その日、青の国の将軍、シド=サーディス率いる遊撃隊は、大陸の北方、赤の国の拠点を一つ潰し、祝杯を上げていた。
作戦会議用の帷幕の中、屈強そうな男達が談笑しながら杯を傾け、外からも、中に入れないような一般兵卒の笑い声が響いていた。
それを心地よく聞きながら、上座で優雅に酒を飲み干すシド。
「つぎましょうか?」
杯が空になったのに気付いた左の男が、瓶を片手に問いかける。
笑顔のまま、それを断ると、青年は開いた天から日輪を見やる。
――そろそろ、かな。
日は既に大分傾き、あと半時(一時間くらい)もすれば辺りは闇に包まれるだろう。
戦いで火照った体が幾分冷めたのを感じて、シドは立ち上がった。
「……どうされましたか?」
「いや、小用だよ。あぁ、これを貰っていくね……続けてていいよ」
上官の動きに一瞬訪れた静寂も、すぐに止んで、再びばか騒ぎが始まる。
それを見て微笑んだ後、副長から貰った小さな酒瓶を懐に入れ、シドは帷幕を後にした。
∞
部下達のばか騒ぎが遠く聞こえる程になって、青年は足を止める。
辺りは木々に囲まれており、柔らかな木漏れ日が差していた。
辺りに誰も居ないことを確認し、シドが草むらに向かう。
……ぱらぱら、と液体が草を打つ音が響く。
突然、背後の草むらから大きく音がして、シドは振り向く。
すると、薄汚れた白を纏った黒っぽい塊が、光るもの――短刀を手に駆け出した。
距離はおよそ三歩、対するシドは剣もなく、襲撃者に絶対的な隙を見せており、絶体絶命の危機に、貼り付いた笑顔が特徴のこの青年は――。
獲物がかかったと言わんばかりの欲にまみれた笑みを浮かべ、手にしていた何かを襲撃者に向かって投げつける。
それは、陣を離れるときに持ってきた酒瓶――中の酒を垂らすことで、小便に『見せかけていた』小物だった。
酒瓶は、ゆっくりと弧を描いて空を舞い、襲撃者の顔に当たる。
「ひゃッ!?」
可愛らしい子供の声が響き、襲撃者の動きが鈍る。
当然、そんな隙を見逃さずに青年は襲撃者に飛びかかる。
まずは危険な刃物を持った方の手を返し、そのまま極めて投げる。
「痛ッ!」
強く背中を打ち、たまらず声を上げたその時、シドは動きを止めた少女にのし掛かり、肩を手で押さえつける。
「あぁ……会いたかったよ、アイ」
「気安く名前で呼ぶなッ! 畜生、退きやがれくそッ!」
「悪い言葉遣いだ」
泥で汚れた少女の頬に、優しく口付けをするシド。
少女の名前は、アイ。僅かに一週間前、確かに青年がその手で犯し尽くした少女だった。
「本当に心配してたんだよ。しばらくぶりだったから、あいつらもつい羽目を外しちゃったかと思ってね……。
あそこを去る時になって君を見たんだけど、ぐちゃぐちゃのどろどろって感じでさぁ……!」
少女にとっては思い出したくもない過去、だが青年にとってはそんな傷口を抉ることすら楽しいらしい。
目に暗い輝きを宿し、見開いたままシドは続ける。
「あの時の目、あの時の姿、無様で、情けなくて、最高で……。
もう壊れたかと思ったのに……あー、惚れちゃいそうだなぁ、僕……」
青年は誉めるような口調でも、アイはその裏の意を汲み取っていた。
青年の性格、いや、性癖を鑑みるに――下品に言ってしまえば――「ヤりがいがある」と表現しているのだ。
――下種野郎め。アイはそんな風に言い放ってやりたかった。
「僕も反省しているんだ。せっかく僕の為にとっといてくれた初めてだったのに、あまりにも乱暴にし過ぎた」
「お前の為じゃない!」
「そうなの……ま、それは置いといて、お詫びの品をあげたいんだ」
「じゃあ死んで詫びろクズヤロー!」
圧倒的不利な状況下にも関わらず、少女は強気に毒を吐く。
だが、シドはそんなことは気にしない。手を片方肩から離し(同時に離した肩を膝で押さえた)、腰に結んだ小袋を外す。
