『とある二人の初めて』 
 
 「ねぇ、カイト」 
  読んでいた本を投げ出して、レムは彼に静かな声で話し掛けた。そして、何の前フリも無しにこう言った。 
 「私の事、襲わないの?」 
  カイトは飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出した。 
 「っ、なんか今日は大人しいと思ったら、いきなり何を言い出しやがるんですかあんたは」 
  彼は赤面しながらカップをテーブルに置いて口許を拭った。レムはベットの端に座って、俯きながら指をもじもじさせていた。 
 いつもピンと立っている耳は、恥ずかしげに頭とくっつくくらい伏せられていて、 
 元気に左右に振れているはずのシッポも今は大人しくベットの上に横たわっているだけだった。 
 いつもの元気な彼女とは明らかに違うその様子に、カイトは戸惑いを隠せなかった。 
 「……なんでいきなりそんなこと言い出すんだよ」 
 「だって……」 
  レムは何か言おうとするが、あと少しのところでそれを飲み込んでしまった。その様子を見て、カイトは大方の察しが付いた。 
 「またアイツになんか吹き込まれたな。ったく、セリルの奴……」 
  セリルはレムの友人で、これまでにも彼女に色々と厄介な事を吹き込んでカイトを困らせていた。 
 その吹き込みのおかげで二人は半年前に結ばれたので、半面感謝しなければならない部分もあるのだが、 
 やはり困る事がほとんどだった。カイトはレムの前に椅子を置いて反対に座った。 
 「で、今度はなんて言われたんだ? また『アイツに新しい彼女ができたわよー』か?」 
  カイトは椅子の背もたれに両腕を乗せて、セリルの声真似をしながら半分からかい気味に言った。 
 レムは俯いたまましばらく黙っていたが、聞き取れないくらい小さな声で呟いた。 
 「…………」 
 「ん?」 
 「……もう半年にもなるのにまだキスだけか、って」 
 「……はぁ」 
  両腕に額をつけて、カイトもため息をつきながら俯いた。しかし、それは恥ずかしさから来るものではない。 
 少し間を置いてから、顔を上げて彼は言った。上げた彼の顔は少し赤くなっていて、耳も少しだけ前倒れになっていた。 
 「お前なぁ、恋人同士になったからって、別に、その、そういうことするのが必須って訳じゃないだろ」 
 「うん……」 
 「そりゃ確かに、くっ付いたらすぐにそう言う仲になる奴等も居るだろうけど、俺達は俺達だよ」 
  椅子から手を伸ばして、カイトはレムの頭を撫でた。 
 彼女は体を身じろぎさせたが、少しだけ起きた耳を時折動かしながら、撫ぜられる感触を味わっていた。 
 しばらくそうしているうちに、ただ横たわっているだけだった彼女のシッポがハタリ、またハタリと動き始めたので、 
 カイトは少しだけ安心した。そして、また彼は冗談交じりに言った。 
 「それとも、そういう事してもらいたいのか?」 
  安心感から出た冗談だったが、今の彼女にはそうは聞こえなかったらしく、シッポはまたパタリと動きを止めてしまった。 
 膝の上に置いた手をぎゅっとスカートごと握ってから彼の顔を見ると、また落ち着く場所が無いように視線を下へと移した。 
 一瞬見えた彼女の目は潤んでいた。 
 「……カイトはどうなのさ」 
  震えた声で彼女は言った。 
 「えっと……、それってどうい」 
 「カイトは私とそういうこと、したくないの?」 
  彼が言葉を言い終わる前に、今度は少し強めの口調で彼女がもう一度聞いた。 
 彼女は顔を上げて今度はしっかりとカイトの目を見た。咄嗟に彼は目線を逸らした。 
 「いや、えっと、それは……」 
 「…………」 
  しばらく静寂が部屋を包み込んだ。そして、無言でじっと見つめてくる彼女に対して、とうとう彼は折れた。 
 「……そりゃ、したいけど」 
  目線は逸らしたままだが、顔を赤くしてカイトは答えた。答えを聞いたレムも顔を真っ赤にしてまた俯いた。    
 
