【 5 】  
 
 何も無い土地でのティアラとの生活――退屈窮まりなくも思えた日々はしかし、なんともペインには安穏で  
そして心地良いものであった。  
 朝目が覚めると二人は山へと出かけていく。そこで山菜を探し木の実を集め、わずかばかりの畑を耕すなどして  
一日が終わる。――夜は同じベッドにもぐり枕を並べながら、何時間だって首都帝都の様子や今まで自分が旅を  
してきた土地のことをペインはティアラへと話して聞かせるのだ。  
 そうして日々を重ねるうちにいつしか、二人は己の身の上を聞かせるほどに親密な仲になっていった。  
「僕のお家はね、レイノートっていう北の寒い所にある国のお城なのよ」  
『お城? そこがペイン君のお家なの? 王様の家来とかお手伝いさんなの?』  
「んふふ〜、違うのよ。何を隠そう僕こそは、そのレイノートの王子様なのね。十三代目なのよ」  
『うっそだぁ〜。だってペイン君、ぜんぜん王子様に見えないもん』  
「あっちゃ〜、傷つくのね。まぁもっとも、『王子様』っていっても暮らしは厳しいから、国民のみんなと大差は  
無いのよ」  
『えぇッ、本当なの? 本当にペイン君って王子様?』  
「そうなのよ。だけど今も言ったみたいにみんなビンボーだから、食べるものも着る物もみ〜んな庶民の人と  
一緒なのね。お城だってほとんど凍っちゃってるから、王様も弟達も城下町のアパートにお部屋借りて暮らしてる  
のよ。『お家』だけど住んではいないのね」  
 思わぬ王族の暮らしぶりとペインの語り口が面白くて、ティアラはころころと笑った。  
『そんなに貧しい国なの?』  
「うん。採れる物なんて何にも無いからね。動物だってろくにいないし、土の大地が無いから植物だって生えてこないのよ」  
『海でお魚とかは採れないの?』  
「漁は海獣が多くて危険なのね。だから海で取れるものなんて言ったら、氷の上に上がってきたトドとかクマ  
とかを狩る程度ね」  
『へぇ〜、大変なんだねぇ』  
「そう……そんな国を、どうしてみんなは愛せるんだろうね」  
 ティアラへと故郷のことを話すうち、いつの間にかペインの心にはまた、かの臣民達に対する贖罪の念と  
己の在り方を疑う鬱屈した考えとが、その鎌首をもたげていた。  
 
「いま話したみたいにね、僕の国は苦しいばかり苦しい所で良い所なんてこれっぽっちもないのよ。だけど国民は――  
そこに住むみんなは、全員がその国を愛してやまないのね」  
『ペイン君?』  
「……愛する価値の無い国なんて、捨ててしまえばいいのに」  
 夜闇の坂を転がり落ちるよう、ペインの心は重く沈んでいく。  
 過酷な地において絶滅を迎えようとするティアラ達ミルクドラゴンとそして己達レイノート――  
「僕みたいな『王族』なんかがいるから、民達はそんな国を離れられない」  
『どうしちゃったの、ペイン君?』  
「僕のせいなのね……。ならば王族なんて、僕なんて、いっそ無くなってしまった方がいいんだ――」  
 そしていつも以上に強くそして黒く――その責任感と罪の意識とがペインの感情を覆ったその瞬間、  
『しっかりしなさい!』  
 突然の声にペインは項垂れていた顔を上げた。我に返る。  
 その視線の先には、  
『バカなことこを言わないで……自惚れないで、君』  
 ここに来てから初めて見るティアラの真剣な表情(かお)があった。  
『ペイン君の言い方は、心の無い人の言い方だよ? 便利だから住む、そうじゃないから住まないだなんて――  
そんなの悲しいよ』  
 そしてペインへと語りかけるその瞳に小さな涙の玉が光る。  
『ペイン君だって、お父さんやお母さんは好きでしょ?』  
 さらには続けられるティアラの言葉に、  
『だけどその『好き』っていう気持ちだって、『一緒にいると便利だから』って理由(わけ)じゃないでしょ』  
「あ……――」  
 刹那その言葉に――ペインは大悟してしまった。  
 その言葉一つで今までの苦悩、そして疑問が頭から晴れていくのを感じた。  
 民にとっての国とは、愛国心とは損得勘定ではないのだ。  
 共に在れる喜びこそが愛国心であり、そんな民の意識こそが『国』なのである。  
 ふとペインの脳裏に故郷の民達の笑顔が浮かんだ。そこに生きる家族との幸福な時間を思い出した。  
 
 苦しくともレイノートの名の下に生きることへ、そしてそんな幸せな空間を与えてくれる国へ自分達は感謝と  
誇りを持っていた。  
 そんな場所とそして大好きな仲間達を救ってやろうと思ったからこそ、あの日の自分はそこを離れることを  
決心したはずなのだ。  
 それがいつしか気がつけば――目先の富に心奪われるがあまり、ペインはそんな仲間達を見下してしまっていた。  
 貧しき土地の民と蔑み、そこを離れることを選ばぬ彼らを心の奥底では『臆病者』と嘲ってさえいたのだ。  
――己こそが一番の愚か者であったことにも気付かずに。  
「……はは、まいっちゃったなぁ」  
 住む場所などは関係ない。富や国力なんてもっと無用だ。国の名前がひとつあって、そしてそれを愛してくれる者が、  
誇れる民がいたのならば国は消えない。  
 たとえどんなに過酷な土地に住もうと、そしてたった一人になってしまったとしても、国は消えない。  
 そしてその想いがある限り――富など無くとて、人も国も幸福なのだ。  
「僕は、王族失格なのね」  
 そんなことにやっと今、ペインは気付いたのだった。  
 自嘲気に笑う。そしてティアラを見る。  
「――ティアラちゃんは、この山が好きなんだね。君のお父さんとお母さんの間に生まれたことが嬉しくて、  
そしてそんな家族と暮らしていたこの山が大好きなのね」  
 苦笑いに掛けられるそんなペインの言葉に、  
『そうだよ。あたしはこの山が好き。あたしはあたしの家族が大好き。だってあたしは――この山のミルクドラゴン  
だもん』  
 ティアラも満面の笑みで応えていた。答える笑顔には涙がにじんでいた。  
『一人でいることは寂しいし、この山の不便さに困ることもあるよ。だけど、それでもあたしはここが好き。  
例えこの山が無くなっちゃっても、あたしはいつまでも『この山のミルクドラゴン』なんだから』  
 その涙をぬぐいながらそう言ってくれるティアラにペインは感謝した。愛しく感じた。そして、申し訳なくなった。  
「ティアラちゃん……僕は、君に謝らなきゃならないことがあるのね」  
 呟くようにその名を呼び、ペインは体を起こすとベッドの上で両膝を正した。  
 
