俺は同じクラスの吉川香澄に憧れていた。  
身長は約165センチでスタイルは抜群。黒のストレートヘアーに黒縁のメガネ、化粧っ気は一切なく、いかにも優等生といった雰囲気の少女だ。  
彼女はこの夏までバドミントン部の主将を務め、個人戦でインターハイベスト8。  
成績のほうも常に上位で、3年生になった今年は、都内の有名私立大学への進学を狙って猛勉強しているらしい。  
また彼女は学級委員長を務めており、その仕事に対しても真面目に取り組んでいる。  
まさに才色兼備と言っていいだろう。  
その服装の地味さや大人びた性格から、彼女は今どきの派手な身なりの女子高生たちの中では、あまり目立つような風貌ではなかった。  
しかし決して地味なタイプというわけではない。  
むしろ、落ち着きがあり自信に満ちたその振る舞いは、同世代の女子の中でも不思議な存在感を放っていた。  
当然というべきか、彼女のプライドは非常に高かった。  
彼女はいつも取り巻きの女子たちに囲まれていた。  
男子に対する態度はそっけなく、たまに言葉を掛けるときもその口調はきつく、どこかトゲがあった。  
出来すぎた能力ゆえ、きっと同年代の男たちを見下しているのだろうということは、容易に想像できた。  
そんなきつい性格と裏腹に、吉川香澄の顔はどちらかというと少し幼く、可愛らしい造形をしていた。  
大人びた言動や黒縁のメガネの奥に垣間見える、あどけない少女の面影が、何人もの男たちを狂わせた。  
彼女に告白したという男子は数知れない。  
だが、誰ひとりとして彼女をうなずかせることはできなかった。  
これまで吉川香澄に彼氏がいたという話は聞かなかった。  
自分に見合う男がいないと思っているのか、それとも単に男に興味が無いだけなのか、とにかく、彼女は意外なほど男っ気が無かった。  
俺は誰よりも先に、吉川香澄を手に入れたいと思った。  
 
だが、俺は告白なんてしない。  
告白するよりも、もっと確実な方法がある…少々強引な方法ではあるのだが。  
だがどんな手を使っても、彼女をものにしたかった。俺はそれくらい彼女に焦がれていたのだ。  
そのために必要なのは、その危険な方法を実行に移す勇気と、そして………ある薬品だ。  
それさえあれば告白なんてしなくても、もっと確実に吉川香澄を手に入れることができるはずだ。  
その薬品を手に入れたルートをここに書くことはできないが、とにかくそのクスリは今、俺の手元にある。  
一週間前、以前からチェックしていたあるサイトに注文のメールを送ると、その二日後に小さなダンボール箱が送られてきた。  
箱の中には、厳重に梱包が施された包みが入っていて、乱暴に包みを剥がすと、液体の入った茶色い薬品ビンが現れた。  
―――そのラベルには、「chloroform」と書かれている。  
言いようのない興奮が俺の身体を駆け抜けた。  
ついに手に入れた……!  
俺はずっとこれが欲しかったんだ。これさえあれば……!  
 
計画を実行に移すのは、水曜の放課後に決めた。  
学級委員の務めと思っているのか、それとも推薦のための評価を狙っているのか、それは判らないが、吉川香澄は放課後、一人で教室の掃除をしてから帰るのを俺は知っていた。  
そして水曜日は放課後に委員会の会議があるため、必然的に彼女の帰りは遅くなる。  
そのくらいの時間になれば校舎には誰もいなくなるだろうから、教室で掃除をする彼女と二人きりになることができる。  
職員室もだいぶ離れているから、教師たちに邪魔されることもないだろう。  
とにかく、彼女を“相手にする”ためのわずかな時間さえあればいい。  
その後は、もっと安全な場所に移動して、ゆっくり楽しめばいいのだ。  
水曜の放課後になった。いよいよ計画を実行するときがきた。  
俺はひとまず図書室へ向かった。  
ここなら委員会が終わるまでの時間を本を読みながら潰すことができるし、何より隣が委員会が行われている会議室だから、委員会が終わり次第すぐに行動できる。これが一番の理由だった。  
俺は落ち着けなかった。抑えきれない興奮と微かな緊張が、心臓を異様なほど早く脈打たせていた。  
手に取った本にはまったく集中できず、内容は頭に入ってこなかった。  
委員会はだいぶ長引いているようだった。  
「早くしろ…」  
この学校について、いったい何を話し合うことがあるのだろうか。  
俺は何度もポケットの中に伸ばして、薬品ビンと医療用ガーゼがちゃんとそこにあるのを確かめた。  
まさか、今更なくなるわけがないのだが、しかし確かめずにはいられなかったのだ。  
ポケットの中の手のひらに、ふわふわとしたガーゼの感触。  
用意した医療用ガーゼは、できるだけ多い量のクロロホルムを含めるよう、脱脂綿がたっぷり詰まっていた。  
このガーゼに、トクトクと液体を垂らし、そして……。  
焦る気持ちを押さえ、俺は深く深呼吸した。  
 