  彼は立ち上がると、椅子をどかして彼女の横に座った。 
 横にあった彼女の手をそっと握ると、顔を上げた彼女の唇に軽くキスをした。レムは少しビックリした表情を見せた。 
 「こんな軽いもんじゃなくて、もっと凄い事するんだぞ」 
  願わくば、ここで彼女には諦めて欲しいという気持ちがカイトの中にはあった。 
 もし、そういう展開になってしまったら自分を押さえきる自信が無かったからである。 
 彼女と一つになりたいと願っている反面、彼女を傷つけたくは無いという心情があって、 
 彼は今まで一切そんな素振りを見せなかったのだった。 
 「…………」 
  しかし、そんな彼の願いも虚しく、レムは無言のままゆっくりと目を閉じる。 
 いつもと違い耳を伏せてシッポもピクリとも動いていなかったが、その仕草は彼にキスをねだる時のものだった。 
 カイトは息を飲むと、そっと彼女の両肩に手を置いて、まずは先程と同じ様に何回か軽く唇を合わせた。 
 彼女の肩が段々と下がっていき、力が抜けてきているのが分かった。それから少しずつ、唇に舌を割り込ませていった。 
 「うぅん……!」 
  彼女はびくりと体を強張らせたが、舌を絡め取られるとまた徐々に力を抜いていった。 
 しばらくそうしていると、レムはカイトの背中に腕を回してきた。 
 どうやら体に力が入らなくなってきたようで、彼はそれを察すると唇を合わせたまま彼女をベットへ押し倒した。 
 部屋の中には荒い二人の吐息と、微かな水音だけが響く。 
 角度を変えながら何度も彼女の口内に入っていき、歯茎や舌の裏を舐め上げると、彼女はふうっと切なげな吐息を漏らした。 
 お互いの口元の毛が濡れそぼるまで深いキスを繰り返して、彼は最後に彼女の舌を吸い上げた。 
 ふるるっと微かに体を震わせる彼女の舌を開放すると、二人の間には銀色の橋が掛かった。 
 「……はぁっ」 
  舌を出したままレムは肺に溜まった空気を押し出した。 
 その表情は蕩けてしまっていて、気だるそうな、それでいて切なそうな目をしていた。 
 「本当に、いいんだな……?」 
  彼女の潤む瞳を見つめて、息を少し荒げながらカイトは言った。 
 レムはゆっくりと、首を縦に軽く動かした。それを確認すると、彼はゆっくりと彼女の体を抱きかかえた。 
 胸がくっ付くと、二人の服と毛皮越しにお互いの鼓動が伝わってきた。 
 彼女もまた彼の首に両腕を掛け、そっと抱きしめた。 
 彼は鼻先を彼女の首筋に埋めて、このままいくと間違いなく意識を押し流してしまう、 
 愛情の混じった大きな劣情の波が収まるのをただひたすら待っていた。 
 どれくらい二人はそうしていただろうか。 
 息が整ってきたのを見計らって、カイトはレムを抱いていた腕を解いて、彼女の顔を見下ろした。 
 しばらく見つめ合って、目でそれとなく合図を送ると、彼女はまた目を瞑った。 
 彼はまず少し汗で湿っている額に、それから少しずつ右へ移動しながら、彼女にキスの雨を降らせる。 
 彼女はくすぐったそうにしながらも、嬉しそうな表情で頬を赤く染めていった。 
 「んっ、……ふあぁ」 
  段々と口を付ける場所を下へ移動させ、顎の下から首筋へと潜り込んだ。 
 彼女の髪と汗の匂いに気分が高揚してしまい、少し強めに首筋にキスを繰り返していく。 
 時折少し歯を立てて甘噛みをし、それから口を大きく開けてむしゃぶり付き、 
 首筋の毛を唾液でべとべとにしてから強く吸い上げたりもした。 
 そしてその度に、彼女の口からは押さえきれずに漏れた切なげな声が溢れていた。 
 カイトは首筋を執拗に攻め立てながら、少しずつ左手を彼女の体に這わせていった。 
 白いセーターの上を、胸の下から臍、腹へ這わせ、服の裾からそっと左手を潜り込ませた。 
 そして、またほぼ同じ道のりを辿って、毛を掻き分け逆立てながら胸へとたどり着かせた。 
 「あっ……」 
  それに気付いてレムは思わず目を開け声を上げてしまったが、目の前にある彼の顔を見て彼女はまた目を瞑った。 
 カイトはそっと掌に収まるかどうかの大きさの胸に手を乗せ、ゆっくりと力を入れていく。 
 ブラジャー越しでもその柔らかさはしっかりと彼の掌に伝わってきていた。 
 五本の指をそれぞれ違うように動かして胸の形を変えさせるが、初めて触れるその感触に力加減が良く分からないでいた。 
 「くぅんっ!」 
  彼女が突然比較的大きな声を出したので、思わずカイトは胸から手を離し顔を上げた。レムの表情は少し苦痛に歪んでいた。 
 「もう、ちょっと、優しくして……」 
  息を絶え絶えにしながら彼女は言った。 
 「ごめん、あんまり柔らかいから力加減分からなくて……」 
  謝罪の意を込めて、カイトは彼女の頬に軽く口付けた。それからまた手をやって、先程より力を入れずに胸を揉んだ。 
 「これくらい、か?」 
 「うん、そのくらい……、ふぅっ……」 
  また彼女の吐息に甘い色が見え隠れし始める。 
 彼は左手で彼女の右胸を揉みながら、もう一方の胸をセーターの上から口で愛撫し始めた。 
 柔らかなセーターの感触と弾力のある胸の感触、それに微かに香ってくる彼女の匂いに、 
 彼の心臓は先程より一際大きく音を立て始めた。歯を軽く立てて、胸の突起を探し出すと、その近くを重点的に口で挟む。 
 彼女の口からは先程よりも感覚の短くなった呼吸音が聞こえてきていた。 
 「カイト……ちょっと、待って」 
 「ん、ごめん、また痛くしたか?」 
  心配そうに尋ねるカイトに、レムは首を横に振って答えた。 
 「違うの、ちょっと……胸が苦しいから、服、脱ぎたいの」 
  彼女は恥ずかしそうに、声の調を段々と下げながら言った。 
 「あぁ、そうか……。じゃ、俺も脱ぐよ」 
  彼はそう言うとセーターから手を抜いて、彼女の姿が見えないように反対の方を向いた。 
 そして、一秒でも彼女を待たせてはいけないと脱兎の勢いで服とズボンを脱いでベット下へ投げた。 
 その勢いでぎしっとベットのスプリングが音を立てて揺れる。 
 ベットの上であぐらをかいて、カイトはレムが服を脱ぎ終わるのを待った。   
 
