「あ、は、ああっ」
「う、くうっ……」
一歩、一歩と歩くのと同じくして、周期的な快楽が私達をむしばんでいく。声をこらえ
るのも難しく、垂れ流しのまま、それでも進んでいく。もうとっくの昔にどうにかなって
しまっていたはずなのに、まだ終劇とならないのはただの偶然なのか、それとも必然なの
か。一つ言えるのは、私の身体はだらしなく溶けきって、雌の匂いを全身から放っていた。
ミリタリーパンツはずぶ濡れで足にべとついて離れない。その液体のほとんどが、私自身
が生み出したもので、このままだと干からびてしまうんじゃないかとすら思ってしまう。
そういえば始まってから水分を一度も摂取していない。なのに、わき出す泉は枯れ知らず
だ。
「後、残りは、どこ?」
「さあ、な」
脱落アナウンスはまだない。ということは、全員が、その刺激によがりながらも、賞金
を求めて未だ彷徨っているのだ。その眺めは好き者にはたまらないことであろう。いくら
反吐が出る行為であっても、私達はその掌の上で転がり痴態をさらけ出しているのだ。大
差あるとは言えない。
快楽を享受することが、当たり前のように思えてくる。刺激を受ける度に飛び跳ねそう
な身体。遠くで聞こえるこだまのように、イキたい、イキたいと私ではない私が叫ぶ。手
を伸ばせば、その結果はすぐに得られる。そして欲望から解放され、平和なひと時に戻る
ことができるのだ。ただ単純にそれをさせないのは、あの長身長髪の女に負けっぱなしな
のが癪に触ること、そして沢の中で人様に無様によがり蜜壺をかき混ぜる様を見せてしま
ったことに対する自分への義憤だ。あれだけ嫌だと思ってたのに、人目をはばからずに自
慰行為にふけってしまった。恥ずかしいし、情けない。
いくら後悔したって、全世界にばらまかれた映像を消しきることはできない。なら、あ
の女が派手に小水をまき散らす光景を目の当たりにし、ついでに賞金を獲得するくらいし
か憂さ晴らしの手段はない。
そのきっかけが、少し遠くで鳴り響く。
「爆発、音……?」
「そのようだ」
方向は、島の中心部。つまりは丘。遮蔽物も何もない、撃つか撃たれるかの戦場。
「行かなきゃ……!}
普段はめったに祈ることもないのに、今回ばかりはくだらない願いを唱えなければならない。神様、もう少しだけ我慢させて、と。
→※←※→※←
「まるで、化け物、よ……!」
荒い息、駆け上る甘美な刺激。それらをどうにかこらえながら、サブマシンガンを撃ち
続ける。遮蔽物の少ない丘陵地で、駆け回りながら撃ち込んでいくしかないのだが、対面
する長身長髪の女は、意に介さずに2丁拳銃の暴力的な銃弾の嵐をこちらに打ち返してくる。
「はうっ!?」
どうしたって、全弾回避は出来ない。最低限、腕や足でブロックできるのが本物の銃弾
戦では出来ない荒技ではあるのだが、それはすなわち頂上へ追いやられるのが早いか遅い
かの違いでしかない。
あの化け物を挟んで向こう側からも、化け物を狙う銃弾が飛び交う。協力体制を取って
いるわけではないのだが、先にこいつを倒さないことにはお互いやられてしまうのが目に
見えているのだ。
1:2という不利な状況であるにもかかわらず、追い詰めてるのは向こう側で、追い詰
められているのはあたしたちだった。なんせ、まるで手応えがないのだ。いくら銃弾を注
いでもあの女に感じている形跡はない。まさかこの中で全ての攻撃を裁ききれるとも思え
ない。もっとも、前回たまたま2位になったあたしは、最後にこの女に“してやられた”
わけだが、化け物が化け物たる所以も多少なりは推測している。
「いくら撃っても、感じない、って、チートよ!」
「聞こえないわねえ」
前回の最後の最後、あたしは至近距離でありったけの弾丸を撃ち込んだ。だがこいつは、
