「ふう、ふうっ……」  
 荒い息を吐きながら、私は木々を伝うようにゆっくりと歩いていた。未だ膝は笑いを止  
めず、派手に“攻撃”を受けた個所から液体が時折こぼれ出し、足を伝ってミリタリーパ  
ンツを不快なものに仕立て上げていく。判定が「30秒間限定」なことに救われた形だが、  
股間から恥ずかしいものを垂れ流しているこの状態が果たして救われているのか否か、と  
もすればせしめたフラグ類を大量に爆発させて、早くダウン(という名の絶頂)してしま  
いたいところだが、そういうわけにもいかない。何より、まだ10人も残っているのだ。こ  
のまま朽ちてしまえば、ゲームに参加した意味はなくなる。  
 先ほどの銃撃以降、攻撃してくる敵はいない。脱落アナウンスは2人分増えていた。銃  
弾を放った相手がどうして追撃をかけてこないのか知るすべはない。どちらかというと誰  
かに天国に連れて行かれた、よりかはただ単に臆病なだけにしておきたい。なぜなら前者  
だと、こちらを追ってきている可能性があるからだ。とてもじゃないが、今迎撃する余裕  
がないのは私自身が知っている。  
「くうっ」  
 なんせ、歩く振動そのものが凶器と化しているのだ。媚薬をたっぷり塗られた秘唇と突  
起物は、今は作動しない機械にぴったりとくっつき、地面との接触の度にほんの少し、じ  
れったい刺激を甘受している。ねちゃねちゃと卑猥な水音が、皮膚を伝わって聞こえてく  
る。ゲームなら体力回復は時間の経過で行われるが、私の劣情は時間が経つにつれ高まる  
一方だった。  
 甘く見ていたわけではないのだが、こんな風になるとまでは想像していなかった。気を  
抜いたら、木の枝にすら見境なく求めてしまいそうだ。機械がもたらす刺激もたちが悪い  
がそれ以上に媚薬の効果がたちが悪い。裸になってぬぐい去ってしまいたいが、各所に仕  
掛けられたカメラの前で公開ストリップをするわけにもいかない。  
 朦朧とする中で歩き続けた先に沢を見つけて、私は心の中で助かった、と叫ぶ。  
 沢には当然遮蔽物がないので、格好の的になりやすいのだが、それどころじゃない。ま  
だ新緑の季節、水は冷たい。一応あたりを見渡した後、腰をかがめ、水のかからないとこ  
ろに装備品を置いて、ゆっくり沢に入っていく。沢は足首少し上までの深さだったが、十  
分な深さだ。岩陰のよどみを見つけ、そのまま私は水の中に身を横たえた。冷たい水が全  
身を包み、火照った身体はゆっくりと静まって行く。  
 
「ふう……」  
 深く一息。あのまま歩いていたら、そのまま果ててしまっていたかもしれない。水につ  
かった分、タイムオーバーへの時間は短くなっているのだが、どちらかがましかと言われ  
れば今復活する方が先だった。  
 ひとしきり水を浴び、気が戻ったところで装備品を身につけなおす。  
 足音が聞こえたのはそんなタイミングだった。  
「こんな最中で水浴び、ってね。いっそのこと裸になればすっきりしたんじゃないの?」  
 聞こえてくる声には目を向けず、岩陰に隠れ、AKを握りしめる。  
「あらあら、会話ぐらいする余裕はないわけ? もうイク寸前?」  
「……こんなゲームで話しかけてくる阿呆に驚いただけだ」  
 声の聞こえてくる方角のは、歩いてきた方だった。となると、先ほどの銃撃相手ないし  
は、銃撃相手を倒した敵、となる。どちらにせよ敵であることには変わりない。声の大き  
さからまだ距離があることを察し、沢の対岸まで小走りに移動する。  
「あらあら余裕ぶっちゃって。地面に残ってたわよ? あなたの感じた“痕跡”が」  
「っ……! 言葉で辱める気かっ!?」  
「事実を述べただけよ。気持ちいでしょ、その機械。癖になるんじゃない?」  
「なるかっ……」  
 流れを挟んで反対側に現れたのは、長身長髪の女性だった。切れ長の目が印象深く、ま  
るで狩りを楽しむ鷹のようだ。  
「あら、せっかくあなたを狙ってたスナイパーを“狩って”あげたのに。さらなるカイカ  
ンがお望みだったかしら?」  
「そんなわけあるかっ!」  
 たまらず、岩陰からAKを2発発砲。ろくに狙いをつけていなかったためか、相手にあた  
った形跡はない。  
「ふふっ、いいわよあなた。手ごたえがありそうで。今回はここまであんまり楽しくなか  
ったけど、ようやく骨のある子に出会えたわ」  
「ちっ、あんまり楽しくないなっ!」  
 相手が、両足のホルスターから拳銃を2丁取り出したのが合図だった。  
「さあ、踊り狂って派手におイキなさい」  
「2丁拳銃かっ!?」  
 一直線に流れを横切って突進してくる敵に対し、私は沢を登りながら2発撃つ。ひるむ  
ことなく4発撃ち返されてきた玉のうち、1発だけ足を掠める。  
「つぅっ!」  
 弱い刺激。それだけで一度治めた劣情がまたむくむくと身をもたげてくる。  
「あはははは! さっきのアレを思い出せたでしょう? よがりなさい、そして乱れなさ  
い!」  
 なおも相手はこちらに突進してくる。なおも2発撃ちながら、沢を転がり水しぶきをあげ  
ながら横切っていく。実弾と違い、水しぶきならレーザーは貫通しないはずだ。  
 