  彼女は白いセーターをおずおずと脱いでから、少し腰を浮かせて青くて長いスカートも脱いだ。 
 それから背中へ手を回してブラジャーのホックを外した。 
 後ろを向いているカイトには勿論見えていなかったが、聞こえてくる布の擦れる音は視覚とは違う興奮を彼に与えていた。 
 永遠に思えるほどに長いようで短い時間が過ぎ、はさっと軽くシーツの擦れる音がして、また少しベットのスプリングが軋んだ。 
 「カイト、いいよ……」 
  呼ばれて彼が上半身を捻らせて振り返ると、ほぼ生まれたままの姿のレムが目に入った。 
 彼女は両手を胸の前に置いて、恥ずかしそうに身を縮こませて横たわっていた。 
 シーツで彼女の下半身は隠されていたが、それでも見える上半身の汗でしっとりとしている金色に近い茶色の体毛や、 
 枕に広がる少し長い栗色の髪が、カイトの気持ちを高ぶらせた。 
 彼は四つん這いになると、そっと彼女の方へ体を移動させ、その均整の取れた体をまじまじと見つめた。 
 「……そんなに見ないで」 
  少しの間ずっとその状態が続き、恥ずかしくなったレムが目線を外へ逸らしながら言った。 
 「やーだ」 
  カイトは少し震えだした声に感づかれないように、またおどけた様子で言った。 
 「恥ずかしいのっ」 
 「でも可愛いからもっと見る」 
  流石にその台詞の続きを彼女は返す事が出来なかった。 
 目を逸らしたまま顔を一層赤らめながら、彼女は彼の成すままにされていた。 
 しかし、それがなんだか心地良いという事にも彼女は気付き始めていた。 
 彼女が目線をカイトに向けると、それに気付いた彼は微笑んだ。 
 「レム」 
  愛しい人の名前を口にして、彼は彼女の頬に手をあて優しく撫で回した。 
 それから手を上へ移動させ、前髪を額から退かす。 
 軽く爪を立てて手櫛をするように頭を撫で、彼女の額にキスをした。 
 そして、彼は段々と口付ける場所を下へと移動させて、彼女の唇の柔らかい感触を感じ取るとまた舌を割り込ませた。 
 「うむっ、んうっ……」 
  今度のは大きな水音が漏れて聞こえるくらい激しく深いキスだった。 
 先程はただ攻められるだけだった彼女も、今度は少しぎこちない様子でそれに応じた。 
 彼が目を開けると、目を瞑って苦しそうにしながらも切なげな表情をしている彼女が目に入った。 
 普段からは想像も付かないような表情に、彼は胸が燃えるような興奮と、締め付けられるような切なさを覚えた。 
 また目を瞑って、彼は喉の奥から彼女の口の中に唾液を注ぎこんだ。 
 二人分の唾液を彼女の口内でかき回した後、彼は口を離した。 
 また銀色の橋がつうっと掛かり、一瞬でふわりと消えてしまう。 
 レムは口の中に残った唾液を舌で少し転がしてから、コクンと飲み干した。 
 「レム……胸、見てもいいか?」 
  カイトは息を荒くしながら、胸を隠している手を取った。 
 そして彼女が何か言う前にまた口を塞いで、彼女の手の指の隙間に自分の指を割り込ませた。 
 舌を絡め取りながら指も絡め取り、両手を少しずつ下へとずらしていく。 
 彼女の右手の甲に乗っていた彼の左手は、いつしか掌同士で絡まりあって、やがて彼女の右側のシーツに沈んだ。 
 もう片方の手も胸から外すと、彼は彼女の口を開放した。 
 カイトの眼下に広がるのは、自重に耐え切れずに少し形を崩した二つのふくらみと、 
 呼吸をする度にその存在を主張するふわふわの胸毛。 
 彼は両手を彼女の胸に置き、ふわりとした感触を味わった後、形を整えるように下から持ち上げた。 
 指の間からこぼれてしまいそうな初めての感覚に、彼は少し感動していた。 
 「……想像してたよりもずっと柔らかい」 
 「んっ、……私の胸の事、想像してた事あるんだ」 
 「…………」 
  レムの思わぬ反撃に、彼は胸を揉む力をほんの少しだけ強めた。 
 「はぁっ、それ、ちょっとズルイぞ」 
  反論の意を表す彼女の声は緊張と快感で調が合わなくなっていた。 
 しばらく胸の不思議な感触と、彼女から溢れ出る吐息を味わってから、彼は彼女の左胸に口を付けた。 
 口の先で毛に埋もれた胸の頂を探し当てると、彼は口に含んで舌で頂を舐めまわす。 
 「やあっ、やだ、くうんっ!」 
  今までの緩やかな波の快感とは違う、小波のような少し強めの快感に、彼女は声を上げた。 
 その変化のしようにカイトは少し驚いたが、快感を感じているのだと分かると今度は軽く吸い上げた。 
 「ふうっ、んあっ、……はぁぁっ!」 
  背中を少し反らせて彼女は快感に耐えていた。 
 しかし、背中を逸らす事で彼と胸の距離が更に縮まり、更に強く攻められる事に彼女は気が付かなかった。 
 彼は浮いた背中を両腕で抱きかかえて、口と胸が密着するようにした。 
 ふよふよと形の変わるそれにむしゃぶりついて、更に強い快感を彼女に与えていく。 
 胸から口を離すと唾液が糸を引き、ぐしょぐしょになった毛の中に薄紅色の乳首が見えた。 
 彼は背中に回していた右手を彼女の左胸にやって、今度は右胸を口で攻め始めた。 
 勿論、右手も人差し指の腹で胸の頂を弄りつつ、強さを変えながら胸を揉んだ。 
 両胸から絶え間無く来る快感に、彼女の息は段々と短くなっていった。 
 「はぁっ、やっ、ふっ、ふぁぁっ! だっ、カイト、ちょっ、待って……!!」 
  レムが悲鳴のような声を上げた。 
 急に湧き上がってきた何かが弾けるような感覚に彼女は困惑し、腕をカイトの首に回す。 
 しかし、彼はそれを気に留めず、執拗に胸を攻めつづけた。 
 彼女の声は少しずつ大きくなり、背中の反りも大きくなっていく。 
 「やっ、だ、はぁ……っ……!」 
  そして、肺の中にある空気を全て押し出すように息を吐きながら背中を大きく反らして、彼女は軽い絶頂を迎えた。 
 体をビクンと痙攣させながら、彼女は自分の中の大きな快感の奔流に意識を押し流されないように耐えていた。 
 カイトも彼女が絶頂に達したのを知って、一旦攻めの手を休める。 
 緊張していた体は徐々に力が抜けていき、彼の首に回していた腕をダラリと後ろに下ろして、 
 彼の腕の中で彼女はくたりとなってしまった。 
 彼は彼女をまた両腕で抱きしめると、激しく上下に動く胸の谷間に鼻先を埋めた。 
 しばらくそのままの状態で彼女が落ち着くのを待った後、彼はそっと彼女の体をベットへ下ろし両腕を解いた。 
 「どうだった?」 
  汗でくしゃくしゃになったレムの髪を撫でながら、カイトは静かに言った。  
 「……よく分からないけど、……いきなりっ、体の中で、何か膨らんできて、それでっ……」 
  彼女は話している最中も時折ピクンと体を震わせ、未だに体の奥で疼いている快感を感じているようだった。 
 しかしそれとは裏腹に、彼女の目元には涙が溜まっていた。 
 初めて感じた絶頂感に彼女は驚いて、少しばかりパニックを起こしていたのだ。 
 彼女の言葉が終わる頃、涙が二、三粒ポロポロと彼女の顔の横を落ちていった。 
 彼女の体は少し震えていた。カイトは彼女の流した涙をキスで拭って、子供をあやすように胸に抱きしめて頭を撫でた。 
 「ちょっとビックリしたか」 
 「……うん」 
 「……気持ち、良くなかったか?」 
  先程の可愛らしい嬌声を発している彼女の姿が眼の裏に残っているのにも関わらず、 
 彼は少し心配になって思わず聞いてしまった。彼女は首を横に振った。 
 「……ちょっと怖かった、けど……」 
  顔を赤く染めながらそう言うと、彼女は彼の胸の中で笑ってみせた。 
 少し無理をしているようにも見えたが、その笑顔が嬉しくて彼は更に彼女をぎゅっと抱きしめた。 
 お互いの温もりを確かめ合いながら、時間はゆったりと流れていく。 
 彼女の体の震えは収まって、体をまだピクッと動かしつつも、乱れた呼吸は大分収まってきているようだった。   
 
