれない。だから『仕方ない』。
頭の中では自分の反抗心を押さえつける理由を際限無く作り出す。
理由があれば、何だってできるから。
漸く自分を納得させた私は、小さく口を開く。
唇を割って入ってきたそれに舌を這わせ、息苦しさを我慢して、吐きそうになる臭いを無視する。
犬みたいな体勢で犯されて、娼婦みたいに男のものに口を寄せる。
理由が……見当たらない。考えなきゃ。すぐに、今すぐ。
思考が頭を駆け巡る中で、体の中から異物が抜かれる感触と、生暖かい何かが背中にかかった後に、また異物が侵入ってくる感触。
口に入っているものが膨らみ、喉に何かを出してから抜かれた。
気持ち悪くても、それは喉に絡まって吐くことも出来ず、ただただむせる。
やっと新鮮な空気を吸えたら、また口の中に別の奴のものが突っ込まれる。
延々と続く、いっそ笑える馬鹿みたいな悲劇。
何で、ここまでされなきゃいけないの?
それに対する答えは――見当たらなかった。
おわり