指を突っ込んで袋を探った後、何かを握りこんでからアイに微笑みかける。
「口開けて」
「嫌だ」
「……あーん」
「嫌だ」
頑なに拒むアイに、表情は変わらず笑みのままだが、やや腹の立ったシドは、丁寧に、だが強めに、アイの鼻をつまんだ。
空気が鼻を通らないよう、確実に。
「ん〜!?」
「口開けなきゃ死んじゃうよ、ほら」
息が出来ず、体を暴れさせるアイだったが、膝を介して肩に体重をかけられている体勢ではろくに抗うこともできない。
約数十秒止めていた息も、遂に切れた。
「ぷはッ!」
そして当然、この隙を見逃さない。
僅かに開いた口の隙間に、指をねじこんで大きく開ける。
広がった隙間に、シドは袋から取り出した何かを投げ込み、最後にアイの口を手で閉じる。
「吐いちゃ駄目」
「んむぅッ!? うく、くふ、ううううッ!」
アイの口の中に入れられたのは、何かを固めた粒の様な物で、それはすぐに唾液に溶けていき、甘ったるい味が広がっていく。
その粒がすっかり溶けた唾液を飲み込んだところで、アイはたまらず口を押さえているシドの手を叩く。
青年がそっと両手を外すと、少女が大きく、咳き込みながら息を吸った。
「はッ…げほッかはッ……ひゅ、ひゅー……はぁ…ぁ…」
「大丈夫? 手荒な真似をして悪かったね。どうしても飲んでもらいたかったんだ」
シドが立ち上がり、含み笑いのまま、紳士的に手をさしのべる。
それを恨みを込めて睨み付けた後、アイは一人で立ち上がり、乱れた裾を直す。
青年は表情すら変えなかったが、当然ながら触感の残っていないさしのべた手のひらを数秒見てから、残念そうにくるり、と背を向ける。
「聞いてくれ。……僕が思う前回の反省点は、君と一緒に楽しめなかったことなんだ」
――天地がひっくり返っても、あんなことを楽しい思う訳ないだろうが。
自分勝手に自白を始めるシドに、アイが軽蔑、いや、憎悪の視線を投げ掛ける。
が、気にしない。それがシド=サーディスという男だった。
「あんなにキツいところに無理矢理押し込んだら、そりゃ君には痛い。あれは本来、お互い気持ち良い行為なんだ」
青年はグッと拳を握り、目は細いままだが、珍しく熱く、自分に酔ったまま説明を続ける。
「だから僕は今回、一緒に限界まで達することを目標にしようと思った。
すると、運良く薬屋のおじいさんと出会ってね、それは特別に調合してもらったんだ」
話に合わせて声に強弱をつけ、時には手振りも使って大袈裟に。
そして青年は話を切り、数秒勿体ぶって、ここが見せ場だと言わんばかりの勢いで一気に振り返る。
「それはなんとッ……! お……?」
シドの視界にあったのは、木、木、木。
先程までいた可愛らしい少女の姿など何処にもなく、自分は一人で演説をしていたことに気づく。
柔らかい地面にははっきりと小さな足跡が残っており、それは草の少ない方へと伸びていた。
「……速効で立てなくなるくらい、強いのを頼んだつもりだったんだが」
青年は珍しく目を見開き、口角を下げて残念そうな顔をしてから、ゆっくりと跡を追って走り出した。
∞
――あいつは、本気で気違いだッ!
少女はそう心の中で叫びながら、鬱蒼と生い茂る森の中を駆けていた。
少女は、雄弁に説明を始めた青年を余所に、静かにその場を後にし、ある程度離れたところから、走って逃げ出していた。
――二日前から見張っていた。確実な隙を探して、あの背中にあの男が置いていった短刀を突き立てるため。それなのに――!
嘲笑うかのように悠々と罠にかけられたことに、アイが唇を噛む。こんなはずじゃなかった、と。
しばらく走り、追ってきていないことを悟ってから、木の下に座り込む。
心の臓は未だ早鐘を打っており、一旦落ち着こうと深呼吸をしる。
――いったい何を飲まされたんだろう?