顔色一つ変えることがなかったのだ。弾切れになったあたしの絶望は、すぐさま派手に吹
き散らされた愛液へと変わることとなった。
ようするに、主催者と組んでるのだ。この女の身につけてる機械は、何らかの手段で作
動しない、もしくは非常に弱くしか作動しないようになっている。おまけに、弾切れもな
い。ただでさえ身体能力が凄いのに、チートまで使われたらどうやって勝てるのかがわか
らない。
だけども、あたしは目的を達成するためには、この女をどうにかしてでも倒さなければ
ならない。
反対から、フラグが投げ込まれる。一呼吸を置いてフラグは爆発音をまき散らすが、女
はそれまでに効果範囲を脱出している。足止めにもならない。
そうこうしている内に、“あたしの制限時間”は驚異的なスピードで時間切れに迫って
くる。もうさっきから、ひたすら男性器で中をピストンされているような状態なのだ。
「はあっ、はあっっ」
苦しい。息が辛い。どうにか攻撃を受けないように受けないようにしてきたけど、あの
機械の作動は止まらず、腰が浮き、歩くのもままならない。もちろん挿入なんかされては
いないのに、膣内はうごめき、形なきペニスに射精をうながさんとばかりにひくつく。昇
り詰めてくる絶頂感。
「もう出来上がってるわね。ほら、おイキなさい」
劇鉄があがる。あたしはもう、銃弾があたしを貫く待ち望むしかなかった。
はずだった。
「見つ、けた……!」
→※←※→※←
どうにか戦場にたどり着いたときには、あの憎たらしき長身長髪の女が、1人の参加
者に銃を突きつけているところだった。
「見つ、けた……!」
わき上がる喜び。自分の手で、私を恥辱に落とした罰を与えることが出来る。一瞬だけ、
あれだけ私を苦しめていた快楽の渦が消え去る。
「あらー、やっぱり来たわねぇ。ま、これくらいでないと張り合いがないか」
にやりと、嫌らしく口の端を上げる。
「チャンスっ……!」
その瞬間、突きつけられていた側の女が、手持ちのサブマシンガンを至近距離でたたき
込む。だが、アイツはまったく意に介さないようで、一言。
「まったくもう、デリカシーのない女は嫌われるわよ」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
「ひあぁぁぁぁああっ!!」
『No.20 dead』
パイソンの弾をありったけ喰らい、反逆者が処刑される。血の代わりに愛液、そしてち
ょろちょろ流れ出す小水が地面を浸食していく。ゲーム設定上、パイソンの弾は2発で命
を奪い去る。況してや全身既に快楽につけ込まれている状況だ。その上で、3回死ぬに等
しい絶頂がどれ程残忍なのかは既に身をもって経験している。
「あーあー、我慢してたのねー。こんなにも垂れ流しちゃって」
女が敗北者の下腹部を足でなじる度に、くちゃくちゃと水音がいやらしく響く。
「うっ、あ……んっ……」
意識はどこかに飛び去っているはずなのに、彼女の身体は反応し、声が漏れ出ている。その光景はまさに死者をいたぶることそのもので。
「ふ、ふざけるなああああ!」
気づけばなりふり構わず突進していた。飛びかかってナイフを一閃するもかわされ、そ
こにカラシニコフの銃弾を浴びせるがやはり手応えはない。
「こいつ、全然、銃弾が効かないの!」
もう1人残っていた参加者の証言を聞くまでもなかった。回避しようもない距離で、何
発も撃たれた銃弾が全て逸れるわけもない。
「一応、作動はしてるわよ? 細工はしてあるけどねぇ」
「どんな、細工だ……ひっ、こ、こんなに動いて、なんで、“濡れてない”んだ!?」
感じてないことの証左。長身長髪の女のミリタリーパンツにはシミ一つない。かすかに