「僕は、学者さんじゃないのよ。王子様って言うのは本当だけど、でも僕は最低の男なのね」  
『ど、どうしたのペイン君?』  
 突然の告白に戸惑うティアラをよそに、  
「僕は、この村のエッチな女の子を取材しに来た風俗ライターなのよ」  
 畳み掛けるよう、一思いにペインは自分の正体を告白した。  
『フーゾクライター? 『エッチな女の子の取材』って、どういうこと?』  
「僕のしている仕事は、エッチなことを――体を売っている女の人のことを記事にする最低の仕事なの。この村にもね、  
実はそんなお仕事をしてる女の子がいないかどうかを確かめる為にやってきたのよ」  
『体を売るお仕事……』  
「そうなの。ずっと昔にこの山にそんな商売のお宿があったことを聞いて、その取材に僕はやってきたのね」  
 それら言葉を受けて、夜闇の向こうでティアラもまた体を起こした。  
 そしてこちらを見つめているであろう視線――暗がりの中ではその表情を窺い知ることは出来ないが、それでも  
それが軽蔑や侮蔑を込めているものであろうことは察するに容易であった。  
 しかしペインはそれでいいと思った。否、自分はその罰を受けなければならないのだ。  
 ここにいた数日間、ティアラは溢れんばかりの慈愛とそして真心を以てペインに接してくれた。そして遂には、  
自分の心の奥底に潜む蟠りすらをも解いてくれた。  
 しかし自分はそんな彼女を裏切り続けてきたのだ。  
 騙り、偽り、嘘で塗り固めた自分で接してきた。  
 そんな自分にはもはや、ここでこれ以上彼女の愛情を受ける資格は無いと悟り、ここを立ち去るべくその告白をした。  
 やがて暗がりの中、ティアラはシーツをまといベッドから降りた。  
 そしてテーブルの上のランプを小さく燈す。  
 太陽に手の平を透かしたような、赤く淡い僅かな光量が室内に満ちる。  
 そんな光を背に振り返る彼女。灯火の中にあるティアラは――  
 
『みんな知ってたよ、ペイン君の嘘は』  
 
 微笑んでいた。  
 
「そ、そんなッ? 知っていたって――」  
 思わぬ言葉にペインはたじろぐ。  
『実はね、君を助けたあの日カバンの中の持ち物を確認した時に大体のことは判ってたんだ。だってカバンの  
中はエッチな雑誌とあたし達(ミルクドラゴン)の資料――そして『風俗ライター・みこすり丙淫』の名刺だもん』  
 ティアラの口をついて聞かされる己のペンネームに、ペインは顔から火が出るほどに紅潮し、そして恥ずかしくなった。  
『君が自己紹介の時にそのことを隠したことも、何か理由があってのことだろうと思ってた』  
「あうぅ……」  
『だからね、最初はすごく警戒してたんだよ? 最初の夜に同じベッドで寝たのだってね、君がもしおかしな  
ことをしようとしてたのなら、その場で捻っちゃおうって思ってたからなんだから』  
 どこか楽しげにそういう彼女とは裏腹に、ペインの頭からは完全に血の気が引いていた。もし彼女の――ミルクドラゴンの  
腕力で捻られようものならば、ペインなど簡単に引き千切られてしまうことだろう。  
『でも、ペイン君はすごくいい人だった。優しくて明るくて――短い間だったけど、君と過ごす毎日はすごく  
楽しかったよ』  
 ティアラはベッドに上がり、ペインへと迫る。  
『そしてあたしもいま判ったの。ちゃんとペイン君が自分のことを話してくれて、謝ってくれたから、あたしも  
自分の気持ちに正直になるね』  
 次の瞬間――ティアラはペインの唇を奪った。  
 
『あなたが好きです。――『エッチな女の子の取材』、してくれてもいいよ』  
 
 唇が離れ、はにかんだように言いながらティアラは微笑む。  
 そして呆気に取られるペインへと再び頬を寄せると――二人の影はまた、ひとつになった。  
 
 
【 6 】  
 
「あ、あのティアラちゃんッ? そんな無理に協力してくれなくてもいいのよ?」  
 あまりのティアラの積極さに押されて、完全にペインは後手になってしまっていた。  
「たしかにミルクドラゴンの取材はしたいけど、ティアラちゃんにそこまでしてもらうことはないのね」  
 そうして自分を組み敷いてすっかりその気になってしまっているティアラを必死に説得しようとする。今の  
ペインは自身でも不思議に思うくらいにプラトニックであった。  
 平素日頃であったのならば、こんな対応などはまずしない。据え膳は毒と判っていても平らげる男なのである。  
 しかしながら彼女は――目の前の女性(ひと)はそんな自分の中でも特別な存在であった。  
 この時のペインは柄にもなく、彼女・ティアラに恋をしてしまっていた。体ではなく、『想い』こそが先に  
通じ合ってしまった相手だけに、誰よりも大切にしてあげたいという気持ちが彼女には働いてしまう――その純愛さゆえに  
彼女を汚してしまってはいけないような気がしてしまうのだった。  
 だからこそ、そんな自身の想いをたどたどしくも告げながらペインは再度彼女の説得を試みる。  
 しかし、  
『わぁ、嬉しいな。ペイン君もあたしのこと好きでいてくれたんだね♪ そんなこと聞いたら、ますますくっ付きたく  
なっちゃうよ』  
 その言葉にティアラが思い留まることはなかった。それどころか、よりいっそうに強くペインを抱いてその頬を寄せた。  
「まいったのねぇ……」  
 そうして彼女の胸の中、説得を考えあぐねるペインへと、  
『……ペイン君は、本当にあたしのこと好き?』  
 ティアラは抱きしめる力を緩め、ふとペインへと訪ねる。  
「え? ――あッ」  
 その声に反応して顔を上げたペインは、そこに涙目のティアラを見つけて息を飲んだ。  
「わわわ、違うのよ! いや、そうなのよ! 本当に、本当に僕はティアラちゃんのことが好きなのよッ」  
『じゃあどうして? 好きにしてくれていいんだよ』  
「うん、だけどさぁ。だけど……こんな僕達の想いも、所詮は『ゆきずりの恋(もの)』なのね」  
『ゆきずり?』  
「……うん。僕はずっとここに留まることは出来ない。いつかは別れなくちゃならない時が来るのね。それなのに  
肉体関係を結ぶだなんて、そんな無責任なマネできないのよ」  
 ペインのそんな言葉に、ティアラは交わしていた視線を伏せ、心なし抱きしめていた両腕の力を解いた。  
「嫌でしょ、そんなの? だから判って、ティアラちゃん」  
 そんな彼女の様子に申し訳なくも思いつつ、ペインも説得が成功したことを確信したその時であった。  
『恋をすることって――愛し合うことって、何なんだろうね』  
 誰に問うでもなくティアラはそんなことを呟いた。  
 