夕方六時を過ぎた頃、会議室の明かりが消えた。ようやく委員会が終了したようだ。  
会議室から続々と生徒たちが出てくる。  
しばらくして香澄も出てきた。  
生徒たちはみんな一直線に昇降口へ向かっていく。だれも教室へと向かうものはいない。  
ただ一人、吉川香澄だけは一人、教室のある反対方向へと歩き出した。  
つくづく律儀な子だなと、俺はおかしくなった。  
俺はゆっくりと立ちあがった。  
ポケットの中で、ビンがちゃぷんと音を立てた。  
 
 
香澄は少し焦っていた。  
速足で誰もいない廊下を進む。  
(急がないと塾の時間に遅れちゃう…)  
6時を過ぎ、辺りは暗くなってきていた。  
夕日に染まる外からは、ひぐらしの大合唱が聞こえた。  
彼女はどんなときも放課後の掃除はサボらなかった。  
自分には学級委員長の責任があると思っていたし、何より清潔な教室で勉強するのが好きだったのだ。  
教室に着くと、いつものように荒れ放題だった。  
そこらじゅうにゴミが転がり、黒板は落書きだらけ、机の列はバラバラに乱れている。  
(はあ…なんでみんなきれいにつかえないのかな)  
香澄は慣れた手つきでテキパキと掃除を始めた。  
箒とチリトリで床に散らばったゴミを集める。  
黒板消しで黒板のチョークを丁寧に消していく。  
黒板をきれいに拭き終わったころ、教室に一人の男子生徒が現れた。  
 
「あ…」  
いつもなら誰もいないはずの時間に人がいることに、香澄は驚いた。  
(同じクラスの男子…何て名前だっけ…)  
その男は入口付近でじっと立ったままこっちを見ている。  
(何してるんだろ)  
「…ねえこんな時間に何してるの?忘れ物?」  
思わず口調がきつくなってしまう。  
「いや…」と言うきり黙ってしまった男を見て、すこしきつく言いすぎたかなと香澄は思った。  
そんなつもりはないのに、彼女はいつも男子に対する口調が厳しくなってしまうのだった。  
(こんなんだからあたしは彼氏ができないんだな…)  
気まずい空気を変えようと、香澄は口を開いた。  
「ねえ、手が空いてるなら、机並べ直すの、手伝ってくれない?」  
今度は自分なりに、精一杯優しい”女子の”声色を使ってみたつもりだった。  
「……うん、いいよ」  
男の口元に、ニヤリという笑みが浮かんでいるのが見えた。  
(よかった…怒ってはないみたい)  
夕暮れの教室に、机を動かすガタガタという音が響き始めた。  
窓からは夕日が差し込み、外ではひぐらしが大合唱している。  
机を直しながら香澄は、さっきから男が何回もこちらをちらちら見ていることに気が付いた。  
(さっきから何なのこの人…もしかしてこの人もまた告白………)  
「……ねえ、こんな時間まで何してたの?」  
訪ねても、男は返事をしない。  
(…気味悪)  
さっさと片付けを終わらせて、早く家に帰ろうと、香澄は仕事の手を速めた。  
―――そのとき香澄の死角で、薬品ビンに入ったある液体がトクトクと音を立て医療用ガーゼにゆっくりと染み込んでいたことに彼女はそれには気付かなかった。  
 