作動タイミングで身体が揺れているのだが、それが絶頂に向かう刺激となってないのは、
日の目を見るよりあきらかだった。
「くうっ……」
「さあ、どうするのかしら? さあ、さあ!」
「ちっ……ひいっ!!?」
連射される2丁拳銃。1発掠めて、身体がびくんっと飛び跳ねる。致命的な間。
「ここっ!」
だが、仲間が投げ込んだフラグのおかげで、爆発までの間にどうにか距離を取ることが出来た。もちろん、相手は回避して何ら影響も受けていない。
「当たりなさいっ!」
反対方向からのアサルトライフルによる銃撃も、黙って受け止め、にやりと笑うだけ。
銃も効かない。フラグは回避される。私に残された手段はもう、ない。
「く、ううっ、ああっ……」
当の昔に限界を超えて耐えていた蜜壺からとろとろと溢れ出す液。身体が溶けてしまい
そうで、もう楽になりたくて、私は……
「みつ、けた……!」
倒れ込みそうになる一歩手前。ここまで一言も話さなかった“歩く弾薬庫”がそう呟く
や否や、大事に背中にくくりつけていたはずのRPGを私の横に放り出し、駆ける、という
には少し遅いスピードであの女の元へと走っていく。
「お、おい……っ!?」
止める間はあったのだが、止める力はなかった。女は女で高みの見物で、拳銃2丁を向
けるものの、すぐに撃つ気配はない。
「さあ、何を見つけたのかしら? まさか、私をイカせてくれるとでも?」
「ええ、そうよ……」
「あはははは! 面白い。面白いわあなた。後ろでぼけっとよがってるのよりよっぽどイイじゃない」
「そう言ってられるのも、今の、うち……」
彼女は一瞬私へ振り返り、次いで横脇に捨て置かれたソレに目をやる。ピンッ、と嫌な
想像が頭を過ぎる。
「やめ……」
「わたしは、わたしは……っ!」
彼女の手から、スモークグレネードが放たれる。次いで、爆発。彼女とあのあの女が視
界から消え失せる。
「目くらまし? つまらないわね……こんなんじゃイケないわ。誰かがイクのを見るのが
サイコーに気持ちいいのに」
「そう、かしら?」
キーンと独特の電子音が鳴り響く。煙の中から投げられたセムテックスは、外に飛び出し、誰も居ない場所で“爆発”する。当然、誰も影響範囲にはいない、が……
「怖い、でしょ? あなた、“爆発”だけは、綺麗によけてた、わ……」
「……っ!?」
煙が晴れた中。そこから現れたのは、彼女が女の後ろを取り羽交い締めにしている状態
だった。
「煙の中、見えない爆発……なら、着地音と反対側、に距離を取る、のは当然……っ!」
「ちいっ!!?」
ここまでで初めて、長身長髪の女の笑みが消える。彼女をふりほどこうにも、綺麗に決
まったフルネルソンは早々外れない。
「どういう、仕掛けか、しらない、けど、銃弾クラスなら効かない、でも、即死クラスな
ら、ちょっとは、効くんでしょ」
「く、くそっ!」
「はやく、早くそれを撃って! お願い!」
「あ……ああっ!?」
わかってしまった。手元にあるRPG。これを、早く撃て、と。
「そ、そんなことしたら、お前まで……」
「いいから、早くっ、もうもたないの……っ!!」
「はなせ、はなせっ!」
「っ……!」
現実は非情だ。私が撃てば、間違いなく彼女は、ここで脱落する。でも、これしかない。
「ありがとう……っ!」
そして、私はRPGを、撃つ。
→※←※→※←
見えないRPGの弾丸が放たれ、長身長髪の女と、羽交い締めにしていた女の子がまとめ
て“爆発”の影響を受ける。
「ひぃいいいいいっ!?」
「ああああああああっ!」
『No.10 dead』
羽交い締めにしていた女の子の脱落を告げるアナウンス。ただ、そんなものを聞かずと
も彼女が絶頂を迎えてしまったのは見ればわかる。羽交い締めにしていた腕がほどけ、仰