 「カイト……続き、しようか」 
  レムが静かに言った。カイトは彼女の頭を離すと、額にキスをした。 
 「うん? もういいのか?」 
 「大丈夫。だから……」 
 「……分かった。もっと気持ち良くしてやるよ」 
  彼は唇にもキスをして、それから舌を首筋、うなじへと這わせていった。 
 しっとりとした茶色の毛を濡らしながら徐々に下へと移動していく。 
 彼女の上に掛かっていたシーツを取ると、閉じられた足の間に自分の足を割り込ませた。 
 腰の下に手を入れ抱き寄せて、胸の谷間から更に下へ。 
 時折舌の感触を感じながら、レムはその様子を目で追っていた。 
 鳩尾から窪んだ臍の周りを一周させて、臍の中に舌を入れて舐めまわす。 
 「くふっ、ふふふっ……」 
  そのくすぐったさに、彼女の口から笑いが漏れた。 
 しかしカイトは真剣にやっていたので、その笑い声が悔しくて臍の辺りの柔らかい肉を甘噛みした。 
 それからふっくらとした腹に行くと、彼女の体が少し震えた。 
 彼は口を離すと、彼女の閉じていた足の間に自分の体を割り込ませようとした。 
 「あっ、やだっ!」 
  思わず彼女は腰を引いて足を閉じようとする。 
 しかし、彼が既に両足の間に入っているため、中途半端に腿だけを閉じた状態になってしまう。 
 「ほら、足広げて」 
 「やだっ、恥ずかしすぎるよ!」 
  レムは顔を耳まで真っ赤にして、少し涙目で訴えた。しかし彼は容赦しなかった。 
 「だーめっ」 
  そう言うと彼女の足を持ち上げて、まずは柔らかなふくらはぎに口付けた。 
 段々と上の方へ上っていき、閉じられた腿の間に手を入れた。 
 足に力を入れて彼女は脚を開かせるのを阻止しようとした。 
 だが、先程の絶頂感から体に思うように力が入らず、結局少しずつ開かれてしまう。 
 彼は開いた膝と膝の間に顔を入れて、それ以上閉じれないようにすると、内股に強く口付けをしていった。 
 「はっ……ふうっ……」 
  初めは何とも無かったものの、段々とキスされるうちに甘い痺れがピリッと体中を駆け抜けるようになっていった。 
 くすぐったいとも、明確に気持ちいいとも言えない微妙な感覚に彼女は戸惑った。 
 その間にも、段々とその痺れは強くなっていき、体中の力が抜けていく。 
 そして彼の吐息を内股のそのまた奥で感じると、彼女は我慢が出来ずに遂に足の力を抜いた。 
 彼女は両手で顔を覆って、恥ずかしすぎて耐えられないとばかりに首をふるふると振った。 
 彼が腿から口を離して見たそこは、既に少し濡れそぼっていて、周りの毛が水気を帯びてくしゃくしゃに纏まっていた。 
 「レム、これ……」 
 「…………っ!!」 
  震えた声で聞く彼に彼女は言葉を返さず、ただ顔を手を覆いながら髪が乱れるほどに首を振ってその心情を伝えていた。 
 それを見た彼は自分の顔が熱くなっていくのを感じた。そこから目を離せないまま、また内股にキスをしていく。 
 しかし、花弁から香ってくる微かな蜜の匂いに鼻をくすぐられると、彼の思考は次第に劣情に流されてしまった。 
 彼はゆっくりと蜜が滴る花弁へ顔を近づけ、一息置いてから口を大きく開けてそこに舌を割り入らせた。 
 「!! ひゃ、やあっ!!」 
  突然襲ってきた大きな快感の波に、彼女は悲鳴を上げた。 
 顔を覆っていた手を離すと、カイトの頭の上に置いて、そこから引き離そうと力を入れる。 
 しかし腕に力が入らず、結局は彼の頭を押さえ込む形になってしまう。 
 「やめっ、お願っ、カイト、汚いからっ……はあっ! うあんっ!!」 
  彼は溢れ出る甘い蜜とその匂いに心を奪われ、懇願する彼女の声は耳に届いていなかった。 
 舐めても舐めても奥から次々と溢れてくる蜜を舐め、喉の渇きを潤すように飲み干していく。 
 彼女を逆さに抱き上げて、少し歯を立ててもっと奥へ潜り込もうとする。 
 その動きが彼女へ更に大きな快感を与えた。舌を花弁の奥へと潜り込ませて、ほじくるように動かす。 
 自分の内側で蠢くその感覚に、彼女は涙を流し、嬌声を上げていった。 
 いつしか、退かすために置いていた手は、もっともっとと欲しがるように彼の頭を押さえつけていた。 
 「カイト、カイトっ! あぁっ、はっ、やぁっ、はぁん!!」 
  彼は押さえられていた手を振り払い、蜜でベトベトになった口を離すと、彼女の両足を自分の両肩に乗せた。 
 そして体を更に抱き寄せると同時に、両手を胸へと伸ばした。 
 溶けてそのまま無くなってしまいそうな花弁と、切なさではちきれそうな胸を同時に攻められ、 
 体をビクビク痙攣させて、喉の奥から普段聞けないような蕩けるほどに可愛らしい声で叫ぶ彼女。 
 既に前に登りきった快楽の階段を通り越して、彼女は更に上の階段へと駆け足で上っていく。 
 両手でシーツを握り締め、織り込まれた体で短く呼吸しながら、ただただ快感の大きな波に身を投げ出していた。 
 しかし、終わりはすぐそこまで来ていた。 
 「あっ、やだっ、はあっ、カイトっ、来ちゃ、さっきのっ!!」 
  彼女の中で先程の感覚が蘇り、涙が目から溢れてくる。 
 まるで流れの強い川の中にある不安定な小石に片足で立っているような気持ち。 
 いつ足元が崩れ落ちてしまうか分からないという状態に、 
 彼女は絶頂への期待感を持つと同時に、それを上回る不安感を募らせていた。 
 「カイトっ、カイ、トっ……!」 
  肺の中の空気を全部出し切っても、彼女は彼を呼びつづけた。 
 無意識のうちに彼女は両腕を彼に差し出し、助けを求めるように涙を流した。 
 カイトは彼女の蜜の味と蕩ける声で、頭を熱に犯されていたが、彼女のその様子を見ると花弁から口を離し両手を動かすのを止めた。 
 体を引いて抱いていた体をベットへ下ろすと、今度は少し前へ出て彼女の上に圧し掛かった。 
 そして流れる涙を舐めとって、彼女の頭を抱いて唇を重ねた。レムは彼をぎゅっと抱きしめた。 
 「んっ……」 
 「……大丈夫、俺がついてるから」 
  左手で彼女の頭を抱き寄せキスをしながら、右手を彼女の下半身へ這わせる。 
 花弁の上で背伸びをしている芽を見つけると、そっと指の腹で撫でた。 
 「ふっ、ふうぅっ!!」 
  口を塞がれながらも、突然また湧き上がった快感に驚いて彼女は声を上げた。 
 しかしカイトは口を離さず、それどころか舌を割り込ませてまた口の間から水音を響かせ始めた。 
 思うように呼吸が出来ず、しかも絶頂への階段を上っている彼女の頭は霧が掛かったように朦朧としていた。 
 それでも、髪をくしゃくしゃにされるほど頭を撫でられ、愛しい人の大きな胸板に抱かれているという事が、 
 彼女の中から不安感を取り除いていた。 
 初めは優しく撫でられていた肉芽は、蜜を塗りたくられて押し潰すようにこねくり回されだした。 
 彼女の体を稲妻が駆け抜けるような快感が襲い、その強い流れは段々と体の中で渦巻くようになっていく。 
 そして彼女の中で膨らんでいったそれは、舌を強く吸われると同時に一気に弾けとんだ。 
 「っぷぁ! くぅ、あっ、あっあぁぁーーーっ! ふぁぁーーーーーーっ!!」 
  彼女は体をぶるぶると震わせて、彼の胸の中で声を張り上げた。 
 頭の芯から体の先までを重い痺れが襲い、瞑った目の奥には火花が散る。 
 狂おしいほどの快感の波が彼女の意識を襲う。 
 彼女は喉や背中を限界まで逸らし彼を力強く抱きしめながら、その波が引くのをじっと耐えていた。 
 しばらくその状態が続いた後、彼女は全身の力を抜いてベットへ体を落とした。 
 徐々に戻っていく感覚が、快感の波に奪い去られていた熱を感じさせる。 
 体中がまるで燃えているかのように火照っていた。 
 反対に、カイトと体の触れていない場所は外気に晒され、その冷たさが彼女の意識を少しずつハッキリさせた。 
 「はっ、はっ、はぁっ……ふっ、くぅん……」 
  カイトに頭を撫でられて、レムの呼吸が落ち着いていく。 
 彼女は泣いてしゃくりあげるように体を軽くピクリと痙攣させて、小さくなった絶頂の余波を感じていた。 
 「今度は気持ち良かったか?」 
 「…………」 
  耳の辺りを指でくすぐりながら聞く彼に、彼女は涙に濡れた顔でただこくんと頷くだけだった。 
 「……イッてるときのレム、可愛かった」 
 「ばか……」 
  いつも話している時のような調の返事をする彼女の頬に、彼は軽く口付けた。  
 