しばらくして、乱れていた机は、きれいに整列した。  
(やっと終わった…これで帰れる…)  
「手伝ってくれてありがとう。じゃあね」  
バッグを担ぎ、教室を出ようとする香澄だったが、その行く手に男が立ちふさがった。  
後ろに手を組み、じっと香澄を見ている。  
心なしか、その息遣いは荒い。  
(やっぱり……)  
「…はあ。あのね、あたし…」  
香澄が目を伏せ男の横を通り過ぎようとしたとき、その右手に白いガーゼが握られているのが見えた―  
「ごめんなさ…」  
言い終わるかどうかというとき、男は香澄をぐっと抱き寄せた。  
「!?」  
不意を突かれよろめいた香澄は男に寄りかかるような格好になる。  
間髪いれず、男の手に握られたガーゼが香澄の口元へあてがわれる。  
「…ふむんんっ!」  
じっとりと湿った脱脂綿が香澄の鼻と口の穴をしっかりと塞ぐ。  
途端に、甘酸っぱい刺激臭が、彼女の鼻腔から脳天へ、すうーっ…と抜けた。  
(あああぁぁぁぁうぅっ………)  
急に彼女の視界がぼうっとなる。  
鼻の奥がつぅんとして、頭がクラクラと揺れるような感覚が襲ってくる。  
香澄はなんとか抵抗し、男の腕を振りほどいた。  
しかしすぐにフラフラとよろけて、さきほどまで自分が整列させていた机にガタンと音を立ててぶつかり、机に寄りかかるようにして、へなへなと座り込んでしまった。  
 
 
「はぁ…はぁ…」  
クスリの効果は強大だった。  
香澄の呼吸は荒くなり、両手は脱力してだらりと垂れ下がってしまった。  
男は口元にニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべ、哀れな獲物へゆっくりと近付いていく。  
香澄は立ち上がろうとするが、うまくいかない。  
(な…なに……これ…)  
「…はぁ…はぁ…」  
「フフフ…どうしたのかな、委員長。おねむみたいだね?」  
男は急に饒舌になった。  
「……はぁはぁ……どうして…はぁ…やめなさい…はぁ…」  
「おやおや、自分がまだ人に命令できる立場だと思ってるのかな?」  
「……」  
男は香澄の前にしゃがみこむと、ポケットから茶色い薬品ビンを取り出し、そのラベルの文字が彼女によく読めるように、目の前に差し出した。  
「このラベルの文字が読めるかな?ほら、『クロロフォルム』だよ。クロロフォルム、聞いたことあるよね?」  
(…クロロフォルム……ま…すい薬……)  
男はビンを机に置くと、香澄の顎をぐっと持ち上げた。  
「っ…!」  
弛緩した香澄の口元から、一筋のよだれがつーっと垂れる。  
「わざわざ君のために用意したんだ。とっても甘くておいしかっただろう?」  
男は愉快そうに笑うと、香澄の眼鏡を外した。  
半開きの瞳が、屈辱と恐怖で潤んでいる。  
眼鏡を外すと、香澄が本物の美少女であることがよくわかる。  
男は優しい手つきで、香澄の頭を撫で始める。  
「フフフ…すごく効いてるみたいだね…」  
笑いながら今度は頬を撫でると、香澄の顔が悔しそうに歪んだ  
 
男の手はそのまま、香澄の胸の膨らみへと這っていく。  
(……!)  
香澄はなんとか男の手首を掴んだが、ほとんど力が入らず、その腕を引き剥がすことができない。  
男はブラウスの上から香澄の乳房をゆっくりと揉んでいく。  
「あっ…くっ…」  
ブラジャー越しでも、その弾力・柔らかさは十分に伝わった。  
「結構おっきいおっぱいしてるんだね…」  
香澄は恥ずかしさで顔が熱くなった。  
必死に男の手を押しのけようとしたが、何の効果もない。  
続いて、スカートから覗く白いすべすべの太ももへと男の手が伸びていく。  
肉付きのよい太ももを撫でつけるように揉んだ後、チェックのスカートをはらりとめくり上げる。  
白いパンツが露わになった。  
男は香澄の股を開かせ、パンツの膨らみにうっすら透ける割れ目をなぞり始めた。  
「ああんっ…」  
思わず反応していやらしい声を漏らしてしまう香澄。  
あっという間にパンツの上に染みができた。  
「あらあら、もう濡れてる…。もしかして、委員長って、実はかなりスケベなのかな?」  
にやにや笑う男。  
「…や……て…」  
「え?何?よく聞こえないよ」  
「…や……めて………やめて…」  
「フフフ、大丈夫。ちょっとレイプするだけだからね」  
「…い…いや……いや!」  
「そんなに怖がらなくてもいいよ。処女膜を破るときに痛くないように、ちゃんと麻酔を掛けてあげるから。このクロロフォルムでぐっすり眠らせてあげるからね…」  
「や……いや……」  
 