向けに倒れていく。程なくして、その股間からはしたなく、潮がぷしゃっ、ぷしゃっと吹
かれ、ついで黄色い液体も流れ出てくる。白目をむき、意識はどこかに旅して戻ってこな
い。
「あ、あ、あ、」
意味もない声は、いまだ絶頂の良いんでこぼれているものだろうか。時折びくんと跳ね
る身体も、無意識下のことであろう。
道連れにされたあの長身長髪の女はというと、
「あ、ああっ……」
初めて、感じていた。その背を少し曲げ、快楽にあらがおうと身体をきつく抱きすくめ
ている。だが、手にした2丁拳銃を落とすまでには至っていない。
「や、やってくれた、やってくれたわね……っ!」
がたがたと震える腕。その視線の先には、打ち終わったRPGを未だ手放せない、美麗な
女性。
「はあ、はあっ、ふうーっ……少し、落ち着いたわ」
長身長髪の女の震えが止まる。だが、あたしの場所からも、今まで何もなかったあの部
分に、少しだけシミが出来ているのが見える。
本当は、もうリタイアしたかった。あの女の子の脱落で、あたしは賞金を獲得すること
が出来ているのだ。もう股間がうずいてうずいて仕方なくて、今にもイキそうだった。
だけども。
「うううっ……!」
RPGを撃った女性の、執念が渦巻いて見える。あたしと同じ状態ならば、立ってるのも
辛いはずなのに、歯を食いしばり、必死の形相でこらえていた。そして。
――再開は唐突だった。
女性は何かの荷物を放り出すと同時に、前方にこれまた何かを投擲。次の瞬間にはまば
ゆい光が放たれて、あたしは隠れることも出来ず、何も見えなくなってしまう。視力が戻った頃には……
「ば、馬鹿じゃないの!?」
双方が駆け回りながら、二丁の拳銃で撃ち合っていた。チートを使っているあの女はさ
ておき、彼女の方はいつ無様に吹き上げてもおかしくないはずなのに、駆け回り、転がり
回り、打ち合いを五分に進めている。彼女の通過した空間には、液体が放物線を描いて残
されていく。それが何なのか、考えずともわかる。
――美しい。場違いにもほどがあるが、あたしは彼女の姿から、そんな感想を持ってし
まっていた。身につけられているソレも、ゾクゾクして病まない感覚も、何もかもを忘れ
て見とれてしまう。
だが、いつまでもは続かない。元々ハンディキャップの設けられた戦いなのだ。ハンデ
ィを背負ってしまった方が分が悪くなるのは、当然の理だった。
「つっ……?」
時折、彼女の動きが鈍る。その度に、あの女が放つ銃弾が彼女を蝕む。
「ああっ!?」
嬌声を上げ、身体をよじらせ、動きを鈍らせても、彼女は止めない。
……もうこれは、魅入られてしまったものの宿命なのかもしれない。
あたしは、ほとんど使い切っていた武器の中で、唯一、今まで使い道が余りわからなかったソレを手に取り……
→※←※→※←
何度目か数えてもいないが、限界が近づいていた。本当なら何度も何度も、イカされて
いてもおかしくないはずなのに、私はここまで生き長らえていたが、もう限界だった。
目は虚ろになり、視界がぼやける。息をするのも辛いくらいに声が漏れて止まらない。
腰ががくがくと震え、動いていられるのも不思議なくらいで、何より、ぐちょぐちょに濡
れぼそっているというのに、あの機械は、私を脱落したものと見なすことはなく、代わり
に時の経過を私に刻み続ける。
でも、それでも。なんとしても私はこの目の前にいる憎たらしい女に勝ちたかった。最
後、彼女が自らの身を挺して、チャンスの目を作ってくれたのだ。賞金を捨ててまで、私
に勝たせようとしてくれたのだ。もう少し、もう少しでいいから、後で思う存分イキまく
るから、お願いだからもってくれ、私の身体。切に願う。
戦況は、はっきり言って不利だった。この女は多少なり動きを鈍らせてるものの、未だ