『いつまでも一緒にいることが『愛』なのかな? それが『恋』なの?』  
 そんなのは、恋でも愛でもないと思う――そうティアラは続けた。  
『恋や愛は、過ぎ去った昔を思い起こすことじゃなくて、一緒にいて嬉しい現在(いま)を分かち合うことじゃないかな』  
「ティアラちゃん……」  
『虫や動物、花や草だって一瞬の交わりの中で――一度しかない出会いの中で恋をして種を残していくんだよ?  
 そんな『一瞬のいま』を分かち合って生きてるんだから。だから――』  
 ティアラはまっすぐにペインを見る。  
『たとえペイン君と過ごせる夜が今日で最後だったとしても、あたしは後悔しない。愛だってなくならない。  
それが――』  
「…………」  
『それが一緒に現在を分かち合うこと――愛することだって思うから』  
 語られるティアラの笑顔に、言葉に、ペインは胸の奥が熱く脈打つのを感じた。  
 同時に、つい先程のティアラの言葉も思い出す。  
 
――『お父さんやお母さんを『好き』っていう気持ちだって、『一緒にいると便利だから』って理由じゃないでしょ』  
 
 国と種、そして自分の在り方を思い悩むペインへとティアラはそう言って悟らせてくれた。  
 そして今、愛を語るティアラの言葉にもこれと同じ想いが込められていることをペインは悟る。  
 ペインの考えていた『愛』の未来図には、生涯を通して妻を養うというそんな『責任感』がある。その行為・考え方自体は  
間違ってはいないのだろう。しかしそんな責任感が互いを縛りつけてしまう関係を、はたして『愛』と呼ぶことが  
できるのだろうか?  
 上辺ではどんなに夫婦を名乗ろうとも、愛を謳おうとも、どちらかの一方的な気持ちばかりを押しつける関係に  
なってしまっては、もはやそこに『愛』などはない。  
 
そんな考えに至りペインはまたも悟る。  
『一緒(とも)にいる為に愛する』のではない。『愛しているからこそ一緒にいる』のだと。今までの自分の価値観は、  
完全に目的と結果とを履き違えていたものであったことに、ようやくペインは気付いたのだった。  
「ははは……まいっちゃったね。ティアラちゃんは、本当に色々なことを教えてくれるのよ」  
 それが判った途端、心が軽くなった。  
 同時に目の前のティアラが今まで以上に愛してやまなくなった。  
『ん? ――きゃッ?』  
 太ももに何かが当たる感触を覚えて、ティアラはそこを見下ろす。そしてその先に――完全に勃起して赤く  
充血したペインの陰茎が触れているの発見して思わずティアラは声を上げた。  
 そんなティアラの一瞬の隙をつくよう、  
「ティアラちゃんッ」  
『あ、きゃあッ』  
 ペインは彼女を抱き上げ押し倒すと、今までとはまったく逆に、今度は自分がティアラの上になった。  
「君と過ごせる時間は一瞬――だからこそ、その瞬間瞬間を大切にしなきゃいけなかったね」  
『ペインくん……』  
 ティアラを下に、今度はペインがその唇を奪った。  
「愛してるよ、ティアラちゃん。そしていっぱいいっぱい――今できるかぎりの想いで愛するから、全部受け  
止めて欲しいのね」  
 そうして改めて告白するペインへと、  
『――はい。あたしもあなたのことが好きです。……ペイン君の好きにして』  
 ティアラもまた頷いてみせた。  
 その応えを受けて、再びペインはティアラの唇をふさぐ。  
 
『ん、んん……ッ』  
 今までの触れ合う程度のものではなく、下唇を深くくわえ込む濃厚なテーゼ――初めて受けるそんなキスに、  
思わずティアラは息を漏らした。  
 存分に互いの唇を味わい、  
「ティアラちゃん、大丈夫なのね?」  
 ペインはティアラの様子を伺う。  
『うん、大丈夫。ペイン君――もっとして。キス、すごく気持ちよかったよ。だから、もっと……』  
 そして尋ねてくるペインへとキスのおねだりをするティアラ。  
「んふふ、いいのよ。いくらでも――してあげる」  
 その想いを受けて再びペインはティアラの唇を奪う。  
 数度目のキスはティアラにも免疫が出来て、先程以上に深く濃厚になる。唇を噛み、舌をからませ、行き来する  
互いの唾液に愛に乾いた喉を潤す。  
 そんなキスを繰り返しながら、ペインはティアラの胸当てを引き下ろした。擦り抑えられる布の反動に弾けて、  
露になった両乳房が大きく弾む。その右乳房を、下から持ち上げるようにしてペインは揉み解した。  
『ん、あぁ……ッ』  
 そんな新しい感触にティアラは口付けていた唇を振り切って声を上げる。しかし――  
『あ――ん、んんッ?』  
 すぐさま離れた唇をペインはふさぐ。そうして口唇の愛撫を続けたまま、乳房の責めを展開していく。  
『ん、ん、んんッ。ん〜……!』  
 万遍なく乳房全体を揉み解しながら、時折指の股で乳首をそこへ挟み込み強く締め上げる愛撫に――ペインの掌から与えられるその快感に、ティアラは強く反応した。  
 ただでさえ呼吸器を塞がれている息苦しさに加え、想像すら出来なかったその感覚と胸の高鳴りにティアラは  
息を吐くことすらままならなくなる。  
 しかしそれは苦しみではなかった。  
 それは肉体を介した感覚であったが、そんな感覚以上に心の奥底に溢れてくる『喜び』が何度も意識の曖昧となるティアラに、  
快感を連続させた。  
 そしてそんな感覚の中、さながら眠りに落ちるかのよう――それら愛撫の中でティアラは意識を失った。  
 
