「おまたせぇ」  
重くて頑丈な鉄扉を押し開けながら、アリサが部屋に入ってきた。そのまま部屋を横切り、  
壁際に置かれたやたら大きなベッドにダイブ。キツネ特有のふさふさした尻尾が揺れる。  
「いや、別に待ってはいないよ。せいぜい30分くらいかな」  
そのベッドに腰掛けた僕は視線をちらちらと動かしながら答える。  
別にアリサのエキセントリックな行為に驚いたわけではなく――だって慣れてるからね――  
ネコの本能がつい目の前で動く尻尾を追ってしまうというだけの話だ。  
 
例によって発生した第何次かの世界戦争の末――世界は、一度滅亡した。  
純粋な人類はすべて死に絶えた後、生き残っているのは、僕達だけ。  
すなわち、戦争中に生まれたバイオテクノロジーの結晶「獣人兵」の末裔だ。  
文字通り獣の生命力と人の知性を持ち合わせた彼等は、地球がめちゃくちゃになった後も関係なしに生き続けた。ビバ文明の進歩。  
 
さて、ここで困ったことがひとつ。  
優秀な殺戮兵士となるべくして生まれた僕等は、  
半ば人為的、半ば本能として、生まれついての攻撃衝動を持っていた。  
戦争中ならいくらでも発散する機会がある。だけど戦後、平和な世の中にそれはまずい。  
外敵を作ろうにも、野生動物の類はやっぱりほとんど絶滅。宇宙人も地底人も侵略してこない。  
かといって同じ獣人をターゲットにするわけにもいかない。また戦争なんかやったら今度こそ地球上に生物はいなくなってしまう。  
 
そこで誰かが考えたらしい。  
攻撃衝動が消せないなら、別の形にして発散してしまえばいい。  
 
幸いにして、攻撃衝動の発露は10台前半から20台前半の約10年前後に抑えられている。  
その10年の間だけ「つがい」を作り、攻撃衝動を性欲に変換してやる。  
その手順はこうだ。生まれた赤ん坊の遺伝子情報から、攻撃衝動のバイオリズムを読み取る。  
そして普段は遺伝子改造や投薬でそれを抑え、定期的にガス抜きしてやる。  
具体的には攻撃衝動のバイオリズムが似通った二人を「つがい」――  
ええと、なんだ、有り体に言えばセックスパートナーにしてやればいい。  
 
「何考えてるのー? レイ」  
綺麗な銀灰色の尻尾をゆらゆらと揺らしながら、アリサが聞いてきた。  
つい手を伸ばしたら巧妙に逃げられた。ちぇ。  
「ん……特に何も。しいていうなら昨日やった歴史学の講義とか」  
「真面目だねえレイは。どうせ今日から一週間は発情期のお休みじゃんかー」  
……その、実のところは逃避だったりする。  
どうやら今年の発情期は普段より一日ほど早いらしく、ズボンの下のアレはさっきから硬直状態。  
しかもさっきからアリサの尻尾を追い続けているせいでネコ特有の本能がキックされ、  
それもまた発情に拍車を――ってなんでこっちにもたれかかってくるんですかアリサさん。  
なんですかその潤んだ目は。  
 
「……レイの匂い嗅いでたら、始まっちゃったみたい、発情。  
 よかったら、今から……しない?」  
 
僕の中で決定的な何かが――たぶん理性あたりが――ぷつんと音を立てて切れた。  
ああそういうことなら全然オッケーです。スイッチオン。  
「アリサぁっ!」  
「きゃう!?」  
ネコの柔軟なバネにものをいわせて、僕はアリサを押し倒した。  
 
アリサに反撃のスキを与えず唇を奪う。そのまま舌先で、尖った犬歯や歯茎を撫でる。  
「んっ……! ん……ん、ちゅぱっ……んむぅっ……」  
最初は驚いていたアリサだったが、そこは数年来の付き合いだ。  
すぐに状況に適応し、舌を絡めてくる。唾液を送り込み、混ぜ、逆に飲み込む。  
「んふ……」  
貪る、とかいう表現が似合いそうな激しいキスだった。  
口が封じられているため、必然的にお互い呼吸は鼻ですることになる。  
ふーっ、ふーっという動物じみた呼吸音を聞きながら、僕達は唾液を攪拌し続けた。  
甘いその味を舌先で感じながら、  
 