に素早く私を補足して撃ってくる。リロードすらせず、というのはチートなのだろう。物
量でも辛い上に、私には大きな枷が胸と秘部に嵌められて、あらがう術を持ってないのだ
から。
「あああっ!?」
だけど。
「ひいっ!」
止まらない。
「はああっんんっ」
止まれない。
ボンッ、と音が鳴り、黄色い煙が立ちこめたのは、わずかに戦闘が停止した時だった。
ぎりぎり私に漂ってこない範囲で撒かれた……媚薬。
「うううっ……」
「こ、このぉおぉぉっ!」
最後に残っていた女の子が、女を道連れに、ガスを撒いたのだ。逃げられぬよう、脚に
しがみつきながら。
「は、放せ畜生!」
足を蹴り飛ばすようにしてはがそうとするが、はがれない。
「くそっっ!!!」
余裕のない罵声。炸裂する銃声。
「い、いいいいぃぃっっっっ!」
『NO.3 dead』
ぶしゅっと、女の子の潮が噴き出し、女の足に絡みつく。既に脱落しているのに、彼女
は足にしがみついて離れない。
「はあっ、はあっ……ううっ……」
どうにか振り払った時には、女は顔を赤色に染め上げて、ふらふらと身体をくゆらせて
いた。
「ああっ、あああっ……畜生、畜生!」
そして、ぽたっ、ぽたっ、と透明な液体が、こぼれだしている。
「雑魚がぁぁぁぁっ!」
銃声が数発轟く。足下にうずくまった少女が、その度に身体を震わせ、わななく。
「あ、あ……」
嬌声は聞こえなくなり、身体が前のめりに崩れていく。
「くそっ、くそっ!」
「ひ、い、ああ」
それでも苛立ちを抑えられない女は撃ち続ける。
……つまりは、チャンスなのだ。
「くそっ、くそ……な!?」
飛びかかり、身体を捕まえて地面に転がる。ついでに、私も同じ武器を手にして。
「一緒に落ちようじゃないか、なあ?」
「や、やめ……っ!」
身体と身体の間で、媚薬がまき散らされる。
「う、あ、ああ……」
「つうううっ……」
全身が性感帯に変る。あらゆる刺激が快楽を呼び、その刺激でうごめく身体がまた快楽
を呼び起こす。でも、それはこの女も同じで。
「ひいっ、いっ……」
絡み合う足。重なり合う身体。
「やめ、ろぉぉっ」
少しだけ拘束から抜け出した女の手が、パイソンを私の身体に突きつけ、撃つ。
バンッ!
「ひいっ!?」
「ひゃあっ!?」
脳髄がしびれる。だけども、身体が、そして、私の燃えたぎっているアソコが、女のソ
レとくっつきあい、私の衝撃がそのまま女に伝わる。
ぴちょぴちょと擦れ合う部分で聞こえるのは、どちらのものかわからない。
「だ、だめ、くっついたら、こっちまで……っ!」
「そいつは、よかった、なっ!」
ならばこそと、より強く、深く、つなぎ合わせる。腰を動かし、本能に刺激する。
「あ、ああっ、い、いやっ!」
「う、ううっ……」
もがき苦しむ女。それでも、パイソンは火を放ち、銃弾が私を貫き、そのまま女を貫く。
「さあ、い、一緒に、イこうじゃ、あ、ああっ、な、いいいっ、かっ!」
「は、はあっ、はな、はなせっ! ひいいっ」
くちゅくちゅ。くちゅくちゅ。
水音が耳に響く。でも、まだ、まだ足りない。
未だパイソンは残弾知らずで、女よりも確実に私を蝕んでいて、このままじゃ先にイっ
てしまいそうで。
――だから、私は、賭けに出た。転がりながら向かう先は、先ほど放り出した荷物のと
ころ。たどり着いて、私はにやりと笑う。
「強烈なのを、くれてやるっ!」
「なにを――」
深くまで、子宮と子宮がくっつくんじゃないかと思うくらい、私のアソコを、女のアソ
コに押しつけ、お互いの体液で隅々までぬめり濡らしあい、ポケットからソレを取り出す。
「C、4……っ!?」
派手な爆発音が、辺りに響き渡り、そして私は全身に降り注ぐ快楽の渦に飲まれ、盛大
