家からワンピースの中に水着を着込んで来ていた。  
ワンピースは、2日前にミニスカートをはかされて以来、  
涼しさと何とも言えないドキドキ感が好きになってしまったので  
タンスの中から引っ張り出して来たものだ。  
 
前あきのワンピースのボタンを外し、水着姿になる。  
と、言っても、昨日の過激水着ではない。学校指定のスクール水着だ。  
やっぱり人前であの水着を着るのは抵抗がある。  
「あ!遥香、なんであたしの買ってあげた水着着ないのよ!」  
「だって、お尻は丸出しだし、胸も半分出そうで恥ずかしいんだもん…。」  
「そう…せっかくあたしがプレゼントした水着、着てくれないんだ…」  
「そ、そう言う訳じゃ…。」  
「じゃ、着てくれるのね?!」  
「それは…。」  
「やっぱり着てくれないんだ…お姉ちゃん悲しい…。」  
「…わかったよ!着ればいいんでしょ!あぁ、美幸の買ってくれた水着、着たいなぁ!」  
「う〜ん、やっぱり遥香ちゃんって優しい!」そしてヒソヒソ声でこう囁く。  
「着てくれて嬉しいです…ご主人様…。」  
 
 
スクール水着を脱ぎ、過激水着を着る。何度着ても凄いデザインだ。  
本来、水に入る事を前提にしてないんだろうな。  
ウエスト周りのヒモが片方透明なので、下にサポーターもはけない。  
 
過激水着を着て、更衣室から出ると、ざわついていたプールサイドが一瞬静まりかえったような気がした。  
そして、またすぐにざわつき出す。  
なるべく気にしないようにするのだが、どうしても周りの声が耳に入ってくる。  
「おい!あの娘…」「胸…」「ケツ見えて…」「乳首も…」「撮影…?」  
「遥香〜!」美幸はもう、プールに入っていた。  
「あ、美幸!」美幸の隣にあわてて入る。  
「遥香ちゃん、いいわね〜、プールサイドの人気者じゃない。」  
「は、恥ずかしいよ、やっぱり。」  
「慣れちゃえば平気よ、ホラ、泳ご!」  
「う、うん…」  
 
「ねぇ美幸ぃ。」  
「なに?」  
「やっぱりこの水着恥ずかしいよぉ。」  
「え〜!せっかく買ってあげたのに?」  
「だって泳いでるとだんだん食い込んでくるんだもん、お尻だけじゃなくて…その…前も…。」  
「そ〜お?…あ、ホントだ。…しょうがない、着替えてもいいよ。」  
「いいの?」  
「うん、ほら行っておいで。」  
「ありがと、じゃ行って来るね。」  
 
先程は丁度ピーク時間だったのだろうか、更衣室は人影もまばらで人目を気にせず  
スクール水着に着替えることができた。  
 
着替えを終え、再びプールサイドに出る。  
やはりこの胸のせいで注目は集めるが、さっきほどではない。  
「美幸、ただいま!」  
「お帰り、じゃ、別のプールに行こっか?どこにする?」  
「波のプールにボディボードがあるみたいだよ。」  
「じゃ、それ行ってみよ〜!行こ!」と、手を差し伸べてくる。  
「うん!」その手を握り返すと、美幸と一緒に波のプールへ向かっていった。  
 
それから波のプールを皮切りに、流れるプール、ウォータースライダー、滝のプール、  
ダイビングプール、そして最後の温泉プール(天然温泉を引き込んである、いわゆるクアパレスのようなもの)と  
一日かけて徹底的に遊んだ。  
肩の日焼けがヒリつきだした頃、どちらからともなく帰ろうと言い出した。  
そして、着替えに向かった更衣室で、事件は起こった。  
 
