「さあ続いては皆さんお待ちかね、ビリビリイライラ棒だああ!」  
 MCの台詞に、会場がどっとわき上がる。ただし、アイドルのコンサートのような軽い  
ソレではなくもっと重たいうなり声で、時折下卑た笑い声も聞こえてくる。  
 その声が向けられているのは、スポットライトを浴びている私意外にあり得ない。  
「ルールを説明しよう! チャレンジャーは壁に当たると反応するイライラ棒を操って、  
各セクションをクリアしていかなければならない! 最初のセクションの制限時間は1分、  
それ以降はセクションクリアごとに1分の時間が加算される。全部でセクションは5。セ  
クションをクリアする度にチャレンジャーには賞金10万円が、5セクション全てをクリア  
するとプラスで50万、つまりは合計100万円が手に入るぞ」  
 この企画自体は、昔テレビのバラエティー番組で放送していた物をほぼパクっている。  
私でも覚えている様なものだ。ただし、“これ自体”は公共の電波に流せられる様な物で  
はないことは、私の真横の机に鎮座せしめている、とある物体が証明してくれている。  
「ゲームオーバーの条件はタイムオーバーか、ステージ上から降りてしまう、つまりはリ  
タイアだけ。非常にチャレンジャーに有利な条件だが、その代わりチャレンジャーにはあ  
るものを身に“入れて”もらう。それはコイツだ!」  
 先ほどのとある物体をMCが手にとり、高々と掲げる。ローションをまとい、卑猥な造  
形がなされた、バイブ。長く、太いそれは、ホンモノよりも場合によっては凶器となり得  
る。反対側には電源ケーブルらしきものと、細いパイプがつながれている。  
「チャレンジャーにはこのバイブを中に挿れた状態でチャレンジしてもらう。このバイブ、  
最初は何も反応しないが、壁にぶつかる度に弱、中、強と3段階まで振動が強くなる。お  
まけに、一部のエリアではその中にいる間中、壁にぶつかっていなくても各段階の強さで  
振動したり、あるいは強力な媚薬を放出したりする。バイブを落としてしまってもゲーム  
オーバーにはならないが、その際は……私が差し込む大役を受け持つ!」  
 そういって、MCは手にした物を上下に揺り動かす。落としたときには、今の様に挿れ  
られる、ということだろう。  
「そろそろ説明は終わりにして、チャレンジャーの紹介に移ろう。今回のチャレンジャー  
は、こちらだあ!」  
 回りの電気が消え、スポットライトが残される。先ほど以上に、私に視線が集まるのを  
感じる。  
「チャレンジの意気込みを一言」  
 マイクを振られ、  
「100万円、もらいます」  
とだけ返す。それしか言いようがない。  
「さあ大分強気な様子ですが、終わる頃にはどういう状態になっているのかも注目だ。で  
は始めよう。チャレンジャーはスタンバイを」  
 MCに促され、スタート地点に。そして、まず先に渡された、今は動かないバイブ。  
「まずは、いざ挿入!」  
 なんて台詞だ、とあきれながら、渡されたソレをミニスカート(でなければならないらしい)の下に差し入れる。既に下着は身につけていない。  
「んっ……」  
 ローションのおかげで、何もしていないのに“私”は異物を受け入れた。言い返せば、  
抜けやすいということでもある。注意しなければ落としてしまうが、注意するとその感触  
を直に受け取ることになる。この辺りも計算された演出、なのだろう。  
「それではビリビリイライラ棒、Ready Go!」  
 そして、卑猥なゲームが開幕する。  
 