に……
→※←※→※←
「C、4……っ!?」
振りほどく余裕はなかった。機械が浮き上がる余裕もなかった。体温が伝わるくらいに、
強く強く押し当てられ、擦り上げられて、ただただ歯を食いしばり、そして。
「ひいぃいぃぃいっ!?」
「ああああああぁぁっ!!」
初めて感じる、このゲームで一番の“衝撃”に耐えようとした。
一瞬にして、クリトリスが、膣が、子宮が蠢く。
「あ、あああ、っ」
「あああんっ、あああああっ!」
ぷしゅぷしゅと破滅の音が中から聞こえ出す。
それでも“ハンター”のプライドとして、耐える。暴力的なまでの悦楽に耐える。
「く、ううっ、あ、ああっ」
「だ、だめっ、ひ、ひいいっ」
耐える。この女に勝つために、“ハンター”として、最高によがった顔を見て、感じて、
イってしまうために。
耐えた。終局の音は、確かに、自分の体ではないところから放たれた。
ぶしゃああっ!
股間が温かい。機械越しに、潮の勢いを感じる。
「あ、ああ、あ……」
白目をむいて、顔はくずれ、だらしなくよだれを垂らす、過去最大の強敵だった女。
ああ、この顔が見たかった。そのために、とどめを刺さずにここまで来たのだ。
いいわ、そのイキっぷり。そこまで耐えて、耐えて、ぶちまけるなんて。最高に感じる。
イキたい。イッてしまえ。
その全身を眺めて自身も果てようと、身体を少しだけ起こし、緊張を弛緩させたところ
で。
「あんたなら、この一瞬があると、思ってた」
白目がいつの間にか炎を灯した黒き瞳に変わり、身体の上下が入れ替わって地面を背に
し、下腹部に差し込まれた手がアソコを機械越しに強く押しつけて、かわりにミリタリー
パンツは浮き上がり、空気が腹に触れ、今更ながら脱落のアナウンスがないことに気付き。
「私のイキ様を見て感じてるんだろう? なら、イキなさい。たっぷりとくっつけてあげ
るから」
胸元に突き付けられた銃口を見て。こみ上げてくる喜びには勝てそうもなく。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
→※←※→※←
一発目のときはちょろちょろと。
二発目のときはとめどなく溢れ。
三発撃つ頃には、私の手はおびただしいほどの愛液と、小水とに塗れていた。
そして聞こえる。
『No.1 dead. And winner is No. 7!』
脱落、そして勝者を告げるアナウンス。
その声を聞いて、私は手を抜きとり、女の横に倒れこんだ。そして、身体を丸め、せめ
て動かしている様がカメラに映らぬよう、隠しながら手を、今か今かと待ち望む濡れまく
った熱いアソコに触れ、指を入れ、少し曲げ、ぷっくりと膨れた部分を押し込み、
「ああああッ!」
私は“我慢してた残り分”、盛大に果てた。
直に降り注ぐ熱い体液。そして、まだも小水が溢れだす。
「あ、あああっ……」
それでも止められない。耐えていた分は消化できない。絶頂の最中で、それでも無我夢
中で、指でかき混ぜ、クリトリスを摺り、
「あ、ああっ、はうっ、あああんっ!」
身体をより強く丸めながら果てたところで、少し熱が取れた。あたりにはむせるほどの
雌の匂いがたちこめていて、その成分のいくらかが自分のものだと思うと、今頃になって
羞恥心が私を苦しめだす。
勝った。この女に勝った。だが、当初考えていた“乱れた姿をカメラに見せない”は達
成できなかった。それどころか二度も自分の指で慰めて果てる始末だった。
二度と参加するもんか……と転がった先に広がる青空に誓ったところで、横からの声。
「どういう、仕掛け、なのよ……」
うめくような、長身長髪の女の声。まだ身体の火照りは取れていないのか、息は荒い。