体が落ち着くことはなかったが、静まった心に先程のことを思い起こし、アイは自らに問う。
体が痺れることも――ない。声が出ないということも――ない。じゃあ、あれは一体なんだったんだ、と。
『疲れ』のせいか、ぼんやりしてきた頭は思考を拒否しており、アイはただただ虚空を見上げた。
「あち……ぃ……」
少女の口から無意識に漏れる言葉。実際、どうしようも無く体が火照っていた。
芯で火を焚かれている様なその熱さはますます上昇し、アイはたまらずに汗を拭おうとして――気付く。
「汗、出てない……」
こんなに暑いのに、何で……、とアイが思ったところで、今度はさらに、耳元で鳴っているのかと錯覚するほどに心臓が強く拍動する。
知らず知らずのうちに呼吸は荒くなり、少しでも楽な体勢をと、犬のように四つん這いになるアイ。
「はぁ…はぁッ…なに、こ、れ……!?」
「……さぁ? しばらく見ないうちに良い格好だね」
背後から響く声に、アイが体を震わせる。
聞き間違える訳の無いその声、そして、恐らくは自分の意味不明な状態の原因を作った者。
「シド……!」
「おや、名前を覚えててくれたのかい。嬉しいね」
青年が、(今で言うワンピースの様な)服の裾から剥き出しのアイの陰部に顔を近付けながら応える。
対してアイは、精一杯の力で振り向き、肩越しに青年の姿を確認して、思いっきり睨み付けた。
「てめ……どこ見て……!」
「凄んでも全然怖くないなぁ。自分の体勢、わかってる?」
それを軽くあしらい、シドは大きな手のひらですべすべとした、しかし肉付きの薄いアイの尻を愛でる。
力強く、形が変わるほど揉みしだいたり、左右に押し広げて小さなすぼまりを観察したり、前の穴の割れ目に沿わせる様に指を動かしたり。
一通り触り尽くした後に、指に絡み付いた透明な粘液を見て、シドは満足げに微笑み、その指をアイに見えるように目の前に持って行く。
「飲ませたのの正体、教えて欲しい?」
「……なんだ、よ」
熱とだるさに虚ろな瞳を向けて聞いてくるアイに、どうしようもない嗜虐心がシドを襲う。
手のひらを開き、天高く腕を掲げる。
次の瞬間、その手は異常なまでの速さで尻の真ん中辺りに目掛けて振り下ろされ、小気味良い音が響いた。
「ひゃあンッ!?」
痛みではなく、意味不明なぴりぴりとした感覚が赤い尻を発信源に全身に広がり、アイの嬌声が響く。
同時に、足の隙間から見える女陰から一筋、快楽の証が流れ出したのをシドは見逃さなかった。
「……効果はちゃんとしたもんじゃないか」
「らッらんだよッ!? ひゃ、あ、しゃわ、しゃわるぅあッ!?」
――あのおじいさんには後で追加の褒美を与えておこうか。
シドはそう思いながら、乱暴にアイの女性器に指を突っ込む。
幾人に犯されたそこは、それでもやっぱりきつかった。
ねじ込まれる青年の指を強烈に押し包み、ともすれば外に追い出そうともする。
ただ一つ前回と違うのは――蕩けきったアイの表情。
爪で陰核を弾かれる度に声をあげ、指で突き込まれる度に奥からは透明な粘液を溢れさせる。
「ん、ぅあ、あ、あッ、やぁ……!? や、やら、声ッ……で、ちゃうぅ……!?」
「……ちゃんとしたもん、って評価は訂正かな。想像以上に良いもんだ」
自分の下で足を震わせて感じる少女を見て、シドはますますやる気を出す。
――誰が考えるだろう、こんなやらしい娘が、一週間前まで処女だったなんて。
どこかの村で盗んだのだろうアイの服を引きちぎり、力の抜けた体を抱き起こす。
現れた細い体には所々青い痣があり、いつぞやの陵辱の痕が見てとれた。
「おや……悪いね。ほら、普段は兵士とやりあってるから、あいつらには力の加減が出来なかったみたいだ」
慈しみの思いを込めて、シドがその傷痕を舐め上げる。
平常時なら、そんなことアイは強く拒否し、それを青年が力で丸め込む流れだっただろう。
だが、少女はただ体をシドのたくましい胸に預け、あらぬ方向に虚ろな視線を投げていた。
青年は、胸に感じる心地好い重さに顔をほころばせ、可愛らしい耳に向かって小さく呟く。