男は嫌がる香澄の身体を抱き抱えるように後ろから腕をまわすと、二人羽織のような体勢で香澄の目の前で再びガーゼにクロロフォルムをトクトクと染み込ませ始めた。  
「意識を失う瞬間はすごーく気持ちいいからね…」  
「…い…いや……やめて……」  
男は一方の手を胸の膨らみへ伸ばし、ブラウスの上から乳房を揉みながら、もう片方の手で湿ったガーゼをゆっくりと香澄の口元へと持っていく。  
「や…や…」  
香澄は首を振って逃れようとするが、湿った脱脂綿は再び容赦なく彼女の鼻と口を塞いでしまった。  
「むぐっ……!ん…んーっ!」  
香澄は最後の力を振り絞って、必死に抵抗した。  
しかしいくら身体を揺すっても、男の腕力の前には無駄だった。  
「さあ、ちゃんと吸いこんでごらん…そしたらすぐに気持ち良くなる…」  
「んーっ!んーっ!」  
香澄は息を止めて何とか吸引を防ごうとする。  
「ほら、抵抗しても無駄だよ…もっと素直に吸いこんで」  
だんだんと苦しくなってくる。  
「んーっ…んっんっ…んっ………むふんっ…!…んふぅー…」  
耐えきれず、とうとう大きく吸い込んでしまった香澄。  
その体内に、大量のクロロフォルムが侵入していく。  
「…むふぅー…むふぅー…」  
吸いこむたびに、甘酸っぱい芳香で香澄は鼻腔がつーんとなった。  
「……そう、それでいいんだ…」  
香澄の肺を満たした強力な麻酔薬は、毛細血管を伝って彼女の四肢・内臓の隅々まで行き渡り、感覚を奪い麻痺させていく。  
(ん…んああぁぁぁぁ…)  
「…んっ…んっ……んっ…………ん……」  
香澄の抵抗が弱まっていく。  
やがて耐えがたい麻酔の快感に屈した香澄の表情は恍惚としたものに変わり、潤んだ瞳はとろーんとなってしまう。  
「ほら効いてきた効いてきた…」  
「…ん………ん………………ん………」  
全身を心地よい麻酔感に支配されてしまった香澄は、もはや抗うこともできず従順にクロロフォルムを吸いこむことしかできなかった。  
 
俺は吉川香澄にクロロフォルムを嗅がせながら、その滑らかで豊かな髪の毛に顔を埋めた。  
香しいシャンプーの香りがして、興奮した俺は思わずガーゼを押さえる手に力がこもってしまった。  
「んっ……」  
苦しそうな声を漏らすが、彼女にもはや抵抗する力はないようだ。  
完全に俺に身体を預けている上、おっぱいを揉んでいるほうの手には、規則正しくクロロフォルムを吸い込んで隆起を繰り返す肺の動きが伝わっている。  
意識はまだあるようだが、もうそろそろだ。  
―――やがて香澄はぴくんと小さく痙攣し、一瞬、全身の筋肉が硬直した。  
「んっ…!…………んふぅー………」  
まるでオーガズムに達したかのような喘ぎ声と共に長い息を吐いた。  
身体からすーっと力が抜けていく。  
とろんとした瞳がゆっくり閉じられる。  
―落ちた。  
哀れな学級委員長は完全にぐったりとなった。  
ついにやった。  
あの吉川香澄を麻酔で眠らせてやった。  
これで彼女は俺のものだ。  
ガーゼ越しにすーすーと可愛い寝息が聞こえてくる。  
「ぐっすりおやすみ、香澄ちゃん」  
ぐったりした彼女の鼻と口をガーゼで押さえたまま、頭にキスした。  
そのまま優しく仰向けにしてやる。  
ガーゼを外すと、弛緩した口がだらしなく半開きになっている。  
口の脇からよだれがたらたらと垂れる。  
委員長ともあろう者が、みっともない。  
スレンダーな四肢をぐったりと床に投げ出す吉川香澄の無防備な姿は、普段とのギャップもありとてもエロティックだった。  
とりあえずこれから誰にも見つからない場所に移動しなければ。  
俺は香澄を抱え上げた。  
女を麻酔で無理矢理眠らせるのがこんなに興奮するとは。  
これはやみつきになると思った。  
 
 
 

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