 
【 7 】  
 
 夢を見ていた。  
 真っ白な、まるで空の上遥か彼方の――雲の上を飛んでいるかのような夢を。  
 とうの昔に飛ぶことなど忘れてしまったはずの自分(ミルクドラゴン)が、その瞬間だけは間違いなく空を飛んで  
いたのだ。  
「――ちゃんッ……ラちゃん、ティアラちゃんッ?」  
 声が聞こえた。  
 そうして閉じていた瞳を開けると、  
「だ、大丈夫なのね? ティアラちゃん」  
『あ……ペイン君だぁ』  
 心配そうに自分の様子を気遣ってくれるペインの顔が見えた。途端、ペインに会えたことが嬉しくなって――  
『ペイン君ッ♪』  
「え? あ、あぐぐッ……!」  
 ティアラは起き上がり様、目の前の彼を抱きしめた。  
「あ、あうぅ……く、苦しいのねティアラちゃん。ちょっと力緩めて」  
『え? あ、ゴメンね』  
 搾り出すようなペインの声に我へ返ると、ティアラは慌てて両腕の力を解く。  
『ペイン君の顔が見れたのが嬉しくなっちゃって――ゴメンね』  
「けほけほッ……ううん、僕こそゴメンなのよ。エッチするの久しぶりだったから、すっかり我を見失っちゃってたのね」  
『謝ることないよ、すごく気持ちよかったよ。それにあたしね、夢を見たのッ』  
「『夢』――なの?」  
『うんッ。あたしね、あたし――あれ?』  
 興奮気味に今見た夢の内容をペインに説明しようとするが、  
『あれれ……なんだっけ?』  
 もはやそれは遠くへ、快感の波と共に頭を走り抜けてしまって、思い出すことは叶わなかった。  
 ただ――  
 
『なんか……飛んでるみたいだった』  
 それだけは憶えていた。  
「それって、『イッて』くれたってこと? うはー、嬉しいのよ♪ 男としては尽くし甲斐があるのね」  
『うん、あたしもありがと。それでね、そのね――』  
「ん? なぁに?」  
 ペインを前にティアラは、何やら切な気な様子で口ごもる。そして、  
『あのね……もっと、気持ちよくして欲しいなぁ、って』  
 そろそろと出されたそのおねだりに、  
「もちろんなのよ!」  
『あぁ――、きゃあッ』  
 ペインは応えるや否や、再びティアラを押し倒していた。  
「いくらだってしてあげるのね♪」  
『もう、やだぁ』  
 そうして互い微笑み合うと今一度、唇を重ねる。しかし今度は浅い舐り合いで唇は離れると、ペインの舌先は首筋を伝い、  
ゆっくりと胸元へと降りていった。  
 その舌先は乳房の隆起をなぞり上げ、その頂点にある乳首へ辿り着くと、  
『あ、はんッ――あぁッ』  
 その周りを舐り、そして次の瞬間にはそれを口中へと咥えてみせた。  
 口の中に含んだそれをくすぐるよう前歯で甘噛みすると、さらには舌先で喉の奥へと誘うよう転がし、口全体で  
強く吸いつける。  
『あ、んん! だめ……おっぱい吸っちゃダメぇ!』  
 その一番に敏感になっていた箇所をピンポイントで吸いつけられることに、言葉では否定しつつもティアラは、  
愛撫の続行を促すよう強くペインを抱きしめる。  
 そして唇の愛撫と共に、ペインも添えられた左手が乳房を揉みしだいた瞬間、  
「ん、んんッ!?」  
 突如としてその口中に、甘く熱い何かがほとばしるのを感じて目をむいた。  
 頬の中いっぱいになったそれを飲み下し、ペインはそこから口を離す。そんなペインの目の前にあったものは――  
「ティ、ティアラちゃんこれ……」  
『あは、出ちゃったぁ』  
 乳首の先端から珠となって溢れる母乳の姿であった。  
 
『お口汚しちゃってゴメンね。ミルクドラゴンってね、子供の有る無しに関わらず、おっぱい絞られちゃうとその  
……ミルク出ちゃうの』  
 どこか恥ずかしげにそのことを告白するティアラ。  
「そういえば――」  
 呟く通りペインも疑問に感じていたことがあった。  
 それはお世話になっていた三度の食事の時のこと――食卓にいつも上がるチーズやらクリームシチューなどの乳製品を、  
家畜の姿も無いのに、と疑問に感じてはいたのだ。  
「じゃあ、ご飯の時に上がってたチーズとかは――」  
『あ、うん……それ、あたしのおっぱいだったの』  
 今さらながらその告白が恥ずかしくなって、ティアラは両手で顔を覆った。  
『ごめんね、ごめんねッ。恥ずかしくって言い出せなかったの! この山じゃ当たり前に食べてるものだったし、  
それに――ペイン君をおもてなしするのに何も材料がなくて……』  
 しどろもどろにそんな言い訳をするティアラを――そんなティアラのおっぱいをしかし、  
「あー、んッ」  
『きゃあッ』  
 ペインは再び咥えると、そこからまた彼女のミルクを吸いだした。  
『あ、あん……そんな、直接だなんて。ダメだよぉ、ペイン君』  
「んくんくんく……」  
 戸惑うティアラをよそに、ペインは大きく喉仏を隆起させてミルクを飲み下す。  
 そうして存分にそれを味わってそこから口を離すと、  
「ティアラちゃんのオッパイが飲めるなんて感激なのよ」  
 口の周りをミルクの珠だらけにしながら、ペインは微笑んでみせた。  
『うそ、だって――汚くないの?』  
「どうして? だってミルクでしょ。その事実を知った今だって、美味しかったのよ」  
 目の前で味の評価をされて、さらにティアラは顔から火が出る思いがした。――が、事実ペインは心底そう  
思っている。そして嬉しく感じている。  
『ミルクプレイ』なんて滅多に体験できるものでもなし、またそれ以上に、自分を大切に想ってくれていたティアラの気持ちが何よりも嬉しかったのだ。  
 