  二、三回頬に口付けると、今度は彼女の伏せられている耳を指で挟んで少し乱暴に撫ぜ回す。 
 その耳にまたキスをして先の方を甘噛みし、わざと水音を出して彼女をくすぐったがらせる。 
 彼女の吐息に安堵の色が見え始めた頃、彼は彼女を抱き寄せて、耳元で静かに囁いた。 
 「……レム、ごめん、俺もう我慢できない」 
  彼のその言葉の意味を分からないほど、彼女は初心ではないのだが、いざと言われてしまうと妙に身構えてしまう。 
 返事が出来ずに時間がゆっくりと過ぎていく。 
 その沈黙の間、もし自分を受け入れられないと言われたらと思うと、彼は胸がワイヤーで締め付けられるような心地がしていた。 
 それでも、彼はただひたすら彼女の返事をじっと待っていた。 
 時折彼から、ふうっ、と何かに耐え切れないような吐息が、彼女の耳に吹き付けられる。 
 彼女がそれに気付いて、落ち着いて聞き耳を立てると、彼の呼吸も自分と同じ様に短いものだと分かった。 
 そしてその呼吸から、彼もまた自分と同じくらい胸が苦しく切ないのだと、彼女は悟った。 
 彼女はこくんと息を飲み込むと、彼の体に腕を回して、頬を寄せながら言った。 
 「カイト、来て……お願い……」 
  耳元でその言葉を囁かれて、カイトの心臓がドクンと大きく波打った。 
 彼はぎゅっと彼女を抱きしめ返して、首筋に口を強く押し付けてから体を起こした。 
 少し体を離して膝立ちになり、少し濡れてしまっているトランクスに手を掛けゆっくり下ろす。 
 赤く腫れ上がったような、先走りに濡れた彼の分身が、苦しそうに脈打っていた。 
 トランクスから足を抜いてベットの外に放るまで、彼女の目は彼のそれに釘付けだったが、 
 また上に圧し掛かられてそれを花弁にあてがわれると、流石に少し怖くなって目を瞑ってしまう。 
 彼は彼女の花弁から出る蜜を丹念に分身へなすり付け、そこに馴染ませた。 
 二人とも、そこが擦れ合う感触に体を震わせ、息を荒くした。 
 「じゃ、行くぞ……」 
  彼はそう言うと、自分の分身を片手で押さえながらゆっくり腰に力を入れていった。 
 少しずつ先端がぬかるみの中へ埋まっていく。 
 自分の中を押し広げられていく感覚に、彼女は歯を食いしばって耐えていたが、 
 彼の先端が半分程埋まった辺りから、段々と口から苦しげな声が漏れ始めた。 
 「……ぐぅっ……、あっ、いっ……くぅ……」 
 「……レム、もうちょっと、力抜いて」 
  徐々に彼女の中へ彼の分身が埋まっていき、彼の背中に回された腕が段々と力を増していく。 
 彼女の表情も苦痛の色が濃くなっていく。 
 カイトは劣情に流されて一気に彼女の中に入ってしまわないように自分を押さえるのに必死だった。 
 彼の分身が三分の一ほど入ったところで、プツリと何かが切れるような感じがあった。 
 「っ!! いっ…………はぁっ、いぁっ!! ぐぅぅっーーー!!」 
  初めての証が破れ、彼女の口から悲鳴にならない悲鳴が上がる。 
 それと同時に締め付けがまた一段と強くなった。彼もその締め付けに顔をしかめる。 
 見ると、破瓜の血が花弁から流れ落ちていた。 
 それを見て興奮と罪悪感でクラクラする頭を抑えながら、血の滑りを借りて更に彼女の中へ入り込む。 
 そして大分時間をかけて、彼の分身の全てが彼女の中に入った。 
 「レム……全部、入った、よ」 
 「はっ、はぁっ、はっ、……んくっ、はっ」 
  カイトは深く耐えるような、レムは短く苦しそうな呼吸をしていた。 
 彼は涙で濡れた頬に頬擦りして、そっと体を抱きしめながら呟いた。 
 「……もう止めようか」 
  避ける事が出来ない流れとはいえ、彼女を傷つけてしまった事に彼は胸を痛めていた。 
 白いシーツに蜜に混じった真っ赤な血が滲んでいるのを見て、更に息が詰まる。 
 彼女を一刻も早く苦痛から解放しようと、彼は汗を拭って体を起こそうとする。 
 しかし、レムの両腕がそれを止めた。 
 「やだっ、……お願い、続けて……」 
 「……レム」 
 「痛いっけど、……それより、嬉しい、気持ちの方がっ、……いっぱいなんだからっ」 
  彼の胸にいやいやをするように頭を擦りつけて、彼女は必死で彼が離れるのを引き止めた。 
 やっと一つになれたという事を、彼女は痛みと共に歓びとして感じていた。 
 自分の中に彼の一部があるという事が、二人の鼓動が一つになっているという事が嬉しかった。 
 彼の吐息、彼の温もり、彼の匂い、彼の鼓動、彼の全てが愛しかった。だから、彼女は離れたくなかった。 
 涙が止まらずに、彼の顔が滲んで見えない。 
 それでも、彼の顔を見上げて、声にならない嬉しさを言い表そうと言葉を捜した。 
 そうしているうちに、彼が彼女をまた抱きしめた。 
 「レムっ!」 
  彼の声は完全に震えていたが、そんな事はもうどうでも良くなっていた。 
 もう取り繕うなどとは思っていなかった。 
 自分を受け入れてくれた最愛の彼女を、ただただ心の底から愛したいと思う気持ちがあるだけだった。 
 彼の頬を熱いものが伝い落ち、嗚咽が彼女の耳にも聞こえていた。 
 彼が自分の為に泣いているのだと知って、彼女の胸の中がまた熱くなった。 