おそらく、だが、この女は今日初めて、このゲームの“本当の快感”を感じたのだろう。
余韻が神経にこびりついていても不思議ではない。
「あれだけ、盛大に、まき散らしたのに、なんで……」
「……言ってたじゃないか。“全部が水につかっている間は、判定をしない”」
「ま、まさか……」
「あれだけ絡み合って、おたがいのでびしょびしょになってたら判定しないだろうと思っ
て。だから逆転するには、一度イって、隙を作るしかなかった。判定させるためには、ど
うしてもこれだけ濡れたパンツを“はがす”必要があったから」
「でも、イってる最中なのに、どうやって正気に!?」
「ああ、それは……“耐えた”。その流れを考えたときから、耐えるように待ち構えてた。
おかげで、終わった後に我慢できなかったけど、それが失敗だった」
そのセリフを聞いて、ひゅっと息を飲む音がした後、私は
「あはははははははっ!」
盛大に笑われた。
「狂ってる。狂ってるわ! 同じどころか、とびっきり狂ってるわ!」
「……そっちに、言われたくはない」
はあ、とため息をつく。
何分、勝ち気が強くて負けん気も強いもんだから、ただただ負けたくない、勝ちたかっ
ただけなのに。
私はそのまま、鼻につく高笑いを何分も聞かされ続けていた。
終了後に誘導を受け、舟に乗り、集合場所だったホテルに連れられ、そのまま賞金授与
になりそうなところを「シャワーと着替えくらい先にさせろ馬鹿!」と大声で怒鳴りつけ
て、なんとか恥辱に塗れた姿での金銭受け取りは回避した。
シャワーを浴び、念入りにこびりついた汚れその他もろもろを洗い流し、冷たい水で火
照りをとり、元々着てきた服に着替えたところで、再度呼び出しがかかり、私は賞金授与
の場に連れられた。
金を持って出てきたのは、強欲そうな面の皮の親父。ああ、こんなゲームを考え付くわ
けだと妙に納得しながら、札束10個を受け取りさあ帰ろうとした背中に、とんでもないセ
リフが投げつけられる。
「ちなみに、1位となったものは次の回の“ハンター”となって強制参加だ。逃げること
もできんよ。その時には、その金を返してもらおう。利子つきでな」
「くそじじいがっ……」
じゃあこんな金はいらないと、本気で捨てようかと思った。
だが、とあることを思い出し、渋々(本当に渋々だ)条件をのみ、次参加するんだったらさっさと聞いた途中リタイア方法で抜けだそうと決心し、その場から駆けだす。
「あ、ああ、いた! 待って!」
私は、とある人物を探していた。そして彼女が、金を投げ捨てることをためらわさせた
理由だった。
「あ、あなたは……」
「はいこれ、取り分」
そういって、ポカンとする彼女に、半分の500万円を渡す。
「え、でもこれ……」
「これはあなたが頑張った分。あなたが頑張らなきゃ、私はこのお金を受け取ってなかっ
た」
「それでも、そんな、わたし」
「いいからいいから。入用なんでしょう? じゃあそういうことで」
後ろから私を呼びとめる声が聞こえてくるが、無視して駆ける。何に使うか知らないが、
どうか有用な使い方をしてほしいものである。
そのまま駆け続けて、タクシーを捕まえ、駅に向かい、電車に乗って、ようやく地元に
戻って、勢いそのまま家になだれ込む。
家族は誰も家にいなかった。いつものことだ。どうせ夜には戻ってくる。
……またあのくだらないゲームに参加しなければならないなんて!
ただ一点腹立たしい事象に対するストレスを解消するため、私は500万円を机に積み上
げ、それからxBox360の電源を入れる。
「……やっぱりゲームの中の撃ち合いがいいな、私は」
ヘッドホンをかぶり、聞こえてくる“非現実的な”戦場の音。銃声の飛び交う“まっと
うな”ゲームへと、私の意識は落ちていくのだった。
end