「僕はまったく気にしないのよ。だからティアラちゃんも気にしないで♪ それに――このくらいのことで  
恥ずかしがってたら、これから先なんて何も出来なくなっちゃうのよ」  
『え? あッ、あんッ』  
 言うや否や、再びティアラの乳首を口に含むペイン。同時に、残った右の乳首もしごくよう揉みしだくと、  
そこから噴き溢れたミルクはたちどころに二人を白まみれにした。  
『ダメ、恥ずかしいよ……あんッ、んんッ』  
 己のミルクにまみれながら抱き合う自分とペイン――そんな光景の中で、ティアラの理性も弾けた。  
 愛撫するペインの頭を掻い繰ると、その巨体をのけぞらせて快感に震える。  
 そんな中、ペインの口元は乳房を離れ、さらに下降していく――豊満に贅(にく)を蓄えた腹部の波を伝い、  
ヘソの溝に溜まったミルクを舐め摘むとペインの舌先は――ついにティアラの膣へと到る。  
 脂肪の肉圧でピタリと閉じ合わさった入り口の姿は、瓜の実の姿をペインに連想させた。そしてその割れ目の  
両端に親指それぞれを添えると、これまた果実にするよう、かの入り口をペインは押し広げる。  
 途端、堰き止められていた愛液が溢れ、会陰を通って肛門までをしとどに濡らした。  
 熱く蒸れた、その甘く酸えた香りに中てられ、ペインの理性もまた乖離しつつあった。この匂いを嗅いでいるだけで  
射精してしまいそうになる。  
 目の前で押し広げられた膣内には、大陰唇と小陰唇の隆起はあまり見られない。膣道の奥はこれだけ押し広げられてもなお肉壁に埋もれ、  
そんな肉厚な膣口の眺めは、今までペインの知る女性器のそれとは別なものを思わせた。  
 それゆえに、胸中で渦巻く性の衝動と期待は益々大きくなって、今まで以上に強く胸の内を叩く。  
――こんなオマンコに入れたら、チンチンどんな気持ちがするんだろう?  
 興奮から強くなる鼻息が、剥き出しにされたティアラの膣をくすぐる。  
『んんッ、きゃううッ!』  
 その熱い吐息を肉体のいちばん敏感な部分で感じ取り、ティアラは声を上げた。同時に、内壁から溢れ出した愛液が肉膣の器に満ちて零れ落ちる。  
 そんな膣口へ、  
「あむッ。んむんむ……」  
『――えッ? あ、いやぁあん!』  
 ペインは鼻頭(マズル)を深々とねじ込んだ。  
 
 途端、距離をとって嗅いでいた時とは比べ物にならない愛液の芳醇な香りが頭の中を突き抜ける。  
 獣人型特有のこの長い鼻頭をここへ埋めることは、ペインの好きなクンニリングスのひとつであった。  
 しかしながら平素日頃、色街で出会う『人間(ひと)の女の子』では精々鼻の頭が埋まる程度だが、こと  
ビックサイズのティアラに至っては上顎を含む鼻筋までが丸々入り込んでしまう。  
 さらには圧の高い膣内に挿入することで鼻筋と内壁との隙間はピタリと閉じられ、そこから溢れ出る愛液が  
鼻腔に充満するに到ってはまるで、自分の鼻頭が膣の一部になってしまったかのような錯覚さえ憶えさせるのだった。  
――幸せなのね……♪  
 今日ほどクンニに充実感を憶えられた日はない。  
――ならば今度は、僕がティアラちゃんを幸せにしてあげるのよ♪  
 その状態から、さらに膣の奥へとペインは舌を伸ばした。  
『んんッ!? あ、あぅん! すごいッ……奥まで、温ったかいのが来るよぉ!』  
 今まで触れることも叶わなかった敏感な場所の深部を舌先を以て探られる感触にティアラは叫(こえ)を上げた。  
 ぬるりぬるりとペインの舌が内部で前後して、さらにはその舌先が奥底をくすぐるたび、快感からティアラの意識は  
激しく喪失と覚醒とを繰り返す。  
 十九年間――この山において、一人幾夜もの夜を過ごしてきたティアラも、体が熱く昂(たか)まる夜には  
自分で自分を慰めることもあった。しかし今ペインから与えられる愛撫は、そんな唾液で湿らせた指先だけしか  
知らなかった膣(からだ)には、どれもが未知の衝撃となって激しく自分の中を走り抜けていく。  
『あ、あぁッ……もっとぉ。もっと欲しい! もっとしてぇ、ペイン君!』  
 そんな感覚が心地良くて、そしてそれを知り得たことが嬉しくて、ティアラはさらにペインを求めた。  
快感を、彼自身を、そして新たに目覚めた自分を――さらなるそれらを、ティアラはペインの中に求めるのだった。  
「んふふ……いいのよ。いっぱいいっぱい、してあげるのね♪」  
 そんなティアラのおねだりを受けて、ペインの責めはさらに変化をみせる。  
 埋めていた鼻頭を抜き、今度は唇と舌先を使って膣口周辺を愛撫し出す。  
 奥を周りとを問わず、溢れていた愛液を拭うようペインの舌先は小陰唇と大陰唇の溝を丁寧に舐る。  
 先程までの、内部を責める『直接的』なものとは違う細やかなそれに、これはこれで安堵感を憶えるようで  
ティアラは大きくため息をついた。  
 しかしそれも一時のこと――  
『ひゃッ? 、あくぅぅッ!』  
 その新たな衝撃は、そんなティアラの隙をつくよう突然に来た。  
 
 それこそは内部の責め同様の――否、ある種それ以上に直接的な刺激を以てティアラを反応させた。  
「えへへ、『お豆ちゃん』発見なのよ♪」  
 愛撫を続けるペインの舌先には――クリトリスを内包した、包皮の隆起があった。  
 肉厚の膣に埋もれていたそれを探し出すべく、ペインの舌先は両陰唇の溝を丹念に舐り続けていたのだ。  
 そしてそれを見つけ、さらにはそこへの刺激に対するティアラの反応を確認すると、さながらペインは宝物でも  
発見した子供のよう無邪気な笑顔を見せた。  
 小刻みに震えるその先角へ、ペインは強く息を吹きかける。  
『ッ、ひゃう! んうぅッ……!』  
 その感触に、すっかり敏感になってしまっていたティアラは短く、そして息を飲むように押し殺した声を上げた。  
 それを皮切りにペインの新たな責めが始まる。  
 膣口に滑らせた舌先で愛液を集めてくると、それを万遍なく全体に舐め付ける。そしてその滑りを受けて、  
さながら珠のよう充血して立ち上がった陰角を――ペインは唇の中に咥え取った。  
 そしてそこからクリトリスへと直に与えられる責めに、  
『ひゃうぅッ! すごいッ、お豆がッ、すごいよぉ!!』  
 ティアラはついに理性をかなぐり捨てた声を上げた。  
 上下の唇で押し潰すようクリトリスを吸い上げる一方で、その先角を舌先で舐り弾く。さらには包皮越しに、  
そこの根元を指先で掻きしごかれた瞬間――  
『あ、あうッ! くんぅぅ……ッ』  
 ティアラの意識は急激に落ちた。  
 