「ふ〜よく遊んだね、あ!遥香の鼻の頭!真っ赤っかだよ!」  
「そう言う美幸だって。」  
「え、ホント?や〜だ!うふふふふ。」  
他愛もない話をしながら着替え、下着をつけようとバッグの中をのぞいたのだが…。  
『ない!』  
もう一度、よく見てみる。中身を全部出してみたが…。  
『やっぱりない!』  
そうだ、今朝は水着を中に着てきたので、下着はつけなかったのだ。  
そしてもう一着の過激水着は入れたのだが、下着を持ってくるのをすっかり忘れていたのだ。  
「?遥香、何してんの?早く着替えなよ。」  
「う、うん。」  
「もう、どうかしたの?顔色が悪いよ。」  
ダメだ、隠しておける事じゃない。  
「美幸、実は…。」  
「どうしたの?」  
「ちょっと耳を貸して。」  
「な〜に?一体。」  
「実は…下着持ってくるの、忘れちゃったみたい…。」声をひそめてうち明ける。  
「え〜!下着を…むぐむぐ…。」いきなり叫びだした美幸の口を、慌てて押さえる。  
 
「しっ!声が大きいって。」  
「ご、ごめん。…でもどうするのよ。」  
「うん…今着てた水着は当然びしょびしょだし、さっきのもまだ乾いてないし…。」  
「あたしの貸す…ってわけにもいかないよね。あたし換えは持ってきてないから。」  
「うん……仕方がない、このままワンピース着て帰るよ。」  
「え〜!そのままぁ?」  
「ホントはイヤだけど、濡れた水着で冷房の効いた電車に乗ったら風邪ひいちゃいそうだから。」  
「でも、大丈夫?ワンピース一枚だけだなんて…。」  
「うん…でも、普通にしてればパッと見はわからないと思うから…。」  
「…しょうがないか…じゃ、あたしもつきあいますか。」と、せっかく着替えた服を脱ぎだし丸裸になる。  
「ちょ、ちょっと美幸!美幸はいいんだよ!そんな事しなくても!」  
「いいの、可愛い遥香だけに恥ずかしい格好はさせられないもん!お姉ちゃんも一緒に、ね?」  
「ダメだってば!お願いだから下着をつけてよ!」  
「遥香…好きよ。」美幸に口づけられ、ボクの動きが止まる。  
「!」  
「ね、遥香、これはあたしが好きでしてることなんだよ。」  
「でも、でも…。」  
「も〜!いいから、その下着貸して!」と、自分の下着をひったくるとシャワー室に向かい…  
 
ジャアァァァァ!  
 
「ほ〜ら、びしょ濡れ。これでも遥香ちゃんはお姉ちゃんに下着をつけろって言うの?」  
「そ、そんな…。」  
「遥香、着替えてお姉ちゃんと一緒に帰ろ!ね?」  
「うん…。」なんだかわからないけど涙が出てくる。  
「あ〜、泣かないの。ほら、お洋服着て。」  
「うん…。」涙を拭いながらワンピースを身につける。  
「遥香。」  
「?」  
「好きよ、遥香。」  
「大好きだよ、美幸。」ロッカーの扉の影で口づけた。しょっぱい涙の味のキスだった。  
 
ノーパン・ノーブラで駅のホームに立ったとき、あまりにもスースーする感覚に思わず口を開いてしまう。  
「ね、ねぇ美幸。」  
「なに?」  
「美幸は大丈夫なの?その…パンティーはいてなくて…スースーしない?」  
 
ごち!  
 
「痛〜い!何するの?」  
「声が大きい!『パンティーはいてなくて』なんて誰かに聞かれたらどうするつもりよ。」  
声をひそめてたしなめる。  
「ご、ごめん。でもホントにスースーしない?」  
「…してる…あんな布一枚でも、無いと心細いよね…。」  
「やっぱり?ごめんね。」  
「もういいの、これはあたしが勝手にやったんだから。」  
「うん…でもやっぱりごめん…。」  
「あ〜!もういいったら!さ、急いで帰ろうよ!あ、ほら電車来たよ!」  
 
 

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