「『世捨て人の秘蔵の薬』」
「よすて……?」
「通称ね。その中身は……巷の真偽疑わしいものとは比べ物にならない強力な媚薬」
もはや耳元で震える空気にすら、アイは快感を見出だしていた。
一種の麻薬の成分を多少含んだ薬により落ちた思考力が、本能に敗北し、一つの感情をアイに浮かべる。
――足りない。そんな感情に突き動かされ、無意識にアイはシドの服の袖を握った。
小さく可愛らしい手が、きゅっ、と自分の袖を握るのを見て、青年のタガが外れる。
「しょーがないなぁ、もう……」
「ひぁッ!」
シドがアイの手を掴み、片方をその小振りの胸に、もう片方を女陰に添えさせる。
「ほら、自分でやって。ゆっくりでいいから、ね?」
「うるせ……触んな……あッ!?」
始めはシドが、力の抜けたアイの指を誘い、部分部分を擦らせるだけ。
だが、次第に楽しくなってきた青年は、段々自分がやりたいようにやっていくようになる。
「好きな風にやれば良いんだよ……こんな風に乳首を摘まむのだって」
「んひゃッ!? はッ……はッ……」
「ここの、小豆みたいなとこを指で軽く押し潰すのだって良いらしい。僕は知らないが」
「ッ! ふぁ、あッ!」
楽器を奏でてるみたいだな、とシドが小さく呟く。少女には聞こえないように。
対する少女は、今までの拒絶が嘘のように青年に体を預け、与えられる快感を享受する。
それからも、青年は演奏を続ける。
「ひ、やあッ……!? ッはぁ……ふあッ!?」
「も、だ、だぁめッ! ……んああッ!」
「死んじゃう、死んじゃうよぅ……ッ〜〜ッ!?」
第二、第三と津波のように訪れる快楽の波に、アイは涙を、よだれを、愛液を、垂れ流して声を上げる。
あと一押しでこの可愛らしい少女は限界まで達する――そう見越したシドが、一旦手を止める。
突如止まる刺激に、アイが少しだけ振り向き、シドを見つめる。
何で――アイの頭の片隅にそんな思いが浮かんだ瞬間、シドが指を二本まとめて勢い良く膣口を貫いた。
「ぅ○Σ×あΩ□△!?」
もはや声にならない叫びが暗くなった森に響き渡り、アイの秘所から、透明な液体に加え、白く濁った液体が流れ落ちた。
前方に倒れ込むアイを眼下に、シドがふやけた指を舐め、静かに笑う。
――参ったな、手放すのが惜しくなってきた――
そんな風に考えながら、シドは自らの分身を露にし、何か液体をぶちまけたのかと思うほどに濡れたアイの秘所にあてがう。
――前からじゃなくて、後ろから貫く形になると、この子の細さがよくわかる――
暗闇に白く浮かぶ儚い体躯に不釣り合いに大きな自分のものを見て、シドは苦笑し、腰を突き出した。
「ッ! ……あ……あああ……ッ!」
「……あー、やっぱ勿体無いな」
相変わらずの排他的な窮屈さに、シドが思わずそう呟く。
しかし、丹念に愛撫を重ねたためか前よりも柔らかい。
かと思えば、腰を突き出す度に強烈に締め上げてくる。
シドはその感覚に、自分より幼いその少女にハマりはじめていた。
「ヤっバいなぁ……どうなの? 気持ち良い?」
「む、無、理ぃ……ひゃんッ!?」
「肯定と受けとるよ」
「ま、待って、よぉ……ひあッ!?」
――そんなに可愛く鳴くのが悪いんだ。
相変わらず独善的に、思うがままに動き続けるシド。
時に激しく、時に優しく、自分の下で小さく跳ねるその肢体を労りながら動く。
壊しはしない、とシドは決めていた。
「僕さぁッ……君にハマっちゃったかもしんないなぁッ……ねぇッ!?」
「ぇあッ! う、嬉しく、らいぃ……ひぃんッ!?」
「何で?」
「うあ゛あ゛……止めッ、ホント、だめ! い、いいいッ……!?」
「ほら、『良い』って言ってるじゃん。大人しく僕に従えば何時でも、好きな時に、めちゃくちゃにしてあげるから」
――この生意気な口から、服従を認める発言を引き出したい。
ただそれだけの思いから、シドは出したいものも我慢してひたすらに腰を振り続ける。
――盛った獣? いや、これは純粋な愛だ。畜生とは違う。
心の底からねじれた純粋な愛を謳い、汗まみれのアイの体に覆い被さり、歪んだ愛の言葉を囁く。