 
【 8 】  
 
 まるで許容量を越えた電力に対してブレーカーが落ちるかのよう、ティアラは脱力してベッドに沈んだ。  
『はぁはぁ……』  
 ただ、そんな意識の喪失も、今回は一過的なものであった。  
 先に一度、絶頂を迎えていたこともあったからだろう。今度のそれに対しては一瞬こそ意識が飛んだものの  
すぐに覚醒し、今は快感の余韻に浸る余裕があった。  
――イっちゃったぁ……。  
 そうして荒い呼吸で見慣れた天井を見つめていた視界に、  
「大丈夫なのね、ティアラちゃん?」  
 そんな自分を覗き込んでくるペインの顔が見えた。  
 その姿を確認した瞬間、  
『あ……――ペインくぅんッ!』  
「え? あ、またッ――あぎぐぐぐッ……!」  
 先程同様に、  
『あぁ、ペイン君ッ。好き、大好き!』  
「ティ……ティア、ラッ、ちゃん――わかったから。わかったから、力をゆる、め、て……!」  
 否、先程以上の力と愛しさを以てティアラはペインを抱きしめていた。  
 そんな激しい抱擁から解放され、今度はペインがその隣でぐったりとベッドに沈む。  
『ご、ごめんねペイン君。あんまり気持ち良くしてくれたから、つい君の顔が見れて嬉しくなっちゃって』  
「へ、へへへ……い、いいのよ。喜んでもらえて嬉しいの、ね……」  
 大袈裟に謝ってくるそんなティアラに、ペインもすっかり血の気の引いた笑顔で応える。  
 しかしそんな顔色とは裏腹に――  
『あ……』  
 仰向けに寝そべるそこから、赤々と充血してそそり立つペインの陰茎を見つけてティアラは頬を紅らめた。  
 それに見入ってしまうことに恥ずかしさを感じながらもなお、その視線をそこから離せられない。  
 
 先細り、その全身が赤くズル剥けた獣人型特有の茎は、先端から溢れるカウパー腺液のぬめりを帯びて、  
テラテラと艶やかに輝いて見えた。  
 そんな茎が時折脈打って跳ねる様子を前に、ティアラは強くそれを弄びたい衝動に駆られる。  
 そしてそんな想いは、  
『ねぇ、ペイン君。――おちんちん、舐めてあげようか?』  
「え、えぇッ?」  
 つい言葉となって漏れた。  
『あッ……』  
 そんな突然の言葉にペインはもとより、発言してしまった自分自身も驚いてティアラは口元を押さえる。  
「いいのよそんな。無理しないで、ティアラちゃん」  
 しかしペインもすぐにそれを察してフォローを入れる。  
 処女ゆえの好奇心から口をついた発言であったことを彼も理解していた。  
 だがしかし、  
『無理してるわけじゃないよ。あたしだって、してみたいの』  
 そんな彼の優しさに開き直ってか、ティアラは強く申し出ていた。  
『ペイン君だって、さっきあたしにしてくれたでしょ?』  
「ぼ、僕のは好きでしていることなのよ。だから――」  
『あたしだってそうだよッ? ペイン君の体に興味あるんだから。さっきの君みたく手で触ったり、そのぉ……  
味とかも確認してみたい』  
 その告白がよほど恥ずかしかったのであろう。はにかむよう出されていた言葉もしぼむように小さくなり、  
最後の発音は確認できないほどであった。  
「思ってるほど、面白いものじゃないのよ」  
 一方のペインも、リードしなければいけない立場上、余裕をふるまってみせるが、  
――あぁ! ティアラちゃんに僕のチンチンを咥えてもらいたい! っていうか咥えさせたいのね!  
 その心中は、けして穏やかではなかった。  
 相手は『商売女』ではないのだ。いかに一線を越えてしまった今でも、節度だけは弁えて接してやらなければない。  
――それが『男の努め』というものなのね。  
 ……などとつまらないことを考えているうちに、  
『いただきまーす♪』  
「え? うあん☆」  
 ティアラは中腰で立ち上がっていたペインの茎に手を添え、その先端を咥えてみせた。  
 
「あぁッ――ちょっと、ティアラちゃん!」  
 突然の展開に戸惑いつつ、その名を呼ぶ。  
『んむむ?』  
 そんな言葉に、依然咥え込んだまま上目遣いで見上げてくるティアラの視線にペインの興奮はさらに昂まる。  
 ――と、しかし邪念を振り払い、  
「汚いのよ、ティアラちゃん」  
 改めてペインはティアラを諌めた。  
 しかし、  
『汚くなんて思わないよ。あたし平気だよ?』  
 ティアラも一旦そこから口を離すと笑顔で返す。  
「そんなぁ。汚いのよ? だってここオシッコするところだし」  
『それを言ったら、さっきペイン君があたしにしてくれた所だってオシッコの穴とかある所だったよ?』  
「それはそうだけどね……でも、うう〜ん」  
 言われてペインも口ごもる。そう返されてしまっては何も言えなくなってしまう。  
『ペイン君だって、さっき言ってくれたでしょ?』  
 そんなペインを前にティアラも答える。  
『さっきあたしのオッパイ飲んでくれた時だって、『まったく気にしない』ってペイン君は言ってくれたじゃない』  
「言ったけど、君のミルクと僕の『ミルク』は違う訳でね――」  
『だから、あたしだって気にならないよ。繰り返しになっちゃうけど、大好きな人の体だから興味があるの。だからね、お願い』  
「むむむぅ……」  
 先程ティアラを説得させた自分の言葉は、今度はティアラの口を借りて自分を説得させているのだった。  
 やがては、  
「じゃあ、ちょっとだけなのよ」  
 ペインは渋々(内心はかなり嬉しいのだが)、ティアラの奉仕を受け入れた。  
 そうしてペインを横にすると、  
『わぁ〜……』  
 改めてティアラはその陰茎を前にする。  
 
 ワレモノを扱うかのよう触れながら、まずはじっくりとその姿を観察する。むき出された先端の周囲には、  
ヒダとも角とも判別できぬ無数の小さな突起物が確認できた。  
 平素これだけを目にすれば、かなり奇異に感じる代物ではある。お世辞にも可愛いとは思えない。しかし想い人との  
閨事中である今とあっては、そんな下手物もひどく艶かしくティアラの瞳には映るのだった。  
 そこから発せられる薫りもまた蠱惑的だ。  
 肌に唾を塗り伸ばしたかのような異臭に似つつもしかし、今のシチュエーションと相成ってはそれも、麻酔のように  
ティアラの理性を痺れさせる。  
『すごいね……ペイン君、すごいよ』  
 それら視覚と臭覚で膨らまされた興奮に、ティアラの鼓動は口からその音が漏れて聞かれてしまうかと思うほどに  
大きくなる。  
 そして揃えた指先で摘み取った茎を上下にしごいた後再び――恐る恐るティアラはそれを口へと含んだ。  
 と、  
――これからどうすればいいんだろ?  
 含んだは良いものの、それからの扱いを考えあぐね、ティアラは動きを止める。これにも何らかの技なり作法なりが  
あるはずなのだ。  
 そうしてしばし口中で弄んだすえ、  
――そうだ。ペイン君がしてくれたみたいにやってみよう。  
 先程の前戯の際、ペインが自分の乳首やクリトリスに施した動きを思い出して、それをなぞることに決めた。  
 口中を唾液で満たして充分に茎全体を滑らすと、窄めさせた口唇でそれを上下にしごく動きを始める。  
「あ、あうん……温ったかくて気持ち良いのよ」  
 それに対し、ペインも腰砕けた声を上げた。  
――ペイン君、感じてくれてる?   
  あたしのお口で気持ち良くなってくれてるの?  
 そんなペインの反応にティアラは嬉しくなった。それと同時この奉仕(フェラチオ)自体もどんどん面白くなってきて、  
手を口を動かすことにもさらに熱中していく。  
 