 二人はしばらくそのまま抱き合っていたが、息が落ち着き、彼女の痛みが少し引き始めた頃、彼は腕を立てて体を起こした。 
 「じゃ、動くぞ……」 
 「……うん」 
  カイトはあまり繋がっている部分が動かないように、ゆっくりと体同士を擦るように動かし始めた。 
 同時に、彼の腰に甘い痺れが走り始める。 
 思わず腰を引いて彼女を突き上げてしまいたい衝動に駆られるのをなんとか抑え、少しずつ動きを大きくしていった。 
 段々と水音が増していき、二人の息にもリズムが付いていく。 
 レムは自分の内側を擦られる感覚に戸惑いながらも、痛みの向こうに見え隠れしている快感を感じ取っていた。 
 「んっ、……ふっ、くぅん……はぁっ、あくっ」 
  彼女の苦しげな吐息の中に再び甘いものが戻ってきた。 
 それを聞くと、彼は嬉しくなって彼女の頬にキスの雨を降らせた。 
 そして彼女の脇に両腕を立てると、腰を本格的に動かし始めた。 
 彼女の奥から新しい蜜が溢れてきて、彼の分身に絡みつく。 
 「くっ、ふうっ……はっ、はっ、はぁっ!」 
  滑りが良くなっていくと同時に快感のレベルが跳ね上がり、彼の口から声が漏れた。 
 彼は一旦動きを止めると彼女の腰を両腕で抱きしめ、鳩尾の辺りに鼻の頭を擦りつけて、 
 彼女の匂いを嗅ぎながらリズムをつけて抽挿を再開した。 
 大きな波が二人を襲い、体中に浮き出た汗が毛を伝って滴り落ちる。 
 汗や蜜、それに少し薄まった血の匂いが彼を一段と興奮させた。 
 そのうち、彼はただ前後に動かすだけではなく、円を描くように腰を動かし始めた。 
 「くぅん、ん、あっ、はぁっ、カイトっ、それっ、いいよぉ……っ!」 
  快感が苦痛を上回った為か、彼女の過剰な締め付けは無くなり、包み込み吸い上げるような感覚を彼に与えていた。 
 彼も自分を包み込んでくる柔肉を割って、もっと奥へ入ろうと腰を押し付ける。 
 彼は限界まで腰を突き入れて、彼女を抱き上げると彼女の唇にむしゃぶりついた。 
 そして奥まで分身を入れたまま腰を回して、彼女の中を乱暴にかき回した。 
 ジュプ、ジュプッといやらしい水音と、激しく揺れるベッドのスプリングの軋む音、 
 それに二人の荒い呼吸音とレムの声が部屋中に響き渡った。 
 「うん、うむっ、ふうっ、……ぷあっ、あぁっ、カイトっ!!」 
 「レムっ、……うっ、くっ、……はぁっ!」 
  何度も何度も口を重ねて、口の周りを唾液でベトベトに濡らしながら、 
 二人は抱きしめ合ってお互いに与えられる快楽を享受していた。 
 いつしか二人は対面座位の形になり、カイトは彼女の腰をしっかりと抱いて奥をかき回し、 
 レムはその快感に強さに耐えるように彼に全身で抱きついていた。 
 腰を動かすとベットが軋み、スプリングの反動で腰が上下に動く。 
 カイトは反動のリズムとタイミングを掴み、腰を回しながら上下に動かした。 
 彼もまた、絶頂への階段を上り始めていた。 
 「くうっ、レム、……もう俺っ!」 
 「はっ、うんっ、いい……よっ! カイトっ、もっとぉっ!!」 
  その言葉を聞いた瞬間、彼の中で自分を塞き止めていた何かが吹き飛んだ。 
 一段と強く彼女を抱きしめ、思い切り突き上げながら、地肌に歯形が付くほどに強く噛みついた。 
 突き上げた彼の分身が彼女の最奥に到達し、そこに当る度にお互いの頭に火花が散る。 
 更に強い快感を与えようと、彼は彼女の後ろで力無く動いているシッポを強く掴んだ。 
 毛を逆立て、先の方を指で擦って、根元を弄る。 
 彼女の中で、一気に気持ちが高ぶっていく。 
 と、同時にシッポを弄られたせいで彼女の中が纏わり付くように締まった。 
 「くぅん! くぅっ、はぁっ、あっ、あっ、あぁっ、はぁんっ!!」 
 「レム、レムっ! ……レ、ん……ぐうっ!!」 
  彼女の中で彼が弾けた。 
 最奥まで大きく二、三度抽挿を繰り返した後、先端に何かが当るのを感じてから我慢していた熱い想いを解き放った。 
 奔流となったそれは彼女の深部へ注ぎ込まれ、すぐに充たしてしまう。 
 「あぁっ、あーーーーーーーーーーっ!!」 
  そして彼女も、腹の中を熱いもので充たされるという、初めての快感で絶頂へと押し上げられた。 
 自分の中に注ぎ込まれる感覚と、押し広げられていく感覚が、女性としての歓びを彼女に与えていた。 
 彼女の体は無意識のうちに、注ぎ込まれたものを一滴も漏らさないように、彼の分身を一段と強く締め上げる。 
 しかし、更に快感を求める彼が腰を揺り動かすせいで、こぷりと淫らな水音を立てながら彼女の外へ漏れ出してしまう。 
 絶頂感の中でも二人はまだ足りないというように動きつづけた。 
 しかし、徐々に絶頂の波が引くにつれて脱力感に襲われて動きを止めてしまう。 
 「んぁっ、はぁっ、……はぁぁ……」 
  体が震え、なんとも言えない幸福感に充たされていく。 
 二人はどちらともつかずに深い口付けをして、お互いの体に隙間が出来ないように必死に抱き合いながら、 
 舌を舐り、唾液を嚥下していった。そして二人は繋がったままベットへ倒れこんだ。 
 ベットのスプリングが悲鳴を上げたが、そんな事はお構いなしに、お互いの匂いと温もりに包まれながら、 
 二人の意識は次第に暗闇へと落ちていった。 
 
