「前から好きだった、付き合ってくれ!」  
言葉の終わりの方が少々怒鳴るような声になってしまったが、告白するなんて初めての体験だし仕方ない事だと思う。  
と、そんな事を考えてる場合じゃないのに緊張のあまり一瞬思考が変な方向にぶっ飛びそうになった。  
今重要な事は目の前の幼馴染の反応を確かめる事だ、ほんの僅かな兆候でもいい嫌がられたりしていないか?拒否が態度に表れていないか?  
なにしろ、時間はたったの20秒しかないのだ。  
『20秒だけ時を巻き戻す能力』  
ある日突然手に入れた、この能力。  
そのお陰で、中学時代から淡い恋心を抱いていた幼馴染に告白する勇気が出来た。  
告白を受け入れてもらえれば問題なし、玉砕したなら即座に時を戻してこの思いは心の奥の宝箱に厳重に鍵をかけて封印する。  
ヘタレと言わないでほしい、俺たち二人は男女の幼馴染としては割と仲の良い方だと思っているが、それはあくまで友情としてなのだ。  
この関係を壊しかねない告白という行為にためらいが生まれるのも仕方のない事だろう、  
下手をすれば、失恋するだけではない、十数年の親友との関係を断ち切ることにもなりかねないのだから。  
って、また思考がぶっ飛んでいる。  
緊張するのも大概にしろよオレ!  
改めて、幼馴染の反応を確認する。  
幼馴染は突然のことに思考が止まっているようだった、呆然としていると言ってもいいだろう。  
俺も、突然こんな告白をした身として彼女を焦らせたくはない、じっと待つ。  
現実逃避の中でも続けていたカウントは現在6秒、緊張のせいだろう1秒がやけに長く感じる。  
……7秒……8秒……9秒、今までの人生で最大の忍耐力を発揮して必死で待つ俺だが流石に焦りが湧いてくる。  
時間は20秒、あまりにも短い。  
心のどこかで悪魔が、  
「どうせ、20秒でやり直せるんだ、無理やり聞き出しても何の問題もねえぜw」  
なんて、囁いてきたが断固として無視する。  
あくまでこの能力は、いままでの関係を崩さない為だけにあるのだ。  
自分だけがやり直せるから、なんて考たら彼女に対してあまりにも失礼だ。  
 
それでも10秒を超えたあたりで忍耐の限界が訪れた、思いきって声をかけようとした俺の目の前で彼女が再起動を果たした。  
「あ、あの、あのね、えっと、だから……」  
……どう見ても全身全霊でテンパってる。  
けど、こういう反応になること位は予想済みだ。  
ほんの少しで良い、喜びか拒否感か、困惑ではない告白の成否に関わる感情を見せてくれればそれで十分だ。  
幼馴染は伊達じゃない、絶対に見逃さない自信があった。  
「うん、あの、だからね……」  
だが今の彼女は脳の全て100%が混乱と困惑、動揺で占められている。  
そうしているうちにも、時間は刻々と過ぎてきている。  
15……16……  
「今私ね、自分でも分かるぐらいテンパりまくっててね、あの、だから……」  
19……2これが限界だ!  
【時間よ、今一度同じ螺旋を歩め!】  
能力を発動させる。  
 
駄目だったか……  
能力を発動すると、精神だけが20秒の時を逆流する。  
その時間で、今の結果について考える。  
今回彼女からは、困惑以外の要素は何も見てとれなかった。  
もう一度挑戦して、彼女に答えを促すことも考えたが……やめた。  
俺が欲しいのは、そんな"無理やり手に入れた答え"ではないのだ。  
彼女が自分で考え、納得した、そんな答え以外は必要としてない。  
そうやって返してくれた答えであれば、たとえそれがNOという答えでも自分はきっといつか受け入れられると信じている。  
別に今回の挑戦で、彼女との関係が悪化した訳ではない。  
単に能力を手に入れる前と同じ状況に戻っただけだ。  
思えば、能力に頼って安全に答を手に入れようなどとした時点で、自分が間違っていたのかもしれない。  
例えどんな答えを返されても……もしも彼女との関係に亀裂が走ろうとも、  
自分で受け入れ、前に進めるように頑張るべきだったのかもしれない。  
そんな事を考えても、やっぱり気分が落ち込んでくるのは自分の未熟さだろう。  
でも、元の時間に戻った時に情けない顔を彼女に見せる訳にはいかない。  
俺が彼女の表情に敏いように、彼女も俺が困っているとすぐに気付くのだ。  
だけど、今回の挑戦で落ち込んでる顔を彼女に心配されるなんて、俺のなけなしのプライドが許さない。  
だから、思考を無理やり切り替える。  
告白は当分お預けだ。  
いつか……本当に自分で自分に責任を持てるようになったら、今度こそ能力なしで告白しよう。  
そう決意すると同時に、空間が明るくなってきた。  
いや、まあ、今の自分は精神だけなので本当に明るくなっている訳ではないが、そう感じるという事だ。  
これは逆流が終わって、現実世界へと戻っていく合図だった。  
 
そうやって、現実世界に戻ってきた俺の目の前には呆然とした顔の彼女がいる。  
 
……………………呆然とした顔?  
 
あれ、これはまるで告白した瞬間の様なそんな顔ではないだろうか?  
確かに能力は完全に発動したはずだ。  
今、もう一度能力を発動しようとしてみて、無理だったから間違いない。  
じゃあ、なんで?  
必死で今までの自分の思考を振り返る。  
そうして、気付いた。  
『緊張のせいだろう1秒がやけに長く感じる』  
さっきは何の違和感もなかったのだが、緊張のあまり"本当に"一秒を長く数えていたのだとしたら?  
つまり、目の前にいるのは紛れもなく"告白された瞬間の"彼女なのだろう。  
…………どうしよう?  
 
 

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