……そうだ。とりあえず、理性が残ってるうちに服だけでも。  
 
熱っぽい頭の片隅でそう考えた。舌をアリサの口から抜くと、唾液の糸を舌先で絡めとり、  
「脱がすよ、アリサ」  
返事を待たずにタンクトップに手をかけ、一気に剥ぎ取った。  
「き、奇襲は卑怯だよぉっ」  
何か言ってるけどとりあえず無視。  
「変なこと言ってきたアリサが悪いんだから。ほら、服脱いで」  
「あう……」  
アリサがスポーツブラを外し、Gパンを脱ぎ捨てた。  
僕もシャツを脱ぎ去る。そうするとお互いの匂いがよくわかる。  
つまりアリサの汗の匂いとか、興奮した発情の匂いとか、シャンプーの匂いとかもわかるわけで。  
「……悪循環だな」  
結局は本能に負けてしまうのは過去の経験上確かなのだが、それでは勿体無い。  
せめて今くらいはゆっくりとアリサを抱いていたいと、そう思うのだ。  
 
「さて……」  
まずどこから攻めようか。確か去年は胸からだった。同じことやっても飽きるよね。  
そんなわけで、軽く首筋を舐めてみた。  
「っ……」  
スイッチが入った体にとっては、ただそれだけでも十分な刺激になるようで。  
ぴくんと跳ねたアリサの体をきつく抱くようにして、まんべんなく舌先で愛撫する。  
「きゃ……ん、ふ、ふぅっ……!」  
まばらに浮いた汗の小玉を舐めとりながら、徐々に降下。  
鎖骨のくぼみを乗り越え、ゆっくりと胸のふくらみの周辺を舐める。  
その間、開いた両腕はアリサを撫でていた。  
手、脇腹、そして狐耳の裏側の柔毛。  
数年間の経験上判明した、彼女の性感帯をゆっくりと刺激していく。  
「ん……ふぁ……みみぃ……っ」  
やわらかい。だけでなく適度な弾力があり、吸い付くような滑らかさが心地よい。  
そこまで考えたところで、僕の下のアリサが身をよじった。  
「じ、じらさないでよぉ……」  
「そのほうが好きなんでしょ? 確か一昨年聞いたけど」  
「そ、そんなこと言ってないー! レイのうそつきー!」  
とは言っても、僕もそろそろ限界です。  
目の前にふくらむアリサの胸は物凄く魅力的だ。  
断言してもいい。この局面で自制心を失わないオスがいたら神か性的不能だ、それは。  
「よし。……いただきます」  
言うなり、つんと立った乳首を口に含んだ。  
「きゃぁああああん!?」  
アリサの悲鳴があがる。聞こえない。  
口の中の突起を舌で味わい、転がし、吸い、たまに傷つけないように繊細に歯で甘噛みする。  
片方の乳房を舌で攻めながら、もう一方の丘を片手で揉みしだく。  
動きに合わせてそれがぐにぐにと形を変えるたび、アリサの口からも声が漏れる。  
「ぁ、あ、あ、はあぁっ! いいよぉ、おっぱい気持ちいいよぉ……!」  
アリサの甘い嬌声を聞きながら、僕は赤子のように、しばらく胸を吸い続けた。  
 
十分に堪能したところで顔を上げると、ぐったりしたアリサが目に映った。  
そろそろ頃合かな。僕は顔をアリサの足の間に近づけた。  
ショーツをずらすと、にちゃりと水音がする。見なくてもどういう状況かは明らかだ。  
「濡れてるよ、アリサ」  
「言わないでよぉ……」  
両手で耳を押さえるアリサ。そんなことにお構いなしに、僕はショーツを取り去った。  
まず目に付いたのは髪や尻尾と同じ銀色の茂みだ。  
その下に――そこから湧き出した液体でてらてらと光る、ピンク色の裂け目がある。  
何も考えられず、僕はそこに口付け、思い切り強く吸った。  
「くぅぅぅぅぅぅんっ!」  
たちまち湧き出てくる液体を舌で舐め取り、飲み下す。  
その度に股間のアレが硬度を増していくのがはっきりとわかる。  
原因はほかでもない。  
この匂い。牡を欲情させる牝の香りだ。  
「ひぃん……いいよぉ、舌のザラザラ気持ちいいよぉっ」  
媚薬にも似たアリサの愛液は美味しい。少なくとも今の僕にはとても美味に感じられた。  
少しでもその液体を味わっていたくて、僕はあえて舐めるだけの行為に集中する。  
花弁の奥深くまで舌を差し入れ、蜜をかき出すような勢いで嚥下する。  
快楽から逃げようとする腰を両手でしっかりとホールドし、ぴちゃぴちゃと音を立てて舌を動かす。  
「らめぇ! 音立てて舐めちゃだめ、は、あっ、あ! あ! あぁぁ――――っ!」  
普段は奔放なくせに、こういう状況になるとアリサは途端に恥ずかしがる。  
そんなアリサの羞恥心を煽ってやるのは面白く気持ちいい。  
僕は間違ってなんかいない。正常な男性なら多分理解してもらえると思う。……たぶん。  
「れ、レイぃ……」  
聞こえてきた声に行為を中断し、かなりの自制心を発揮して顔を上げる。  
見えたアリサの顔はまさに発情した牝そのものだった。  
潤んだ瞳は半ば焦点を失っており、半開きの口からは一筋の唾液が垂れている。  
 