  レムは頭を優しく撫でられる感触で目を覚ました。目の前にはカイトの腕。 
 彼女が少し首を動かして上を見ると、満足気な笑顔で見下ろす彼が居た。 
 「起きたか?」 
  彼は汗でくしょくしょになった髪を少し強めに撫でてから、前髪をそっと掻き上げて額にキスをした。 
 まだ夢見心地なのか、彼女はぼーっと呆けた顔で彼を見上げていた。 
 しばらくするとその顔は、先程あった事を思い出したのか、段々と赤く染まっていく。 
 それに比例するように、ピンと立っていた耳も次第に倒れていった。 
 「……ん」 
 「んー? また耳が倒れてきてるぞー」 
  彼女の倒れた耳を指で摘んで立たせながら、からかうように彼は言った。 
 彼女はその手を取って指に軽く噛み付いた。 
 「いてっ、噛むなって」 
 「止めてよ、そうやってからかうのー」 
  言葉に勢いが無いものの、その様子はいつもの彼女のものだった。 
 指を甘噛みしながら笑う彼女を見て、彼の胸が一杯になっていく。 
 噛んでいる指に顔を寄せて、まずは指越しにキス。それから指を離して今度は唇同士を軽く触れ合わせる。 
 顔を離すと、彼女は落ち着いた優しげな目をしながら、彼の頬に手を寄せた。 
 「……しちゃったね……」 
  不意を付かれて真正面から言われた彼の顔は真っ赤になっていった。 
 「いきなりそんなこと言うなよ。……恥ずかしくなってきちゃうだろ」 
 「恥ずかしくなんか無いよ」 
  彼女は体を起こし、彼に寄りかかった。そして胸に顔を寄せながら、もう一度静かに呟いた。 
 「恥ずかしくなんか、無い。……とっても嬉しいよ、一緒になれて」 
 「…………俺も。頑張ってくれてありがとうな、レム」 
 「ううん、平気だよ……」 
  頭をぐりぐり擦り付けて甘えるレム。シッポもハタハタとベットの上で揺れていた。 
 カイトが自分の足の間に彼女の体を置こうと抱き寄せた。 
 「……あっ?!」 
  その時、彼女が驚きの声を上げた。その声に思わず彼も抱きしめていた手を解いてしまう。 
 「どうした?」 
 「あぅ……」 
  彼女は恥ずかしそうに俯いて黙ってしまった。どうしたのか尋ねる彼に、彼女は小声で答えた。 
 「…………カイトの、漏れてきちゃった」 
 「……一緒に風呂入るか」 
 「うんっ」 
                         〜二人の話はひとまずおわり。 
 