 最初のセクション。ここは特にトラップなどはなく、ただ単にコースが曲がりくねった  
り時折狭くなったりする程度である。ここで時間を稼がなければ後々の時間に響いてくる  
が、だからといって焦ってミスをしてしまうのもまずい。  
 ストレート、大きなヘアピン、S字カーブと、難なくこなしていく。続く大きな立体  
カーブもクリアして、まだ開始15秒。先端が尖ったS字、大きく上下に移動するところも  
特に問題なくクリアし、私は最初のセクションのゴールを抜ける。残り36秒。次のセクシ  
ョンはトータル96秒だ。  
「さあ最初のセクションは難なくクリアし、賞金5万円をゲットだぁ! 次のセクション  
からは、トラップが仕掛けられている。そろそろ皆さん“お待ちかねの光景”が見れるか  
もしれないぞぉ!」  
 冗談じゃないが、“そうなる”可能性も十二分にあるのはこのゲームに参加すると決め  
てからわかっていた。いわゆる逃れられない運命、というやつだ。恥や外聞よりも、お金  
の方が今は欲しい。  
 第二セクション始まってすぐの風車が3つ並んで回っているところは、問題なく通過。  
そして細長いストレートも問題はないが、4連続で動くギロチンの最後で引っかかってし  
まう。  
「ううっ!?」  
 目測を誤り、ギロチンの避難地帯にぶつけてしまう。瞬間、イライラ棒からはバチンと  
爆発音(スピーカーだ)が鳴り、私の中の物が作動を始める。  
「おおっと、ここまで順調に来ていたが1ミスだあっ! これからゲーム終了まではバイ  
ブが動きを止めることはないぞっ!」  
 ヴヴヴと、鈍いうなり声が体内から響いてきて、じんわりと汗が出始める。今はまだ何  
も感じないが、やがてそれが快楽を呼び起こすのは想像に難くない。一つ深呼吸をして落  
ち着かせ、ギロチンから脱出、そのまま第二セクションをクリアしてしまう。残り時間39  
秒。次の余裕時間は99秒。  
 
「1ミスで作動させてしまったが第二セクションもクリア! ここからはイヤらしい迷宮  
トラップの第三セクションだ! 通路間の風車部分は時折トラップエリアになってしまう。  
トラップに引っかかりたくないからと待ってしまうと、ここまで稼いだ時間も一気に消え  
てしまうぞ!」  
 MCの言葉通り、次のセクションは迷宮のようだった。丸い風車ゾーンが短く細い通路  
で連結されていて、風車の数は縦4横4の16個。その内、6個が青く、もう6  
個が赤く、中心部が光っていて、3秒ごとに光る場所が入れ替わる。ようするにそこがト  
ラップエリアで、青は媚薬、赤はバイブ作動らしい。安全地帯はエリア間の通路ゾーンだ  
が、待ってるだけでは進まない。また風車も3秒ごとに時計回り・反時計回りが入れ替わ  
り、4分の1ずつしか進めない。クリアに必要な通過数は7個。都合のいい方向に回るまで  
待つ事を考えると、最低でも46秒。  
 意を決して進もうとするが、最初の所は都合悪く青く光る。しかし覚悟するしかない。  
手にした棒を、風車に差し込んだ瞬間、  
「ひやっ!?」  
 バイブの先から、媚薬が“吹き出して”きた。  
「あ、ああっ」  
 奥の入口がひくつき、媚薬を子宮へと招き入れる。先ほどのバイブとは比べるべくも無  
く、身体が火照り、振動がただの振動から快楽を生み出す感覚へと変化する。  
「くうっ」  
 約3秒。奥にたどり着けなかった媚薬が、太もとを伝って流れ落ちる量となるには十分  
すぎた。なんとか進行方向の通路に逃げ込めたものの、続いて赤く光る風車に飛び込むこ  
とはできなかった。  
「さあ開始早々媚薬をたらふく取り込んで、顔が赤く染まってきたぁ!」  
 今更ながらに実況されて、羞恥心もわき上がってくる。同時に、足を伝う液体が熱いも  
のに変わり出す。ともすれば震えで壁にぶつかりそうになるが、何とかこらえること6秒。  
次の風車が光ることなく、進行方向へ回ってくれ、次の通路へ渡る。その先の色は……青。  
「つっ……!」  
 時間に急かされ、再度媚薬を味わうこととなる。細いパイプ、そしてバイブの中を通っ  
て大量に注ぎ込まれる。それを風車の中に居る約3秒間、耐えなければならない。  
 媚薬、そして私自身が生み出す液体が、バイブとの摩擦係数を減らし、ともすればずり  
落ちてしまいそうになる。力を入れて防ごうとすると、弱いとはいえ振動を強く感じてし  
まう。  
「あぁっ」  
 落としてしまうのと、こらえるのとどちらがよいか。少なくとも人前で、人の手で挿入  
されるのは避けたい。十二分に温まってしまった私の中は、振動を快楽へと変換し、脳に  
信号を送り込んでくる。  
 