「ああ、やっぱあなたイイわ。初めてにもかかわらず、このゲームで何が必要なのかわか  
ってるわ!」  
「初めてって、おまえは何回も参加してるのかっ!?」  
「もちろんよ。最初から皆勤賞よ」  
「それはめでたい、なっ!」  
 最後のフラッシュバンのピンを抜き、投擲。岩の上でバウンドして、派手に閃光をまき  
散らすのを背を向けて回避。だが、相手も交わしたようで、振り返ると振りかぶりモーシ  
ョンが見える。  
「くうっ!」  
 急いで離れようとするが、投げ込まれたそれは空中で爆発し、あたりに黄色い気体がま  
き散らされる。  
「これ、は、ああああぁっ!!!?」  
 逃げ遅れてその気体を吸ってしまった直後、全身の力が抜けるとともに、身体の奥から  
劣情がわきあがる。  
 イキたい、イキたい、イカせて……  
 動くことも叶わず、まだあたりに漂うそれを吸い続けてしまい、私は水の中に倒れこん  
だ。  
「あ、ああ、あああああっ……」  
「ゲーム中だと有毒ガスだけど、この場合は媚薬ガスなのよね。しかも他の人よりも“ち  
ょっとだけ”効果を強めてるわ。股間が、子宮が疼くでしょ? ほら、欲しくなるでしょ?」  
 全身流れの中に使っていて、体温は下がっていくはずなのに、熱を放つのを止められない。ざぶざぶと流れをかき分けて近寄ってくる影に、反撃することすら叶わない。手が勝  
手に刺激を求めて、動きそうになる。  
「水の中にバンを投げ入れないあたりはなかなかやるようだけど、“今”はここまでね」  
 私を見下ろす長身の影。唇の端がくいっと持ち上がる。  
「でも、ここでリタイアさせるのはもったいないわね。仕事の手間も省けそうだし」  
「なん、の、ことだ……」  
「ふふっ、そのうちわかるわ。ねえそれよりも気付いた? 今水の中に使っているのにア  
ノ機械が作動しないのよ。これどういうことかわかる?」  
「わかるかっ……」  
「なら教えてあげるわ。残念ながら、この機械は濡れた判定をする際にそれが人間の生み  
出したものなのか、それともただの水なのかは判別しないのよ。さすがにそこまでは作り  
こめなかったのよねー。となると、こういう仕掛けがいるのよ」  
「……?」  
「“全部が水につかっている間は、判定をしない”。まあでも、ちゃーんと作動自体はするのよ」  
 
 カチっと劇鉄の上がる音。  
「ま、まさか……」  
「そ。水の中じゃあどれだけ派手にイっても、決して天国にはいけないのよ」  
「あ、ああああ……」  
「2丁合わせて、残弾12発。まあこれくらいで勘弁しといてあげましょ。……Let's go to heaven!」  
 バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!  
「いあああああああああああああああああああ!」  
 1発1発撃ち込まれる度に、私は絶頂を迎えていた、視界は飛び、乳首とクリトリスから  
かけのぼる信号は強烈に私の本能を刺激する。自分1人の戯れじゃあたどり着けない、強  
制されたオーガズム。見えもしないが、私の花弁はさらなる刺激を求めて、あるいは受け  
入れようとひくついているに違いない。銃声とともに、私の股間から水しぶきが飛び散り、  
流れにさらわれていく。  
 バンッ!  
「ひぎっ!」  
 バンッ!  
「ヒイッ!」  
 バンッ!  
「ふあぁぁぁぁあっ!」  
 バンッ!  
「いいっっ!」  
 バンッ!  
「やああああっ!」  
 バンッ!  
「ああううぅぅぅぅ」  
 カチッ、カチッ。  
「なーんだ、残念。弾切れよ。お楽しみいただけた……のは丸わかりね」  
「あ、あああああ……」  
 神経回路が焼き切れそうだった。せせらぎの音は遠い世界での出来事のようで、まるで  
現実感がない。絶頂の最中に絶頂に連れて行かれるのを繰り返されたのだ。何も考えられ  
ず、あるのはただひたすらに快楽を得たいという雌の本能だけ。  
 ややあって、じょぼじょぼと音が漏れだす。  
「あら、この黄色いのはおしっこじゃないの? 失禁するくらいに気持ち良かったのねえ」  
「い、やぁ……」  
 自然と漏れだすそれに、あがらう術は持ち合わせていなかった。やがて音が小さくなり、  
鳴りやんでも、私は放心状態だった。股間に身に付けた例の機械は、あれだけ派手に潮と  
小水を受け止めたにもかかわらず、私が脱落したとは判定していない。  
 