 
 
 
 
 
 
 〜後書き〜 
 日頃の萌えもえ感を一気に発散できれば良いと思ってやった。 
 ケモノな二人のラブラブえちが書ければそれでいいと思った。 
 
 ごめんなさい、こういうえちぃのを書いてみたかったんです。 
 
 カイトもレムも特に特徴の無い犬人です。皆様特徴のあるキャラクターを書いていらっしゃるから、 
 淡々とただ書いただけじゃイマイチなのかも…。 
 
 次がもしあったら兎人のお姉さま×黒猫の男の子を書いてみ…あー先越されたっぽい。_| ̄|○||| 
 
                                 空見居のら 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 〜実は挿入するシーンの「釘付けだったが〜」の後には当初こんな文がくっ付いていたんです。〜 
 初めて見る彼の、いや男性のそれは、彼女に恐怖と期待と好奇心が混ざったような何とも言えない気持ちにさせていた。 
 彼がそこを見つめられていることに気付くが、隠そうとはしなかった。 
 彼女も自分より恥ずかしい思いをしていたのだという気持ちがあったからだ。 
 レムはまた体を伸しかけてくる彼を手で押さえて、好奇心から出た言葉を口にした。 
 「ねぇカイト。……ちょっと、見せてくれない?」 
 「……えっ、見せるって、……これ?」 
  彼は顔を真っ赤にしながら、自分の股間の分身を指差した。 
 「うん」 
  カイトにはしばらく時が止まったかのように思えた。 
 しかし、他でもない彼女の頼みとあらばと、おずおずと腰を彼女の前へ差し出した。 
 彼女は目の前に出されたそれをまじまじと見つめてから、おっかなびっくりとした様子でそれに手を添えようとした。 
 彼女の手が触れた瞬間、ピリッとした快感が彼を襲い、分身がビクリと動いてしまう。 
 彼女はビックリして思わず手を離してしまった。 
 「だ、大丈夫? 痛くない?」 
 「あ、あぁ、大丈夫。少し触られただけでも、気持ち良すぎて……」 
  その言葉を聞いて安心したのか、彼女はまた彼の分身に手を添えた。 
 そして両手で握ったり、先の方を指でつついたりして、初めて触れるその不思議な感触を楽しんだ。 
 「凄いね、男の人のってこんなに……、これが私のなk」 
  色々な場所を触られて、彼の分身ははちきれんばかりにまで大きくなっていた。 
 時折、じれったく与えられる快感をもっと欲しがるように、彼女の手の中でビクンと動いた。 
 彼女が軽く両手で彼の分身を握ると、先から先走りが滲み出てしまう。彼女はそれを見て、また好奇心が湧き出した。 
 「ん、なんか出てきたよ……うわ、ぬるぬるしてる」 
  彼女は先走りの露を指で触れると、ぬるりとした感触を味わうように先の方で円を描くように動かした。 
 「くうっ!!」 
  当然それは、彼にかなりの刺激を与えた。彼は咄嗟に腰を引くと、きょとんとしている彼女をよそに息を整えた。 
 「もうこれ以上は……出ちゃうから」 
 「あっ、うん……」 
  彼の切なそうな呼吸に、彼女も納得した。  
 
 

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