――もっとしてあげるよ。もっと気持ち良くなって。  
 唇の上下運動に、さらに独自の動きを加える。  
 一定のリズムに合わせて速度を上げることはもとより、口中においてティアラは、茎全体を舌で包み込んだ。  
 その舌の動きに、  
「ッ!? はうんッ!」  
 そんな『技』に、思わずペインは声を漏らした。  
――な、なんなのね? ティアラちゃんのお口の中で、僕のチンチンどうなってるのね?  
 今までに体験したこともないような感触をその口中で受け、ペインは腰を浮かせた。  
 こと風俗において百戦錬磨のペインすらをも驚愕させる舌の動き――しかしそれは、単純に『舌を巻きつかせた』と  
いうだけのものであった。  
 しかしながらその行為の奥深さは、単純ながら深い。  
 その種族性からティアラの舌は他の人型族と比べて長く大きい。故に、一般のフェラチオにおいては精々が  
茎の下部を包む程度にしか役割を果たさない舌も、ティアラの口中に到っては獲物を二重三重にも絡め取る  
『驚愕の舌技』に発展するのであった。  
――こ、これはッ……ヤバイかも、なのね。  
『ん、ん、んむむッ』  
 行為に熱中し出してか、ティアラの口の動きも、そして舌の締め付けもさらに激しさを増す。そんなティアラの奉仕に  
予期し得なかった射精の前兆を感じ、ペインは生唾を飲み下した。  
――初めてなのに口に出しちゃう訳にもいかないしなぁ。まぁ、本当に危なくなったら、やめさせればいいか。  
 自他を問わず、過去に数多くの射精をしてきた経験からもまだ、今の状況を楽観的に考えたその時であった。  
 口唇のみで行われていたはずのストロークが、一気にノド奥深くまでくわえ込む動きへと変化したことに、  
そんな状況・状態は一変した。  
「わ、わわわッ?」  
 舌で包みこんでいた時とはまた違う咽喉の粘膜の感触に、ペインの射精予想は大きく狂わされる。  
――この娘……どこでこんな技を!?  
 もちろんの事ながら、ティアラがそんな技など知るはずはない。  
 全ては『ペインに喜ばせたい』と願う彼女の愛が起こさせる奇跡であった。  
「あ、あッ――ダメ、いっちゃう……ッ」  
 茎全体がむず痒くなり、蟻の門渡りが何度も収縮を繰り返す。そんな射精感の高まりにペインもティアラから  
離れようとする。  
 
 そして、  
「ティ、ティアラちゃん、もうやめて! お口、汚しちゃうのねッ」  
 彼女の後ろ頭に手を添えた瞬間――  
「あッ! あう、うぅッ……ッ!」  
『んむむッ!?』  
 そのタイミングを見誤り、ペインはティアラの口の中で射精に達してしまった。  
「はッ、ん、んうッ」  
 久しく抜き出されていなかった精液の奔流は熱く激しく、それの通る尿道が二倍にも三倍にも大きくなったかのような  
錯覚を覚えさせるほどのものであった。  
『ん……んんッ……』  
 奉仕の手を止め、口中でそれを受け止めるティアラの頬が僅かに膨らむ。その様に打ち出されている量がハンパでは  
ないことを、ペインは射精感の忘我の中で感じていた。  
 やがて第二波・三波の精通に茎全体が脈打ち、ようやく尿道で精液の切れを操作できるようになった頃――  
ペインの射精は終りを迎えた。  
「はぁ〜……はふぅ」  
 射精の最中ずっと止めてしまっていた呼吸(いき)を長く吐いて、ペインは人心地ついた。  
 そして思い出す。  
「――あ! ティ、ティアラちゃん!?」  
 不幸にも、初めての奉仕で最悪の結末を迎えてしまったティアラのことを思い出す。  
 首を起こし横たわる己の体を見下ろすそこには――口中に留めた精を漏らさぬよう、唇からペインの陰茎を  
引き抜くティアラの姿があった。  
 吸い付けながら口唇を抜くことにより、解放された茎は大きく跳ねて、その背をペインの下腹部に打ちつける。  
『んむむ……』  
 未だ口中に留めているペインの精をどうしたらいいものか考えあぐね、口元へ右手を添えるティアラ。  
「ゴメンね、ティアラちゃん。あんまり気持ち良くて、引き抜くのに間に合わなかったのよ。僕の手の上でいいから出して」  
 慌てて起き上がり、そんなティアラの前に両手で作った杯を差し出すペイン。  
『………』  
 そして依然同じ姿勢のままでペインとその両手とを見比べるティアラではあったが――しかし次の瞬間、  
『…………んくんッ』  
 精液はそこに吐き出されることなく、ティアラの喉は上下した。  
 
『んッ――けほ、けほッ』  
「あ、あぁ! 何してるのよ、ティアラちゃん!」  
 含んでいた精液全てを飲み下し、慣れぬその味と喉に絡まる感触に咳き込むティアラをペインは慌てて介抱する。  
『え、えへへ。うまく飲み込めなくて、のどに引っかかっちゃった』  
「あんなの飲んじゃ汚いのよッ。無理する必要なんてないのに」  
『汚くなんてないよ。ペイン君のだもん』  
「で、でも……」  
『それにさっきも言ったでしょ? 気にしないよって』  
 上目遣いで見返してくるティアラのイタズラっぽい視線に、ペインの鼓動はさらに熱く跳ね上がる。  
 正直、辛抱たまらなくなっていた。  
 こんな行為に及びつつもなお、百戦錬磨のペインにしてみれば、まだ強く『我慢』をしている部分があった。本当はもっと自由に、そしてもっと思うが侭にティアラの豊満な肉体を弄びたく思っているのだ。  
 それでも、そんな本性が顔を覗かせるたび、必死にそれを振り払い押さえ込んでいた。全ては彼女を愛しているが故に。  
 しかし――  
「むむむむ……」  
『ペイン君?』  
 正座に居住いを正して、ペインはティアラへと背を向ける。  
 全ては限界に来ていた。現に、今しがた射精したばかりだというのに、ペインの茎は収まるどころか――  
それどころかティアラのあの笑顔に刺激されて、今まで以上に硬く大きく充血しているのだった。  
――これ以上続けたら……。  
 どうしようもなくティアラを傷つけてしまう――そんな考えにペインは自分が恐くなる。愛しているが故に、己の愛を打ち明けられないそんなジレンマはペインの心を、そして陰茎を益々痛くさせるのだった。  
 そして悩みに悩みぬいてペインの出した答えは、  
 