 何とかこらえて通路に入り込むが、またもや次の風車は赤く光り、進みを止める。また  
3秒の待ちと回転待ちの3秒。ここまで18秒。クリアまで風車はあと4つ。余裕はまだある  
が、多くあるわけでもない。できることならその後のステージにも余裕時間を残したい。  
 進行方向への回転時、またもや赤。これも入ることをためらい、さらに6秒時間をロス  
した上で、無灯火状態の風車を通過する。あと3つで、27秒経過。次の風車は、三度青く  
光る。歯を食いしばりながら突入していく。  
「っ……」  
 私の中に入りきらなかった分が、太ももを伝って落ちるだけでは間に合わず、バイブの  
根本側からぽたぽたと自由落下し、ステージ上に水たまりを作り出す。3秒は短い様で、  
とても長い。  
「はあっ、はあっ……」  
 通路への脱出後、荒い息を整えながら次の風車を見やる。光は、赤。進めない。またも  
や6秒の時間を消費するが、次の光も赤。さらに6秒。あと2つの風車でセクションクリア  
なのに、進めやしない。三度目も、赤。ここまで48秒。四度目の青は、お構いなしに進む  
しかなかった。  
「んふぅっ、っ……」  
 身体が、熱い。視界も白くかすみ出す。それでもぶつけない様に、3秒間の地獄を耐え  
て通路に抜け出す。残る風車は1個。だが。  
「ずっと、赤……」  
 ここまでの所、ずっと赤く染まっていたのだ。最後の最後、どうしてもバイブを強く作  
動させたいのは、演出側としては当たり前なのだろうが、チャレンジャーとしてはいかん  
ともしがたい部分である。  
 既に51秒経過しているが、6秒分息を整えて、いざ最後のゾーンへ。  
「ひゃああっ!?」  
 “中程度”という触れ込みだったが、入った瞬間に一瞬視界が飛んでしまった。そして、  
手にしたものが壁にぶつかり、爆発音が鳴る。これで以降は振動が強くなったままになっ  
てしまった。  
「はぁっ、あああっっ」  
 ぷしゅっ、と一回、水音が鳴り、今まで以上に私の中から熱いものを溢してしまう。バ  
イブが落ちなかったのが奇跡的なくらいだった。  
「くううっ、ああっ」  
 ぴったり1分で第三セクションをクリアしたものの、中からの振動は、堪えきれないレ  
ベルになってきた。  
 
「さあ散々媚薬を味わわされた上に最後はミスしてしまったものの、どうにかクリアだあ  
ああ。バイブの強さが一段引き上げられた状態で、ギミックだらけの第四セクションはク  
リアできるのだろうかっ!?」  
 余計なお世話だ、と言い返す気力は残っていない。事実、歩くのも辛いくらい快楽信号  
に支配されていて、もうリタイアしてしまいたかった。だが、ここまででまだ15万。まだ  
まだ足りない。  
 最初のギミックは上向きのコース。腕を上に伸ばしながらなので、通常時であればたい  
したことはないのだろうが、私の中にはバイブが差し込まれていて、その先にはコード類  
が接続されている。抜けない様力を込め、そして振動をしっかり受け止めることとなる。  
「あああっ」  
 声はもう堪えられない。よだれすらも垂れ流しながら、そのまま上空コースをクリアし、今までとは向きが反対側、つまり観客と向き合いながらの位置に変わる。今までは背を向  
けていて気にしないようにすれば気にしなくてすんだ、多くの好色の視線。全てが、私の  
下腹部へと向けられて、中には人目もはばからず、己を取り出してしごいているものもいた。当たり前だが、恥ずかしい。バイブの振動で喘ぐ様を、じっと、見られているのだ。  
 足を止めるわけにも行かず、ひたすら堪えながら曲がりくねったコースを進んでいくと、  
屈まないと進めない低さに移りゆく。  
『おおおおおおおおっ!』  
 低いうなり声が、一斉にわき上がる。今履いているのは、指定のミニスカートだ。膝上  
普通に立っている分には、何も見える事はないのだが、屈むとなれば当然、その中が見え  
るわけで、さらに下着など身につけていない、機械をくわえ込んだ秘所が色めいてひくつ  
くのを見ていることだろう。  
「くっ、ううっ」  
 どうしても視線を感じてしまい、その視線にさらされた部分が熱くたぎるのを感じてしまい、余計に蜜が溢れ出してしまい、そこにまた視線が集まるの永久ループだ。ただ単に屈んで真っ直ぐ通過するだけだというのに。  
 そして、このコースの設計者は当然にイヤらしい。その直線コースの途中に、先ほどの  
風車で散々見た青い光、そして初登場の黄色い光(利尿剤、らしい)が交互に輝いている。光はコースをふさぐ形で、その幅約5センチ。一つ一つの通過は一瞬だが、それでも一瞬だけでも作動するわけで、そしてその光のグラデーションは5組分続いているわけで。  
「あ、ああっ、あああああっ」  
 交互に私の中に注ぎ込まれる薬物。ぽたぽたとこぼれ落ちるだけではすまず、  
「だ、だめぇっ……!」  
 通過した直後、急速にこみ上げる尿意に耐えることができず、膀胱にたまった水分を、  
最初はちょっとずつ、そしてだんだんと勢いよく放出することとなる。  
 