「……何か用?」  
言いたいことはわかっている。その物欲しそうな表情を見ればわかる。  
そう、僕がアリサの肉体に飢えているように、アリサも僕の肉体を求めているのだ。  
でも分からないことにしておこう。理由は前述のとおり。  
ほら、好きな娘にいじわるするのは全国の男子共通の本能ですから。  
「したいの?」  
聞いてやると、顔中を真っ赤にして頷いた。  
「したいならはっきり言わなきゃ。ほら、アリサは何をどうしたいの?」  
アリサは小さく、でも確かな声で宣告した。  
「舐めさせて……レイのぉ、レイの舐めさせてぇっ……」  
よくできました。僕は言うとおりにした。  
体を回転させ、アリサの頭が僕の足側に来るようにする。  
「んふぅ……♪」  
嬉しそうな鼻声をあげると、アリサはズボンのジッパーを下げ、僕のものを取り出す。  
そしてためらいなく、それにくちづけた。  
「いい匂い……ん、ちゅぱッ……」  
「…………っく……! アリサ、そんなにこれが好き?」  
舌と唾液とくちびるの熱い感触が、僕のものにまとわりつく。  
たっぷりと垂らされた唾液が幹をつたう感触。  
それだけで射精してしまいそうなのに、アリサはさらに愛撫を加える。  
「んちゅ、……ん、好きらよぉ……大好きぃっ」  
竿の部分を唾液で濡らしおえると、手で根元付近を握り締め――  
絶妙の力加減で、先端近くまで扱きあげた。  
当然それで終わるはずもなく、しゅっ、しゅっと規則的に手を滑らせる。  
一方で亀頭部分を口でついばむように愛撫し、先走りを貪欲に吸い上げてゆく。  
「ちゅる……んふ、レイの匂いも……この味も好きぃ……」  
「くぅっ…………!」  
必死で射精をこらえる僕。  
いや、出したいのはやまやまなんだけど、ここで堪えきれなかったら後でアリサに何を言われるか。  
うわまずい。いじめすぎたかこれは。完全にキレてる、というか開き直ってる。  
……くそ、こうなったら短期決戦だ。  
 
「そっか。……こっちも好きだったよね、アリサ」  
「……ぇ?」  
腰を掴んでいた両手をわずかに下げると、そこにはアリサの丸いお尻と――  
「あ、待って、レイ――」  
「尻尾。たくさんしてあげるよ、アリサ」  
右手で尻尾を強く握り締めた。  
「ぇううううっ!? 尻尾、尻尾だめぇ……ん、く、くぁぁっ!」  
その途端、眼前の裂け目から湧き出ていた液体が量を増した。  
夢中でそれを飲み下しながら、強く、弱く、強く、弱く、と尻尾を握る強さを変える。  
余った左手は尻尾の付け根に触れ、尻尾の周りを円状に撫でてゆく。  
「相変わらず敏感だね……ほらっ」  
「ひんっ……!! んあぁっ……っふはぅっ!」  
アリサが僕のものにしているように、右手を軽く上下に動かすと、それだけで感極まったような悲鳴。  
それでも僕のものに奉仕する動きは止まらない。こみあげる射精感を抑えるのも、そろそろ無理だ。  
……もう、限界だ。僕も、アリサも。  
「……アリサ。一緒にイこう」  
返事はなかったが、意思ははっきりとわかった。アリサが僕のものを口いっぱいにほおばったからだ。  
口全体を性器に見立てたように、じゅぷじゅぷと音を立てて前後に動かし、吸いあげる。  
僕もまた、あえて手をつけなかった、包皮に包まれた敏感な突起を唇で咥え、思いきり吸う。  
「ぷぁ……っ、らめ……もう、だめぇ……イくぅ……!」  
「んっ、僕も……出る、出るよアリサ……!」  
「イっちゃう! イっちゃ、あ、ひぁ、レイぃ、イく、イくよぉぉ!」  
一瞬の放出感と快感。  
お互いの名を呼びながら、僕達は、同時に絶頂を迎えた。  
 

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