「ティアラちゃん――もう、終りにしない?」  
 
 そんな一言であった。  
 
『え? どうしちゃったの、ペイン君』  
 依然振り返ることなくただそれだけを告げてくるペインにティアラも不信感を隠せない。そんな気配を言葉の響きから感じつつも、  
「いやぁ……キリがいいでしょ?」  
 ペインも苦しい言い訳でティアラを説得しようとする。  
――説得させろッ。そして自分も我慢するのね、 ペイン!  
 ここで終えられた方が互いの為なのだ――  
「だって、さっきティアラちゃんもイッたし、僕も今イッたでしょ?」  
 今ならまだ『良い思い出』で終われる――  
「初めてなんだし、今日はこれくらいがちょうどいいのよ」  
 自分も彼女も、もう充分だ――  
「だからさ、今日はもう寝よ。ね?」  
 これでいいのだ……これで――  
 その時であった。  
『何を言ってるの、君は?』  
 そんな言葉と共に、のしかかるようティアラは背中からペインを抱きしめた。  
「はわわッ?」  
 突然のティアラの行動に慌てふためくペイン。……しかしながら、背中で圧迫される乳房の感触、重さが心地よくて、怒張していた茎はそんな主人の心境を反映するかのよう何度も脈打つ。  
『あー、おチンチンまだそんなに大きいじゃないッ』  
「あ、いやコレは、オシッコ我慢してるのね」  
『またウソついてー』  
「あのそのッ……」  
『ペイン君、まだ全然満足してないじゃないの。どうしてそんなこと言うの?』  
「あ、あのねそれはそのぉ……」  
 矢継ぎ早なティアラの問い詰めにしどろもどろになるペイン。やがて、  
「もう、これ以上――我慢できないのよ」  
『我慢できない?』  
 その追求に観念し、ついにペインはそのことを吐露した。  
 
「僕はね、とんでもないスケベーなのよ。今だって、君にいろんなすごいこと・ひどいことをしたいのを必死で我慢してるの」  
『あ、あれで我慢してたの?』  
「あぁ、前戯(あれ)なんて序の口なのよ? プッツンしちゃったらもっとひどいのね」  
 あの先程の前戯を思い出し、さらにはそれを凌ぐと豪語するペインの言葉にティアラも生唾を飲み込んだ。  
「だけど、初めてのティアラちゃんに酷いことなんて出来ない。僕のことを好きでいてくれるのならば、なおさら  
大切にしてあげなきゃならない、って思って我慢してきたの。――だけど」  
『ペイン君……』  
「だけど――ティアラちゃんを好きになればなるほど、エッチな体を見れば見るほど、その我慢は抑えきれなく  
なってきているのね。限界に達してるの」  
『…………』  
「大好きな君を傷つけたくはないのよ。だから、判って。ここまでにしよう――ね?」  
 ペインのそんな告白と、そして再度の制止にすっかり背中のティアラは言葉を発せなくなっていた。  
――僕が普通の男の子だったら、どれだけ二人とも幸せになっていたことか。  
 そしてそんな自分の、種の『性(さが)』を呪うペイン。  
 ともあれ、とにかく今は何か語りかけて、閉塞したこの場を取り繕おうしたその時であった。  
『――ペイン君。そういえばずっと聞き忘れちゃってたけど、あたし達って『恋人』同士なのかな?』  
「え?」   
 唐突なティアラの声に――今までの展開からではまったく予期できなかった唐突の問いに、思わずペインも訪ね返す。  
『「あたしはペイン君の恋人ですか?」って聞いたの』  
「こ、『恋人』――なのね?」  
 言われてから初めて気がつく。そんなことなど、まったく意識していなかった。  
「そ、そりゃ……もちろんそうなのよッ。だって、僕はティアラちゃんのこと大好きだし、ティアラちゃんだって  
そうでしょ? だから――」  
『だったら、何も遠慮することないんだよ?』  
「――え?」  
 そしてすぐに返されるティアラの返事に、またもペインは言葉を失った。  
 
『あたしはね、何度も言うようにペイン君のことが好きなの。それは優しいところとか、エッチが上手なところだけじゃなくて、  
ウソついちゃう君とか、寝相が悪かったり御飯をうまく食べられないところなんかも、全部含めた君が好きなんだよ?』  
「うぅ、ごめんなさい」  
『だからさ、隠したりしないで。ありのままの君を見せてよ』  
 抱きしめていた力を緩め、その頬に軽くキスをすると改めてティアラはペインの体を自分へと向き直らせる。  
『こういうこと何も知らないし、何もしてあげられないあたしに「出来ること」は――ただ「受け止めてあげること」だけなの。  
それがペイン君の思いやりに対する、あたしの愛だよ。だから……ね?』  
 そして――  
『見た目の通り、あたし丈夫なんだから? どんなことだって耐えられるから――だから来て、ペイン君』  
 その言葉と共に体を開き、抱き止めんとするかのようティアラが両腕を広げた瞬間――  
 
「わ、わ……ッわぉ―――――んんッ!!」  
 
 まさにケモノのよう吼えるや否や、ペインは座り込んでいたその姿勢から飛び上がり、豊満なティアラの体へと  
飛び込んでいた。  
 ついに――ペインの中の 『一線』は切られてしまった。  
「知らないからね! どうなっても知らないから! もう、泣いちゃったって許してあげないのね!!」  
 噛みつくようにその乳房へ吸い付きながら、これまた吼えるようにペインは叫ぶ。  
『いいよ、いっぱいして! ペイン君であたしを壊してッ』  
 そしてそれに応えるように、ティアラも思いっきりペインを抱きしめる。  
 隠して二人は互いを想い逢うプラトニックな関係から、  
「好き! 大好きなのね! メチャクチャにしちゃうんだからね!!」  
『もう、最初っからそう言ってくれれば良かったのに』  
 ようやくその先の、互いの感情をぶつけ合える『恋人』へとなれたのであった。  
 
 

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