「どう、感想は?」  
「う、あ」  
 銃口を股間に突き付けられ、その刺激でまたプシュッと小さく液体が噴き出す。それど  
こか、銃身を求めて私の腰は自然に浮いてしまう。  
「う、ううっ、いひっ……」  
「あらあら、まだ足りないわけ? ほら、ほら」  
 ぐいっと押しこまれ、少しだけ例の機械とミリタリーパンツ越しに銃身が私の中に入ってくる。もっと、もっと。  
「あ、あああ……」  
「でも残念。楽しみは後で取っておく派なのよねー」  
 だが、すぐに抜き取られてしまい、私は情けない声をあげてしまう。  
「コレが欲しいなら、追ってきなさい。最後に相手してあげるわ」  
 ざぶっ、ざぶっ、と水をかき分ける足音が遠くなり、そして聞こえなくなった。私の身  
体は未だ刺激を求めてやまない。何回も絶頂を迎えたというのに、まだ物足りない。  
 カメラのことなんかどうでもよかった。左手を胸元に、右手を大事なところに潜りこま  
せる。  
「あ、ああっ……」  
 例の機械の中にまで割り込ませ、直に乳首を、クリトリスを刺激する。  
「あ、はふっ」  
 なおも余韻の残った状態で、私が昇り詰めるのは簡単だった。胸をもみしだき、乳首を  
つまみ、秘唇をなぞり、クリトリスに触れるだけで、まるで挿入されているかのような  
(体験したことはないのだが)感覚に陥る。  
「い、ひいっ」  
 電気信号とは違う、生の刺激。耐えられず、私は指を中に入れ、奥の敏感な部分に触れ  
て押し込んだ瞬間、  
「い、イクぅっ……!」  
 私はまたも絶頂に達し、手に噴き出す潮の感触を味わいながら、意識を手放した。  
 
 私が目を覚ましたのは、失神する前と変わらず水の中だった。体温は大分下がっている  
ものの、動けなくはない。だが、  
「いっ……」  
 目覚めたきっかけ。もはや憎たらしいとしか思えない例の装置が、規則正しく刺激を与  
えてくる。刺激自体は弱いものの、10秒おきにきっちり“愛撫”されたらたまったもので  
はない。  
 時計は、開始からすでに30分が経過したことを示していた。恐れていたタイムオーバー  
に、気絶している最中に達してしまっていたのだ。逆算すると、気を失っていたのは10分  
足らず、ということになる。このまま意識を失い続けていれば、低体温症に陥っていた可  
能性があったことを思うと、10秒ごとにびくっと身体を震わせてくれるソレには多少の感  
謝をしなければならない。  
「つぅっ……いやに、うっ、なるな……」  
 先ほどまでに受けた、暴力的な快感ではない。比較すると、ゆっくり、優しさすら感じ  
てしまうこのタイムオーバーのペナルティは、私の心の中を徐々に燃やしていく。  
 遠くで銃声、爆発音が聞こえる。  
『No.5 dead. No.19 dead』  
 そして二名の犠牲者。相撃ちでもしたのか、はたまた股間部のソレにとどめを刺された  
のか。なんにせよ、残りは気絶中の脱落がいないと仮定すればあと8名。  
 先ほどの長身長髪の女性の姿を思い浮かべる。  
「くっ……」  
 無駄のない動き、容赦ない攻撃、そして最後に浮かべた残忍な笑み。思い出すだけで腹  
立たしいが、奇妙なことも言っていた。  
『最初から皆勤賞よ』  
 すなわち、このくだらないゲームは、何回も開催されているということ。そして。  
『しかも他の人よりも“ちょっとだけ”効果を強めてるわ』  
 あの忌々しいガスについて、こんなことを口走っていた。ということは、彼女は“くだ  
らない主催者側”の人間なのかもしれない。となると、狩るなどと言っていたことも理解  
できてしまう。  
 
「ちっ……1位だけでも、主催者側なら、儲けは倍増、か」  
 胸部から、下半身からかけのぼる優しい刺激に思考回路を持ってかれないよう、歯を食  
いしばりながら事実関係を推理していく。彼女がそういう“チート”を使っているのなら  
ば、もしかしたらこの機械にも仕掛けがある、もしくは装備すらしていないかもしれない。  
 はたして、勝ち目はあるのか――  
 参加者登録なら、倒さない限りは1000万円を獲得することはできない。おそらく、であ  
るがこの“ショービジネス”の性格を考えると、多少のチートはあれど、倒せる、すなわ  
ちイカせられるようにはなってるはずである。絶対に1位になれないゲームにリピーター  
はやって来ないからだ。  
 手持ちの装備のうち、先ほど使ってしまったものを除けばなにも減っていなかった。何  
も奪っていかなかったということは、余裕の表れなのだろうか。  
「絶対、イカせてやる……!」  
 手にしたAKに集中すると、“目覚まし時計”のことは少しだけ隅に追いやれる。私は歩  
みを再開した。  
 
 

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