「おおっとここで放尿ショーだあっ!」  
 おおおおおと唸る会場。全て出し切った後、辺りに漂うアンモニア臭が鼻につき、私は  
放心状態となってぽてんと尻餅をついてしまう。その際、手にしていた棒も、自然に浮き  
上がり、壁と3度目のランデブー。バチンと爆発音が鳴り響くやいなや。  
「いあああああああああっ!!?」  
 放心状態から覚醒を一気に通り越し、今まで以上に強烈な振動によって高みへと追いや  
られていく。  
「だめっ、あ、ああっ、い、いっちゃ、あぁぁぁっ!!」  
 散々吸収した媚薬のせいか、強烈なバイブの振動のせいか、はたまた人に見られている  
という羞恥心のせいか。  
「さらには潮を吹いて、盛大に絶頂をむかえてしまったぁぁ!」  
 MCに言われるまでもなく、私はイカされてしまっていた。だが、バイブは止まるわけ  
もなく。  
「だめ、いま、い、イってるのに、あ、や、あああああっ!!!」  
 そのままなすすべもなく2度目の絶頂。再度激しく液体をはき出したおかげで、振動体  
すらもはき出してしまう。  
「あ、ああ……」  
 ゲームの最中だということなどをすっかり忘れて、絶頂後の放心状態となった私だった  
が、“残念なこと”に、制限時間はまだ45秒ほど残っているのだった。  
 カツカツと近づいてくる足音。その主は、私がはき出した、未だ震えを止めないバイブ  
を手にする。  
「ついにはバイブも抜けてしまったわけだが、仕方ない、私が手伝ってあげよう」  
 MCはコース越しに、震え続ける先端を、未だ露わになったままの私の秘所にあてがう。  
「おおっと手が滑った」  
「ひやあああっ」  
 絶対わざとだろうが、そのまま中に入れず、敏感に尖った部分に振動を当てる。ぶしゅ  
っ、ぶしゅっと水音が聞こえて、その度に歓声が沸き上がる。  
「気を取り直して、もう一度」  
「あ、はあっ、ああああっ!」  
「ん、入り方が悪かったかな……」  
「だめ、いやっ、あああああっ」  
 なされるがまま、バイブのピストン運動を受け入れ、その度に二度三度と絶頂に追い詰  
められる。ようやく中に押し込まれてMCが去っても、私はそのまま立ち上がることはで  
きなかった。  
 
「あ、またくる、きちゃう、ああああっ! だめ、もうだめ、やめて、んああっ! あ、  
ああっ、いああああぁぁ!!!」  
 
 再度押し込まれた物が外へとはき出される感触、タイムオーバーの鐘が鳴り響く音、秘  
所から溢れ出す水音。それらが私が意識を失う直前に拾った感覚の全てだった。  
 
 
 
「残念ながらゲームオーバー。チャレンジャーには3つのセクションクリア分の賞金15万  
円が進呈されるぞ。番組ではまだまだチャレンジャーを募集中だ。賞金総額100万円を目  
指す勇猛な女性諸君の応募を待ってるぞ。応募方法などは当番組ホームページをチェックだ!」  
「なお、今回のゲームで使用されたバイブはオークションにて販売いたします。またコー  
スの各所に設置したカメラでの映像は、十回ごとにまとめたものをBlu-ray、DVDの各メデ  
ィアにて販売いたします。金額や収録話など、詳しい情報は当番組ホームページをご覧く  
ださい」  
 
終わり  
 

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