体が、熱い。
数日前と同じ体の熱さに、私はたまらず木に寄りかかる。
この熱さを感じるのはもう数えきれないくらいで、流石に最初のように動けなくまではいかなくとも、やっぱり辛い。
地面に腰を下ろし、皮袋に入った水で唇を湿らす。
途中にあった村から盗んだ作業着は目が荒く、動くと擦れるのが、一層体の疼きを促すのだ。
「……嫌なもん、飲ましてくれやがって!」
吐き捨てるのは、言葉と一緒に体の火照りが出ていくことを願うから。
そんなことは無いって、頭では解ってるのに。
ため息を一つ、ついた。
一番辛いのは、身体的なものじゃない。
この状態の時、ぼんやりした頭では、常にあの時の映像が、声付きで再生される。
『自分で――』
『好きな風に――』
『――ハマっちゃったかもしんないなあ』
『大人しく――』
「……んッ!? ……ふ、う、あ、ンんッ!?」
――いつからだろう、自分でそこを弄るようになったのは。
行為を一時中断し、目の前に持ってきた指には、ねばっこくて透明なアレが糸を引いている。
それを見ているだけで、本当に自分が情けない気分になるのに、それでも私はその行為を続ける。
「ふッ……あ……んッ!?」
どれだけ情けなくても、私はその行為を続ける指を止められない。
頭の芯がしびれるような感覚が、止めたくないという意思を捕まえて離さない。
「くぅ……あっ、あっ……んッ!? んッ、あ、あ、――!?」
一際強い感覚が体を襲い、体を震わせた後、私は地面に倒れ込んでしまう。
体を少し動かすだけで、足の間から小さな水音が響く。
そして、行為が終わった後は、いつも通り声を殺して泣いた。
――自分でも情けないのは、あの時に関しては、あいつを受け入れていたのだ。
最終的に、殺してやる、とは言ったけど、あの時はそんな考えは微塵も無かった。
それどころか、もっとして欲しい、とまで思っていた。
今ではそんなだった自分が許せないし、そんな風にしたあいつも許せない。
だからこそ、そんなだった自分を知るあいつは殺さなくてはいけない。
それでも。
「……んッ……は、あ、あぁ……ッ!?」
この自分で自分を貶める行為がやめられない。
頭がしびれている間は何も考えずに済むから。
後悔から逃げるための行為で、後悔を深める。
その矛盾した事実に気付いていながらも、どうしようも無い。
頭の中で、またあの時のあいつの言葉が再生する。
『……どうなの? 気持ちいい?』
手を止めて、後悔まみれの指を見ながら考える。
「……分かん、ないよ」
そうしてまた、沸き上がる熱が収まるまで、私は自分を慰め続ける。
おしまい