「ねぇ、一言でいいんだから。もっとして、とか、大好き、とか」
「言わらい、言わらい、言わらいぃッ……ひぅ!?」
「ほら、散々声あげてるのに」
「てめーが、変らもん、飲ませたからぁあぁッ!?」
「仕方ないなー」
実際のところ、アイに既に考える力は残っておらず、意思だけで拒否を示している。
それはつまり、崩れかけの意思だけでも拒否するほどに青年が少女にひどいことをした証なのだが。
対するシドは、根本からくる限界を感じていた。
次が最後になるだろう――そう考えた青年が穏やかに、はっきりとした声で、アイに問いかける。
「じゃあさ、今……僕をどうしたい?」
「へ……ッんぅ!?」
今なお蹂躙を続ける青年をどうしてやりたいか。
そんな答が出てる問いなんて――と思いながらも、少女の本能は悪魔の囁きを繰り返していた。
――言っちゃえよ。
――盗人より良い暮らしができるぞ。
――きっと大事にしてくれるって。
何度も、何度も頭の中で跳ね回るその言葉に、少女は屈しかける。
そこでアイは、強く唇を噛み、一週間前の事を思い出す。
無惨に処女を散らされ。
二回りは大きい男達に玩具扱いされ。
僅かな食料と一緒に打ち捨てられた。
――黙れよ、お前ら。
心の声を一喝し、ゆっくりと肩越しに振り向き、快楽に笑みが零れそうになるのを拳を握って耐えて――
「変わん、ねーよ」
唾を飲み、泣き腫らした目を見開き、言い切る。
「いつか……絶対に、殺してやる!」
「……わかった」
――今回は、諦めよう。
開き直った青年は激しく腰を動かし、笑みを浮かべて、最後に思いっきり腰を突き出す。
「ひあ、あ、あぁぁッ!?」
子宮の入口に狂暴なそれが当たる感触に、アイが大きく声をあげたと同時に、青年の白濁した思いの奔流がほとばしる。
深く突き入れたそれからは、一滴として漏れること無く少女の腹を満たし――アイは崩れ落ちる。
「!? おい! ……あぁ、眠ったのか」
正しく言えば漸く終わったという安堵から気が失っているのだが。
青年は、ぼんやりとした目を手で閉じさせ、地面に倒れ込んだ少女を抱き起こす。
「軽いな……」
そのまま木の下に座り込み、自分の膝に少女の頭を乗せて、軽く撫でる。
――あと、どれくらいかかるだろう、これが僕のものになるまで。
そんな事を考えながら、青年もまた目をつぶり、背中の巨大な木に体重をかけていった。
∞
翌朝、少女が目を覚ますと、辺りに青年の姿は無く、落とした短刀と、食べ物の入った袋が地面にあった。
――また、ここからか。
はぁ、と少女が小さくため息をついた瞬間、股の間から白く濁った、昨夜の残滓が流れ落ちた。
アイがその気持ち悪さに思わず股間を押さえる――
「ひゃッ!?」
と、突然また雷の様な刺激が体を走る。
驚いた少女は辺りを見渡し、誰もいないことを確認する。
右手には――いない。左手にも――いない。
誰にも見られていないことを確認すると、アイは急に腹が立ってくる。
――どれも、これも、あいつのせいだ――
少女は意識せずとはいえ自分で秘所を触り、声をあげてしまった恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、ここにいない青年のせいにする。
「こ……今度は、ちゃんと、考える! だいたい、身体能力で敵うわけないんだ! 不公平だ! ちゃんと、綿密に計画立てて、それから――」
少女は何かを誤魔化すように大きく声を張り上げてから、突然それを断ち切る。
「……不公平だ」
――あいつには余裕があり、自分には、いや、自分達には余裕が無い。
この違いは何処から来てる? めちゃくちゃにされて、打ち捨てられて、あいつらは何で普通の人間を好きにして良いんだ?――
――無駄なんじゃないのか?
暗く、重い感情が少女の中で渦を巻く。
考えても、考えても答のでないその問いを頭の片隅に置き、袋と短刀を持って走り去る。
――とにかく、あいつは……。
アイは、殺す、と言い切れない。
複雑な感情のまま、少女はその場を後にした。
つづく(かもしれ)